人身の交通事故で加算される違反点数とは?仕組みや軽減方法を解説!

2019年02月13日

人身事故を起こしてしまった場合、加害者は違反点数が加算され、免許停止や免許取り消しの処分を受ける恐れがあります。しかし、人身事故に関する違反点数の仕組みについて、詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、人身事故で加算される違反点数について解説していきます。

人身の交通事故を起こすと行政処分を受ける

人身事故を起こした場合、加害者は刑事処分(※1)や民事処分(※2)の他に、行政処分も受けることになります。

行政処分とは、道路交通法に基づいて違反点数を加算し、免許停止免許取り消しを行うものです。免許停止や免許取り消しは、3年間で加算された違反点数が、一定の点数を超えた場合に執行されます。

そもそも免許停止とは、取得免許の効力が一時的に失われ、車の運転ができなくなる処分です。ただし、免許停止の期間を終えると、再び車を運転することができるようになります。

一方、免許取り消しとは、取得免許の効力を取り消される処分です。免許取り消しの場合は、免許停止とは異なり、再度免許を取り直さなければなりません。ただし、免許取り消しの処分には、欠格期間という免許の再取得ができない期間が設けられているため、すぐに免許を取り直すことができなくなっています。

※1 刑事処分とは、犯罪を犯した者に対して罰金・懲役・禁固といった刑罰を科す処分のこと。
※2 民事処分とは、交通事故の被害者が受けた損害を金銭を支払うことで、埋め合わせを行う処分のこと。

免許停止や免許取り消しとなる点数

免許停止や免許取り消しが執行される点数は、前歴(※3)の有無によって異なり、以下のように定められています。

※3 前歴とは、以前にも行政処分を受けたことがあるかという経歴のこと。

免許停止

停止期間 / 前歴 0回 1回 2回 3回 4回以上
30日 6~8点
60日 9~11点 4~5点
90日 12~14点 6~7点 2点
120日 8~9点 3点 2点
150日 4点 3点 2点
180日 3点

免許取り消し

取り消し期間 / 前歴 0回 1回 2回 3回 4回以上
1年(3年) 15~24点 10~19点 5~14点 4~9点 2~9点
2年(4年) 25~34点 20~29点 15~24点 10~19点 10~19点
3年(5年) 35~39点 30~34点 25~29点 20~24点 20~24点
4年(5年) 40~44 35~39点 30~34点 25~29点 25~29点

※ ()内は、欠格期間をあらわしています。

ただし、危険運転致死傷や酒酔い運転などの特定違反行為で、免許取り消しの処分を受けた場合は上記と異なる点数設定になっています。

例えば…

  • 前歴1回、違反点数が35~39点に達している場合
    →免許取り消し4年、欠格期間6年
  • 前歴3回、違反点数が40~44点に達している場合
    →免許取り消し7年、欠格期間9年

人身事故で加算される違反点数の仕組み

免許停止や免許取り消しの処分で加算される違反点数は、以下の3つで構成されています。

  • 一般違反行為による基礎点数
  • 特定違反行為による基礎点数
  • 付加点数

上記3つの違反点数の合計で、免許停止や免許取り消しの処分が決まるのです。

一般違反行為による基礎点数

一般違反行為とは、危険性の低い違反行為のことで、様々な種類があります。今回は、一般違反行為の一部を加算される点数とともに、以下の表にまとめました。

違反行為 点数 飲酒運転の場合の点数
0.25以上 0.15以上025未満
安全運転義務違反 2点 25点 14点
無免許運転 25点
過労運転等 25点
速度超過(※4) 1~12点 25点 14~19点
急ブレーキ禁止違反 2点 25点 14点
本線車道通行車妨害 1点 25点 14点
無灯火 1点 25点 14点
追い付かれた車両の義務違反 1点 25点 14点
進路変更禁止違反

1点 25点 14点
車間距離不保持 1点 25点 14点

※4 速度超過は、速度によって異なる点数が設けられています。 

特定違反行為による基礎点数

特定違反行為とは、危険性や悪質性の高い違反行為のことで、一般違反行為と比べて加算される点数が高くなっています。

特定違反行為と違反点数については、以下の表の通りです。

特定違反行為 点数
運転殺傷等 運転殺人等 62点
運転障害等
(治療期間3ヵ月以上または後遺障害)
55点
運転傷害等
(治療期間30日以上 )
51点
運転傷害等
(治療期間15日以上 )
48点
運転傷害等
(治療期間15日未満または建造物破損 )
45点
危険運転致死傷 危険運転致死 62点
危険運転致死傷
(治療期間3ヵ月以上または後遺障害)
55点
危険運転致死傷
(治療期間30日以上 )
51点
危険運転致死傷
(治療期間15日以上 )
48点
危険運転致死傷
(治療期間15日未満 )
45点
酒酔い運転 35点
麻薬等運転 35点
救護義務違反(ひき逃げ) 35点

付加点数

人身事故の場合、被害者の怪我の程度や過失の有無によって、以下のような付加点数が加算されます。

被害者の怪我の程度 被害者に過失がない場合 被害者に過失がある場合
死亡 20点 13点
治療期間が3か月以上
または後遺障害が残った
13点 9点
治療期間が30日以上
3か月未満
9点 6点
治療期間が15日以上
30日未満
6点 4点
治療期間が15日未満
または建造物の損壊あり
3点 2点

人身事故で加算された点数の通知について

人身事故で点数が加算され、免許停止や免許取り消しの処分を受けたとしても、すぐに処分が執行されるというわけではありません。免許停止や免許取り消しの処分が執行される前に、以下のような通知書が届きます。

  • 意見の聴取通知書
  • 出頭要請通知書

意見の聴取通知書

意見の聴取通知書とは、違反点数の加算によって免許停止90日または、免許取り消しの処分の対象者に届く通知書のことです。意見の聴取通知書が届いた場合、検察庁で「意見の聴取」という手続きを行い、その後処分が執行されることになります。

意見の聴取とは、処分が公正適切に行われることを目的とした手続きです。手続きの内容としては、処分の対象者が意見を述べたり、有利な証拠を提出する機会が与えられます。ただし、意見の聴取を欠席する場合は、書面審査で処分が決まってしまいます。また、委任状を書くことで、代理人を意見の聴取に出席させることも可能です。

この意見の聴取を行った後で、正式に処分が決まります。したがって、証拠や発言内容によって、処分が軽くなる可能性もあります。

出頭要請通知書

出頭要請通知書とは、加算された違反点数が免許停止処分の点数に達した際に届く書類のことです。出頭要請通知書を受け取った場合、指定された日時と場所に出向かなければなりません。

ただし、出頭要請通知書に記載されている場所へ事前に連絡することで、日時の変更を行うこともできます。そして、出頭した日から免許の停止処分が始まり、その後は車を運転することができないため注意しましょう。

人身事故で受けた行政処分を軽減できる?

人身事故で受けた行政処分は、先程ご紹介した意見の聴取で意見を述べることで、処分を
軽減させることも可能です。また、免許停止処分の場合は、免許停処分者講習を受けることによって、期間を短くすることができます。

免許停止処分者講習

免許停止処分者講習は、講習料金を支払って受けられるもので、講習の最後に行われる試験の結果次第で免許停止処分の期間を短縮できます。

免許停止処分者講習の講義内容は、以下の通り。

  • 運転の適性審査
  • 診断
  • 筆記による適正検査
  • 教本を使った講義
  • 運転シュミレーターを使った指導
  • 実際の車での運転指導

免許停止処分者講習の料金と講習時間、免許停止処分の短縮期間は、以下のように受けた免許停止期間で異なります。

免許停止期間 講習料金 講習時間 処分が短縮される期間
30日間 約14,000円 約6時間程度 約20~29日
60日間 約23,000円 2日間で
約10時間程度
約24~30日
90日間以上 約28,000円 2日間で
約12時間程度
約35~80日

上記からわかるように、免許停止処分者講習を受けることによって、免許停止期間が大きく軽減されることがわかります。しかし、免許停止期間を軽減させるには、講習後の試験の結果が大切になります。したがって、事前に試験の対策の勉強を行っておくことをおすすめします。

人身事故で加算される点数についてのまとめ

いかがでしたか。人身事故を起こしてしまうと、違反点数が加算されてしまい、免許停止や免許取り消しといった処分を受けることになってしまいます。しかし、免許停止や免許取り消しの処分は、すぐに執行されるものではありません。意見の聴取通知書または、出頭要請通知書を受け取り、手続きを行った後からとなっています。

また、免許停止や免許取り消しの処分は、意見の聴取や免許停止処分者講習で軽減させることも可能です。