交通事故で後遺障害に。労災の手続き方法や自賠責との違い

2019年02月01日

4ヶ月前、会社の車で営業先を回っていたときのこと。信号のない交差点があったので、車を少し前に出して左右を確認していた。そのとき、スピードを出して目の前を通り過ぎていった車が、自分の車の前方とぶつかり、交通事故の被害にあった。

交通事故後、むちうちの症状があらわれたため治療をしていたが、むちうちの症状は緩和せず後遺症が残った。担当医から「後遺障害の等級に該当する症状なので、後遺障害等級認定の手続きを行うことをおすすめします。」といわれた。

「労災の場合、後遺障害の手続きはどうすればいいんだろう?」

このような疑問はありませんか。今回の記事では、「労災の場合の手続きをどのように行うのか」「自賠責を使った場合に違いはあるのか」などについて説明していきます。

▶︎参考:労災保険について詳しく知りたい方はこちら

労災の後遺障害について

交通事故の怪我は、後遺症が残ることがあります。交通事故が原因で後遺症が残り、その症状が後遺障害の等級に該当する場合、後遺障害と呼ばれます。また、労災の場合でも、自賠責と同じように後遺障害等級認定の手続きが必要になります。後遺障害の等級を認定する基準は、労災と自賠責のどちらも同じ基準です。

後遺障害で労災から給付されるお金について

自賠責の場合、後遺障害が残ったときに後遺障害慰謝料を受け取ることができます。一方、労災の場合は後遺障害慰謝料ではなく、障害(補償)給付金というものを受け取ることができます。症状固定(※1)と診断された日から5年経過してしまうと、請求権の時効により障害(補償)給付金を受け取ることができないので注意してください。

※1 症状固定とは、交通事故による怪我がこれ以上緩和しないと、担当医に診断された状態のことです。

障害(補償)給付金

障害(補償)給付金は、「障害(補償)年金」と「障害(補償)給付金」の2つに分類することができます。それぞれの違いについて説明していきます。

障害(補償)年金

障害(補償)年金は、後遺障害の等級のうち1~7級に該当する方が給付対象者です。給付金は後遺障害の程度で金額が異なり、給付基礎日額(※2)の313~131日分の年金を受け取れることができます。支払いは、支給対象と認められた月の翌月分から支給されます。毎年、2・4・6・8・10・12月の6つの時期に、先月までの2ヶ月分がまとめて支払われる年金の形で支払われます。

等級 日数
第1級 313日分
第2級 277日分
第3級 245日分
第4級 213日分
第5級 184日分
第6級 156日分
第7級 131日分

障害(補償)一時金

障害(補償)一時金は、後遺障害の等級のうち8~14級に該当する方が給付対象者です。給付金は後遺障害の程度で金額が異なり、給付基礎日額の503~56日分の一時金(※3)として受け取ることができます。

等級 日数
第8級 503日分
第9級 391日分
第10級 302日分
第11級 223日分
第12級 156日分
第13級 101日分
第14級 56日分

※2 給付基礎日額
給付基礎日額を計算する場合、交通事故にあう前に受け取っていた賃金の総額を、その期間の総日数(休日も含めた日数)割ります。その結果、1日あたりの賃金額が計算でき、その金額が給付基礎日額となるのです。

※3 一時金とは、1度だけ支払われるお金のことです。

障害給付金以外で、労災から支払われるお金


交通事故の怪我が後遺障害となる前でも、被害者は労災から保険金を受け取ることができます。どのようなものがあるのか、具体的に見ていきましょう。

療養補償給付

療養補償給付では、交通事故で負った怪我を治療する際にかかる、治療費を補償してもらうことができます。

休業補償給付

交通事故の怪我によって仕事を休まなければいけなくなってしまい、収入や利益が減少してしまった場合の減収分が補われます。休業補償給付、休業4日目を開始日として支給されます。

傷病補償給付

交通事故による怪我が1年6ヶ月で完治にいたらず、傷病等級に該当した場合に支給されます。

介護保障給付

交通事故の怪我や災害によって、被害者が常時または随時介護が必要になった場合に支給されます。

労災の後遺障害等級認定の手続き


労災の後遺障害等級認定の手続きについて「等級を認定する機関・必要書類・等級を認定するための審査方法」の3つを説明します。

等級を認定する機関

労災の場合、後遺障害等級認定を行う機関は労働基準監督署です。企業を管轄している労働基準監督署長に対して書類を提出することになります。

必要書類

労働基準監督署長に提出する給付金の請求書は、通勤中と勤務中の交通事故で異なります。

  • 通勤中の交通事故:「障害給付支給請求書(様式第16号の7)」
  • 勤務中の交通事故:「障害補償給付支給請求書(様式第10号)」

上記の書類は、厚生労働省のホームページでダウンロードが可能です。

障害(補償)給付支給請求書以外にも

  • 医師が書いた後遺障害診断書
  • レントゲン写真のような怪我を証明する資料

が必要になります。
労災の後遺障害診断書は、自賠責に提出するものよりも簡易な書式となっています。

等級を認定するための審査方法

必要書類を提出し終わると、労働基準監督署にて面談による審査が行われます。地方労災医員という医師が、後遺障害の等級を認定するかの判断を行います。

後遺障害等級認定の際に、被害者の面談を行うことで、後遺症の症状をしっかりと把握することができます。そのため、後遺障害の等級が認定されやすいです。

労働基準監督署で後遺障害の審査が終わり、後遺障害の等級が認定されると、厚生労働省から支給決定通知が送付されます。通知が送付されると、指定された振込先の口座に振り込まれます。

労災と自賠責の後遺障害等級認定の手続きの違い


先程、労災の後遺障害等級認定について説明しましたが、自賠責の場合との違いはあるのでしょうか。下の表にまとめました。

労災 自賠責
認定基準 自賠責と同じ 労災と同じ
認定する機関 労働基準監督署 損害保険料算出機構
審査方法 地方労災医員と被害者の面談で審査 書類のみで審査
認定結果 面談で審査を行うため、等級が認められやすい 書類のみで審査を行うため、等級が認められにくい

労災と自賠責は、どちらも国が補償を行います。そのため、基本的に労災と自賠責を一緒に使うことはできないので注意が必要です。

▶︎合わせて読みたい:自賠責の後遺障害等級認定について

労災の後遺障害まとめ

いかがでしたか。今回の記事をまとめると

  • 後遺障害が残ったとき、労災から障害(補償)給付金を受け取ることができる
  • 労災の場合、後遺障害等級認定は労働基準監督署が行う
  • 労災の場合、後遺障害等級認定の際に面談を行うため、等級が認めらることが多い
  • 労災と自賠責の後遺障害等級認定の手続き方法が異なる

交通事故の怪我が後遺障害が残り、労災の給付金を受け取ることになった場合、この記事を参考にしてくださいね。