交通事故で骨折したら慰謝料はもらえる?保険会社へ請求する方法
もくじ
交通事故で骨折したかもしれない…
交通事故にあって怪我をしてしまったとき、骨折してしまうかもしれません。骨折といっても種類や治療方法は様々です。今回の記事では、交通事故で多い骨折の症状や治療方法、慰謝料などについて解説していきます。
骨折の種類とそれぞれの治療方法
骨折には、いくつかの種類がありそれぞれで症状の程度や治療方法が異なります。
- 開放性骨折
- 単純骨折
- 圧迫骨折
- はく離骨折
- 粉砕骨折
それぞれの症状と治療方法を見ていきましょう。
開放性骨折
開放性骨折とは、一般的に「複雑骨折」と呼ばれているものです。病院の診断名では「開放性骨折」といわれることもあります。
複雑骨折と聞くと、皮膚の下で骨が複雑に折れてしまった状態とイメージする方が多いのではないでしょうか。しかし実際は、折れた骨が皮膚を突き破り、体外に露出してしまっている状態のことをいいます。
体外に骨が飛び出ると、折れた骨によって神経や周辺の筋肉などが傷ついてしまいます。また、出血することによって細菌感染してしまう可能性もあるため、早急に処置を受けなければいけません。
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開放性骨折の治療方法
まず止血し、手術で傷の処置を行った後、ギブスや石膏などによる固定
単純骨折
単純骨折とは、皮膚の下で骨折が起きている状態のことをいい、閉鎖性骨折や皮下骨折とも呼ばれています。
単純骨折は、体の中で皮下組織を傷つけてしまっている可能性があります。開放性骨折に比べ軽い骨折のイメージがありますが、早急に処置を行わなければいけません。
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単純骨折の治療方法
ギプスでの固定を行う
圧迫骨折
圧迫骨折とは、外傷や椎骨が弱ってしまうことによって引き起こる骨折です。
脊椎を押しつぶした状態で骨が折れてしまい、高齢者の方や骨粗しょう症を患っている方に多いといわれています。
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圧迫骨折の治療方法
コルセットでの固定
はく離骨折
はく離骨折とは、腱や筋肉が強い力で引っ張られたりひねられたことによって、骨と接合されている部分が剥がれてしまう骨折のことをいいます。
はく離骨折は体を動かすことができるため、捻挫や突き指だと勘違いされてしまうことが多いといわれています。
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はく離骨折の治療方法
ギプスによる固定
非ステロイド消炎鎮痛薬という薬を用いた薬物療法
粉砕骨折
粉砕骨折とは、交通事故やスポーツなどで強い衝撃を受け、骨と神経が粉々に砕けてしまう状態のことです。交通事故では、車内で圧迫されることによって粉砕骨折になる可能性があります。
粉砕骨折は、骨折の中で最も症状が重いといわれていてます。粉砕した骨が周辺の神経も傷つけてしまっているため、痛みも非常に強くあらわれます。治療後はリハビリを行うこともあるため、他の骨折に比べて治療期間も長いといわれています。
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粉砕骨折の治療方法
ギプスや副木、数回に分けた手術による固定
リハビリを目的とした鍼灸による施術
交通事故で多い肋骨・骨盤の骨折について
ここでは、交通事故でみられることが多い骨折について、説明していきます。
交通事故によって骨折しやすい部位は、以下の3つ。
- 肋骨
- ろく軟骨
- 骨盤
それぞれの部位が骨折した場合の症状や治療方法を見ていきましょう。
肋骨の外傷
肋骨とは、肺のまわりを囲っている骨です。あばら骨とも言われ、とても衝撃に弱く骨折しやすい骨です。
骨折の原因
肋骨はとても衝撃に弱いです。交通事故の場合、胸部が車両と接触したときや転倒して地面に胸部を打ちつけることにより、骨折するというケースがよくみられます。
症状
肋骨の骨折は、他の部位の骨折よりも痛みが少ないです。肋骨は、複数の骨が互いに支え合っています。したがって、1本の肋骨が折れたとしても、他の骨折よりも痛みが生じづらいのです。
しかし、複数の肋骨が骨折してしまったり、骨折した肋骨が内臓に刺さってしまうと、激しい痛みが伴うこともあります。
治療について
肋骨の骨折では、よく保存療法が選択されます。一般的な治療法だと、バンドのようなもので胸部を3~4週間固定するという方法があります。
ろく軟骨の外傷
ろく軟骨とは、胸の中心部にあり、肋骨と胸骨をつないでいる軟骨です。ろく軟骨は、身体をスムーズに動かすという重要な役割を担っています。
骨折の原因
ろく軟骨も、肋骨と同じくとても衝撃に弱いです。交通事故の場合、胸部が車両と接触したときや転倒して地面に胸部を打ちつけることにより、骨折するというケースがよくみられます。
症状
ろく軟骨の骨折は、骨折部分に激しい痛みが現れます。また、ろく軟骨には、胸部の弾力性や可動性を高める役割があるため、ろく軟骨を骨折すると、痛みにより胸部をねじったり曲げたりすることができず、日常生活に大きな支障が出てしまいます。
治療について
ろく軟骨も肋骨と同様で、バンドなどを用いて固定する保存療法が選択されます。しかし、ろく軟骨は、柔軟性のある軟骨組織なので固定が難しいのです。したがって、骨よりも回復が遅く、治療に長い時間がかかるといわれています。よって、4~6週間の固定が必要だと言われています。
骨盤の外傷
骨盤とは、骨盤は体の中心にある骨で、上半身と下半身をつなぐ役割を果たしています。その他に、内臓や生殖器などを保護する役割や上半身を支える基盤となる役割を担っています。
骨折の原因
骨盤の骨折は、一般的に外部から強い衝撃を受けたときに生じます。そのため、交通事故の場合、骨盤付近が車両と接触したり、衝撃で転倒しガードレールに骨盤をぶつけたなどの原因で骨折することが多いです。
症状
骨盤の骨折は、とても強い痛みを伴います。その痛みから、歩くことなどができなくなることも多々見受けられます。また、骨盤が骨折したときには、大量に出血することが多く、出血と痛みでショック状態になる場合もあります。さらに、骨盤の骨折により骨盤が支えている内臓や生殖器などにも影響が出て、排泄障害や神経障害などが症状が現れることもあります。
治療について
骨盤の骨折は、その種類によって手術が必要な場合と必要でない場合があります。その種類は、安定型と不安定型と言われています。
- 安定型
- 不安定型
靭帯による骨盤の固定が可能な状態。そのときは、大量出血のおそれも低くいので、自然治癒が見込めます。そのため、手術を行わないことがあります。
一方…
靭帯による骨盤の固定が不可能な状態。このときには、大量出血をすることが多く、自然治癒が見込めないことも多いです。そのため、手術が必要になる可能性が高くなってしまいます。
骨盤の骨折でリハビリする場合は、3段階にわたって行われます。
- 第1段階
- 第2段階
- 第3段階
ベッド上での安静期間に行われます。この段階では、骨盤に負担をかけてはいけないので、簡単な筋力トレーニングやマッサージ・ストレッチによる股関節の可動域運動を行っていきます。
骨盤に少し負荷をかけつつリハビリを行います。この段階では、医師の判断でかける負荷を体重の3分の1、2分の1、2分の3と増やして、平行棒を用いた歩行訓練などをします。
完全に体重分の負荷をかけて、立ち上がることや階段の上り下り、車の乗り降りなどの動作訓練を行っていきます。
骨折を放置しておくのは大変危険です。また、骨折が生じている場合には、打撲などの内部出血も併発していることがあります。
こうしたことから、事故後は必ず病院に行くことをオススメします。骨折しているかもしれないと思うような箇所はなるべく動かさないようにし、動けない場合にはすぐに救急車を呼んで対応しましょう。
骨折かどうか判断するには?
交通事故にあって気が動転していると、骨折しているかわからない場合があります。
骨折が疑われる箇所を軽く押してみましょう。もしも強い痛みがあれば骨折の疑いが高いようです。交通事故後に痛みが全く引かないという場合も、骨折の可能性が高いといえます。
このように、骨折を判断するには色々な方法がありますが、自分で骨折かどうか判断するには限界もあります。そのため、少しでも骨折の疑いがあるならば迷うことなく病院で診てもらうようにしておきましょう。
骨折した場合、慰謝料はもらえる?
交通事故が起きて怪我人が出た場合、物損事故ではなく人身事故の扱いとなります。人身事故の被害者であれば、加害者側の保険会社へ慰謝料を請求することができます。
骨折した場合に受け取れる可能性のある慰謝料は、以下の2つです。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
それぞれ解説していきます。
骨折したときの入通院慰謝料
交通事故で骨折したときは、入院や通院をしたりして治療をする必要があります。その場合、入院や通院をした日数に応じて、入通院慰謝料を受け取ることができます。
入通院慰謝料とは、交通事故で入通院をすると精神的苦痛が伴います。その対価として支払われる慰謝料のことです。また、その金額は、入通院の日数に応じて高くなっていきます。
骨折したときの入通院慰謝料についての疑問
①骨折した部分をギプスで固定している間の慰謝料はどうなるの?
交通事故で骨折して入院したときに、骨折した部分をギプスで固定されることが多いと思います。その場合、骨折が完治するまで入院するのではなく、ギプスで固定をしたまま自宅療養になることも少なくありません。
退院してもギプスをしたままでは、日常生活に支障が出てしまいますよね。しかし、「退院したし、慰謝料は減ってしまうかも。」と心配になる方も多いのでは?ここでは、ギプスで固定している間の慰謝料について説明していきます。
ギプスで固定したままの自宅療養 ≒ 入院期間
このように、ギプスで固定したままの自宅療養は、入院期間と同じものとみなされます。そのとき、裁判所が骨折の部位や程度をみて、慰謝料を算定もらえますよ。そのような場合もあるということを、念頭に置いておきましょう。
②骨折の内容によって慰謝料の金額は変わる?
入院期間が同じ場合、「1ヶ所の骨折と3ヶ所の骨折で慰謝料に違いはあるのか。」気になりますよね。もし3ヶ所の骨折をしていたときには、重症事例という扱いで、入院期間に対応する慰謝料から増額されることもあります。
そのほかにも…
- 骨折が複数ヶ所に及ぶとき
- 頭部を骨折したとき
- 複雑骨折や開放骨折など骨折の状態が重症のとき
などの場合は、入院期間に応じた慰謝料より増額できることがあるようです。
※増額幅は、骨折の内容によって違いますが、約2~3割の増額が目安。
骨折したときの後遺障害慰謝料
交通事故により後遺障害が残ってしまうと、精神的な損害を受けますよね。このときの精神的損害に対する対価として支払われるのが、後遺障害慰謝料です。
また、後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害の等級で支払われる金額が変わってきます。等級の数が少ないほど、後遺障害慰謝料で支払われる金額も高くなります。
しかし、後遺障害慰謝料は後遺障害等級認定を申請し、後遺障害の等級が認められた場合に受け取ることができるものです。
骨折の後遺障害の種類
骨折をした場合に残る後遺障害の種類は大きく分けて4つあります。それはこちら。
- 欠損障害
- 短縮障害
- 機能障害
- 変形障害
- 神経傷害
腕や脚の全部や一部を失ってしまったとき。
脚の骨盤の下部から足首にかけての長さが、正常な時より短くなってしまったとき。
腕や脚の関節の機能が失われてしまったり、可動域に制限ができてしまった場合。
腕や脚に偽関節が残る。または、骨折したところが通常の期間を過ぎても戻らないとき。
骨折した部分に痛みやしびれなどの神経感覚の障害が残ってしまったとき。
これらは、程度によって等級が認定されます。
交通事故の慰謝料における3つの計算基準
交通事故の慰謝料の計算基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があります。この3つの計算基準は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料のどちらの場合でも使うものです。
それぞれ計算方法が異なるので、ここで簡単に説明していきます。
自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険が採用する基準のことです。最低限の補償が目的なので、3つの基準の中で最も金額が低くなっています。
任意保険基準
任意保険基準では、任意保険会社が独自の基準によって慰謝料の計算をしています。一定の基準は存在するのですが、保険会社によって基準が異なるので、非公開になっています。
※任意保険とは、運転者の任意で加入する保険で、自賠責保険ではカバーできないものを補償してくれます。
弁護士基準
弁護士基準では、裁判所の考え方や過去の判例を基準に慰謝料の計算を行います。
入院や通院の日数に比例して、金額は増えていきますが、不規則な通院をしたり、通院頻度が少ないと、減額されてしまうことがあります。
また、弁護士基準は、3つの基準の中で最も高い計算方法になっています。
骨折したときに受け取る慰謝料の請求方法
骨折した場合、受け取ることのできる慰謝料は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2つです。それぞれ請求方法が異なります。
入通院慰謝料の請求方法
怪我の治療と同時に、慰謝料の請求も進めていくことが大事です。
慰謝料は通院日数などによっても変わってきます。痛みを我慢したりせず、症状が良くなるまでは担当医の指示のもと、通院をしましょう。
- 1.病院(整形外科)へ行き、診断書を取得する
- 2.物損事故の処理を受けた場合は、警察へ行き人身事故扱いにしてもらう
- 3.加害者側の保険会社へ連絡し、手続きをする
- 4.症状が良くなるまで通院する
ポイントは、必ず「人身事故扱いにする」こと。それから、医師の診断書を保険会社へ提出することです。
後遺障害慰謝料の請求方法
後遺障害慰謝料の請求方法は、以下の2つ。
- 加害者請求
- 被害者請求
それぞれの請求方法を、詳しく見ていきましょう。
加害者請求
加害者請求は、後遺障害等級認定の申請手続きを、全て加害者側の任意保険会社に任せる方法です。被害者がすべき事は、加害者側の任意保険会社に対して後遺障害診断書の提出を行うことのみです。
被害者は手続きの手間を省くことができますが、どのような内容で手続きが行われているのかを知ることができません。
被害者請求
被害者請求は、被害者が直接、加害者側の自賠責保険会社に対して後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。被害者は、後遺障害等級認定に必要な書類をすべて自分で集め、加害者側の自賠責保険会社へ送る必要があります。
被害者請求は被害者本人が手続きを行うため、加害者請求と比べると時間と手間がかかってしまうでしょう。しかし、被害者自身が納得しながら手続きを進めることができ、また適切な後遺障害等級が認定される可能性も高まります。
骨折後、慰謝料もらうときに気をつけること
骨折をしたとき、加害者にいろいろな賠償金の請求ができます。被害者としては、なるべく損をせず、妥当な請求をしたいですよね。そのときに気をつけることが3つあるので、以下で説明していきます。
①症状固定まで通院すること
入通院慰謝料は、症状固定になるまでを慰謝料として計算します。したがって、症状固定まで長く通院すれば、その期間分の慰謝料を受け取ることになり、受け取る慰謝料の金額が高くなるのです。
②自分の状態に適した、後遺障害認定を受ける
交通事故では、後遺障害が認定されなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求ができません。もし、後遺障害が残ってしまったときには、適切な後遺障害の認定を受けることが大切です。
しかし、後遺障害等級認定には、知識やテクニックが必要です。最低限の医学的知識を持っている方が優位に進められます。
また、適切な後遺障害の認定を受ける場合、検査が必要になることもあります。骨折した箇所の周辺組織の状態や細かい骨の破片など些細な異常も確認しておけば、後に証拠として出すことができるはずです。
やっておくべき検査はこちら。
- 画像診断、CTやMRI
- 神経伝達速度検査
- 筋電図検査
③弁護士に依頼する
加害者側の保険会社と示談交渉をするとき、自分一人で対応したとします、すると、保険会社は任意保険基準で計算するので、賠償金の金額が低くなってしまう可能性があります。
一方、弁護士に示談交渉を依頼をすれば、弁護士基準で算定することになります。よって、賠償金は高い金額で受け取ることができるのです。
そのほかに、弁護士に示談交渉を依頼するメリットはこちら。
- 法律の知識を持っているので、上手に交渉できる。
- 交通事故の知識が豊富な弁護士だと、後遺障害等級認定手続きをスムーズに進められます。そのうえ、適切な認定結果を受けられる。
- 示談交渉によるストレスが少なくなる。
(例:被害者の過失割合を少なくできるように交渉してくれる)
などのメリットがあります。もし示談交渉をする場合は、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
交通事故で骨折したときの対応まとめ
この記事では交通事故時に発生する骨折や慰謝料請求について詳しく解説しました。事故が起きてからでは、やらなくてはならないこともおろそかになってしまいます。
少しでも念頭に置いて、理解しておくことをおすすめします。