交通事故の被害で意識不明に…示談交渉は家族でもできる?

2019年06月27日

交通事故による被害の大きさは様々です。死亡はしなくても、意識不明の重体に陥ってしまう可能性もゼロではありません。
もし、家族がそんな事故に巻き込まれてしまった場合…意識は回復するのか、後遺症は残らないのか、加害者とどのようにやり取りをとるのかなど、疑問に感じることが多いと思います。
この記事では、被害者が意識不明になってしまった場合の回復の見込みや、示談交渉について解説していきます。
また、対策として応急処置の解説もしておりますので、最後までお読みください。

意識不明の原因とは?

テレビのニュースで「交通事故で被害者が意識不明の重体です」といった報道を耳にすることがありますよね。
例えば、交通事故が高速道路で起きた場合、自動車は時速80km前後のスピードでぶつかります。その時の衝撃はきっと、想像を超えるものだと思います。
では、交通事故の衝撃を受けた際、身体に何が起こって意識不明に陥ってしまうのでしょう?これから解説していきます。

意識不明の原因は頭部への衝撃

交通事故の大きな衝撃で、頭部外傷を負った場合に、意識不明になってしまう場合があるようです。
意識不明の中でも、様々な程度があります。

①2~3時間で意識が回復する場合
脳しんとうの場合は、事故の衝撃で一時的に意識不明になっても、数時間以内に回復するケースが多いです。
意識が回復した後も、特に後遺症が残らず、普段通りの生活を送ることができると思います。

②6時間以上意識が回復しない場合
交通事故発生から6時間以上経っても、意識不明の状態が続く場合は脳挫傷である可能性が高いです。
今後意識が回復しても、後遺症が残ってしまうケースもあります。

③意識が回復しない場合
頭部外傷の影響で脳障害が重度の場合は、どんなに時間が経っても意識が回復しないこともあります。
一般的に植物状態といわれていますが、医学的には遷延性意識障害と呼びます。
一度遷延性意識障害になると、ほとんどの方が一生意識が回復しないまま亡くなってしまうといわれています。

意識不明になった場合の後遺障害

後遺障害とは、症状固定時点で残っている症状を指します。
植物状態が続いている場合でも、症状固定の診断がされ、後遺障害等級認定が申請できます。
後遺障害等級は、後遺障害の程度によって1~14級に認定されます。等級に応じて請求できる慰謝料に差があります。
これから、後遺障害によって異なる等級と慰謝料を詳しく解説していきます。

植物状態のままの場合

遷延性意識障害で、意識が戻らないままだと、全面的な介護が必要になります。この場合、認定される後遺障害等級は1級になります。
後遺障害等級1級が認定された場合に、請求できる慰謝料は以下になります。

基準 慰謝料額
自賠責基準 1100万円
弁護士基準 2800万円

高次脳機能障害の場合

高次脳機能障害とは、脳の認知能力が低下する後遺障害です。主な症状は以下になります。

  • 記憶障害
      ・どこに物を置いたか忘れる
      ・同じことを何度も質問する
      ・新しいことを覚えられない
  • 注意障害
      ・集中力が続かない
      ・ぼーっとする

高次脳機能障害で認定される可能性のある後遺障害等級は、1、2、3、7、9級です。
請求できる慰謝料は以下になります。(1級は前述しているため省略)

  2級 3級 7級 9級
自賠責基準 958万円 829万円 409万円 245万円
弁護士基準 2370万円 1990万円 1000万円 690万円

てんかんの場合

てんかん発作を繰り返す脳の病気です。
症状としては、けいれんや、手足が突っ張り体を硬くする強直発作などが挙げられます。
てんかんで認定される可能性のある後遺障害等級は、5、7、9、12級になります。
請求できる慰謝料を以下で表にします。(7級と9級は前述のため省略)

  5級 12級
自賠責基準 599万円 93万円
弁護士基準 1400万円 290万円

被害者が意識不明のまま…示談交渉は誰が行う?

示談交渉は、交通事故の当事者が話し合いによって、損害賠償額や過失割合を決定するものですので、基本的には被害本人の意識回復を待つことが望ましいです。
しかし、前述したように植物状態が継続すると、症状固定の診断がされる場合があります。被害者本人の意思表示が行えない場合の示談交渉について解説していきます。
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家族が代理で請求するためには、申し立てが必要

「被害者本人が意識不明なら、家族が代理人として示談交渉をしよう」と考える方も多いと思います。しかし被害者が成人している場合、代理権がないため交通事故の示談交渉は、家族でも代理人になれません
しかし、被害者が未成年の場合は、両親(親権者)が代理になることができます
代理で示談交渉を行うためには、成年後見人を選任する必要があります。成年後見人とは、判断能力が十分でない方が不利益をために、家庭裁判所に申し立てをして、援助する人を選任してもらう制度です。
成年後見人が選任されると、後見人が被害者本人の代わりに示談交渉を進めたり、示談金を受け取ったりできます。また、後見人が弁護士に示談交渉を依頼することも可能です。
この際に注意しておきたいポイントが、成年後見人は一度選任されると、交通事故問題の解決後も一生後見人でいる必要がある点です。

示談交渉を弁護士に依頼するメリット

成年後見人に家族が選任された場合、示談交渉を代理で進めることができますが、示談交渉の相手は、加害者側の保険会社の担当者である可能性が高いです。担当者は、交通事故に関する知識が豊富なプロですので、なかなかこちらの言い分を主張するのが難しいかもしれません。
そのような時は、弁護士に依頼して示談交渉をサポートしてもらうことが可能です。
示談交渉を弁護士に依頼することのメリットを解説していきます。

示談金(慰謝料)の増額

示談金の項目に含まれる入通院慰謝料後遺障害慰謝料には、以下のように算出基準が3つあります。

  • 自賠責基準
     自賠責保険による基準。3つの中で最も金額が低い。
  • 任意保険基準
     加害者が任意保険に入っている場合の基準。自賠責基準と同等か少し高額になる。
  • 弁護士基準
     過去の裁判例を基にした基準。3つの中で最も高額。

示談交渉を弁護士に依頼した場合、弁護士基準が適用されます。意識不明で後遺障害等級1級の場合、自賠責基準と弁護士基準では、金額に2倍以上の差が出ます。

被害者家族の負担軽減

被害者本人の介護をしながら、示談交渉に必要な書類を集めたり、知識をつけたりするのは、体力的にも精神的にもとても負担がかかると思います。
そこで、示談交渉を弁護士に依頼することで、ご家族は介護に専念することができます。

交通事故で最も大切な応急処置

交通事故が起きて、重傷者が出ている場合、生存率を上げるために最も大切なのが応急処置です。
応急処置の方法を知っていれば、突然交通事故に巻き込まれた場合や、目の前で交通事故が起きた場合に、少しでも生存率上げることができるかもしれません。
救急車が現場に到着するまでの間に、一般の方でもできる応急処置を解説していきます。

意識不明、心肺停止である場合

意識不明な上に心肺停止の場合は、気道を確保してから心臓マッサージを開始します。

    心臓マッサージの方法
    ※手の甲に、もう片方の手を合わせ、胸の中心を圧迫します。
    ポイントは以下になります。
    ①5㎝以上沈むほどの強い圧迫
    ②1分間に100回以上の速いテンポを継続

AEDがある場合は、AEDの音声アナウンスに従って処置をしてください。
心臓マッサージは救急車が到着するまで続けてください。

出血している場合

出血がある場合は、傷口を圧迫してください。圧迫する際、できるだけ清潔なタオルやハンカチを使用しましょう。

周囲の人にも協力してもらうことが大切

交通事故が発生した場合には、周囲にいる人にも手伝ってもらうようにしましょう。
応急処置を始める前に、負傷者を安全な場所へ移動させる必要がある場合があります。また、119番通報や、AEDを探す場合にも、周囲の人に呼びかけて手伝ってもらうことで、応急処置に専念することができます。

まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。いかがでしたか?
交通事故で意識不明になってしまった場合でも、負傷の程度で回復にも差があります。
意識が回復しても後遺障害が残ってしまう可能性もあります。
交通事故発生時に意識障害が出るほどの重症だった場合は、示談金が高額になる場合も考えられます。弁護士に依頼をすることで、さらに高額になる場合もありますので、状況に応じて弁護士へ相談してみるとよいかもしれませんね。