交通事故で肋骨骨折した。治療方法や慰謝料はどうなる?

2019年02月01日

交通事故後に肋骨を骨折することもありますが、「治療は、どこで受ければいいのだろうか。」「慰謝料は受け取れるのだろうか。」など不安が多いと思います。

そこで今回は、交通事故で肋骨骨折をしたときの治療や慰謝料などについて解説していきます。

交通事故で肋骨骨折したら

交通事故による怪我で、肋骨を骨折することもあります。

肋骨とは、胸の辺りにある骨で、心臓や肺を保護する役割を担っています。衝撃に弱い骨であるため、骨折しやすいといわれています。

肋骨が骨折する原因は、外から力が加わったときです。
例えば…

  • 転倒して、地面に胸部を打ちつけた
  • ハンドルやエアバックに胸部を打ちつけた

肋骨を骨折すると、胸部がズキズキと痛む、胸部を押すと痛いというような症状があります。また、咳・くしゃみをすると胸部の痛みが増す場合、胸部に内出血や腫れがある場合も、肋骨を骨折している可能性があります。

肋骨骨折の治療について

肋骨骨折をした場合、保存療法(コルセットやバストバンドなど)を行います。固定する期間は、3~4週間程度です。また、肋骨骨折による痛みが激しい場合は、痛み止めを処方されることもあります。

▶︎参考:交通事故後の通院先はどこへ行くべき?

肋骨骨折は後遺症になることも


肋骨骨折をした場合、後遺症が残ることがあります。

肋骨骨折の後遺症は2つ

肋骨骨折で考えられる後遺症は、以下の2つ。

  • 変形障害
    骨折した部分がうまくくっつかず、変形したままになっている状態
  • 神経障害
    骨折した部分が治った後、痛みやしびれなどが残っている状態

交通事故が原因で後遺症として残った変形障害や神経障害は、後遺障害の等級に該当することがあります。

変形
障害
後遺障害等級の12級5号
(肋骨の変形が明らかである場合)

※変形が明らかというのは、外部から見てもわかる状況であることです。

神経
障害
後遺障害等級の14級9号、12級13号
(痛みやしびれの症状が、医学的なテストや検査で証明できる場合)

※神経障害の12級と14級の違いは、重度の神経症状か軽度の神経症状というものです。

後遺障害等級認定を申請する

上記のように後遺症が残り、後遺障害に該当する場合は、後遺障害等級認定を申請しましょう。後遺障害の等級が認められた場合、後遺障害慰謝料というものを受け取ることができます。

後遺障害等級認定の申請方法は、以下の2つ。

  • 事前認定
  • 加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出し、その後の手続きを一任する申請方法です。被害者請求より手間がかからないのがメリットです。

  • 被害者請求
  • 被害者自身で書類を入手・作成して、請求手続きを行う方法です。手間はかかりますが、被害者自身で書類を入手・作成するため、納得のいく後遺障害等級認定を受けられます。

被害者請求で準備すべき書類と入手先は以下の通り。

必要な書類 入手先
自賠責保険金請求書 自賠責保険会社
交通事故証明書 自動車安全運転センター
事故発生状況報告書 自賠責保険会社
診断書 任意保険会社または通院先
診療報酬明細書 任意保険会社または通院先
印鑑証明書 市区町村の役場
後遺障害診断書 通院先
レントゲン・MRI・CTなどの画像 通院先

後遺障害等級認定の申請手続きを行う場合は、医師から症状固定と診断されるまでしっかりと継続して通院することが大切です。

通院を途中でやめていたり、通院頻度を保っていない場合は、症状が軽いものとみなされることもあります。このように判断されてしまうと、妥当な等級が認定されない可能性が高くなります。

後遺障害の等級は併合されることもある!?

交通事故で肋骨を骨折した場合、変形障害と神経障害の2つ同時に、後遺症として残る可能性もあります。その場合は、後遺障害の等級が併合されます。

後遺障害の等級が併合されると、複数ある後遺障害の等級のうち、一番重い症状である後遺症の等級が上がります。後遺障害等級認定における併合のルールを、以下の表にまとめました。

等級の組み合わせ
(重い等級 + 軽い等級)
併合等級
1~5級 + 1~5級 重い等級から
3等級上がる
1~5級 + 6~8級 重い等級から
2等級上がる
1~5級 + 9~13級 重い等級から
1等級上がる
1~5級 + 14級 重い等級のまま
6~8級 + 6~8級 重い等級から
2等級上がる
6~8級 + 9~13級 重い等級から
1等級上がる
6~8級 + 14級 重い等級のまま
9~13級 + 9~13級 重い等級から
1等級上がる
9~13級 + 14級 重い等級のまま
14級 + 14級 14級

後遺障害の併合等級についての具体的な例は、以下の通り。

    例1:後遺障害の等級の8級と6級に該当する後遺症が残っている場合
    後遺障害の等級で8級以上の後遺障害が2つ以上残っているため、重い方の等級を2つ上がります。したがって、後遺障害の併合により等級は4級になります。
    例2:後遺障害の等級の14級と10級に該当する後遺症が残っている場合
    重い等級が採用されるので、後遺障害の等級は10級になります。

このように、併合することで等級が変動するため、後遺障害に関する損害賠償が増額することができます。

肋骨骨折の慰謝料について


肋骨骨折をした場合、慰謝料を受け取ることができます。そもそも慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。 

肋骨骨折で請求が可能な慰謝料は2つ

肋骨骨折で請求が可能な慰謝料は以下の2つです。

  • 入通院慰謝料
    入通院によって負った精神的苦痛に対する損害賠償
  • 後遺障害慰謝料
    後遺障害になったために負った精神的苦痛に対する損害賠償

これらの慰謝料を加害者に請求することができます。しかし、後遺障害慰謝料は、後遺障害等級認定で等級が認められた場合に支払われる慰謝料になります。

したがって、誰もが受け取れるというわけではありません。もしも後遺障害が残った場合は、先程紹介した、後遺障害等級認定を申請するようにしましょう。

▶︎参考:慰謝料だけではない!被害者が加害者に請求できるものとは?

慰謝料を算定するための3つの基準

慰謝料を算定するときに必要な3つの基準というものがあります。3つの基準のうち、どの基準を選ぶかで、慰謝料の金額に差が出ます。

自賠責基準

自賠責保険を使う場合は、自賠責基準を使います。

自賠責保険は、車を運転する人が必ず加入しなければならない保険です。交通事故の被害者を救済するために、最低限の保障を行うことを目的としています。そのため、自賠責基準を使うと、3つの基準の中で最も低い金額になります。

任意保険基準

任意保険を使う場合は、任意保険基準を使います。

任意保険は、加入義務がありませんが、車を運転する人の多くが加入している保険です。任意保険に加入していれば、自賠責保険でカバーしきれなかった損害を補償することができます。加入義務がなくても、念のため加入するという人が多いのです。

任意保険基準は、数多く存在する任意保険会社ごとで独自の基準を決めています。そのため、任意保険会社が違えば慰謝料の金額も異なってくるのです。慰謝料の金額は3つの基準の中で、自賠責保険より高く、弁護士基準より低い金額になります。

弁護士基準

弁護士を使う場合は、弁護士基準を使います。

弁護士基準は、3つの基準の中で最も高い金額になります。しかし、弁護士基準を使う場合は、弁護士費用というものが発生するので、注意が必要です。

▶︎参考:弁護士費用について詳しく知りたい方はこちら

交通事故の肋骨骨折についてのまとめ

交通事故で肋骨を骨折したときは、

  • 肋骨骨折の治療は、3~4週間の保存療法を行う(コルセットやバストバンドなど)
  • 肋骨骨折で後遺障害として認められることもある
    (※後遺障害の等級で、14級9号、12級13号、12級5号に該当する)
  • 後遺障害等級認定が認められると、後遺障害慰謝料逸失利益を受け取れる

上記のことを覚えておいてくとよいでしょう。