交通事故で使うのは労災と任意保険のどっち?使用時の諸注意も解説!
交通事故にあった場合、自賠責や任意保険を使うのが一般的ですよね。しかし、通勤中や業務中に起こった交通事故の場合、労災を使うことも可能です。
そこで今回は、労災と自賠責・任意保険のどちらを使うべきかを解説していきます。
もくじ
交通事故の怪我は保険が利用可能
交通事故で怪我を負った被害者は、保険を使うことができます。保険を使うことにより、お金を受け取ることができるため、治療費の負担を軽減させることが可能です。
今回は、労災・自賠責・任意保険の3つをご紹介していきます。
労災
労災とは、通勤中や業務中に災害(交通事故)の被害を受けら労働者を救済するために、厚生労働省という国の機関が運営している保険です。そのため、会社で労災に加入している人かつ、通勤中・業務中の災害と認められなければ、労災を使うことができません。
自賠責・任意保険
自賠責は国土交通省という国の機関が運営しており、任意保険は様々な民間企業が運営しているため、別々の保険といえます。しかし、自賠責と任意保険は、交通事故においてセットで使われることが多いです。
なぜならば、自賠責には支払い上限額が定められており、自賠責の支払い上限額を超えてしまった場合は、任意保険でカバーすることになるためです。また、交通事故の被害者が自賠責・任意保険を使う場合は、加害者側の自賠責・任意保険を使うことになります。
自賠責とは
自賠責は、交通事故の被害者を救済するために最低限の保障を行う保険です。最低限の保障ということから、以下のような支払い上限額が決まっています。
傷害による損害 | 120万円 |
---|---|
後遺障害(※1)による損害 | (1~14級まである等級に応じて) 75~3000万円 |
死亡による損害 | 3000万円 |
また、車を所有する運転者には、自賠責の加入が義務づけられています。そのため、自賠責に加入していない場合は、以下2つの処分を受けることになります。
- 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 違反点数として6点が加算されるため、免許停止になる
※1 後遺障害とは、交通事故が原因で残った後遺症のうち、後遺障害等級認定で後遺障害の等級を認定されたものを指します。
任意保険とは
任意保険とは、自賠責でカバーしきれない被害者への賠償だけではなく、自分自身にも補償が得られる保険です。任意保険の補償には、以下のようなものがあります。
被害者に対する賠償 | 自分自身が得られる補償 |
---|---|
対人補償 対物補償 |
人身傷害 搭乗者傷害 車両保険 |
また、任意保険は自賠責と異なり、加入が任意で決められます。
労災と自賠責・任意保険が使える場合
通勤中・業務中の災害として認められる場合、「労災」「自賠責・任意保険」の2つを使えることになります。しかし、労災と自賠責の場合は、どちらも国に請求することになるため、2重取りはできません。
ただし、労災と自賠責において補償・保障内容が異なる部分は、請求することができます。
労災と自賠責の補償・保障内容で異なるものとは?
労災と自賠責で得られる補償・保障内容は、以下の通りです。
労災 | 自賠責 |
---|---|
療養(補償)給付 休業(補償)給付 傷病(補償)年金 障害(補償)給付 介護(補償)給付 遺族(補償)給付 葬祭料(葬祭給付) 二次健康診断等給付 |
治療費 通院交通費 手術費 器具や装具の購入費 介護費 休業損害 慰謝料 葬祭費 逸失利益 など |
労災と自賠責では上記のような費用を受け取ることができます。このうち、労災と自賠責で重複している補償・保障内容は、以下のものが挙げられます。
- 治療費
- 仕事を休んだときの減収分を補填するもの
- 介護費用
- 死亡した被害者の遺族が受け取れなくなった利益を補填するもの
- 葬祭費
つまり、労災を使ったとしても、慰謝料は自賠責に請求できるということになります。
労災と自賠責・任意保険のどちらに請求すべき?
労災と自賠責・任意保険で重複している補償・保障は、どちらかの保険を選択する必要があります。一般的には、交通事故の被害にあった場合、自賠責・任意保険を使うことを推奨しています。
しかし、以下のような場合は、労災を使うべきです。
- 自分自身の過失割合が大きい場合
- 加害者が任意保険に加入していない場合
- 治療費の立て替えが困難な場合
自分自身の過失割合が大きい場合
自賠責・任意保険では、自身の過失割合に応じて、受け取れるお金が減額されてしまう過失相殺という制度があります。ただし、自賠責と任意保険では、以下のように過失相殺の制度が異なります。
- 自賠責:過失が7割以上で2割の減額
- 任意保険:過失の割合そのままが減額の割合となる
一方、労災では、過失の有無によるお金の減額はありません。したがって、自分自身の過失割合が大きい場合は、自賠責・任意保険よりも、労災を使うことをおすすめします。
加害者が任意保険に加入していない場合
加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責の保障しか受けることができません。そのため、治療費や慰謝料などの合計が自賠責の支払い上限額を超えてしまったとしても、支払い上限額を超えた分の保障は受け取れないということになります。
このような場合は、労災を使い、十分な補償を得る方がよいでしょう。
治療費の立て替えが困難な場合
交通事故で負った怪我は、長期にわたることが多く、治療費が高額になってしまいます。しかし、自賠責・任意保険を使う場合、被害者は治療にかかった費用を一度立て替えなければならず、治療費の立て替えが困難な方もいるでしょう。
このような場合は、労災を使うことをおすすめします。なぜなら労災では、被害者自身で治療費を立て替える必要はなく、自己負担ゼロで治療が受けられるためです。
交通事故で使える保険の手続き
今回ご紹介してきた、労災と自賠責・任意保険を使ってお金を受け取るには、手続きが必要になります。
ここでは、労災と自賠責・任意保険、それぞれの保険の手続きをご紹介します。
労災の場合
労災を使う場合、以下の必要書類を所轄の労基準監督署に提出しなければなりません。
- 労災で請求する給付金の請求書
- 第三者行為災害届(※2)
- 交通事故証明書または交通事故発生届
- 念書
労災で請求する給付金の請求書は、それぞれの給付金で書類が1枚ずつ分かれています。そのため、請求する給付金の種類が多いと、その分書類も多くなります。また、労災で請求する給付金の請求書は、厚生労働省のホームページからダウンロードが可能です。
※2 第三者行為災害届とは、被害者が受けた補償内容が重複していないかを確認し、調整を行うための書類です。
自賠責・任意保険の場合
自賠責・任意保険は、一括の窓口で対応してくれるため、それぞれの窓口で請求する必要はありません。自賠責・任意保険を使う場合の手続き方法は、加害者請求と被害者請求の2種類です。
加害者請求
加害者請求は、加害者が先に被害者へ損害賠償を支払い、その後で加害者が保険金を保険会社に請求するというものです。
被害者請求
被害者請求は、加害者側からの賠償が受けられない際に、加害者が加入している保険会社へ被害者が直接、損害賠償を請求するというものです。
労災と自賠責・任意保険についてのまとめ
いかがでしたか。交通事故にあった場合、労災を使うことも可能です。ただし、労災には使用条件があり、通勤中・業務中の災害と認定された事故に限定されています。
交通事故で使う保険は、自賠責・任意保険を使う方が一般的です。しかし、以下のような場合は、労災を使う方がよいでしょう。
- 自分自身の過失割合が大きい場合
- 加害者が任意保険に加入していない場合
- 治療費の立て替えが困難な場合
労災と自賠責・任意保険のどちらを使うべきか迷ったら、是非この記事を参考にしてくださいね。