交通事故が人身だった場合の過失割合や違反点数はどうなる?
交通事故を起こして人身で処理されると、違反点数が加算されたり、過失割合が発生します。違反点数が加算されたり、過失割合が発生した場合、加害者にはどのような影響があるのでしょうか。
今回は、人身事故の場合に加算される違反点数や過失割合について解説していきます。
交通事故を起こして人身で処理されたら
交通事故は、人身事故と物損事故のどちらかで処理されます。
- 人身事故:怪我人がいる事故
- 物損事故:怪我人がおらず、モノのみが壊れた事故
物損事故の場合、加害者は基本的に処分を受けることがありません。一方、人身事故の場合、加害者は処分を受けることになります。
※物損事故の場合、場合によって壊れたモノに対する損害賠償を支払わなければならないことがあります。
交通事故の加害者が負う処分
交通事故の加害者は、以下の3つの処分を受けることになります。
- 刑事処分:事故の内容によって懲役や禁固、罰金が科せられる処分
- 行政処分:交通違反をしたときに科せられる免許に関する処分や反則金などの処分
- 民事処分:交通事故にあった被害者が受けた損害を金銭で賠償する処分(損害賠償)
人身事故を起こしたら違反点数が加算される
人身事故を起こした加害者は、違反点数が加算されることになります。これは、先程ご紹介した行政処分に当てはまります。違反点数は、交通違反や交通事故を起こした日から起算して、過去3年間の点数が加算されます。
交通違反を犯した事故で加算される点数
道路交通違反の種類 | 違反点数 |
---|---|
無免許運転 | 25点 |
酒酔い運転 | 35点 |
速度超過 | 1~12点 |
急ブレーキ禁止違反 | 2点 |
追越し違反 | 2点 |
安全運転義務違反 | 2点 |
車間距離不保持 | 1点 |
横断歩行者等妨害等 | 2点 |
交差点安全進行義務違反 | 2点 |
指定場所一時不停止等 | 2点 |
騒音運転等 | 2点 |
※一部を記載。
被害者や建物の損害の程度によって加算される点数
損害の程度 | 交通事故の点数 |
---|---|
死亡事故 | 重い責任:20点 軽い責任:13点 |
身体に後遺障害が残った場合 | 重い責任:13点 軽い責任:9点 |
全治3ヶ月以上 | 重い責任:13点 軽い責任:9点 |
全治30日以上~3ヶ月未満 | 重い責任:9点 軽い責任:6点 |
全治15日以上~30日未満 | 重い責任:6点 軽い責任:4点 |
全治15日未満 | 重い責任:3点 軽い責任:2点 |
物損事故 | 重い責任:3点 軽い責任:2点 |
交通事故後に加害者がすべき措置を怠ると加算される点数
措置義務違反の種類 | 点数 | 欠格期間(※1) |
---|---|---|
救護措置義務違反(ひき逃げ) | 35点 | 3年 |
物損事故の場合の危険防止等 措置義務違反(あて逃げ) |
5点 | ー |
酒酔い運転でひき逃げした場合 | 35点 | 10年 |
酒酔い運転だったがひき逃げをしなかった場合 | 3~7年 | |
酒気帯び運転でひき逃げをした場合 (0.25mg以上) |
25点 | 8~10年 |
酒気帯び運転でひき逃げをした場合 (0.15mg以上0.25mg未満) |
13点 | 6~9年 |
過労運転等でひき逃げをした場合 | 25点 | 8~10年 |
麻薬等運転でひき逃げをした場合 | 35点 | 10年 |
※1 欠格期間とは、一定期間免許を取得できないという制度。
これらの違反点数は、事故の内容によってそれぞれ加算されます。
交通事故で違反点数が一定数を超えてしまったら
違反点数が加算されることがわかりました。しかし、違反点数が加算された後、加害者は何か処分を受けるのでしょうか。
行政処分によって、加算された違反点数が、一定数を超えてしまった場合、免許停止や免許取り消しの処分を受けることになります。
免許停止や免許取り消しになる基準は、以下の通り。
免許停止
免許停止の期間 | 前歴 | |||
---|---|---|---|---|
0回 | 1回 | 2回 | 3回 | |
30日 | 6~8点 | |||
60日 | 9~11点 | 4~5点 | ||
90日 | 12~14点 | 6~7点 | 2点 | |
120日 | 8~9点 | 3点 | 2点 | |
150日 | 4点 | 3点 |
免許取消し
前歴 | 免許取消しと欠格期間 | ||
---|---|---|---|
1年 | 2年 | 3年 | |
0回 | 15~24点 | 25~34点 | 35点以上 |
1回 | 10~19点 | 20~29点 | 30点以上 |
2回 | 5~14点 | 15~24点 | 25点以上 |
3回 | 4~9点 | 10~19点 | 20点以上 |
上記の表に、前歴(※2)というものがあります。前歴がある・ないによって、免許停止や免許取り消しになる点数が異なります。
※2 前歴とは、犯罪を起こしたと疑われて警察に逮捕されたが、不起訴処分になった場合に残る犯罪履歴のようなもの。
事故を起こしたときにゴールド免許だったら?
交通事故の加害者でゴールド免許物損事故の場合はゴールド免許のままです。
※3 ゴールド免許とは、運転免許の有効期間が満期となる日より前の5年間、無事故・無違反の優良運転者に発行される運転免許のこと。
※4 ブルー免許とは、一般運転者・違反運転者・初回更新者に発行され、運転免許の有効期間部分が青色の運転免許のこと。
人身事故の過失割合は後々重要になる?
人身事故を起こした場合に発生する過失割合は、被害者に支払う損害賠償に影響します。そもそも過失割合とは、発生した交通事故で被害者と加害者の双方に、どれくらいの責任があるのかという割合のことです。
交通事故直後に警察へ連絡すると、事故現場や目撃者の確認などの実況見分を行います。警察は実況見分調書を作成してくれますが、過失割合の決定までは行いません。
過失割合は、交通事故にあった当事者の保険会社が、実況見分調書や事故現場の状況を基に話し合いを行い決定します。
このことから過失割合は、警察が決めるのではなく、交通事故にあった当事者の保険会社が決めているということがわかります。
過失割合で変化する損害賠償
被害者にも過失割合が発生した場合、被害者の過失割合に応じて、損害賠償額が減額されることがあります。このことを過失相殺といいます。ただし、自賠責保険の場合、被害者の過失が7割以上なければ、過失相殺を受けません。
▶︎参考:自賠責保険における過失相殺の計算について知りたい方はこちら
人身事故の過失割合の事例
人身事故の過失割合は、判例タイムズという本を基準に決められています。ここでは、過失割合の事例をいくつかご紹介します。
事例①
歩行者が交差点を青信号で渡り始め、途中で赤信号に変わってしまい、車が青信号で交差点に進入した場合
→ 歩行者:車=20:80
事例②
直進車が黄色信号で交差点に進入し、右折車が青信号で進入した後、黄色信号で右折を始めた場合
→ 直進車:右折車=70:30
事例③
歩行者が赤信号で交差点を渡り始め、途中で青信号に変わり、自転車が赤信号で交差点に進入した場合
→ 歩行者:自転車=15:85
人身事故の過失割合や違反点数についてのまとめ
いかがでしたか。人身事故を起こした場合、過失割合が発生し、違反点数が加算されてしまいます。
被害者に過失割合がある場合は過失相殺され、加害者が被害者に支払う損害賠償は減額されます。また、交通事故によって違反点数が加算され、一定数を超えた場合は免許停止や免許取り消しの処分を受けることになります。