被害者請求の必要書類と手続きは?後遺障害と自賠責の申請方法
もくじ
加害者が任意保険に入っていない!被害者請求を申請しよう!
交通事故は、いつ誰が巻き込まれるかわからないもので、色々なケースがあります。
例えば、渋滞中の追突事故。右折をしようと思ったら、信号無視した対向車と衝突してしまう事故。交差点での出会い頭の事故。
交通事故に巻き込まれてしまった場合には、必ず警察を呼ばなくてはなりません。これは法律で決められており、呼ばなかった場合は違法になります。必ず警察に連絡をし、現場検証、実況見分をおこない、事故証明を発行してもらいましょう。
現場検証によって、どちらにどれくらいの責任があるのかを決めます。これを過失割合と言います。
▶︎参考:交通事故で警察を呼ばないのは違法になる!交通事故後の流れとは?
過失割合によって、「被害者」と「加害者」が決められます。
交通事故において「加害者は被害者に対して損害を賠償すること」が決められており、被害者に損害賠償をするのは、加害者が加入している任意保険会社になります。
▶︎参考:損害賠償の1つ!被害者が受け取れる慰謝料の種類について、詳しく知りたい方はコチラ!
しかし中には、駐車場での当て逃げや飲酒運転によるひき逃げ、加害者が任意保険に入っていないなどのイレギュラーなケースも。
今回は、そんなときに役立つ被害者を保護する制度「被害者請求」についてお伝えします。
後遺障害になった時の被害者請求や、加害者が無保険の場合に行使する「政府保障事業」についても言及します。
被害者請求と自賠責保険の仕組み
被害者請求のお話をする前に、まずは自賠責保険の仕組みについて簡単におさらいをしましょう。
自賠責保険の仕組み
自賠責保険とは、車を所有(運転)する誰もが必ず入らなければならない法律で定められた強制保険のことです。被害者を最低限保護することを目的に、昭和30年に作られた保険で、国土交通省が運営しています。
加害者が任意保険に入っていない場合、被害者が負った損害を、法定限度額の範囲内で填補(※1 てんぽ)します。傷害事故であれば120万円、死亡事故の場合は3000万円、後遺障害は、1級の場合は3000万円と限度額が決められています。
(※1 )…保険会社が被害者に保険金を支払うこと。
▶︎参考:自賠責保険で被害者が受け取れる慰謝料の計算についてはこちら
被害者請求とは?
被害者請求とは、被害者が損害賠償の請求手続きを自ら行うことです。
通常、交通事故が発生した場合は、加害者側の任意保険会社が被害者に対して損害賠償を行います。
これを「加害者請求」といいます。
- 加害者請求…加害者の保険会社が被害者に損害賠償すること
- 被害者請求…被害者が自ら加害者側の自賠責保険に損害賠償を請求すること
しかし、交通事故のケースによっては、加害者が被害者の損害を賠償できないことがあります。イレギュラーな事故が起きたとき、被害者は“自分が負った損害を賠償してもらうため”に損害賠償の請求手続きを行わなければなりません。これを「被害者請求」といいます。
被害者請求の種類2つ
被害者請求には、請求の種類が二つあります。
- 1.本請求…被害者の損害がほぼ確定した後に請求する方法
- 2.仮渡金請求…治療費等を迅速に受けることができる制度
本請求は、被害者の損害がほぼ確定した後に請求する方法です。
仮渡金請求は、治療費や通院交通費などを立て替えて支払うことが難しい場合に、必要になるお金を先に受け取ることができる制度です。
被害者請求が適用される交通事故ケース
被害者請求はどんな時に適用されるのでしょうか。
自賠責保険の被害者請求は、加害者が任意保険に加入していないときに発生します。また、加害者が支払い能力がない場合にも適用されます。
加害者が任意保険に入っていない場合は、加害者側の「自賠責保険会社」に被害者が直接請求することができます。
被害者請求のやり方
自賠責保険の仕組みや、被害者請求の基本について学んだところで、具体的な被害者請求のやり方についてお伝えします。自賠責の被害者請求だけではなく、後遺障害の被害者請求についても言及しますので、併せてご覧ください。
自賠責の被害者請求
先にお伝えしておくと、被害者請求はとても根気がいる作業です。必要な書類が山ほどあり、手続きも煩雑で、投げ出したくなってしまう時もあるかもしれません。それでも、ご自身の怪我を治すことや、精神的苦痛を少しでも和らげるために、しっかりと手続きをしましょう。
自賠責保険の被害者請求に必要な書類7つ
自賠責保険の被害者請求で必要な書類は、以下の7つです。
- 1.保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払い請求書/保険会社から取り寄せ
- 2.交通事故証明(人身事故)/自動車安全運転センター
- 3.事故発生状況報告書/被害者が作成
- 4.医師の診断書/治療を受けた病院
- 5.診断報酬証明書/治療を受けた病院
- 6.通院交通費明細書/領収証をとっておく
- 7.印鑑証明書/住民登録をしている市区町村(区役所、市役所)
上記7つに加え、会社を長期的に休んだ場合は「休業損害証明証」を自身の勤め先に依頼、被害者が未成年である場合は、住民票か戸籍抄本を親権者が区役所に取りに行きます。
被害者請求の手続き方法とは
被害者請求のフローは、以下の通りです。
- 1.物損事故から人身事故に切り替える
- 2.加害者側の自賠責保険会社から請求に必要な書類を取り寄せる
- 3.交通安全センターに行き、交通事故証明書を交付してもらう
- 4.事故発生状況報告書を作成する
- 5.診断書や印鑑証明書など、必要書類を加害者の自賠責保険会社に送付する
※交通事故発生時、加害者に車検証を見せてもらい、自賠責保険会社を確認しておく必要があります。
※すでに人身事故への切り替えが済んでいたり、加害者側の自賠責保険会社に連絡をしてれば、「①物損事故から人身事故へ切り替える」の手順は割愛してください。
被害者請求の申請期間
被害者請求は、事故にあった被害者がいつまでも損害賠償を請求できるわけではありません。期間が決められています。
- いつから?
治療を終えたその日から、請求の手続きができます。
請求期間
請求できる期間は、事故発生から3年以内です。
なお、国土交通省のデータによれば、被害者請求をしてから保険金が支払われるのは平均して4〜7ヶ月とされています。あくまでも平均ですので、交通事故の状況によっては、7ヶ月よりも遅れる場合が考えられます。
▶︎参考:健康保険証を使って支払うメリットは?「第三者による傷病の届出」のやり方とは?
後遺障害等級で被害者請求をする方法
交通事故で怪我をしてしまった場合、その症状が後遺症となり残ることがあります。症状固定時期に後遺症になった場合は、「後遺障害等級認定」を行い、「後遺障害慰謝料」を受け取ることができます。この、後遺障害にもやり方が二つあります。
「事前認定」と、「被害者請求」です。
事前認定は、加害者側の保険会社に全ての手続きを任せること。
被害者請求は、被害者自らが請求等を行うことです。
いずれの手続き方法も、加害者側の自賠責保険会社から書類を取り寄せ必要事項を記入し、後遺障害診断書等と一緒に自賠責保険会社に返送します。
後遺障害認定の被害者請求に必要な書類
- 1.保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書/自賠責保険会社より取り寄せ
- 2.交通事故証明書/自動車安全センター
- 3.事故発生状況報告書/被害者が作成
- 4.医師の診断書/治療を受けた病院
- 5.診療報酬明細書/治療を受けた病院
- 6.印鑑証明/住民登録をしている市区町村(区役所等)
- 7.後遺障害診断書/治療を受けた病院
【後遺障害認定】被害者請求の申請期間
後遺障害認定の被害者請求においても、申請期間は決められています。
- いつから?
症状固定してから
請求期間
請求できる期間は、症状が発症してから3年以内です。
▶︎あわせて読みたい!>>後遺障害認定を受けるための被害者請求の方法とは?
さて、ここまではあくまでも「任意保険に入っていないが自賠責保険には加入している加害者」に対して、被害者が自賠責保険に直接、損害賠償請求をする「被害者請求」についてお話しました。
では、加害者が自賠責保険にも入っていない場合は?
加害者が任意保険にも入っておらず、自賠責保険も期限がきれていた…ということも、まれですがあります。被害者請求は、あくまでも自賠責保険に加入している加害者との事故で行使できる権利です。自賠責保険の期限が切れている場合には、被害者請求は適用されません。
そのようなことが起きた場合には「政府保障事業」を行使します。
政府保障事業とは?
「政府保障事業」とは、加害者が無保険の場合や、ひき逃げ、当て逃げなどで加害者が誰だかわからないといった事故の被害者を保護する制度のことです。
被害者が与えられた損害を、政府が加害者に代わり支払い、政府が被害者に代わって本来の損害賠償責任者(加害者)に債務を返却するよう求めます。
政府保障事業と自賠責保険の被害者請求は、同じ計算方法で損害額を算出します。
被害者請求との違いは、請求できるのは被害者のみであるということ。また、相手が自賠責保険に加入していない場合に行使する制度というところです。
政府保障事業は、自賠責保険では救済されない被害者の最終的な救済制度です。健康保険や労災保険等の社会保険から給付を受けるべき場合は、その金額は控除されます。
政府保障事業の手続き方法
政府保障事業の手続きは、被害者請求とほとんど変わりません。
必要書類に追加点がありますのでご覧ください。
政府保障事業に必要な書類8つ
- 1.政府保障事業への損害のてん補請求書/各保険会社から取り寄せ
- 2.請求者本人の印鑑登録証明書/住民票を登録してある市区町村(区役所等)
- 3.交通事故証明書/交通事故安全センター
- 4.事故発生状況報告書/被害者が作成
- 5.診断書/治療を受けた病院
- 6.診療報酬明細書/治療を受けた病院
- 7.通院交通費明細書/都度領収証をとっておく
- 8.振込依頼書/請求者(被害者)が自分で作成する
被害者請求の申請期間
政府保障事業も、請求できる期間が決められています。
- いつから?
治療を終えたその日から、請求の手続きができます。
請求期間
請求できる期間は、事故発生から3年以内です。
政府保障事業の手続き方法とは
政府保障事業のフローは、以下の通りです。
- 1.物損事故から人身事故に切り替える
- 2.損害保険会社から請求に必要な書類を取り寄せる(※2)
- 3.交通安全センターに行き、交通事故証明書を交付してもらう
- 4.事故発生状況報告書を作成する
- 5.振込依頼書を作成する
- 6.診断書や印鑑証明書など、必要書類を損害保険会社に送付する
(※2)政府保障事業は、請求先は「政府」ですが、手続きの窓口は損害保険会社が行います。
どこの損害保険会社でもいいので、連絡をして必要書類を取り寄せてください。
政府保障事業も、請求から振込みまではいずれも4〜7ヶ月の期間を要するといわれています。怪我をして体に痛みがあるのに、かなり長い間、あらゆる手続きに時間が割かれます。不安なこともたくさんあると思いますが、通院先の先生や、自賠責保険会社のスタッフの方、また、交通事故に関するあらゆる相談を受けてくれるセンターもあります。一人で悩まずに、不明なことは周りの人や弁護士に相談してみてくださいね。
被害者請求のやり方まとめ
事故に巻き込まれ相手が無保険であったり、支払い能力がない場合に被害者を最低限保障してくれる「被害者請求」。
- 被害者が加害者側の自賠責保険に直接請求することができる
- 被害者請求に必要な書類は、自賠責保険会社から取り寄せる
- 加害者が無保険の場合は、政府に請求する「政府保障事業」を行使する
- 後遺障害認定においても、被害者請求の方が納得感がある
交通事故に巻き込まれてしまったことによる精神的な苦痛に加え、被害者請求の煩雑な手続きを行うのはとても大変です。
しかし、被害者には、請け負った損害を賠償してもらう権利があります。
体の痛みや精神的な苦痛、治るかどうかの不安など、一人で悩まず周りにいる人に相談してくださいね。
あなたが1日でも早く、日常的生活に戻れることを心から願っています。