交通事故の過失割合とは?過失割合決定までの流れ

2019年02月04日

交通事故においての被害者と加害者は、過失割合によって決められます。「過失割合」という言葉だけは聞いたことがあっても、過失割合の決め方や種類など、詳しい内容を把握している人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、

  • 過失割合とは
  • 交通事故のパターン別過失割合
  • 過失割合は誰が決めるのか
  • 過失割合に納得できない場合の対処法

などについて詳しく解説しています。

過失割合とは

過失割合とは、交通事故の当事者それぞれにある、交通事故に対する責任の割合です。過失の割合が多ければ加害者、少なければ被害者となります。被害者だからといって過失が0であるとは限らず、被害者にも何らかの過失が認められる場合もあります。

過失割合の決め方

すべての交通事故を平等に解決するため、過失割合には一定の基準があります。
どのような場面で、どのような交通事故が起きるかというのは交通事故によって異なりますが、似たようなパターンの交通事故は存在します。同じような交通事故の場合、同じ過失割合にならないと不平等ですよね。
そこで過失割合は、似ている交通事故のパターンごとの過去の判例を基準として決められています。この基準のことを、過失割合認定基準といいます。

過失割合認定基準の調べ方

過失割合認定基準は、誰でも知ることができます。

過失割合認定基準の調べ方は、2つ。

  • 別冊判例タイムズで調べる
  • 交通事故の赤い本や青い本で調べる

一つひとつの内容を詳しく見ていきましょう。

別冊判例タイムズで調べる

別冊判例タイムズとは、交通事故の被害者と加害者にある、過失割合の判断基準が記載されている法律雑誌です。別冊判例タイムズに記載されている「民事交通訴訟における過失相殺率等の認定基準」の項目を読むと、交通事故のパターン別における過失割合が書かれています。そこから自身の交通事故のパターンに当てはめ、適切な過失割合を知ることができます。

交通事故の赤い本や青い本で調べる

赤い本とは、日弁連交通事故センター東京支部が販売している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」という本です。表紙が赤いため、「赤い本」と呼ばれています。
青い本とは、日弁連交通事故相談センター本部が発行している「交通事故損害額算定基準」という本です。表紙が青いため、「青い本」と呼ばれています。

赤い本と青い本は、弁護士向けの本ですが、過失割合認定基準についても書かれているので、過失割合を調べたいときに利用することができます。

赤い本や青い本、別冊判例タイムズは、書店やネットで購入することができます。

過失割合の修正要素

修正要素とは、基本的な過失割合に対し、それぞれの交通事故における修正要素(加算要素や減算要素)を加えることです。

過失割合の修正要素には、著しい過失と重過失があります。

著しい過失

著しい過失とは、交通事故の状態によって通常想定されている過失のことをいいます。

著しい過失の例は、以下の通りです。

  • ハンドルやブレーキ操作の誤り
  • わき見運転や著しい前方不注意
  • 通話のための携帯電話使用や、画像を見ながらの運転
  • 酒気帯び運転
  • 速度超過違反(高速道路以外で約15km~30kmオーバー)

重過失

重過失とは、わずかな注意さえすれば交通事故を防げるとわかっていながらも、注意をしなかった場合の過失のことをいいます。

重過失の例は、以下の通りです。

  • 居眠り運転
  • 酒酔い運転
  • 無免許運転
  • 速度超過違反(高速道路以外で約30km以上オーバー)
  • 過労や病気、薬物の影響などの理由で正常な運転ができない状態での交通事故

交通事故のパターン別過失割合

ここでは、交通事故のパターンによる具体的な過失割合について解説しています。

交通事故のパターンは、4つ。

  • 車対車
  • 車対バイク
  • 車対自転車
  • 車対歩行者

それぞれの過失割合について詳しく見ていきましょう。

車対車

車対車による交通事故の場合、信号機の色によってそれぞれの過失が大きく変わってきます。

例)AとB(どちらも車)が起こした交通事故。

赤信号 青信号 黄信号 過失割合
A B A:B=100:00
A B A:B=80:20
AとB A:B=50:50

車対バイク

車対バイクによる交通事故の場合、車対車による交通事故よりも、バイクの過失が10~20%下がります。なぜなら、バイク側の負う怪我の方が重症になる可能性が高く、車体が小さいためです。これを単車修正といいます。

例)A(車)とB(バイク)が起こした交通事故

赤信号 青信号 黄信号 過失割合
A B A:B=100:0
A B A:B=90:10
B A A:B=30:70

車対自転車

自転車は、バイクよりも車体が小さいことから交通事故を避けにくく、死亡する事例も多くあります。これにより、車対自転車による交通事故の場合、車の過失割合はかなり高くなるといえます。

例)A(車)とB(自転車)が起こした交通事故

赤信号 青信号 黄信号 過失割合
A B A:B=100:0
B A A:B=20:80
A B A:B=10:90
B A A:B=40:60
AとB A:B=70:30

これまでの交通事故の例では、赤信号:青信号の過失割合は100:0となっていました。しかし車対自転車の交通事故の場合、自転車が赤信号の場合でも車側に過失があると認められます。

車対歩行者

歩行者は、自転車よりも弱い立場にあります。そのため、車対歩行者による交通事故の過失割合は、車側がかなり高くなるといえます。

また、車対歩行者による交通事故では、過失割合の修正要素があります。歩行者が子どもや幼児、高齢者や障害者の場合、車側に過失割合が加算されます。

例)A(車)とB(歩行者)が起こした交通事故

赤信号 青信号 黄信号 過失割合
A B A:B=100:0
A B A:B=85:15
AとB A:B=75:25
B A A:B=20:80

過失割合は誰が決める?

交通事故直後に警察へ連絡すると、事故現場や目撃者の確認などの実況見分を行います。警察は実況見分調書を作成してくれますが、過失割合の決定までは行いません。

過失割合は、交通事故にあった当事者の保険会社が、実況見分調書や事故現場の状況を基に話し合いを行い決定します。

過失割合の決定に警察が関わらない理由

交通事故にあったら、警察へ連絡することが義務付けられています。そのため、交通事故直後の事故現場の状況は、保険会社よりも警察の方が詳しく把握しているといえます。

しかし、警察が過失割合の決定に関与することはありません。
なぜなら、過失割合の決定は民事上の問題であり、警察には「民事不介入」という決まりがあるためです。

過失割合に納得いかない場合の対処法


ここでは、保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合、どのような対処をとるべきかについて解説していきます。

適切な過失割合を調べる

まずは、上記で述べた別冊判例タイムズや赤い本、青い本を確認し、適切な過失割合を調べることから始めましょう。交通事故の知識が無知のままだと、保険会社が妥当ではない過失割合を提示していることに気づくことができません。

適切な過失割合が分かったら保険会社に伝え、過失割合の修正を要請しましょう。

弁護士に相談してもよい

適切な過失割合に修正するよう保険会社へ要請しても、受け入れてくれない場合、弁護士に相談するとよいでしょう。

弁護士は法律のプロであるため、過失割合認定基準を適切に当てはめることができます。また、保険会社との交渉も得意としているため、保険会社から適切でない過失割合が提示されることを防ぐこともできます。

交通事故の過失割合についてまとめ

交通事故の過失割合は、交通事故の被害者と加害者を決める重要な割合です。被害者の過失割合が高い場合、請求できる損害賠償の金額も変わってきます。過失割合の決定は保険会社が行いますが、任せっきりにはせず、自身でも過失割合認定基準について把握しておくことが大切です。