追突事故の後日に痛み…今からできる対処方法は?
追突事故にあったが、軽い事故で無傷だった。そう思っていたのに、あとから首のあたりに痛みが出てきた…。交通事故による怪我では、このようなことが少なくありません。今回は、事故から遅れて痛みが出てきた場合に、被害者ができる対応についてご紹介します。
事故の後から出やすい痛みとは
予期せぬ交通事故にあうと、突然の衝撃や状況で脳が興奮状態になったり、精神的に緊張状態が続くことがあります。そのため、怪我をしていてもすぐには痛みを感じず、数時間から数日遅れて痛みが現れるケースがみられます。
追突事故に多いむちうち
追突事故による怪我で、事故の後日に現れることが多い症状に「むちうち」があります。事故によって強い衝撃を受け、主に首部分がむちのようにしなることから、むちうちと呼ばれています。むちうちは、むちうち症やむちうち損傷ともいいますが、あくまでも俗称です。正式には、「頚部捻挫(けいぶねんざ)」や「頚部挫傷(けいぶざしょう)」と診断されます。
また、むちうちは主に4つの種類にわけられます。
①頚椎捻挫(けいついねんざ)型
頚椎捻挫とは、首が捻挫していることをいい、頚椎(首部分の骨)を支えているじん帯や筋肉が損傷しています。首や肩の痛み、首が動かしづらい、頭痛などの症状があります。頚椎捻挫型は、むちうちの症状の中で7割を占めるといわれています。
②神経根損傷(しんけいこんそんしょう)型
神経根損傷型とは、脊髄(せきずい)から出ている神経の根元が損傷しています。首の痛みや肩から腕にかけての痛み、しびれ、脱力、知覚障害などの症状があります。
③脊髄症状(せきずいしょうじょう)型
脊髄症状型とは、頚椎の中にある脊髄や、そこからのびる神経が損傷しています。腕や足に、痛みやしびれなどの症状があります。
④バレー・ルー症候群型
バレー・ルー症候群型とは、自律神経が損傷しています。また、むちうち動作が原因となり現れたと考えられる自律神経失調症状のことです。頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、難聴などの症状があります。
また、現れる症状が似ていても、むちうちではない場合もあります。
脳脊髄(のうせきずい)液減少症
脳髄液減少症とは、脳髄液腔から脳髄液が漏れることで、様々な症状が引き起こされます。慢性的な頭痛や首の痛み、めまい、耳鳴り、聴覚障害、吐き気や視力低下、全身の倦怠感などの症状があります。
痛みが出てから病院へ行ってもよい?
追突事故から数日経って痛みを感じた場合、どのような対応が考えられるでしょうか。
病院へ行き診断書を取る
まずは、病院を受診し診断書を取得しましょう。交通事故における診断書は、怪我と交通事故の因果関係を証明します。事故後の様々な手続きで必要になる重要な書類です。
また、怪我がどのような症状であるかは、医師のみが診断できます。さらに医療機関では、必要に応じてレントゲンやMRI・CTといった詳細な検査も行えます。自己判断は避け、まずは医師の診察を受けましょう。
病院は何科に行けばいい?
追突事故による怪我の場合、何科を受診すればいいのでしょうか。
①整形外科
交通事故後の症状で、むちうちや骨折が疑われる場合は、整形外科に行きましょう。整形外科は、筋肉や骨などについて専門的に診療します。レントゲンやMRI・CTといった詳細な検査を受けることも可能です。
②神経内科・脳神経外科
頭を強く打ち外傷が疑われる場合や、整形外科では原因がわからなかった場合には、「神経内科」への受診が考えられます。神経内科では、脳に損傷がみられるかどうかを、MRIやCTによる検査で判断します。また、脳の損傷が大きいと診断されたときに、脳神経外科や脳外科を紹介される場合があります。
また、交通事故による影響は、肉体的なものだけではありません。記憶障害や睡眠障害、気分の落ち込みなどが起こる場合もあります。神経内科で検査を受け、脳に損傷がない場合、心因性の症状の可能性が疑われます。心因性の症状が疑われる場合には、心療内科や精神科を受診することになります。
人身事故への切り替えをする
痛みといった自覚症状がなかったために、すでに物損事故として処理している場合があります。しかし、後日でも人身事故へと切り替えることができます。
人身事故扱いへと切り替えるには、まず医師による診断書を取得します。そして、事故の処理を行った警察署へ、取得した診断書を提出します。警察が診断書を受理することで、切り替えが行われます。
物損事故のままだとデメリットはあるか
自賠責保険は人身事故被害者の損害を最低限補償するための保険です。
そのため、物損事故扱いの場合、自賠責保険を使用することができません。適切な治療費や慰謝料などを受け取るためにも、交通事故により負傷している以上は、人身事故扱いにすることが望ましいです。
人身事故への切り替えに期限はある?
法律上は、人身事故扱いへの切り替えに期限はありません。しかし、事故の発生から時間が経過しすぎていると、事故と関係のない怪我なのではないかと疑われ、切り替えが受理されない場合があります。数日から1週間以内には切り替えることが望ましいです。
追突事故で受け取れるお金の種類とは
追突事故の被害にあった場合、どういったお金を受け取ることができるのでしょうか。
損害賠償とは
交通事故によって被害者が受けた損害は、加害者が埋め合わせなくてはなりません。交通事故の加害者が、被害者の損害を金銭に換えて補うことを損害賠償といいます。
損害賠償の対象となる損害には、治療費といった実費だけでなく、交通事故による精神的苦痛も含まれます。損害賠償に含まれる損害を以下にまとめました。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
車の修理費、治療費や入通院にかかった交通費など、交通事故によって実際にかかった費用の損害です。
交通事故にあわなければ、得られていた収入が失われたという損害です。休業損害と逸失利益があります。
交通事故による精神的苦痛についての損害です。入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。
損害賠償額の相場は3つの基準で変わる
交通事故の被害者が受け取れる損害賠償額には、あらかじめ定められた相場が存在します。
また、損害賠償額の相場には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの基準があります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士(裁判)基準
強制加入保険である自賠責保険による基準です。人身事故被害者への最低限の補償を目的としているため、相場が他の基準よりも低くなっています。
任意保険による基準です。任意保険会社が独自に定めているため、基本的に非公開となっています。
過去の裁判例を元にした基準です。3つの基準のうち、最も相場が高くなっています。
交通事故における損害賠償額は、どの基準を元に計算するかによって、相場が変動します。
示談金は事故後いつ受け取れる?
そもそも示談とは、主に話し合いや損害賠償を行うことで、争い事を当事者同士で解決する手段の1つです。交通事故における示談は、一般的に被害者が加害者の加入する保険会社の担当者と、損害賠償についての交渉を行います。示談によって受け取れる示談金とは、損害賠償額を指します。
交通事故の示談自体は、いつでも行うことができます。しかし、多くの場合は、交通事故による怪我の治療が終了したり、症状固定となったタイミングで開始されます。そして、示談が完了した後に、示談金が支払われることになります。
自費で立て替えられない場合
事故による怪我で通院する場合、自費で立て替えることができないことも考えられます。
加害者が任意保険会社に加入している場合、自賠責保険の限度額(120万)を超える損害賠償額は、任意保険会社が支払います。そして、任意保険会社が、自賠責保険分と自賠責保険を超える保険金を、一括して支払う制度を「一括払制度」といいます。この一括払制度使えば、病院の窓口で被害者が立て替える必要はありません。
また、任意保険に加入しておらず一括払制度が利用できない場合には、仮渡金制度があります。仮渡金制度とは、自賠責保険会社に、前もって治療費を請求できる制度のことです。
事故の後から痛みが出た場合は病院へ
事故の後日に現れる痛みについてご紹介しました。まずは病院で医師の診察を受け、診断書を取得しましょう。医師による診断書を、警察に提出することで、物損事故から人身事故へと切り替えることができます。適切な損害賠償を受けるためにも、怪我をしている場合は、人身事故扱いにしておくことが望ましいです。