むちうち症は治らない?治療費打ち切りになる前に知っておくべきこと8つ

2019年02月01日

むちうちの治療費は半年で打ち切り!?

私は今日も、ネットサーフィンをやめられない。
お昼休みに検索結果を親指でスクロールして、気になったらクリックをして、またスクロールをする……の繰り返し。

半年前に交通事故にあい頚椎捻挫と診断され、定期的に治療を受けてきた。
過失ゼロで、完全な被害者だ。

痛みがひどいわけではないけれど、事故にあう前より肩こりが酷くなった気がする。今日みたいに天気の悪い日は、首から頭にかけてズキズキと痛む。例の鈍痛。これでは仕事が全然捗らない。

この記事によると……「むちうちの治療費は半年で打ち切り、だって!?」
ちょっと待って、まだ治ってない。
確かに、むちうちの後遺症は認められにくいって記事も最近読んだことがある。
私としては、もう少し様子をみて治療を続けて、この倦怠感から解放されたい。

もしかして本当に、むちうち症は治らないの?

ーー
交通事故は、あったことがなければ不安な気持ち・通院の煩わしさ・手続きの面倒さなど、わからないことがたくさんあります。

今回は、交通事故によってむちうち症になってしまった場合の疑問を、8つの項目でまとめました。
もしも今 不安を抱えているのなら、一人で悩まずご一読ください。

▶︎参考:警察を呼ぶ理由は?物損から人身に切り替えるには

1.むちうちは治らないの?

交通事故にあって怪我をした場合、7〜8割の確率で頚椎捻挫(むちうち症)と診断されるそうです(編集部調べ)。
そのむちうち症、レントゲンなどに映りにくいことから、痛みや吐き気などの症状を訴えても治療の施しようがないと「経過観察」で治療期間が終了してしまうこともしばしば。

事故の状況や怪我の度合いによりますが、治らない訳ではなく、「治りにくい」と言われている怪我です。
一般的に治りにくいといわれているので、交通事故によってむちうち症になってしまった場合、「治るのだろうか…」と不安になってしまいますよね。

むちうちになる原因

むちうちは、交通事故やスポーツなどの衝撃で首に不自然な力が加わり、筋肉や靭帯が損傷されることで症状が引き起こります。首に力が加わる際、鞭(むち)のようにしなることから「むちうち」と呼ばれています。正式名称は「頚椎捻挫(けいついねんざ)」や「頚部挫傷(けいぶざしょう)」といいます。

むちうちの主な症状とは?

代表的なもので疼痛(とうつう)と言われる首や肩の痛み、腰痛(ぎっくり腰)、頭痛などがあげられます。
中にはあなたのように、気だるさや脱力感、吐き気・めまい、手や足のしびれを訴える人も。
むちうちのさまざまな症状は、以下4つに分けられます。

  • 1.頚椎捻挫型(けいついねんざがた)
  • 2.バレー・ルー症状型
  • 3.神経根症状型
  • 4.脊髄症状型(せきずいしょうじょうがた)

上記以外にも、脳髄液が漏れる「脳髄液減少症」と言われる症状もあります。痛みが出ないからといって、物損事故のままにしていると、いざ通院する時に治療費を保険会社に出してもらえないこともあります。自覚症状がなくても、早めに病院へ行き、定期的に受診することをおすすめします。

むちうちが治りにくいと言われている理由は?

むちうちは、なぜ治りにくいと言われているのでしょうか。該当する理由を考えてみました。

  • 交通事故直後は気が動転していて自覚症状が現れない
  • 世間的に“治りにくい”というイメージ

“気が動転していて自覚症状がない”なんて嘘でしょう、と思う方もいるかもしれませんが、これは本当です。
交通事故直後から数日は、警察や保険会社への連絡、通院のことなど諸々大変です。
自分の怪我のことより保険などの手続きに追われて、精神的に興奮状態にあります。
特に、むちうちなどは頚椎の捻挫で人によって現れる症状も違いますから、吐き気や頭痛、肩こりなど、日頃から考えられる体調不良に関しては気がつかない人も多いのです。

また、骨折や打撲のような外的傷害があまり見受けられないために、どれだけ痛いつらいと症状を訴えても、そのつらさが当人しか分からないということがあります。よって、痛み止めや湿布の処方でしばらく様子をみる…という場合があります。
どこが痛みの原因なのかが証明できないために、世間的に“治りにくい”というイメージを与えているようです。

なぜレントゲンやCTには映りにくいの?

撮影時間も短く、簡単に検査ができるため、まずはX線での撮影をするという整形外科(病院)も多いそうです。レントゲンやCTは、骨の損傷を見るためのものだといわれており、骨折や骨のヒビを確認することに長けているようです。

むちうちは頚椎の捻挫です。捻挫の症状をX線で確認するのは、なかなか難しいといえます。
※余談ですが、筆者がむちうちに関するあらゆる書籍を読んでわかったレントゲンとCTの違いは、レントゲンは表面、CTは立体で骨の損傷が映るということでした。

MRIは撮ったほうがいいの?

結論から述べますと、レントゲンやCT、MRIも撮っておいた方がいいです。

なぜかというと、交通事故の示談交渉(※)において、事故との因果関係(むちうちになったのは交通事故が原因だということ)を説明することは必須で、説明するための証拠が絶対になるからです。
(※)示談交渉とは…示談は加害者と被害者が争いをやめ和解すること。双方が納得した示談をするために、互いに主張し交渉をすることを示談交渉という。

2.むちうちの通院先は3つ

むちうち(頚椎捻挫)の通院先は、保険の保障適用範囲内では整形外科(外科)、整骨院(接骨院)、鍼灸院の3つです。

整形外科と整骨院は何が違う?

いまいち違いがわからないという方は多いと思いますが、以下3つは治療・施術の内容、持っている資格が全然違います。簡単にまとめましたので、参考にしてください。

    整形外科
    医師免許。湿布や痛み止めの処方、レントゲンやMRIなどの検査機器の利用、手術など。
    物損事故から人身事故に切り替えるために必要な「診断書」も、整形外科(病院)でないと発行できない。
    整骨院
    柔道整復師(国家資格)。レントゲンなどに映らない頚椎の損傷などを手で触り見つけ、骨のズレを正したり、固定したりする。
    鍼灸院
    はり師ときゅう師(共に国家資格)。頭痛や自律神経の乱れなど、はりを打ったりお灸で温めたりして、血の巡りをよくすることが目的とされる。

むちうちを治すための通院方法

まずは整形外科にいきましょう。むちうち(頚椎捻挫や頚部挫傷など)と診断された場合は、診断書を発行してもらいましょう。
もし物損事故のままで処理しているのなら、診断書を持って警察署に行って、人身事故へ切り替えましょう。

整形外科へ定期的に通院しているにも関わらず、「症状がよくなっている気がしない…」と思う方は、整骨院や鍼灸院へ通院します。
併用して通院することもできるので、定期的に整形外科にいき診断を受けながら、整骨院や鍼灸院へ通院し、施術を受けるようにしましょう。
保険の保障も提要範囲内なので、保険会社に「今の病院だけだと治る気がしない」と正直にお話しすれば、基本的には通院できますよ。

3.慰謝料はどのくらい?保険の仕組みとは

交通事故の被害にあってしまった時、怪我をしたのであれば、その治療費や通院交通費を加害者に請求することができます(正確には、加害者が加入している損害保険会社)。

この「損害保険」の仕組みが実はとても複雑で、そして手続きが煩雑で……被害者のみなさまは「もういいや」って思ってしまうみたいなんですね。

それから、治療にかかったお金や、通院するための交通費など全てをひとくくりに「慰謝料」と思っている人もいるみたいですが、そうではありません。
慰謝料の計算の前に、まずは保険について知りましょう。

自動車保険の仕組み

「保険」って、何でしょう。生命保険・医療保険、そして自動車保険。
例えば、大きな病気になってしまい、手術が必要となった時。交通事故によって大怪我をしてしまい、入院が必要になった時。多額のお金を一括で支払うことは、そう容易いことではありません。

そんな時、毎月保険会社に定額を支払えば、何かお金が必要になった時に一括で支払ってもらうことができます。

自動車保険も、交通事故を起こして人を怪我させてしまったり、ものを壊してしまったり、損害を保障する際のお金が必要になった時に私たちを助けてくれるのです。

自動車保険の種類は大きく分けて2つ

①自賠責保険と、②任意保険です。

①自賠責保険は、国(国土交通省)が運営している、法律上入らなければならない保険のことです。人を死傷させてしまった時など、“最低限の保障”がされます。ものや車を壊してしまった場合の自損事故や物損事故には適用されません。

②任意保険は、保険の内容が充実しており、運転者の任意で加入できる保険のことです。例えば、損保ジャパンや東京海上日動など、保険会社が各々運転手に見合った保険内容を提案してくれます。
この任意保険の中には、以下のように人に対して、ものに対して、相手の車に対して、自分の車が何かあった時と、対象の範囲が自賠責保険よりも多いのが特徴です。
任意保険の基本的な保障は以下4つです。

  • 対人保険
  • 対物賠償責任保険
  • 人身傷害保険
  • 車両保険

自賠責保険は“最低限”しか保障されません。怪我の場合の最高限度額は120万円まで。死亡事故なら3000万円までです。
自賠責保険ではまかなえない損害は、任意保険で保障します。万が一加害者が任意保険に加入していないのであれば、加害者に直接請求します。

この、加害者に与えられた損害を、加害者の自賠責や任意保険会社(加入していなければ加害者本人)にとりつくろってもらうことを「損害賠償の請求」といいます。

4.損害賠償ってなに?

さて、保険の仕組みがわかったところでお待ちかね「慰謝料」について触れていきます。

交通事故が発生したら、必ず加害者(事故を起こした人)と被害者(事故に巻き込まれた人)がいます。
「この事故は、どちらにどれくらいの責任があるのか?(どっちが加害者か?)」を決めることを「過失割合」といいます。

被害者だからといって、100%責任がない場合は、前方車が停車している場合の追突事故のみです。

加害者は被害者に損害の賠償を行う

当たり前の話ですが、加害者によって起きた事故の損害は、加害者が負担するのが義務です。被害者の損害も(怪我をした場合や車の修理)、加害者に賠償(損害を直してもらったり、償ってもらうこと)してもらいます。

その、損害賠償の種類は大きく分けて以下3つです。

    ①積極損害…
    医療費(治療費)や入通院に必要な交通費など、事故の被害にあわなければ出るはずのなかったお金のこと。

    ②消極損害…
    会社を休んだり、万が一後遺症になってしまった時など、事故の被害にあわなければもらえたはずのお金のこと。(※休業損害、後遺障害の逸失利益など)

    ③慰謝料(精神的損害)…
    交通事故にあい、入通院しなければならない煩わしさや、事故に巻き込まれてしまったショックなど、精神的な苦痛を現金で換算したお金のこと。怪我で入通院する場合は傷害慰謝料、後遺症になってしまった場合は後遺障害慰謝料となります。

被害者である方のほとんどが、「慰謝料=治療費や通院交通費」だと思っているようですが、加害者側の保険会社からもらえると思っている治療費は、慰謝料とは別のものだったんですね。慰謝料は、一体どのように算出されるのでしょうか。

5.慰謝料はどうやって算出されるの?

慰謝料には傷害慰謝料と、後遺障害慰謝料の2種類があります。
傷害慰謝料は怪我に対するもの、後遺障害慰謝料は後遺障害に対するものです。
算出する基準は以下3つです。

    ①自賠責保険基準
    ②任意保険基準
    ③弁護士基準

①自賠責保険の慰謝料の基準は決められています。1日あたり、4200円です。
ただし、損害賠償の最高限度額が120万円までで、慰謝料の他に治療費や通院交通費、診断書取得のための文書費などが含まれます。
よって、通院日数分の慰謝料がもらえる訳ではありません。

②任意保険の基準は、各保険会社が設けている基準や計算方法によって変わりますので、具体的な数字をお伝えできません。自賠責保険の損害賠償で保障できない部分は、この任意保険がカバーすることになっています。

賠償額が合計150万だとした場合、そこから120万を差し引いた分の30万を任意保険から支払われることになります。もし加害者の方が任意保険に加入していなければ、加害者に直接請求します。

③弁護士基準は、3つの基準の中でも金額が一番高くなります。弁護士の依頼金は原則自己負担です。示談交渉を代理でやってくれることもあります。
まずはご自身が加入している保険で、どんな特約に入っているかを確認してみてください。

自賠責保険の慰謝料計算方法

それぞれの基準がわかったところで、自賠責保険の慰謝料計算方法をお伝えします。

自賠責保険は、以下2つのうち、日数が少ない方と4200円をかけて計算されます。

治療期間(入院期間+通院期間)
実通院日数(入院期間+実通院日数)×2

例えば、

    交通事故、30日入院をし、90日通院(実通院日数は80日)をした場合
    ① 治療期間 30+90=110
    ② 実通院日数 (30+80)×2=220

この場合は②の実通院日数(220日)に4200円をかけて計算されます。
よって、この場合の慰謝料は『220日×4200円=924,000円』となります。

▶︎参考:自賠責の慰謝料はどのくらい?計算方法を詳しく知りたい方はこちら

6.交通事故発生から示談成立までの流れ

さて、保険や慰謝料の仕組みがわかったところで、示談交渉の話をしていきましょう。

交通事故が発生し、被害者が加害者へ損害賠償を請求します。被害者・加害者(またその保険会社)が双方、金銭的に納得し、和解することを「示談」といいます。

事故発生から示談成立のフロー

示談が成立してからでないと、加害者に請求した損害賠償(治療費・交通費や慰謝料、休業損害)を受け取ることはできません。

    ①交通事故発生
    ②物損事故から人身事故に切り替え(診断書を取得)
    ③保険会社に連絡
    ④通院を開始する
    ⑤完治(治癒)/後遺障害認定
    ⑥示談交渉開始(損害賠償請求)
    ⑦示談成立
    ⑧示談金の支払い

7.保険会社は治療費をいつまで支払う?

加害者側の保険会社は、被害者であるあなたの治療費や交通費(積極損害)、日数分の慰謝料、会社を休んでいるのなら消極損害(休業補償)をいつまで支払ってくれるものでしょうか。

①完治(治癒)するまで。
症状がよくなる、治るまで。

②症状固定(※1)するまで。
治らないと判断されるまで。
(※1)症状固定とは…医師が「これ以上治療を続けても症状は改善しない」と判断すること。怪我の症状が障害として残ることをさします。

予期せぬ治療費の打ち切り

完治するまでといっても、「治る可能性がある!」として延々と治療費を払ってくれるわけではありません。交通事故の怪我の治療期間の目安は、「打撲であれば1ヶ月、むちうち症であれば3ヶ月、骨折であれば6ヶ月(半年)」とおおよそ決められています。
この基準と事故の状況を加味して、「このくらい通院するであろう」と支払い期限の予測を立てていますから、この期限が近づいてくると、治療費の打ち切りを打診してきます。

症状固定になったら?

医師から症状固定と判断された場合、保険会社から治療費の支払いは打ち切りとなります。よくならない症状に対して支払い続けることは困難だからです。怪我の障害が何かしら残ってしまうことを後遺症といいます。

症状固定になった場合、「後遺障害認定」を受けて、後遺症慰謝料をもらうことができます。

8.後遺症と後遺障害

後遺症になってしまった場合、治療費が打ち切りになる代わりに「後遺障害慰謝料」を請求することができます。後遺障害慰謝料とは、これからも後遺症と付き合って生きていかなければならない精神的苦痛を現金で換算したものです。

後遺障害慰謝料申請の手続きとは

後遺障害慰謝料を請求する流れは以下の通りです。

    ①医師に「後遺障害診断書」を書いてもらう
    ②後遺障害認定等級(※2)を受ける
    ③後遺障害認定
    ④後遺障害慰謝料受け取り

(※2)後遺障害認定等級とは、自賠責保険調査事務所が「慰謝料が必要である後遺障害なのか」を判断すること。後遺障害の等級は1〜14級まであり、その症状によって等級を決める。1級が一番症状が重い後遺障害、交通事故によるむちうち症であれば、12〜14級が一般的とされる。

しかし、何かしらの障害が後遺症として体に残ってしまっても、全ての症状を「後遺障害」として認められる訳ではありません。

後遺障害として認められるポイントは?

前述しましたが、医師が「もう症状はよくならない。症状固定だね」と後遺症であることを告げてきても、「後遺障害として認め、後遺障害慰謝料を支払う」のは医師ではなく自賠責保険調査事務所(国営)です。

具体的な認定のポイントは以下の5つです。

    ①交通事故と怪我との因果関係があること
    ②交通事故による怪我が、今後生きていく上で完治する見込みがないこと
    ③交通事故の怪我により、労働力が低下してしまうこと
    ④後遺症が医学的に証明または、説明されていること
    ⑤怪我の症状が自賠責保険の等級認定に値すること

後遺症になったら治る可能性はない?

これはとても難しい問題ですが、治らないとも言い切れません。
後遺障害として認められて、後遺障害認定慰謝料をもらえたら、保険が適用されない治療や施術を受けることができるからです。

むちうち症が治らないと諦めないで

いかがでしたか。
保険の仕組みや示談の流れ、慰謝料について述べてきました。
「むちうちは治らないんだ……」と諦めずに、まずは後遺症にならないためにしっかりと通院をして、納得のいく示談交渉をしましょう。

もし、一人で悩んでいるのであれば、ご自身の保険会社に連絡をしてみましょう。
治るかどうかを心配しているのなら、「交通事故病院」に連絡をください。症状にあった通院先を提案します。