交通事故による「脳死」被害者に支払われる慰謝料とは?

2019年02月04日

交通事故による災難は、いつどのような状況で降りかかるか、誰も想定することはできません。モノだけが破損する物損事故もあれば、人が死傷してしまう人身事故が起こることもあります。

もしも自分の家族が交通事故の被害にあい、「脳死」と診断されてしまったら…
計り知れない悲しみに覆われる中、加害者側の保険会社と様々な手続きを行わなければいけません。

今回は、

  • そもそも脳死とはどんな状態?
  • 交通事故で脳死になってしまった場合の慰謝料
  • 慰謝料を増額させるには

などについて解説していきます。

そもそも「脳死」ってどんな状態?

まず人間の「死」とは、医学的に「脳、心臓、肺、すべての機能が停止」することだと考えられています。

しかし、脳の心肺機能が停止されたとしても、医療技術の発達によって、人工呼吸器を使えば呼吸を保つことができるようになったのです。

つまり「脳死」とは、本来心肺機能が失われることによって停止するはずの呼吸が、人工呼吸器によって継続され、心臓機能が維持された状態のことをいいます。

脳死と植物状態の違い

脳死は、循環機能の調節や呼吸、意識の伝達など、生命を維持するために必要な脳全体の機能が失われた状態のことをいいます。生きていくために必要な働きをしている「脳幹」の機能が失われた場合、二度と回復することはありません。

また、人工呼吸器で命を繋ぎとめているため、本人の意識はありません。意識不明の状態として、脳死の他に「遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)」、いわゆる「植物状態」とよばれる症状があります。

遷延性意識障害は、意識不明でありながらも脳幹の機能は残っているため、自ら呼吸ができる場合もあります。また、脳死とは違って回復する可能性もあるようです。

交通事故の脳死に対する慰謝料は?

自分の家族が交通事故によって脳死状態になってしまったら、加害者側の保険会社に対して慰謝料を請求しましょう。

交通事故で脳死になった場合、加害者側の保険会社に対して「後遺障害慰謝料」か「死亡慰謝料」どちらかの慰謝料を請求することができます。

日本の法律においては、臓器提供する場合を除き、脳死は「個体死」であると認められていません。したがって、まずは後遺障害慰謝料を請求することとなります。

交通事故の慰謝料には3つの基準がある

後遺障害慰謝料と死亡慰謝料、それぞれの説明に入る前に、まずは慰謝料の計算基準について解説していきます。

慰謝料の計算をする際は、「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」という3つの基準が用いられています。それぞれの基準について、詳しく見ていきましょう。

自賠責基準

自賠責基準は、すべての運転者に加入が義務付けられている自賠責保険を基準としたものです。

交通事故の被害者が受けた損害を、最低限補償することが目的とされているため、被害者に支払われる慰謝料の金額は最も低くなります。

任意保険基準

任意保険基準は、運転者の任意で加入を決めることができる任意保険を基準に計算されたものです。

各任意保険会社によって基準が異なるため、ほとんど公表はされていません、被害者に支払われる慰謝料の金額は、自賠責基準よりも高く、弁護士基準よりは低くなると言われています。

弁護士基準

弁護士基準は、交通事故における過去の判例を基準として計算されたものです。「赤い本」や「青い本」とよばれる法律書によって確認することができます。

弁護士基準による慰謝料の金額は、3つの基準の中で最も高額になるといわれています。

交通事故による脳死の後遺障害慰謝料は?

後遺障害慰謝料を請求するには、後遺障害等級が認定される必要があります。後遺障害等級認定の申請方法について、詳しくは以下のリンクをご覧ください。

▶︎参考:交通事故の後遺障害等級認定を行う方法について、詳しく知りたい方はコチラ!

後遺障害等級は1級~14級まであり、1級が最も重く、14級が最も軽い症状とされています。脳死の後遺障害等級は、1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」と認められるケースがほとんどです。

1級1号の後遺障害慰謝料は、自賠責基準で1600万円、弁護士基準で2800万円となっています。

交通事故による脳死の死亡慰謝料は?

非常に悲しいことではありますが、脳死状態が続いた被害者の方が死亡してしまった場合、相続人の方が死亡慰謝料を受け取ることができます。

死亡慰謝料は、以下の2つに分けることができます。

  • 亡くなった被害者本人に対する慰謝料
  • 被害者の遺族に対する慰謝料

それぞれの慰謝料の金額を、詳しく見ていきましょう。

亡くなった被害者本人に対する慰謝料

亡くなった被害者本人に対する慰謝料は、被害者の立場によって金額が異なります。また、自賠責基準と弁護士基準によっても金額は変動します。

被害者の立場 自賠責基準 弁護士基準
一家の支柱 350万円 2,800万円~3,600万円程度
母親・配偶者 350万円 2,000万円~3,200万円程度
独身者 350万円 2,000万円~3,000万円程度
子ども 350万円 1,800万円~2,600万円程度
高齢者 350万円 1,800万円~2,400万円程度

被害者の遺族に対する慰謝料

被害者の遺族に対する慰謝料の金額は、死亡慰謝料請求者の人数と、被害者に扶養者がいたかどうかで金額が異なります。

請求者の人数 死亡慰謝料 被扶養者がいた場合
1人 550万円 +200万円
2人 650万円 +200万円
3人 750万円 +200万円

弁護士基準の慰謝料を受け取るには?

後遺障害慰謝料と死亡慰謝料の金額は、弁護士基準で請求することによって大きく増額できる可能性があります。

弁護士基準で慰謝料を請求するには、示談交渉を弁護士に依頼する必要があります。ただし、示談交渉を弁護士に依頼すると、弁護士費用が発生します。弁護士費用は、弁護士特約に加入していることで補ってもらうことができるので、今一度自分の保険内容を確認しておきましょう。

交通事故の脳死についてまとめ

自分の家族が交通事故の被害にあい、「脳死」になってしまったら、加害者側の保険会社に対して慰謝料の請求を行いましょう。脳死に対する慰謝料は、「後遺障害慰謝料」と「死亡慰謝料」の2つ。弁護士基準で慰謝料を請求すると、大幅に増額できる可能性があります。