交通事故後にあらわれる耳鳴りの症状とは?受診先についても解説!
交通事故の被害にあうと、体に強い衝撃を受けるため、怪我を負うことがあります。交通事故による怪我の症状は様々で、耳鳴りの症状もその一つです。
そこで今回は、交通事故後にあらわれる耳鳴りの症状について解説していきます。
交通事故後にあらわれた耳鳴りの症状とは?
交通事故で車や壁などに衝突した際の衝撃力は、車の走行速度が時速60㎞場合で、14mの高さから落下いたときの衝撃とほぼ同じだといわれています。14mの高さは、5階建てのビルより少し低いぐらいの高さにあたります。そのため、体に大きなダメージを受け、以下のような怪我を負い、耳鳴りの症状があらわれることもあります。
- むちうち
- 内耳振盪症(ないじしんとうしょう)
- 外リンパ瘻(がいりんぱろう)
- 側頭骨骨折
むちうち
むちうちとは、交通事故の衝撃で首が鞭のようにしなり、首周辺の筋肉や靭帯などの軟部組織が損傷することで症状があらわれます。むちうちの症状は、多種多様であるため、以下のように4つの症状型に分けることができます。
- 頚椎捻挫型
- バレー・ルー症状型
- 神経根症状型
- 脊髄症状型
上記に挙げた4つの症状型のうち、耳鳴りの症状があらわれるのは、バレー・ルー症状型です。 バレー・ルー症状型とは、首にある交感神経に損傷を受けている状態のことです。交感神経が損傷を受けると、身体機能の調節や制御ができなくなり、耳鳴りや頭痛、倦怠感、吐き気、めまいなどの症状があらわれます。
内耳振盪症(ないじしんとうしょう)
内耳は、耳の最奥にある部位のことで、音の振動を電気信号に変換し、神経や脳に伝える役割を担っています。この内耳はリンパ液で満たされており、交通事故の衝突時に強い振動が加わるとリンパ液も振動してしまい、耳鳴りの症状があらわれます。
外リンパ瘻(がいりんぱろう)
外リンパ瘻は、交通事故の衝撃で内耳の一部に穴が開き、内耳を満たしているリンパ液が中耳に漏れ出した状態です。そのため、耳鳴りや難聴、吐き気、めまいなどの症状があらわれます。
側頭骨骨折
側頭骨骨折は、交通事故の衝撃で耳周辺にある側頭骨を骨折してしまった状態です。そのため、耳の各器官も損傷を受け、耳鳴りやめまい、難聴などの症状があらわれます。
耳鳴りがあらわれたら何科へ行くべき?
交通事故後にあらわれる耳鳴りの症状は、むちうち・内耳振盪症・外リンパ瘻・側頭骨骨折といった4つの疾患の可能性があります。そのため、それぞれで行うべき治療は異なるため、症状に合った通院先へ行く必要があります。
むちうち
むちうちの場合は、整形外科や整骨院、鍼灸院の3つで治療・施術を受けることをおすすめします。
- 整形外科
痛みや炎症を抑えられる痛み止めや湿布などが処方されます。また、MRIやレントゲンなどの検査を受けることもでき、体の状態や骨の異常を確認することが可能です。 - 整骨院
マッサージや電気療法、牽引などの施術が受けられ、痛みの緩和や自己治癒力を高めることができます。 - 鍼灸院
はりと灸を使って体に刺激を与える施術が行われます。体に刺激を与えることで血行が促され、痛みの緩和や筋肉の緊張を和らげることができます。
内耳振盪症
内耳振盪症の場合は、耳鼻科へ行くことをおすすめします。主な治療方法は、保存療法となっており、安静を保ちながら、末梢循環改善剤・ビタミン剤で内耳の機能回復を待ちます。
外リンパ瘻
外リンパ瘻の場合は、耳鼻科で治療を受けることをおすすめします。治療方法は、「手術」と「保存療法」の2つです。
手術の場合、空いた穴をふさぐ内耳窓閉鎖術という手術を行うことになります。
保存療法の場合、頭部を挙上してベッドの上で安静を保ち、空いた穴が自然に塞がるよう促します。このとき、くしゃみやいきみをしないように注意しなければなりません。
側頭骨骨折
側頭骨骨折の場合、外科や耳鼻咽喉科へ行くのがよいでしょう。そして、CT検査やX線検査で損傷箇所を判別することが大切です。その後、「手術」または「保存療法」で治療を行うことになります。
保存療法の場合、副腎皮質ステロイド剤や止血剤、アデノシン三リン酸、血管拡張、ビタミン剤などを使用することになります。
耳鳴りが後遺症になってしまったら
交通事故後にあらわれた耳鳴りの症状は、後遺症が残ってしまうこともあります。このような場合は、後遺障害等級認定を申請することが大切です。
後遺障害等級認定を申請する
後遺障害等級認定とは、1~14級まである等級のうち、交通事故の後遺症がどの等級に当てはまるかを認定するものです。また、等級の認定は書面のみで判断されます。
後遺障害等級認定を申請するメリットは、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取れることです。ただし、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取るには、後遺障害等級認定で等級が認定されなければなりません。
後遺障害等級認定において耳鳴りの後遺症は、「12級」または「14級」の等級に該当する可能性が高いです。
- 12級:耳鳴の検査で難聴に伴い、著しい耳鳴が常にあると証明できるもの
- 14級:難聴に伴って、常に耳鳴りの症状があることを合理的に説明できるもの
上記からわかるように後遺障害等級認定では、後遺症があることを説明・証明する必要があります。
後遺障害等級認定では説明・証明が大事!
耳鳴りの後遺症があることを説明・証明することで、後遺障害等級認定で等級が認定されます。しかし、後遺障害等級認定は書面主義で行われるため、書類のみで後遺症の説明・証明をしなければなりません。
ただし、後遺障害の12級と14級では認定基準に違いがあるため、説明・証明の方法も異なります。
後遺障害12級の場合
後遺障害12級は、「耳鳴の検査で難聴に伴い、著しい耳鳴が常にあると証明できるもの」という認定基準です。12級は14級の認定基準と異なり、耳鳴りの後遺症の「証明」が必要になります。そのため、12級が認定されるには、以下のような検査を受けて医学的に証明しなればなりません。
- ピッチ・マッチ検査
低周波数から高周波数の音を聞き、自分の耳鳴りの音に似ている周波数を調べる検査 - ラウドネス・バランス検査
装置から出る音を聞き、自分の耳鳴りがどれくらいの音の大きさかを調べる検査
後遺障害14級の場合
後遺障害14級は、「難聴に伴って、常に耳鳴りの症状があることを合理的に説明できるもの」という認定基準です。そのため、後遺症となってしまった耳鳴りの症状を「合理的に説明」しなければなりません。
「合理的に説明する」というのは、自覚症状と事故状況などを照らし合わせて耳鳴りが生じると説明ができればよいです。したがって、後遺障害14級は、後遺障害12級よりも認定基準が厳しいものではないということがわかります。
交通事故後の耳鳴りについてのまとめ
いかがでしたか。交通事故後にあらわれた耳鳴りの症状は、むちうち・内耳振盪症・外リンパ瘻・側頭骨骨折の可能性があります。ただし、4つの疾患において損傷している部位が異なるため、自分の症状に合わせて整形外科や整骨院、耳鼻科などで治療・施術を受けることが大切です。
また、交通事故後の耳鳴りは、後遺症が残る可能性もあります。後遺症が残ってしまった場合は、後遺障害等級認定を申請するようにしましょう。