自転車乗車中の交通事故|加害者が負う責任とは?保険についても解説
交通手段としてよく利用される「自転車」。自転車乗車中に、交通事故の被害者や加害者になる可能性もあります。
そこで今回は、自転車事故の発生件数や加害者が問われる責任、自転車保険などについて解説していきます。
自転車乗車中に発生する交通事故について
自転車の普及率は年々増加傾向にあり、平成28年で57%(※1)に達する程、身近な存在です。しかし、自転車が普及したことで、自転車乗車中の交通事故が増加する問題も発生しています。
※1 参考:(一財)自転車産業振興協会による調査及び総務省住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査より
自転車事故の発生件数
警視庁のホームページで発表されている東京都内で発生した自転車事故の発生件数(※2)は、以下の通りです。
年度 | 自転車事故の発生件数 |
---|---|
2016年 | 11,218件 |
2017年 | 11,901件 |
2018年 | 12,865件 |
※2 参考:都内自転車の交通事故発生状況 ⾃転⾞事故の推移(2018年中)より
自転車事故の発生件数は、年々増加していることがわかります。
自転車事故における3つの種別
自転車事故は、車と自転車の事故・自転車同士の事故・自転車と歩行者の事故といった3つのパターンに分類することができます。自転車事故の場合、どの種別の自転車事故かによって、過失割合(※3)が大きく左右されます。
※3 過失割合とは、発生した交通事故に対して、事故当事者双方にある責任の割合のことです。
車と自転車の事故
車と自転車の事故の場合、自転車側に原因があったとしても、自転車側の過失割合が低くなる傾向があります。なぜならば自転車が車よりも弱い立場であると認識されるためです。
自転車同士の事故
自転車同士の事故の場合、どちらも対等な立場であるため、交通事故が起こった原因が重要視されます。したがって、交通事故が発生した原因となる方に高い過失割合がつきます。
自転車と歩行者の事故
自転車と歩行者の事故の場合、自転車よりも歩行者の方が弱い立場であるため、自転車側の過失が高くなる傾向があります。
自転車事故の加害者が問われる責任
自転車を運転する場合は、免許を取得する必要がありません。そのため、車やバイク事故の加害者のように行政上の責任は問われず、自転車事故の加害者は以下のような3つの責任を負うことになります。
- 刑事上の責任
- 民事上の責任
- 道義的な責任
刑事上の責任
刑事上の責任とは、罰金や禁固、懲役を科せられることをいいます。
- 罰金:有罪判決を受けた者が金銭を国に納める
- 禁固:有罪判決を受けた者が刑事施設に入り、刑務作業を行うかを自由に選択できる
- 懲役:有罪判決を受けた者が刑事施設に入り、刑務作業を行う
ただし、自転車事故の加害者が上記のような責任を負うのは、過失傷害罪や過失致死罪、重過失致死傷罪などに該当した場合となっています。
民事上の責任
民事上の責任とは、自転車事故の被害者が負った損害に対して、加害者が金銭(損害賠償)を支払うことをいいます。
自転車事故の加害者が、被害者に対して支払う損害賠償には、以下のようなものがあります。
- 治療費
- 休業損害
- 遺族補償
- 慰謝料 など
道義的な責任
道義的な責任とは、被害者を見舞い、誠実に謝罪することをいいます。自転車事故後に行う被害者へのお見舞いと謝罪をする際には、以下のような注意すべきポイントがあります。
- お見舞いや謝罪は、事故数日後~1週間以内を目安に行う
- お見舞いや謝罪で被害者を訪問する前に、訪問する旨と日程を事前に連絡する
- お花や菓子折りといったお見舞いの品を用意する
- 損害賠償の話は避け、5~10分程度で退席する
自転車事故で起こり得る問題
自転車事故の場合、以下のような問題が起こることもあります。
- 保険に加入していない
- 後遺障害を認定する機関がない
保険に加入していない
自転車事故の場合でも加害者は、被害者に損害賠償を支払う責任があります。しかし、自転車用の保険に加入していない加害者が多く、被害者に損害賠償を支払えず、トラブルに発展することもあります。
しかし、自動車保険に加入している場合は、個人賠償責任特約を使えば、自転車事故の場合でも損害賠償に対する補償を受けとることができます。
個人賠償責任特約
個人賠償責任特約は、日常生活で発生する様々な事故を賠償するためのものです。そのため、自転車事故の場合でも使うことができます。
個人賠償責任特約を使うと、被害者の治療費やモノに対しての損害賠償をカバーしてくれます。また、自動車保険の加入者だけではなく、加入者の家族や親族でも使える便利な保険です。
後遺障害を認定する機関がない
自動車事故の場合、被害者に後遺症が残ったときに後遺障害等級認定を申請すれば、自賠責保険調査事務所が等級を認定してくれます。しかし、自転車事故の場合では、後遺障害の等級を認定する機関がありません。そのため、以下のような方法で後遺障害の等級を主張する必要があります。
- 加害者が保険に加入している場合
加害者側の保険会社に後遺障害の審査を依頼する
加害者側の保険会社が自賠責調査事務所の審査サービスを利用する など - 被害者が加入している保険がある場合
被害者側の保険会社に後遺障害の認定を依頼する - 加害者が保険に加入していない場合
裁判を行い、後遺障害についての主張を行う
自転車保険の加入を検討しよう!
近頃、様々な保険会社から自転車保険が販売されています。しかし、自転車保険に加入しているという人が、少ないのが現状です。では、自転車保険とは、どのような保険なのでしょうか。
自転車保険とは?
自転車保険とは、その名の通り自転車の乗車中に発生した損害を補償するための保険です。自転車保険に加入した場合、以下のような補償を受けることができます。
- 死亡保険金
- 加入者自身の治療費に対する給付金
- 損害賠償の支払いに対する補償
- 示談交渉サービス
- 弁護士費用の補償
- ロードサービス
- 自転車の盗難にあったときの補償
自転車保険に加入すると、自分自身だけでなく、交通事故の相手方に対しても補償してくれることがわかります。したがって、自転車に乗る機会が多い場合は、自転車保険に加入することをおすすめします。
自転車事故についてのまとめ
いかがでしたか。自転車事故の発生件数は、2016年で11,218件、2017年で11,901件、2018年で12,865件と年々増加傾向にあります。
また、自転車事故の加害者になってしまうと、刑事上の責任・民事上の責任・道義的な責任といった3つの責任を負わなければなりません。したがって、自転車を運転する際は、注意して運転するようにしましょう。