通勤中の交通事故。通勤災害って何?労災についても解説!

2019年02月01日

朝、会社に向かっている途中で、交通事故の被害にあった。上司に報告すると「通勤災害に当てはまるから、労災が使えるよ。」といわれた。「通勤災害…。」聞きなれない言葉ですよね。今回の記事では、通勤災害や労災のしくみなどについて説明していきます。

交通事故における通勤災害とは?

通勤災害とは、通勤中に労働者が負った怪我や病気などのことです。

労災における通勤の定義は…

  • ①自宅と仕事場との間の往復
  • ②仕事場から他の仕事場への移動
  • ③単身赴任先の自宅と帰省先の自宅との間の移動

これら就業中の移動を合理的な経路や方法で行うことをいいます。移動の経路を外れた場合や中断した場合、その間とその後の移動は通勤とはならないので、注意しましょう。

業務災害もある

業務災害とは、労働者が業務を原因に負った怪我や病気のことです。

業務災害の場合に保険が給付されるのは…

  • 労働者が労災保険の適用される仕事場に雇われている
  • 事業主の支配下にある
  • 業務が原因で生じた災害である

この3つの条件を満たしてなければなりません。

通勤災害と業務災害の違い

通勤災害と業務災害には、2つの違いがあります。

①通勤災害は、事業主が責任を負う必要がない

業務中の災害に関して、労働基準法で事業主が責任を負う必要があると言及しています。一方、通勤中の災害に関しては特に言及してません。したがって、事業主に補償義務があるかないかという違いがあるのです。

通勤災害には事業主の補償義務がないため、以下のようなことがあります。

  • 例1:通勤災害は一部負担金が徴収される。
  • 例2:通勤災害の待機期間は、休業補償がない。
  • 例3:通勤災害の場合は、解雇制限(※1)や打切補償(※2)が適用されない。

※1 解雇制限とは、労働者を解雇してはいけないと制限された期間のこと。
※2 打切補償とは、業務災害を負った労働者に対して、補償の支給を打ち切ること。しかし、打切補償を行う場合は、事業主が平均賃金の1200日分の打切補償を支払わなければなりません。

②特別加入者は、通勤災害が適用されない場合がある。

特別加入者(※3)のうち、通勤災害にあっても労災保険が適用されない場合があります。その理由は、自宅と仕事場との往復の実態が明確でないからです。

  • 個人タクシー業者
  • 個人貨物運送業者
  • 個人水産業者
  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者 など

※3 特別加入者とは、労働者以外で業務の実態や災害の発生状況をみて、労働者に準じて保護すべきとみなし、労災に加入した人のこと。

通勤災害の場合は労災が使える

労災とは、労働者を保護するために国が定めた保険制度です。労災の加入手続きは、事業主が行い、保険料も事業主が負担します。

労災は、労働者が業務を行うにあたって受けた被害の補償が受けられます。
「通勤=業務を行うために職場に向かうこと」なので通勤災害も労災の対象になります。

労災の場合、療養補償給付・休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付・葬祭料給付・介護補償給付の補償が受けられます。

▶︎参考:労災の補償内容について詳しく知りたい方はこちら

交通事故の保険で労災を使うべき場面とは?

交通事故の場合、4つの保険が使えることがわかりました。では、労災を使った方がいい場合は、どのようなときなのでしょうか。

  • ①自分の過失割合が大きいとき
  • ②車を所有している人の許可なく、その車を運転して事故を起こしたとき
  • ③相手が無保険だった、対人補償保険が不十分だったとき

自分の状況が上記に当てはまる場合は、保険を使うのがよいでしょう。

労災以外で交通事故の場合に使える保険

交通事故では、労災以外にも使える保険が3つあります。

①自賠責保険

自賠責保険は、運転する人が必ず加入しなければならない保険です。交通事故の被害者を救済することを目的に、最低限度の保障を行います。

自賠責保険の保障は

  • 傷害による損害(治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料など)
  • 後遺障害による損害(逸失利益、慰謝料など)
  • 死亡による損害(葬儀費、逸失利益、慰謝料)

②任意保険

任意保険は、加入の義務がありませんが、運転する人の多くが加入している保険です。自賠責保険でカバーできない部分を補償することができます。

任意保険の補償

  • 対人賠償保険
  • 対物賠償保険
  • 人身傷害補償保険
  • 搭乗者傷害保険
  • 無保険車傷害保険
  • 自損事故保険
  • 車両保険       など

③健康保険

健康保険は、病気や怪我をしたとき、その費用の一部を国や会社などが負担する保険です。健康保険を使い、交通事故による怪我の治療をすると治療費が3割の負担で済むため、自己負担額が少なくて済みます。

▶︎参考:交通事故で健康保険を使ったときの給付金や手続きについてはこちら

通勤災害には、労災も使えます。

交通事故といえば、自賠責保険や任意保険のイメージがありますが、労災も使える場合があります。それは、通勤中や業務中の交通事故のときです。

通勤中や業務中の交通事故の場合は、労災も選択肢の1つとして頭に入れておきましょう。