追突事故で車を修理に…代車を使ったときのガソリン代は請求可能?

2018年11月09日

追突事故の被害にあった場合、車にへこみやキズができるかもしれません。車を修理に出してしまうと、車が手元になく不便になります。

その場合、代車を借りるという選択を取る場合もあるでしょう。しかし、代車を使った場合、代車費用やガソリン代は加害者が負担してくれるのでしょうか。

そこで今回は、事故後に出費した代車費用や代車のガソリン代などについて解説していきます。

追突事故後に車を修理することに…

追突事故で車にキズやへこみができてしまった場合、車の修理をすることになるかもしれません。車を修理した場合、被害者は加害者に修理代を請求することができます。

しかし、車の修理に関する費用は自賠責保険で支払われません。何故ならば、自賠責保険が人身傷害のみに対する損害を保障するものだからです。そのため、物的損害は任意保険から支払われることになり、加害者が任意保険に入ってなければ、車の修理費用を負担してもらえない可能性も考えられます。

一度、加害者が加入している保険会社に確認することをおすすめします。

車の修理にかかる費用(部分別)

車の修理にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。ここでは、車の修理する部分別の修理費用の相場をご紹介します。

エンジンの交換 50~90万円
エアコンの修理
ガス補充の場合
1万円程度
パイプやコンプレッサの修理 各部分3~5万円
エアコンの交換 20万円~
ドアの修理
へこみの場合
2万円~
ドア交換 10万円~
バンパーの
修理
簡易的な補修 1万円
部分的な補修 2.5~4万円
1本塗り 3~5万円
バンパー交換 5~20万円
マフラーの修理
溶接修理
1万円程度
マフラー交換 3万円~
フレームの修理 小規模の
板金修理
10~100万円
大規模の
板金修理
数万円~数百万円

※修理費用は、車の損害の程度によって異なるため、あくまで目安として参考にしてください。

車の修理期間中の代車費用について

車の損害が大きければ、その分修理に時間がかかってしまうでしょう。その場合、代車費用を加害者に請求することも可能です。

代車費用を加害者に請求する場合は、以下の2点を満たしていなければなりません。

  • ①代車を使用する必要性があるか
  • ②代車を使用すべき相当期間か

①代車を使用する必要性があるか

1つ目は、「代車を使用する必要性があるか」ということです。例として、代車を使用する必要性があり、代車費用の請求が認められた過去の判例をご紹介します。

■平成1年6月27日/横浜地方裁判所/判決/昭和63年(ワ)169号[交通事故民事裁判例集22巻3号727頁]

原告は川崎市内の水産会社に勤務し、その勤務の性質上早朝の通勤が必要であるため、通勤手段として乗用車を使用する必要があつたこと、同人は、本件事故発生の日から被害車の修理が完了するまでの間、昭和62年4月27日から同年5月29日までは横浜日産モーター株式会社よりレンタカーを1日6000円(1か月15万円)で、同年5月30日から同年6月24日までは同人の知人より普通乗用自動車(日産セドリック)を1日3000円でそれぞれ賃借して使用し、代車使用料として合計23万4000円の支出をしたことが認められ、右合計額は本件事故と相当因果関係のある代車料と認める。

代車費用について

このように、通勤や病院への通院など、日常生活で代車を具体的に使用する場合には、必要性が認められます。

ただし、車を通勤に使ってしたとしても、

  • もう1台、車を保有していた
  • バス・電車などの公共交通機関、タクシーで代替可能である

といった場合は、代車の必要性が認めてもらえない可能性があります。

②代車を使用すべき相当期間か

2つ目は、「代車を使用すべき相当期間か」ということです。例として、代車を使用すべき相当期間であるとして、代車費用の請求が認められた過去の判例をご紹介します。

■平成12年3月15日/東京地方裁判所/判決/平成10年(ワ)7818号[交通事故民事裁判例集33巻2号535頁]

一般的な社会通念からすれば、このような購入後間もない新車を何の落ち度もなく傷つけられた被害者が、損害賠償を巡る初期の交渉段階において、修理ではなく、一部の自己負担をしてでも買替えを強く希望するのはやむを得ないものというべきであり、このような場合、加害者、ことに交通事故処理を専門的かつ継続的に担当する損害保険会社の担当者は、被害者に対して合理的な損害賠償額の算定方法について十分かつ丁寧な説明をなし、被害者の理解を得るように真摯な努力を尽くすべきであって、そのために時間を要し、その結果、修理に着手する以前の交渉期間中の代車料が生じたとしても、それが、加害者(又は損害保険会社担当者)の具体的な説明内容や交渉経過から見て、通常予測し得る合理的な範囲内にとどまる限り、加害者(損害保険会社)はその代車料についても当然に負担すべき責任を負うものというべきであるところ、本件においては、前示各証拠からうかがえる原告とI氏との具体的な交渉経過及びその状況(両者の要求の食い違いの鮮明な対立状況やその背景となった互いの交渉態度に対する不満と不信感の存在)等を考慮すると、交渉期間中の代車の必要期間としては、少なくとも、8日間分を下回ることはないと認めるのが相当である。

代車費用について

このように、修理に着手する前に行う見積もりや交渉期間、修理が終わるまでの期間であれば、代車を使用すべき相当期間として認められます。

したがって、修理が終わってしまった場合は代車の使用が認められないため、代車費用を加害者に請求できません。仕事や用事で車を引き取ることができず、そのまま代車を使ってしまうと、その期間の代車費用は自費で支払うことになる可能性が高いので、注意が必要です。

代車のガソリン代も請求できる?

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代車を使用中にガソリンを入れることもあるでしょう。しかし、代車を使用している間のガソリン代は、加害者に請求することができません。

自分の車で通勤するときに、ガソリンを入れないことはないと思います。そのため、ガソリン代は、事故が発生しなくても必要な費用であるということになります。

したがって、代車を使用した場合のガソリン代は、被害者が自費で支払うことになります。

追突事故の被害者が請求できるその他費用

追突事故にあった被害者が怪我を負っている場合、加害者に請求できる費用が他にもあります。しかし、被害にあった事故がで処理された場合に限られます。

したがって、事故で怪我を負った場合は、必ず人身事故で処理するようにしましょう。一度、物損事故で処理した場合でも人身事故に切り替えることが可能です。以下のリンクを参考に、切り替えの手続きを進めるようにしてください。

▶︎参考:物損事故から人身事故へ切り替える手続きについてはこちら

人身事故の場合に請求できる損害賠償

被害にあった事故が人身事故で処理された場合、被害者は以下のものを加害者に損害賠償として請求できます。

器具・装具の購入費
積極損害 治療費
手術費
入院費
付添看護費
通院交通費   など
消極損害 休業損害
逸失利益
慰謝料 入通院慰謝料
後遺障害慰謝料
死亡慰謝料

このような損害賠償を請求する場合、被害者は以下の2つの方法で請求することができます。

  • 加害者請求:加害者が先に被害者に損害賠償を支払い、その後で加害者自身が加入している保険会社に保険金を請求する方法
  • 被害者請求:加害者から賠償が受けられないときに、被害者が直接、加害者側の保険会社に損害賠償を請求する方法

ただし、被害者が損害賠償を受け取れるのは示談が成立した後となります。事故後すぐに損害賠償を受け取れるというわけではない、ということを覚えておいてください。

▶︎参考:被害者請求に必要な書類や手続きの流れについてはこちら

代車のガソリン代についてのまとめ

いかがでしたか。追突事故が原因で車を修理に出している間は、代車を使うことができます。また、事故が原因で「①代車を使用する必要性があるか」「②代車を使用すべき相当期間か」という条件を満たしていれば、被害者は加害者に代車費用を請求することができます。

しかし、代車を使っている間のガソリン代は、事故の被害にあわない場合でも必要な費用です。したがって、ガソリン代は被害者自身で支払わなければなりません。