交通事故で打撲の怪我を負った…。加害者に損害賠償を請求できる?
交通事故で負う可能性のある怪我は、骨折やむちうちだけではありません。軽い打撲の怪我を負うこともあります。打撲の怪我を負った場合でも、2つの基準を満たしていれば、加害者に損害賠償を請求することも可能です。
そこで今回は、交通事故の打撲に関する事故の知識をご紹介していきます。
交通事故で負う打撲について
打撲は、交通事故で体の一部に強い衝撃が加わることで発症します。皮膚に傷口はないものの、皮下組織や筋肉が損傷を負い、小さな血管が破壊された状態です。そのため、打撲の怪我を負うと、以下のような症状があらわれます。
- あざ
- 痛み
- 腫れ
- 発熱 など
場合によっては、皮膚の下に血腫ができたり、しびれがあらわれることもあります。また、交通事故による打撲は、痛みがすぐにあらわれるとは限りません。
交通事故の打撲の痛みはすぐにあらわれない?
交通事故で打撲を負っていたとしても、「事故直後は、痛みを感じなかった。」という方がいらっしゃいます。なぜならば、事故直後は体が興奮状態にあるからです。
体が興奮状態になってしまうと、アドレナリンやβエンドルフィンといった物質が、体内に分泌されます。アドレナリンやβエンドルフィンは、鎮痛作用があるため、痛みを感じにくくなるのです。
したがって、体の興奮状態が落ち着いた頃、つまり事故発生から2~3日経った後に痛みを感じることもあります。そのため、事故直後に痛みがなくても、事故から数日間は体の様子を気に掛けておくことが大切です。
交通事故で打撲を負ったら応急処置を!
交通事故で打撲を負ってしまった場合、「RICE」という応急処置を行うことが大切です。「RICE」という応急処置を行うことで、打撲の痛みや腫れの悪化を防ぎ、怪我の治りを早めることにつながります。
「RICE」の応急処置は、それぞれ英単語の頭文字をとったもので、以下のような処置をあらわしています。
- REST:安静
- ICE:冷却
- COMPRESSION:圧迫
- ELEVATION:挙上
上記の応急処置について、一つひとつ解説していきます。
REST:安静
打撲を負った場合、体を無理に動かすと痛みが増したり、悪化する恐れもあります。そのため、打撲を負った部位を動かさず、安静を保つことが大切です。また、部位によっては、安静を保つ際に、三角巾や包帯、タオルなどで固定する場合もあります。
ICE:冷却
冷却は、痛みを軽減させたり、内出血や炎症を抑える効果が期待できます。冷却の方法としては、氷や水をビニール袋に入れた即席の氷嚢や冷却パックを使って、15~20分を目安に負傷部位に当てます。
ただし、冷やしすぎたり、負傷部位に直接氷を当ててしまうと、凍傷を負ってしまう可能性があります。したがって、冷却は適度に行うことが大切です。
COMPRESSION:圧迫
圧迫は、内出血や腫れを防ぐことができます。圧迫の方法としては、負傷部位に適度な圧迫を加えながら、伸縮性のある包帯やテーピングで巻きます。包帯やテーピングを使うことによって、圧迫された状態を続けることができます。
しかし、圧迫し続けると、血流の流れが悪くなるため、様子を見ながら行ってください。
ELEVATION:挙上
挙上とは、負傷部位を心臓よりも高い位置に保つ処置です。挙上を行うことにより、内出血を防いだり、痛みを和らげることができます。
ただし、負傷部位によっては、挙上が難しいこともあります。その場合は、椅子や枕、クッションなどを使うことで、挙上しやすくなります。
交通事故で打撲を負ったら損害賠償は請求可能?
交通事故の被害者は、加害者に治療費や慰謝料、通院交通費といった損害賠償を請求することができます。しかし、交通事故で打撲を負ったとしても、「軽い怪我だし、加害者に損害賠償を請求できないのでは?」と思っている方もいるのではないでしょうか。
以下のような基準を満たしていれば、被害者は加害者に損害賠償を請求できます。
- ①人身事故で処理されていること
- ②怪我の治療を行っていること
①人身事故で処理されていること
まず第一に、「被害にあった交通事故が、人身事故で処理されているか」を確認しなければなりません。なぜならば、人身事故と物損事故では、加害者に請求できる損害賠償に大きな差があるためです。
請求できる損害賠償 | 具体例 | |
---|---|---|
人身事故 | 積極損害 | 治療費 手術費 通院交通費 器具や装具の購入費 付添看護費 など |
消極損害 | 休業損害 逸失利益 |
|
慰謝料 | 入通院慰謝料 後遺障害慰謝料 死亡慰謝料 |
|
物損事故 | 壊れたモノに対する賠償のみ | 修理費 代車費用 買い替え費用 など |
したがって、物損事故で処理されていた場合は、打撲の治療を受けたとしても、治療費や慰謝料などの損害賠償を加害者に請求することはできません。そのため、怪我を負っている場合は、人身事故で処理する必要があります。
交通事故で怪我を負ったにもかかわらず、物損事故で処理されていた場合は、人身事故へ切り替えることも可能です。人身事故へ切り替えを行う場合、以下のような手続きを行うことになります。
- 病院で交通事故が原因の怪我であることを証明できる診断書を取得する
- 管轄の警察署に「人身事故への切り替えを行いたい旨」の連絡を入れる
- 後日、警察や加害者と実況見分を行い、発生した交通事故が人身事故かを判断する
②怪我の治療を行っていること
打撲に対する損害賠償を加害者に請求する場合、実際に怪我の治療を行っていなければ請求できません。治療を受けていないにもかかわらず、治療費や入通院慰謝料などを加害者に請求してしまうと、不正請求にあたります。
したがって、打撲の治療を受けなければ、加害者に損害賠償を請求できないということになるのです。
交通事故による打撲が原因で仕事を休んだら?
交通事故による打撲で打撲を負ってしまうと、治療や手続きなどで仕事を休まざるを得ない状況になることもあるため、収入が減少してしまうこともあります。このような場合、損害賠償の1つである休業損害を請求することをおすすめします。
休業損害とは、交通事故の怪我が原因で、仕事を休んでしまった分の収入を補填するために支払われる損害賠償のことです。
休業損害が支払われる対象者は、会社員や自営業、アルバイトといった方だけではありません。交通事故で打撲を負い、家事ができなくなった専業主婦の方にも支払われます。なぜなら家事は、社会的に金銭で評価できるものと考えられているためです。
交通事故の打撲についてのまとめ
いかがでしたか。交通事故で打撲を負ってしまった場合、すぐに応急処置を行うことが大切です。「安静・冷却・圧迫・挙上」のRICEと呼ばれる応急処置を行うことで、打撲の症状悪化を防いだり、完治までの期間を短くすることができます。
また、打撲は軽い怪我ではありますが、以下のような基準を満たしていれば、加害者に損害賠償を請求することができます。
- ①人身事故で処理されていること
- ②怪我の治療を行っていること
したがって、交通事故で打撲の怪我を負ってしまった場合は、損害賠償の請求を忘れずに行うようにしてくださいね。