交通事故の治療費と過失割合の関係性とは?保険によっても異なる!

2019年02月01日

交通事故の加害者になった場合、被害者に治療費を支払うことになります。しかし、加害者は、必ずしも被害者の治療費を全額支払うというわけではありません。当事者同士の過失割合によっては、支払わなければならない治療費が減額されることもあるからです。

そこで今回は、被害者に支払う治療費と過失割合との関係について解説していきます。

交通事故の加害者は治療費を支払う

交通事故の加害者は、被害者が怪我を負った場合、治療費を支払わなければなりません。加害者が被害者に支払う治療費は、被害者の怪我が「完治」または「症状固定(※1)と診断を受けるまで」にかかった費用を支払うことになります。

しかし、交通事故の加害者が支払うのは、治療費だけではありません。交通事故の加害者は、治療費を含む損害賠償を支払わなければなりません。

※1 症状固定とは、これ以上治療を行っても、症状の緩和が見込めない状態のこと。つまり、後遺症が残った場合に、症状固定と診断を受ける。

損害賠償で支払うお金は様々

加害者が損害賠償として、被害者に支払うお金は、大きく以下の3つに分類することができます。

  • 積極損害
  • 消極損害
  • 慰謝料

積極損害

積極損害は、交通事故が原因で被害者が実際に支払うことになった費用を指します。そのため、治療費は積極損害に該当します。その他には、手術費や通院交通費、付添看護費、器具や装具の購入費などがあります。

消極損害

消極損害とは、被害者が交通事故にあわなければ、得られたはずの将来の収入や利益のことを指します。例えば、休業損害逸失利益が消極損害に当てはまります。

  • 休業損害:交通事故が原因で仕事を休んだために、得られなかった収入を補填するもの。
  • 逸失利益:交通事故が原因で後遺症が残り、労働能力が低下したことで、得られなくなってしまった将来の収入の減収分を補填するもの。

慰謝料

慰謝料とは、交通事故の被害者が負った精神的苦痛の対価として、加害者が支払うものを指します。交通事故の慰謝料は、以下2つの種類があります。

  • 入通院慰謝料:交通事故による怪我が原因で、入通院をしたために負った精神的苦痛の対価として支払われるもの
  • 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことで負った、精神的苦痛の対価として支払われるもの

支払う治療費は過失割合に左右される

そもそも過失割合とは、発生した交通事故の当事者双方にある責任の割合のことで、保険会社によって決められるものです。ただし、責任の割合は必ずしも加害者の方が高いとは限らず、被害者の方が高い場合もあります。

先程ご紹介した、治療費を含む損害賠償は、当事者同士の過失割合によって変動し、このことを過失相殺と呼びます。治療費を含む損害賠償は、以下のような式で計算され、過失相殺が行われます。

    被害者の損害額の合計 -(被害者の損害額の合計 × 被害者の過失割合)

ただし、自賠責保険任意保険では、過失相殺の適用のされ方が異なります。

自賠責保険の場合

自賠責保険の場合、被害者の過失割合が70%以上を超えるときに限り、以下のような過失相殺が適用されます。

被害者の過失割合 過失相殺
傷害に関して 後遺障害に関して
70%未満 減額なし
70%以上80%未満 20%減額 20%減額
80%以上90%未満 30%減額
90%以上100%未満 50%減額

したがって、被害者に支払う損害賠償額が100万円だったとき、被害者に20%の過失があったとしても過失相殺にはならず、加害者は100万円支払うことになるのです。

任意保険の場合

任意保険の場合、被害者の過失割合がそのまま過失相殺に適用されるため、損害賠償は以下のように減額されます。

被害者の過失割合 過失相殺
10% 10%減額
20% 20%減額
30% 30%減額
40% 40%減額
50% 50%減額
60% 60%減額
70% 70%減額
80% 80%減額
90% 90%減額
100% 100%減額

したがって、被害者に支払う損害賠償額が100万円だったとき、被害者に20%の過失があった場合は過失相殺が適用されます。そのため加害者は、20万円減額された金額である80万円を支払えばよいということになります。

過失割合でもめることもある

過失割合によって、治療費を含む損害賠償額が左右されるため、示談交渉の際に当事者同士が過失割合でもめることがあります。その場合は、民事裁判に発展することもあります。

民事裁判に発展するとどうなる?

民事裁判とは、民事訴訟法に基づき審理が行われ、損害賠償に関する問題を取り扱う裁判のことです。民事裁判を起こす場合、訴えの内容を記載した訴状を裁判所に提出しなければなりません。

訴状を提出してから1~2ヶ月経つと、以下のような流れで裁判が進められていきます。

  • 第1回口頭弁論
  • 争点整理手続き
  • 証拠調べ
  • 判決の言い渡し

上記の裁判手続きを行うなかで、和解や再審を求められることもあります。和解になった場合は、判決を待たずして裁判が終了します。一方、再審になった場合は、裁判が長引くことになるため、裁判が終了するまでに2~3年かかることもあります。

民事裁判を行う場合は、費用が必要!

また、民事裁判を行う場合、以下のような費用が必要になります。

  • 訴訟費用
  • 弁護士費用

訴訟費用

訴訟費用とは、裁判を起こす際にかかる印紙代や切手代といった手数料のことです。この費用は、相手に請求する金額によって、以下のように変動します。

請求金額 訴訟費用
50万円 5千円
100万円 1万円
500万円 3万円
1000万円 5万円
5000万円 17万円

また、上記の訴訟費用は、敗訴した者が負担することになります。

弁護士費用

弁護士費用とは、裁判の解決を弁護士に依頼した場合にかかる費用のことです。弁護士費用は、依頼した弁護士によって金額が異なり、相談料や着手金、報酬金、実費、日当などがかかります。

過失が影響する治療費支払いについてのまとめ

いかがでしたか。交通事故の加害者が被害者に支払う治療費は、過失割合によって変動します。ただし、自賠責保険と任意保険では、過失相殺が以下のように異なります。

  • 自賠責保険の場合:被害者の過失が70%を超えなければ、過失相殺されない
  • 任意保険の場合:被害者の過失割合関係なしに、そのまま過失相殺される

そのため、過失割合で当事者同士がもめることもあります。このような状況になると、民事裁判に発展する場合もあるということを覚えておきましょう。