自転車事故にあった場合の慰謝料とは?自転車保険について

2019年02月04日

平成26年の自転車の死亡事故は546件(編集部調べ)となっており、自転車事故の発生件数は、あとを絶ちません。また、自転車保険に加入している人が少ないため、高額な損害賠償を支払わなければならない可能性もあります。

そこで今回は、車と自転車の交通事故では何が違うのか、自転車の交通ルール、自転車事故の慰謝料と自転車保険について解説していきます。

覚えておきたい!自転車の交通ルール

自転車は車両の一つです。もちろん、交通ルールがあります。特に近年は、自転車事故が多いことから、自転車の交通ルールがかなり厳しくなりました。

  • 車道走行が原則である。
  • 車道は左側を走行する。
  • 夜間はライトを点灯する。
  • 飲酒運転禁止。
  • 二人乗り禁止。
  • 携帯電話使用禁止。

などなど、自動車なみに厳しいルールが設けられています。
また、上記以外にも、並行して走行することも禁止、傘をさしながらの走行禁止、ブレーキ不良の場合は使用禁止、イヤホンを装着しての運転禁止…となっています。

もしもこれらのルールを破ってしまうと、罰金等発生しますのでくれぐれも注意が必要です。ちなみに、横断歩道を渡る時には原付バイク同様【二段階右折】となります。

自転車事故3つのケース

自転車事故の特徴を、以下のような3つのケースに分けて説明していきます。

自転車と車

自転車の運転手が原因で起きた事故だとしても、車の運転手が加害者となることがほとんどです。車の運転手は気をつけなければなりません。

  • 加害者が保険未加入:少ない
  • 後遺障害認定機関:あり
  • 過失割合:自動車より自転車の方が有利に扱われる

自転車相互

自転車と自転車の事故です。事故の過失割合は事故状況によって判断されます。自転車保険に加入している人が少ないゆえ、多額の損害賠償が発生した場合の交通事故では、全て加害者の自己負担となるケースが多いです。

  • 加害者が保険未加入:多い
  • 後遺障害認定機関:なし
  • 過失割合:自転車同士の場合は、事故の状況で判断される

自転車と歩行者

自転車と歩行者の事故では、死傷者が出ないと思っている人もおりますが、そうではありません。以前には、自転車で坂を降っていた運転手が歩行者にぶつかり、被害者を寝たきりにさせてしまった事例もあります。

  • 加害者が保険未加入:多い
  • 後遺障害認定機関:なし
  • 過失割合:自転車よりも歩行者の方が有利に扱われる

加害者が自動車の場合は、自賠責保険の加入が義務づけられています。しかし、加害者が自転車の場合は、保険の加入が義務づけられていないので、保険に加入している人が少ないといえます。

自転車事故の加害者が負う責任

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自転車事故の加害者になった場合でも、以下のような責任を負う可能性があります。

刑事上の責任

刑事上の責任とは、交通事故により人を死傷させてしまった場合に、加害者へ下される罰金刑懲役刑のことをいいます。

    自転車事故でも前科はつく?
    自転車には、反則金制度がありません。そのため、交通違反をしてしまうと、刑事上の責任が問われます。自転車事故の場合、執行猶予(※1)がつくことも多いですが、刑事処分を受けた場合は自転車事故の加害者でも前科がつくことになります。

※1 執行猶予とは、判決で刑罰を言い渡された加害者が、定められた期間中に刑事事件を起こさなければ、刑罰を受けなくてよいという制度のこと。

民事上の責任

民事上の責任とは、交通事故の被害者が負った損害を金銭で償うことをいいます。一般的に、「損害賠償」といわれるものです。

自転車事故の損害賠償は高額になる恐れが!

自b転車を運転し、交通事故の加害者となってしまったら、民事上の責任を負うことになるため、損害賠償を支払わなければなりません。しかし、先程も述べたように、自転車保険に加入している人は少ないです。そのため、加害者が支払うべき損害賠償が高額になる恐れがあります。

ここでは、自転車事故の加害者に対して請求された損害賠償の事例をいくつか紹介していきます。

事例①

9,521万円(神戸地方裁判所、平成25年7月4日判決)
事故の概要
当時、11才の男児が夜、自転車で走行していたところ、歩道と車道の区別のない道路において歩行していた62才の女性と正面衝突しました。その女性は、頭の骨を折るなどし、意識が戻らない状態となったものです。
この判決が裁判所から出たとき、高額な賠償額であること以外に、子供が起こした事故について母親に出された支払い命令であることが大きく報じられ話題になりました。
これは、子供が自転車事故を起こすと親が責任を負う場合があるということを示した賠償例でもあります。

自転車事故の高額賠償事

事例②

賠償額 3,730万円
事故の概要
Y運転の自転車が信号機による交通整理の行われていない三叉路の交差点を左折した際、対向進行してきたA(70歳、男性、年金生活者)運転の自転車と衝突した。YとAは転倒し、Aは脳挫傷、脳内出血、急性硬膜下血腫の傷害を負った。病院で緊急手術をしたものの植物状態に陥り、事故の1年4ヶ月後に入院したまま慢性気管支炎を発症したことにより肺炎を併発し死亡した(平成14年6月11日大阪地裁判決)

自転車事故の賠償事例

事例③

賠償額 3,140万円
事故の概要
男子高校生が自転車で歩道から交差点に無理に進入。保険勧誘員の女性(60才)が運転する自転車と衝突して転倒させた。女性は頭蓋骨骨折で病院に搬送されたが九日後に死亡しました。(平成14年2月15日さいたま地裁判決)

自転車事故の賠償事例

自転車保険に未加入だった場合、上記のような損害賠償額を自身で負担しなくてはなりません。自転車を運転する際は、自転車事故の加害者になる可能性も考え、自転車保険に加入しておくことをおすすめします。

道義的な責任

道義的な責任とは、被害者を見舞い、誠実に謝罪を行うことをいいます。

自転車事故で慰謝料はもらえる?

自転車事故にあったとき、「自動車事故と違って慰謝料がもらえないかも…。」と気になりますよね。自動車事故のように、慰謝料をもらうことができます。

入通院慰謝料(傷害慰謝料)

入通院慰謝料とは、入通院をしたことによる精神的苦痛に対する対価として支払われるものです。また、入通院慰謝料は、入通院期間に応じた金額になるので、自動車事故と同じ計算方法になります。

▶︎参考:慰謝料の計算方法についてはこちら

後遺障害慰謝料

交通事故が原因で後遺症になった症状の中で、後遺障害の等級に該当するものを後遺障害といいます。そして後遺障害慰謝料とは、後遺障害になったことによる精神的苦痛に対する対価として支払われるものです。また、後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級によって慰謝料の金額が変わります。

加害者が自動車の場合は、加害者の加入する自賠責保険会社を通して、損害保険料率算出機構(※2)が後遺障害の等級を認定します。
しかし、加害者が自転車の場合は、自動車の損害保険料算出機構のような後遺障害を認定する機関がありません(労災が適用される場合は除く※3)。そのため、被害者は、後遺症が後遺障害の等級に該当していることを自分自身で証明していかなければならないのです。

※2 損害保険料率算出機構は、参考純率と基準料率の算出・提供および自賠責保険の損害調査を行っている組織です。

※3 労災が適用されるのは、通勤中の事故の場合のみです。労災の通勤中とは、以下の定義があります。これらを満たさなければ、労災が使えないのでご注意を。

  • ①就業に関する住居と就業場所を往復、あるいは別の就業場所への移動、単身赴任先からの帰省などの場合
  • ②合理的な経路及び方法で移動をした場合

▶︎参考:後遺障害等級認定の方法についてはこちら

入通院慰謝料も後遺障害慰謝料も3つの基準(自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準)が適用されます。

▶︎参考:3つの基準について詳しく知りたい方はこちら

自転車事故の示談の流れとは?

自転車事故の場合でも自動車事故と同じく、示談までの流れは基本的に変わりません。

    1.交通事故発生
    2.交通事故後の対応
    ①負傷者の救護
    ②警察へ通報
    ③事故状況の記録
    ④保険会社へ連絡
    3.治療
    4.症状固定(※4)
    5.後遺障害等級認定するorしない
    6.示談交渉 (成立or不成立)
    不成立の場合は、裁判や裁判外紛争解決(※5)を行う。

※4 症状固定とは、これ以上治療をしても、症状が緩和されない状態のこと。
※5 裁判外紛争解決とは、訴訟手続によらない紛争解決方法を総称するもの(仲裁、調停、あっせんなど)。

入れば安心!自転車保険とは?

自転車保険は、「傷害補償」「個人賠償責任補償」で構成されています。
その2つについて、具体的な内容を以下で説明していきます。

傷害補償

傷害補償とは、自分が自転車で怪我や後遺障害を負ったり、亡くなったりしたときの補償のことです。主に、以下5つです。

  • 入院保険
    怪我をして入院したとき、入院1日につき決まった保険金を受け取れる補償。
  • 入院一時金
    怪我をして入院したとき、入院日数に関わらず、一時金として保険金を受け取れる補償。
  • 通院保険金
    怪我をして通院したとき、通院1日につき決まった保険金を受け取れる補償。
  • 死亡保険金
    亡くなったときに、数百万円の保険金を遺族が受け取れる補償。
  • 後遺障害保険金
    後遺障害が残ったときに受け取れる補償。しかし、後遺障害の等級に応じて受け取れる金額が変わります。

個人賠償責任補償

個人賠償責任補償は、日常生活において、意図せずに他人に怪我を負わせてしまったり、他人のモノを壊してしまったりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金を受け取れるというものです。この補償は、自転車事故で他人に怪我を負わせた場合だけでなく、様々な状況で損害賠償責任を負ったときにも補償が受けられます。

  • 自転車事故で他人に怪我を負わせた。
  • 飼っている犬が噛みついて、怪我を負わせた。
  • ベランダからモノが落ち、通行人に怪我を負わせた。
  • 自分の子どもが、他人の家のものを壊してしまった。  など

自転車事故の場合でも、しっかりと治療をしましょう。

自転車事故の場合、被害者であれば慰謝料を受け取ることができます。
また、慰謝料の計算や示談の流れも自動車事故と同じです。したがって、怪我をした場合は、しっかりと治療をして、症状を治していきましょう。

また、自転車事故の加害者となってしまったときに備えて、自動車保険に加入しておきましょう。