交通事故での示談とは?流れや示談金について解説

2019年02月04日

交通事故の被害者になると、この後何をすべきなのかやお金の事など様々な事が頭に浮かぶと思います。
「そもそも示談って何?」
「示談交渉って何をすれば良いの?」
「金額の交渉を弁護士に依頼すべき?」
など不安な気持ちでいっぱいですよね。

今回の記事では

  • 交通事故の示談とは
  • 交通事故発生から示談までの流れ
  • 示談金はいくら貰えるのか
  • 後遺障害等級認定とは
  • 弁護士の必要性

について解説します。

この記事で示談に関する理解を深めて、落ち着いて示談交渉に望みましょう。

交通事故の示談について


示談とは、揉め事を話し合いで解決することです。交通事故においては、事故発生後に被害者と加害者が話し合い、双方が事故の事実内容や損害賠償(※1)の金額について合意することをいいます。

(※1) 損害賠償…加害者が被害者の受けた損害を補填し償うこと。

交通事故発生から示談までの流れ

示談成立までの過程を、示談交渉といいます。示談成立後、示談交渉で決定された損害賠償の金額を元に、示談金が支払われます。交通事故発生から示談までの流れは下記のとおりです。

  • 1.交通事故発生
  • 2.警察へ連絡
  • 3.加害者と連絡先を交換
  • 4.病院へ行く
  • 5-1.完治
  • 5-2.症状固定・後遺障害等級認定の申請
  • 6.示談交渉開始
  • 7.示談・示談金受取

被害者の怪我や症状が完治すれば5-1へ、完治せず症状固定(※2)となれば、5-2の流れになります。
上記7つの項目について解説します。

(※2) 症状固定…医師が、これ以上怪我や症状に改善が見られないと判断すること。

1.交通事故発生

交通事故の発生時はまずは落ち着いて現状把握に努めましょう。また、二次災害を防ぐため、可能であれば車を端に避けましょう。

2.警察へ連絡

小さな事故、大きな事故に関わらず、警察に連絡することは必須です。何故なら、警察に届け出ないと交通事故の発生が証明できず、示談交渉が出来なくなる可能性があるからです。交通事故が起きたその場、で示談交渉をしたがる人がいます。保険会社や弁護士を通さない事で、示談金を減らすことが出来るからです。また、後日交通事故による症状が出てきた時に、治療費を請求できなくなります。交通事故の現場で、示談交渉を持ちかけられた時は必ず断りましょう。

3.加害者と連絡先を交換

連絡先を交換しないと加害者の身元がわからず、示談交渉が出来なくなります。連絡先だけでなく、加害者の保険会社と勤務先を聞くことでその後の示談交渉がスムーズになります。

4.病院へ行く

交通事故にあった人の7~8割がむちうちになるといわれています。目に見える怪我がなくても必ず病院へ行きましょう。交通事故にあったばかりの時は、脳が興奮状態にあり痛みを感じなくとも、目には見えない怪我をしている可能性があります。整形外科へ行き、精密検査を受けて自分の現状を正確に把握することが大事です。また、むちうちなどの症状の緩和には接骨院や鍼灸院も有効です。

▶︎参考:交通事故の通院先やむちうちについて詳しくはこちら

5-1.完治

医師が怪我や症状が良くなったとと判断すると、完治として扱われます。交通事故によるむちうちは完治まで3ヶ月~1年程度かかるといわれています。

5-2.症状固定・後遺障害等級認定の申請

医師が、これ以上怪我や症状が良くならないと判断すると、症状固定になります。一般的には、6ヶ月程度で症状固定であると判断されるといわれています。症状固定の判断は医師のみができます。症状固定と判断された後、後遺障害等級認定(※1)の申請をします。後遺障害等級認定の申請に対する可否が出た後、示談交渉が開始されます。

(※1) 後遺障害等級認定…症状固定と判断された後、一定の基準に基づき後遺障害だと認められること。損害賠償の金額に影響を与える。詳しくは後述します。

6.示談交渉開始

完治または後遺障害等級認定が終わった後、示談交渉が開始されます。

7.示談成立・示談金受取り

被害者・加害者双方で示談交渉の内容に納得した場合、示談成立となります。その後加害者側の保険会社から、示談金が振り込まれます。また、長期間示談交渉がまとまらない場合やお互いの主張が相反する場合、ADR機関(※1)を利用するか、裁判や調停になることがあります。

(※1) ADR機関…第三者の弁護士が、被害者と加害者に対して中立な立場で交通事故による紛争を解決する民間機関。代表的なものだと「交通事故紛争処理センター」「日弁連交通事故相談センター」があります。

示談が成立するまでにどのくらいかかる?

交通事故の場合、示談成立までに3ヶ月~4か月程かかるといわれています。しかし、示談内容や状況によって異なるため、目安として覚えておいてください。

示談を進めるときに注意すること

示談を進める場合、以下の2点について注意しましょう。

①示談はやり直しができない

示談交渉では、事故の内容や損害賠償金額、支払い期日などが記載されている示談書を作成します。その後、示談書の内容をお互いに納得し、示談書に捺印をすると示談成立となります。

しかし、一度示談書に捺印をしてしまうと、示談のやり直しをすることができません。そのため、示談成立後に示談内容の不備に気が付いても、示談で決定したことを変更することは不可能なのです。

したがって、示談書に捺印をする際は、示談書にしっかりと目を通しで確認するようにしてくださいね。

②示談には時効がある

損害賠償請求権は3年以内に使用しなければ、権利がなくなってしまうと法律で定められています。そのため、ひき逃げといった相手が不明のような状況でない限り、事故日から3年以内で終えなければなりません。

加害者と示談交渉は行っているが、治療や症状固定までの時間を要する
示談交渉が難航している
という状況になると、示談交渉の期限である事故日から3年以内という時効を過ぎてしまう恐れがあります。

その場合は…

  • 加害者が任意保険に未加入の場合:加害者に念書を書いてもらい、治療費の請求を行う。
  • 加害者が任意保険に加入している場合:保険会社に「時効中断承認申請書」を提出する。

この2つの方法で時効を中断させることができます。

示談金とは?

示談金とは、示談交渉で決定された損害賠償の金額に基づき示談成立後に支払われるお金です。示談金はいくら受け取れるか気になる方も多いかと思いますが、実際のところ、示談金にいくらと決まった金額はありません。ただ、損害賠償の金額には3つの項目があります。

  • 積極損害
  • 消極損害
  • 慰謝料

つまり、上記3つによって示談金は構成されています。3つの項目について解説します。

積極損害

交通事故の影響で、被害者が支払う事を余儀なくされている費用です。治療費や通院交通費などが含まれます。

消極損害

被害者が失った、交通事故にあわなければ得ることが出来た利益を、損害として扱います。休業損害(※1)や逸失利益(※2)が該当します。

(※1) 休業損害…給料やボーナスなど、仕事を休まなければ得られた利益を損害として扱う。
(※2)逸失利益…後遺障害で将来の収入が減少してしまうこと対する補償のこと。

慰謝料

被害者の精神的な苦痛に対して支払われるもの。入通院慰謝料(※1)と後遺障害慰謝料(※2)があります。

(※1) 入通院慰謝料…入通院で発生する精神的な苦痛を、お金を支払う事で補填すること。
(※2)後遺障害慰謝料…後遺障害が残ったことで負った、精神的苦痛の対価として支払われるもの。

▶︎参考:損害賠償に関して詳しくはこちら
▶︎参考:慰謝料の基準に関して詳しくはこちら

交通事故における後遺障害等級認定とは?


交通事故にあい、症状固定と医師に判断されると、体に後遺症が残ることになります。後遺症の中でも、下記の基準を満たすと後遺障害として認められます。後遺障害による症状の程度によって1~14級の等級が決まり、その等級に合わせて後遺障害等級認定がされます。

後遺症が後遺障害と認められるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 交通事故による怪我が完治する見込みがないこと
  • 交通事故と怪我との因果関係が明確であること
  • 交通事故の怪我により労働能力が低下してしまうこと
  • 後遺症となった症状が、医学的に証明または説明されていること
  • 怪我の症状が自賠責保険の等級認定に値すること

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後遺障害等級認定がされると、逸失利益や後遺障害慰謝料が受け取れます。つまり、損害賠償の金額は大きくなります。後遺障害等級認定の可否がわかってから示談を始めるので、示談交渉開始までは時間がかかります。

後遺障害等級認定の申請について

後遺障害等級認定は書面主義といって、提出された書類のみで可否の判断がされます。その為、申請時の書類は、詳細を丁寧に記入する必要があります。申請方法は、以下2つです。

  • 事前認定
  • 被害者請求

どちらの方法にもメリット・デメリットがあります。

事前認定

加害者の任意保険会社が、後遺障害等級認定の申請をする方法です。加害者の任意保険会社が、自賠責保険と任意保険による示談金の支払いを一括で行う場合にその流れで事前認定をします。メリットは被害者は後遺障害診断書(※1)を用意するだけなので、手間が少ない事です。デメリットは相手の保険会社任せになるため、時間がかかります。また、書類の用意を自分でしないため、被害者本人が記入するより、書類の詳細な情報が少なくなります。手間をかけたくない人はこちらの方法をおすすめします。

(※1) 後遺障害診断書…医師が後遺障害だと判断したことを証明する書類。

示談金の一括請求について
自賠責保険は国が運営する最低限の保証を目的とした保険です。任意保険は保険会社が運営する分、様々な保証がある保険です。損害賠償はまず自賠責保険で支払われ、足りない分は任意保険で支払われます。したがって、本来ならば被害者は示談金の請求を二箇所する必要があり
ます。その手間を減らすため、被害者に自賠責保険の分まで任意保険会社が一括で支払いをします。

被害者請求

自分で書類を用意し、後遺障害等級認定の申請をすることです。メリットは、自分で書類を記入するので、より詳細な書類を作成出来ることです。デメリットは下記の書類をすべて集める必要があるので、手間がかかることです。

後遺障害認定の被害者請求に必要な書類

  • 1.保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書/自賠責保険会社より取り寄せ
  • 2.交通事故証明書/自動車安全センター
  • 3.事故発生状況報告書/被害者が作成
  • 4.医師の診断書/治療を受けた病院
  • 5.診療報酬明細書/治療を受けた病院
  • 6.印鑑証明/住民登録をしている市区町村(区役所等)
  • 7.後遺障害診断書/治療を受けた病院
  • 被害者請求の必要書類と手続きは?後遺障害と自賠責の申請方法

    ▶︎参考:後遺障害等級認定について詳しくはこちら

    示談交渉に弁護士は必要か?

    示談交渉は、基本被害者と加害者の保険会社で行われます。プロである保険会社と、一個人である被害者で行うと、大変な労力が被害者には発生します。そのため、「忙しい」「示談交渉をスムーズに終わらせたい」という方は弁護士に相談することをおすすめします。また、被害者の任意保険に弁護士費用特約(※1)が付属している場合、保険会社が弁護士費用の一部負担あるいは全額負担してくれるので、気軽に利用できるかと思います。

    (※1) 弁護士費用特約…弁護士費用を保険会社が負担してくれるというもの。任意保険の特典やオプションとして用意されている事が多い。

    ▶︎参考:弁護士を依頼するメリット・デメリットについて詳しくはこちら

    示談に関するまとめ

    今回の記事における示談の注意点は以下の4つです。

    • ①示談交渉は、3年以内に終えること
    • ②示談成立には、3ヶ月~4ヶ月程かかる
    • ③示談交渉をスムーズに終わらせたいなら弁護士に依頼する
    • ④症状固定と判断されたら、後遺障害等級認定をする

    この記事を読んだことで、示談交渉に安心して取り組めると幸いです。