バイク事故で被害者に。慰謝料はいくら受け取れるの?
交通事故の被害者は、加害者に対して慰謝料を請求することができます。慰謝料を請求することで、被害者は怪我の治療費などを負担することなく、通院することができます。
自動車とバイクが交通事故にあった場合、自動車よりもバイクの方が、死亡率が上がるといわれています。それはなぜなのでしょうか。この記事では、バイク事故が起こる原因や、被害者が受け取ることのできる慰謝料、死亡してしまった場合の慰謝料についても詳しく解説しています。
もくじ
バイク事故の原因4つ
バイク事故が起こる主な原因は、以下の4つ。
- ①無茶な追い越し
- ②自動車から見てバイクとの距離感が取りづらい
- ③前方不注意
- ④バイクの制動距離は短い
一つひとつ、詳しく見ていきましょう。
①無茶な追い越し
自動車の場合、前の車を追い越すには、右側または左側の車線を使用して追い越さなければいけません。しかし、バイクは自動車の半分ほどの横幅しかないため、自動車の間をすり抜けて追い越していくことが多くあります。無理なすり抜けをした場合、自動車との接触や巻き込みが起こり、接触事故が起きてしまうことがあります。
②自動車から見てバイクとの距離が取りづらい
バイクの車体は自動車と比べて小さいため、自動車から見て距離感やスピード感がわかりにくくなっています。そのため、実際の位置より遠くにいるように感じたり、遅く走っているように感じ取られる場合があります。自動車が右折する際、正面から走行してきたバイクとの衝突事故が起こりやすくなってしまいます。
③前方不注意
バイクの運転者が、頭頂部から顎の部分まで頭を覆い隠すフルフェイスタイプのヘルメットを装着している場合、バイクの運転者が確認できる視界は大変狭くなってしまいます。自動車の運転者からは視界が確認できていても、バイクの運転者からは見えていないことも多くあります。
④バイクの制動距離は短い
制動距離とは、ブレーキが効き始めてから停止するまでに走行した距離のことをいいます。バイクでブレーキをかけると、自動車でブレーキをかけるよりも短い距離で停止することができます。そのため、同じ車線を同じスピードで走っていたとしても、前方のバイクが短い距離で止まってしまった場合、後ろからきた自動車とぶつかり、追突事故が起こる可能性があります。
バイク事故では死亡率が上がる理由2つ
バイク事故が起きた場合、バイクの運転者の死亡率は自動車事故よりも高いといわれています。
バイク事故での死亡率が高い主な理由は、以下の2つ。
- ①車体に守られることがない
- ②単独事故
①車体に守られることがない
自動車とバイクの衝突事故が起きた場合を例としましょう。
自動車の場合、運転者または同乗者の身体は、車体やエアバッグ、シートベルトによって守られます。しかしバイクの場合、ヘルメットを装着しているとはいえ、身体を守ってくれるものはありません。最悪、バイクから路上へ身体が放り出されてしまいます。
路上へ投げ出され、走行している車に轢かれてしまうという危険性も十分考えられます。
②単独事故
バイクは2本のタイヤで走行しているため、些細な衝撃でバランスを崩してしまい、転倒してしまうケースも多くあります。雨の日だと、路上やマンホールが滑りやすくなっているため、ブレーキが効きにくい状態になります。ブレーキが上手く効かずにそのまま転倒してしまい、対向車に轢かれてしまう…というパターンもありえなくないのです。
被害者が受け取れる慰謝料3つ
交通事故で怪我をすると、被害者は加害者に対して慰謝料を請求することができます。被害者が請求できる慰謝料の金額は、自動車事故の場合とバイク事故の場合で変動することはありません。
交通事故の被害者が加害者に対して請求できる慰謝料は、3つ。
- ①入通院慰謝料
- ②後遺障害慰謝料
- ③死亡慰謝料
一つひとつの内容を、詳しく見ていきましょう。
①入通院慰謝料
交通事故で怪我を負うと、医療機関へ行き怪我の状態を診てもらわなければいけません。入通院慰謝料とは、交通事故の怪我により入院または通院を強いられた際に、被害者が感じた精神的苦痛を加害者がお金で補ったものです。怪我の治療のために入通院をしなければいけないということに対する、迷惑料のようなものと思ってよいでしょう。
②後遺障害慰謝料
交通事故による怪我の治療を続けても、怪我の状態が良くならなかった場合、その怪我は後遺障害となる場合があります。後遺障害は、被害者が今後生きていく上で一生付き合っていかなければいけないものです。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害になってしまったことで被害者が感じた悲しみや痛みなどの精神的苦痛を、加害者がお金で補ったものです。
③死亡慰謝料
死亡事故慰謝料とは、交通事故によって亡くなった被害者の精神的苦痛をお金で補うものです。しかし、被害者は亡くなっているため、相続人が相続することになります。
慰謝料の計算には3つの基準がある
慰謝料を計算する際には、3つの基準が使われます。
- ①自賠責基準
- ②任意保険基準
- ③弁護士基準
それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。
①自賠責基準
自賠責保険とは、自動車またはバイクを所有する運転者に、加入が義務付けられている強制保険です。自賠責保険が適用されると、通院1日につき4,200円の慰謝料が発生し、限度額は120万円となっています。
自賠責基準は、被害者が負った損害を最低限補償することを目的としています。そのため、被害者に支払われる慰謝料の金額は、3つの基準の中で最も低くなっています。
②任意保険基準
任意保険とは、自動車やバイクの運転者が任意で加入を決めることができる保険です。
任意保険基準は各任意保険基準で異なり、ほとんど公表されていません。被害者に支払われる慰謝料の金額は、自賠責基準よりも高く、弁護士基準よりは低いといわれています。
③弁護士基準
弁護士基準とは、交通事故における過去の判例を基に計算されています。弁護士基準は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に掲載されています。
慰謝料の計算方法
今回は、自賠責基準を使った入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の計算方法をご紹介します。
自賠責基準での入通院慰謝料
自賠責基準を使った入通院慰謝料の計算方法は、
まず、
①治療期間(入院期間+通院期間)
②実通院日数(入院期間+実通院日数)×2
①と②の計算を行います。そして、計算結果が少ない方に4,200円をかけた結果が、被害者が受け取ることのできる入通院慰謝料の金額となります。
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例)自動車(加害者)対バイク(被害者)で交通事故にあい、被害者はむちうちを負った。
入院はせず、通院期間は100日(実通院日数80日)の場合の入通院慰謝料。
①治療期間=100日
②実通院日数 80日×2=160日
①の治療期間の方が少ないので、
100日×4,200円=420,000円
よって、被害者に支払われる入通院慰謝料の金額は420,000円。
自賠責基準での後遺障害慰謝料
後遺障害には後遺障害等級という等級があり、1級から14級まであります。1級が最も重い症状となり、14級が最も軽い症状となります。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって金額が変動します。1級が最も高額となり、14級が最も低額となります。
交通事故による怪我で最も多いといわれているむちうちが後遺障害になった場合、後遺障害等級は14級と認めれることが多いといわれています。後遺障害等級が14級の場合、被害者が受け取ることのできる自賠責基準での後遺障害慰謝料は、32万円となっています。
▶︎参考:後遺障害等級14級と認めれるための条件とは?
後遺障害等級別の後遺障害慰謝料は、以下の表をご覧ください。
慰謝料を増額する方法
交通事故の被害者となったとき、十分な慰謝料を獲得したいものです。そのためにすべきことは、以下の2点です。
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①病院に継続して通院する
先程も述べましたが、慰謝料を計算するときに「通院期間」や「通院日数」を使いました。慰謝料は「通院期間」や「通院日数」に応じて支払われるものです。したがって、担当医の指示に従って、通院を継続して行うことが大切なのです。
②検査を受ける
検査を受けるというのは、後遺障害慰謝料を受け取るためにすべきことです。後遺障害慰謝料は、後遺障害等級認定を申請して後遺障害の等級に認められなければ、受け取ることができません。特に、交通事故の怪我で多いとされるむちうちの症状は、外傷がないものなので検査で症状を証明しなければなりません。画像検査や腱反射テスト、スパークリングてすとなどの検査を受けたうえで後遺障害等級認定を申請するようにしてください。
▶︎参考:【検証!】通院日数によって入通院慰謝料に差が出るって本当?
慰謝料が支払われるタイミング
今まで紹介してきた慰謝料を含めた損害賠償は、示談成立後に受け取ることができます。
そもそも示談交渉は、治療が終了したときか、症状固定と診断されたときに始めるものです。したがって、慰謝料を含めた損害賠償が受け取れるのは、数ヶ月~数年後となってしまいます。そう考えると、治療費の支払いの負担が大きくなってしまいます。このときに役立つ制度が、仮渡金制度です。
仮渡金制度
仮渡金制度とは、治療費を支払うためのお金が必要な被害者が、その費用をまかなうためのお金を早く受け取ることができる制度のことです。受け取ることができるお金は、怪我の程度によって異なり、5万円・20万円・40万円が請求できます。
バイク事故の慰謝料についてまとめ
自動車とバイクが交通事故にあった場合、バイクは自動車よりも大きな被害を受ける可能性が高くなります。最悪の結果、死に至ることもあります。交通事故は思いもよらない時に起こるものですが、普段から安全運転を心がけることで、交通事故の被害を防ぐことができます。