交通事故の怪我が後遺症に…後遺障害慰謝料を獲得する方法!

2019年02月01日

交通事故が原因の怪我で、最も多いといわれているむちうち。
むちうちの治療期間は、症状の程度によって異なり、場合によっては後遺障害になってしまうことがあります。

後遺障害には1級~14級の等級がついており、むちうちが後遺障害になった場合は、14級に認定されることが多いといわれています。

今回は、

  • 後遺症になった後の慰謝料はどうなる?
  • 後遺障害等級認定の申請方法
  • 後遺障害14級の後遺障害慰謝料
  • 後遺障害14級の症状とは?

などについて、詳しく解説していきます。

交通事故によるむちうちが後遺症に…

交通事故による怪我で、むちうちは最も多い怪我といわれています。むちうちとは、交通事故やスポーツによる衝撃で首に不自然な力が加わり、筋肉や靭帯が損傷することで起こる怪我の総称です。

むちうちにはいくつかの種類があり、それぞれであらわれる症状が異なります。
▶︎参考:むちうちは5種類!それぞれの症状について、詳しく知りたい方はこちら。

そもそも後遺症とは?

むちうちになってしまったら、病院や整骨院、鍼灸院で治療・施術を受ける必要があります。しかし、治療・施術を受けたとしても、むちうちの症状が必ず良くなるとは限りません。
▶︎参考:整形外科、整骨院、鍼灸院でのむちうち治療法について、詳しく知りたい方はこちら!

むちうちの治療を一定期間続けても症状が緩和されない場合、医師に「症状固定」と判断されてしまうことがあります。症状固定とは、交通事故による怪我の治療をこれ以上続けても、症状が良くなる見込みがないことをいいます。

症状固定となった時点で、その怪我は「後遺症」となります。
後遺症は、今後生きていく上で、一生付き合っていかなければいけないものです。

むちうちが後遺症になるまで

むちうちの症状が軽く、治療が順調に進んだ場合、一般的には3ヶ月程度で症状が良くなるといわれています。しかし、症状が重い場合は、6ヶ月~1年以上の治療を続けなければいけない場合もあります。

このように、むちうちの治療にかかる期間は、症状の程度や体の丈夫さによって異なります。したがって、「これくらいの期間、治療を続ければ治る」と一概に言うことはできません。

それでは、むちうちはどれくらいの治療期間で、症状固定と判断されるのでしょうか。

一般的に、むちうちが症状固定になるタイミングは、治療期間が6ヶ月以上になる頃だといわれています。

後遺症になった後の慰謝料はどうなる?

後遺症になると、治療費や慰謝料の支払いは打ち切られてしまいます。後遺症になった後、リハビリを受けるために通院することはできますが、治療にかかる費用はすべて被害者が負担しなければいけません。

後遺障害と認められる5つの条件

後遺症になった後も慰謝料の支払いを受けるには、まず後遺障害の認定を受けなければいけません。

後遺症が後遺障害と認められるには、5つの条件を満たす必要があります。

  • 1.交通事故と怪我との因果関係があること
  • 2.交通事故による怪我が、今後生きていく上で完治する見込みがないこと
  • 3.交通事故の怪我による、労働能力が低下してしまうこと
  • 4.後遺症が医学的に証明または、説明されていること
  • 5.怪我の症状が自賠責保険の等級認定に値すること

以上の条件を満たすと、後遺障害等級認定の申請ができるようになります。

後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級とは、後遺障害に1級から14級までの等級がついたものです。1級が最も重い症状となり、14級が最も軽い症状となります。

後遺障害等級が認定されると、等級に応じて後遺障害慰謝料の支払いを受けることができます。

後遺障害等級認定の申請方法は、2つ。

  • 加害者請求
  • 被害者請求

それぞれの申請方法について、詳しく見ていきましょう。

加害者請求

加害者請求とは、後遺障害等級認定の申請手続きを、すべて加害者側の任意保険会社に任せる方法です。

加害者請求を行うと、被害者は煩雑な手続きの手間を省くことができます。しかし、どのような内容で手続きが行われているのかを、被害者は知ることができません。

被害者請求

被害者請求とは、被害者自身が直接、加害者側の自賠責保険会社に対して、後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。被害者は、手続きに必要な書類をすべて自分で集め、加害者側の保険会社に送る必要があります。

被害者請求に必要な書類は、以下の7つ。

  • 1.保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払い請求書
  • 2.交通事故証明書
  • 3.事故発生状況報告書
  • 4.医師の診断書
  • 5.診断報酬明細書
  • 6.通院交通費明細書
  • 7.印鑑証明書

被害者請求は加害者請求に比べて、手続きの手間や時間がかかるでしょう。しかし、内容を理解・納得しながら手続きを進めていくことができます。また、必要書類の他に、後遺障害等級の認定に有利になるような書類を付け足すこともできます。

後遺障害慰謝料3つの基準

後遺障害慰謝料には、3つの算定基準があります。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

それぞれの基準で、後遺障害慰謝料の金額が大きく異なります。一つひとつ見ていきましょう。

自賠責基準

自賠責基準は、すべての運転者に加入が義務付けられている自賠責保険を基準としたものです。

自賠責保険では、交通事故の被害者が受けた損害を、最低限保障することが目的とされています。したがって、自賠責基準による後遺障害慰謝料は、3つの基準の中で最も低い金額になるといわれています。

任意保険基準

任意保険基準は、運転者の任意で加入を決めることができる任意保険を基準としたものです。

任意保険基準は、各任意保険会社によって基準が異なるため、ほとんど公表されていません。後遺障害慰謝料の金額は、自賠責基準よりも高く、弁護士基準より低くなるといわれています。

弁護士基準

弁護士基準は、交通事故における過去の判例をもとに、弁護士会が公表しているものです。後遺障害慰謝料の金額は、「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称「赤い本」)という法律書に記載されています。

弁護士基準による後遺障害慰謝料は、3つの基準の中で最も高額になるといわれています。

基準別の後遺障害慰謝料

それでは、自賠責基準と弁護士基準による、等級別の後遺障害慰謝料を見ていきましょう。

等級 自賠責基準 弁護士基準
第1級 1,100万円 2,800万円
第2級 958万円 2,370万円
第3級 829万円 1,990万円
第4級 712万円 1,670万円
第5級 599万円 1,400万円
第6級 498万円 1,180万円
第7級 409万円 1,000万円
第8級 324万円 830万円
第9級 245万円 690万円
第10級 187万円 550万円
第11級 135万円 420万円
第12級 93万円 290万円
第13級 57万円 180万円
第14級 32万円 110万円

このように、自賠責基準と弁護士基準では、後遺障害慰謝料の金額に約3.5倍ほどの違いが発生します。

後遺障害等級認定の被害者請求をする際、弁護士に相談することで、弁護士基準での後遺障害慰謝料を得られる場合があります。しかし、弁護士費用が高額である場合、思うような結果にならない可能性があります。弁護士に相談をする際は、弁護士特約への加入を確認してからにしましょう。

むちうちの後遺障害等級は14級

むちうちが後遺障害と認めれると、後遺障害等級は14級に認定される場合がほとんです。後遺障害等級14級の場合に支払われる後遺障害慰謝料は、自賠責基準で「32万円」、弁護士基準で「110万円」となっています。

後遺障害等級14級の症状

以下のような症状が1つでも認められた場合、後遺障害等級14級と認定される可能性が高くなります。

1.一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2.三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3.一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
4.上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5.下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6.一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
7.一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
8.一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
9.局部に神経症状を残すもの

国土交通省|後遺障害の等級及び限度額

後遺障害等級14級が非該当…

上記で解説した、後遺障害等級14級の症状に当てはまっているにもかかわらず、後遺障害等級が非該当になってしまう場合があります。

後遺障害等級14級が非該当になる理由は、4つ。

  • 1.交通事故が軽微である
  • 2.通院実績が乏しい
  • 3.症状に一貫性または連続性が見られない
  • 4.重篤で常時性のある症状でない

1.交通事故が軽微である

交通事故による被害が軽微である場合、「その程度の事故で、後遺障害が残るほどの被害が発生するはずがない」と判断され、後遺障害等級が非該当になってしまうことがあります。

軽微な交通事故とは、追突された際のスピードが低速であったり、被害者の車両に大きなへこみや傷が見られない場合などです。

「軽微な交通事故」という理由で、後遺障害等級が非該当になることを避けるためにも、事故直後は被害者自身も、車両の傷やへこみ、事故現場の状況などを記録しておきましょう。

2.通院実績が乏しい

たとえ「仕事が忙しく、なかなか通院できなかった」という理由があったとしても、通院実績が乏しい場合は、後遺障害等級が非該当になってしまう可能性があります。

たとえば、通院頻度が1ヶ月に1回と少ない場合、「通院する必要がないほどの軽い症状だった」と判断されてしまうのです。

交通事故後の通院は、面倒に感じることもあるかと思いますが、週に2~3回の通院頻度を保つように心がけましょう。

3.症状に一貫性または連続性が見られない

交通事故による怪我の症状に一貫性や連続性が見られない場合や、一度回復した症状が再発した場合、その怪我は「交通事故によるものではない」と判断されてしまう場合があります。

症状の回復は、天候や気分などで調子がいい日もあれば、悪い日もあります。自身の判断で「もう治った!」と発言することは危険です。交通事故による怪我の回復は、通院先の担当医に判断を任せましょう。

4.重篤で常時性のある症状でない

後遺障害として認められるには、常に後遺症の症状を感じていることが重要となります。
「少しだけ体がだるい」「なんとなく違和感がある」などの場合は、「重篤性がない」と判断されてしまう場合があります。また、天候や気圧によって症状があらわれる場合は、「症状に連続性がない」と判断されてしまいます。

後遺障害等級の認定を受ける際には、担当医に自覚症状を的確に伝えるようにしましょう。

▶︎参考:後遺障害等級が非該当!異議申し立ての方法とは?

交通事故の後遺症!慰謝料の請求方法まとめ

交通事故による怪我が後遺症になってしまったら、後遺障害等級認定を受けるようにしましょう。後遺障害等級認定の申請方法には、「加害者請求」と「被害者請求」があります。自身にとって有利な結果を得るためには、被害者請求を行うとよいでしょう。