交通事故後に歯の後遺症が残ったら?後遺障害等級認定を申請する理由

2019年02月01日

このように、交通事故で歯が欠けてしまうこともあります。交通事故が原因で欠けてしまった歯は、後遺症として認められるのでしょうか。今回の記事では、交通事故で歯の後遺症が認められるのか、歯の後遺症が認められた場合どうすればいいのかについて説明していきます。

交通事故で歯が欠損した場合に行う治療


「交通事故で歯が欠けてしまった。」という事態が起こる可能性もあります。

歯が欠けてしまうと、欠けてしまった歯の両隣の歯に負担がかかってしまいます。場合によっては、負担がかかってしまった歯の両隣の歯も失うこともあるので、歯の治療を行うべきです。

では、歯が欠けてしまった場合にできる治療は、何があるのでしょうか。歯が欠損した場合に行う治療は、以下の通り。

  • ①義歯(入れ歯)
  • ②ブリッジ
  • ③アタッチメント
  • ④歯牙移植
  • ⑤インプラント

①義歯(入れ歯)

義歯(入れ歯)とは、失った歯を人工の歯で補う治療方法で、取り外すことが可能です。

義歯は、以下のように2種類に分けることができます。

  • 総義歯:1本も歯がない場合に装着するもの
  • 局部義歯:1本以上歯がある場合に装着するもの

このようにそれぞれの状態によって使い分けます。

②ブリッジ

ブリッジとは、歯が数本欠けてしまった場合に行う治療方法です。

欠損した両側の歯を支えにして、ブリッジと呼ばれる架工義歯をかぶせてつなげます。そのため、歯のない部分は、人工の歯で補うことになります。基本的にブリッジは取り外さないものです。

③アタッチメント

アタッチメントとは、「支えとなる歯に固定される部分」と「義歯のような取り外せる部分」を連結させる治療方法です。アタッチメントの場合、義歯部分の歯の動きがスムーズになり、義歯と比べてはずれにくいというメリットがあります。

④歯牙移植

親不知のような自分に不必要な歯を抜き、歯が欠損した場所の骨に移植するという治療方法です。

⑤インプラント

インプラントとは、チタンでつくられた人工の歯根を歯が欠損した部分に埋め込み、その上に人工歯冠を作る治療方法です。しかし、インプラントは技術や知識が必要になるため、この治療を実施している歯科医院は限られています。

歯の治療費を必ず加害者に請求できるわけではない

インプラントはもともと健康保険治療対象外であること、審美性を重視した治療法であること、そして手術を伴い、治療期間が長くなるという3つの特徴があります。皮肉にもこの3つの特徴が、交通事故における歯や顎の欠損に対する賠償請求は不利となる可能性があります。と言うのも、交通事故等で損傷または失ってしまった機能回復に対し、インプラントは治療範囲を十分に超えていると判断されてしまう可能性が高いからです。つまり、失った機能回復に対する治療は、健康保険が適用される入れ歯やブリッジで十分であり、この二つの治療法が、損害賠償の対象となることが妥当であると判断される可能性が高いでしょう。そうなると、入れ歯やブリッジの治療費相当分くらいのみ、賠償の対象になると言われることがあるそうです。

交通事故が原因の治療に歯科インプラントは認められる?

①~⑤で挙げた歯の治療費は、必ず加害者に請求できるというわけではありません。損害賠償請求の対象となる歯の治療は、義歯(入れ歯)ブリッジの治療費です。その他の治療に関しては、一度保険会社に確認をとってから行うのがよいでしょう。

歯の欠損は後遺症が認められる?


交通事故後、歯の治療を行ったとしても、歯を失ったことに変わりありません。そのため、歯の後遺症は、後遺障害の等級が認められることがあります。

歯が欠損したときの後遺障害の等級

交通事故後、歯が欠損してしまった場合、以下のような後遺障害の等級に該当することがあります。

後遺障害の等級 内容
10級4号 14歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ※)を加えたもの
11級4号 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
12級3号 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
13級5号 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級2号 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

※歯科補綴(しかほてつ)とは、見た目やかみ合わせをブリッジや入れ歯など人工の歯で補う治療のこと。

後遺症が残ったら後遺障害等級認定を申請

交通事故により後遺症が残り、後遺障害の等級に該当している場合、後遺障害等級認定を申請することをおすすめします。

後遺障害等級認定を申請する理由とは?

後遺障害等級認定を申請し、後遺障害の等級が認められた場合、交通事故の被害者は後遺障害慰謝料逸失利益を受け取ることができます。

後遺障害慰謝料や逸失利益は、治療費や入通院慰謝料などの傷害に関する損害ではなく、後遺障害に関する損害です。そのため、後遺障害に関する損害は、自賠責保険の場合の上限額が被害者1名につき3000万円になっています。一方、傷害に関する損害は、自賠責保険の場合の上限額が被害者1名につき120万円です。したがって、後遺障害等級を認定することで、受け取れる損害賠償を増額することもできます。

後遺障害等級認定の申請手続き

後遺障害等級認定の申請手続きは、以下の2つの方法があります。

  • 事前認定
  • 被害者請求

①事前認定

事前認定とは、後遺障害等級認定の申請手続きを加害者側の保険会社に任せる方法です。

事前認定の手続きで被害者が行うことは、加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出することです。その後の手続きに関しては、すべて加害者側の保険会社が行ってくれるので、被害者は手続きの手間を省くことができます。

▶︎参考:後遺障害診断書の取得方法についてはこちら

②被害者請求

被害者請求とは、加害者側の保険会社に対して、被害者が直接、後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。

被害者請求で被害者は、後遺障害等級認定の申請に必要な書類を集め、加害者側の保険会社へ送らなければなりません。そのため、被害者請求は事前認定と比べて、手間と時間がかかってしまいます。しかし、被害者自身で後遺障害等級認定の手続きを行うため、手続きの内容が把握できます。したがって、納得のいく後遺障害等級認定を得られる可能性が高くなります。

被害者請求で必要な書類を以下の表にまとめました。被害者請求を行う際は、以下の表を参考にしてくださいね。

書類名 入手先
保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書 自賠責保険会社より取り寄せ
交通事故証明書 自動車安全センター
事故発生状況報告書 被害者が作成
医師の診断書 治療を受けた医療機関
診療報酬明細書 治療を受けた医療機関
印鑑証明 住民登録をしている市区町村(区役所等)
後遺障害診断書 治療を受けた医療機関

交通事故で歯の後遺症が残ったときの対応まとめ

いかがでしたか。交通事故で歯を欠損してしまった場合、後遺症として認められる場合もあります。

交通事故によって後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を申請しましょう。後遺障害等級認定を申請し、後遺障害の等級が認められた場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。そのため、損害賠償の増額が期待できるでしょう。