家族が交通事故の加害者に…。その後すべき対応と負うべき処分とは

2018年11月09日

先日、夫が交通事故の加害者になった。

車で出勤をしていたのだが、いつも以上に渋滞しており、「職場の朝礼に間に合うかな?」と少し焦っていた。

いつも通っている信号のない交差点に、小学生の集団がいたが、話し込んでいる様子だった。交差点を渡る気がないと判断し、そのまま交差点を直進した。しかし、自分が直進すると同時に、小学生も歩き始めたため衝突した。この交通事故により、小学生は骨折とむちうちの怪我を負った。

こんなとき「交通事故の加害者家族はどのような対応をすべきなのだろう。」と不安になってしまいますよね。今回の記事では、

  • 交通事故の加害者家族がすべき対応とは
  • 交通事故の加害者は3つの処分を受ける
  • 交通事故の加害者が支払う損害賠償3つ
  • 加害者家族が怪我を治療するときに使う保険

について説明していきます。

交通事故の加害者がすべき対応とは

家族が交通事故の加害者になってしまった場合、加害者の同乗者(家族)もすべき対応があります。加害者の同乗者(家族)がすべき対応を交通事故発生後から順に説明していきます。

交通事故の加害者がすべき対応は、以下の通り。

  • ①怪我人を救護する
  • ②道路の安全を保つ
  • ③警察に連絡する
  • ④事故現場を記録する
  • ⑤連絡先を交換する
  • ⑥保険会社に連絡する
  • ⑦被害者のお見舞いに行く

①怪我人を救護する

交通事故後、怪我人がいないかを確認します。怪我人がいるようであれば、できる限りの処置を行い、必要に応じて救急車を呼びましょう。

怪我人の救護は、道路交通法によって義務付けられています。もし加害者が怪我人の救護を怠ってしまった場合は、救護措置義務違反となります。救護措置義務違反になってしまうと、加害者は5年以下の懲役または50万円以下の罰金といった処分を受けることになります。

②道路の安全を保つ

道路の安全を保つことは大切なことです。交差点の真ん中で事故が起きた場合、「後続車が停止しきれず、一番初めに事故を起こした車に衝突をしてしまった」といった交通事故の被害が広がる可能性があります。

このような事態を防ぐための対策は、以下の通り。

  • 車の後方にあるハザードランプをつける
  • 車に備え付けてある発煙筒を使用する

上記のような対策を行い、後続車に注意を促すようにしてください。

③警察に連絡する

人身事故・物損事故に関わらず、交通事故を起こした場合は、必ず警察に連絡しなければなりません。

警察に連絡することは、道路交通法によって義務付けられています。もし交通事故を起こした加害者が警察に連絡をしなかった場合、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金の処分を受けることになります。

また、警察に連絡をしなかった場合、交通事故証明書を発行することができません。交通事故証明書は、保険の手続きに必要な書類の一つです。したがって、警察に連絡することを忘れないようにしましょう。

④事故現場を記録する

事故現場を記録しておくことで、過失割合で自分が不利にならないよう、主張するための証拠になります。事故現場を記録する場合は自分の記憶ではなく、写真を撮影し、確実な証拠として残すようにしましょう。

事故現場で記録しておくべき項目については、以下の通り。

  • 事故現場の路面状況・交通量
  • 地面のタイヤ痕
  • 信号の位置
  • 事故車の破損部分      など

⑤連絡先を交換する

交通事故の加害者・被害者は、互いに連絡先を交換することになります。交通事故直後は、過失割合がはっきりしていないことが多いです。そのため、後に保険会社とやりとりを行うことになるかもしれません。したがって、交通事故の加害者・被害者関係なく、必ず連絡先を交換するようにしましょう。

▶︎参考:交通事故後の連絡先交換は、当事者同士で直接行うべき?⑥保険会社に連絡する

交通事故後、被害者と加害者はそれぞれ保険会社へ連絡します。

連絡すべき保険会社 連絡すべき理由
加害者 自分が加入している保険会社へ 保険会社の代理人が加害者に代わって、保険の続きや示談交渉を行ってくれるから
被害者 加害者側の保険会社へ 加害者の保険会社と示談交渉や慰謝料のやり取りを行うことになるから

上記の表を参考に、交通事故後は保険会社に連絡を入れるようにしましょう。

⑦被害者のお見舞いに行く

交通事故の加害者の場合は、被害者へのお見舞いとお詫びを行います。加害者の保険会社が交通事故に関する手続きをすべて行ってくれるということもあり、加害者はお見舞いに行かないという人もいます。

しかし、最終的に示談交渉の話し合いは、事故の当事者同士で行うものです。そのため、被害者にお見舞いを行かなかったことで、自分にとって不利益が被るかもしれません。そうならないためにも、被害者に対して誠意ある行動を行うよう心がけましょう。

▶︎参考:被害者のお見舞いへ行く場合、菓子折りは必要?

交通事故の加害者は3つの処分を受ける

交通事故の加害者になった場合、以下の3つの処分を受けることになります。

  • ①刑事処分
  • ②行政処分
  • ③民事処分

①刑事処分

刑事処分とは、懲役刑・禁固刑・罰金刑といった刑罰による処分のことです。

  • 懲役刑:刑務所で拘束され、刑務作業を行わせる刑罰
  • 禁固刑:刑務所で拘束され、刑務作業を行う義務がない刑罰
  • 罰金刑:加害者から強制的にを金銭を取り立てる刑罰

これらの刑事処分は、検察官に起訴され、裁判で裁判官に懲役刑・禁固刑・罰金刑の実刑判決が言い渡されます。しかし、執行猶予付きの判決を受けた場合は、すぐに刑務所へ収監されません。また、執行猶予期間を問題なく過ごせた場合は、判決で言い渡された刑罰が免除されるため、加害者が刑務所へ入る必要はありません。

▶︎参考:執行猶予について詳しく知りたい方はこちら

②行政処分

行政処分とは、運転免許の取り消しや免許停止といった処分のことです。過去3年間の交通事故や交通違反などで点数が加算され、違反点数が一定の基準に達した場合、運転免許の取り消しや免許停止になります。

免許取り消しや免許停止になる点数の例

    今まで交通事故や交通違反をしたことがない人の場合
    免許停止:6点~
    免許取り消し:15点~

③民事処分

民事処分とは、加害者が交通事故の被害者に損害賠償を支払うという処分です。損害賠償とは、被害者が交通事故で負った損害を金銭で補填することいいます。損害賠償については、次で詳しく説明します。

交通事故の加害者が支払う損害賠償3つ

交通事故の加害者が被害者に対して支払う損害賠償は、大きく分けて以下の3つに分けられます。

  • ①積極損害
  • ②消極損害
  • ③慰謝料

①積極損害

積極損害とは、交通事故が原因で被害者が出費を余儀なくされた場合に発生する損害です。

積極損害に当てはまる費用は、以下の通り。

  • 治療費・診察費
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 手術費
  • 装具・器具等の購入費 など

②消極損害

消極損害とは、被害者が本来得られたはずの収入や利益が、交通事故が原因で減少した場合の損害です。

消極損害に当てはまるものは、以下の通り。

  • 休業損害:交通事故が原因で被害者が仕事を休んでしまい、被害者が本来得られたはずの収入のうち減少した分を補填するもの。
  • 逸失利益:交通事故の怪我が後遺障害になってしまい、労働能力が減少したことで、被害者が本来得られたはずの収入のうち減少した分を補填するもの。

③慰謝料

慰謝料とは、交通事故が原因で被害者がおった精神的苦痛の対価として支払われるものです。

慰謝料に当てはまるものは、以下の通り。

  • 入通院慰謝料:交通事故原因で、被害者が入通院をしたときに感じた精神的苦痛を金銭で補ったもの。
  • 後遺障害慰謝料:交通事故の怪我が後遺障害になってしまい、被害者が負った精神的苦痛を金銭で補ったもの。

交通事故の加害者が怪我を負った場合

交通事故の加害者が怪我を負うこともあります。交通事故で使える保険は、自賠責保険・任意保険・労災保険・健康保険・生命保険といったように様々です。

では、交通事故の加害者になってしまったとき、数多く存在する保険からどの保険を使うべきなのでしょうか。

交通事故の加害者が怪我をした場合に使う保険

交通事故の加害者が怪我をしたときに使える保険は、以下の通り。

  • ①任意保険の人身傷害保険
  • ②労災保険

①任意保険の人身傷害保険
任意保険の人身傷害保険は、過失割合に関係なく、交通事故で負った損害を補償してくれます。また、人身傷害保険では、治療にかかった費用が全額支払われます。

しかし、その治療費が本当に交通事故が原因で必要になった費用なのかという因果関係が認められなければ、受け取ることができません。

②労災保険
労災保険とは、通勤中や勤務中の災害(交通事故も含む)で損害を負った場合に使うことができます。労災保険は、事業主が保険料を負担しており、会社で働く人に全員に適用されています。

加害者が労災保険を使った場合、治療費として療養補償給付というものを請求することができます。療養補償給付は、治療費に関する費用が全額支給されます。ただし、労災保険の場合、労災保険指定の医療機関で治療を受けることで、治療費の立て替えをしなくて済みます。

▶︎参考:労災保険について詳しく知りたい方はこちら

ノンフリート等級制度に注意!

交通事故の加害者になり、任意保険を使った場合、ノンフリート等級制度に注意しましょう。

ノンフリート等級制度とは契約者の事故歴に応じて、保険料が安くなったり、高くなったりする制度のことです。等級は1~20等級まであり、初めて契約した場合は6等級に設定されています。

事故を起こして任意保険を使った場合、6等級が事故の程度に応じて5・4・3等級というように変化し、3・2・1等級から保険料が割り増しになります。したがって、交通事故の加害者になってしまった場合、任意保険を使うべきかはしっかりと検討すべきでしょう。

交通事故の加害者家族がすべき対応のまとめ

いかがでしたか。家族が交通事故の加害者になってしまった場合、

  • 事故直後は、まず警察へ連絡し、怪我人の救護を行うこと。
  • 被害者に対して、お見舞いとお詫びを忘れずに行うこと。
  • 家族が加害者となった場合、刑事処分・行政処分・民事処分を受けることになる。
  • 加害者で怪我の治療を行う場合、任意保険の人身傷害保険や労災保険を使うことができる。

上記のことを参考に対応を行うようにしましょう。