交通事故で発症する脳髄液減少症とは?後遺症が残る可能性も…

2019年02月01日

ある日、夫が交通事故の被害にあい、救急車で運ばれたと連絡が来た。事故の内容を聞くと、夫が会社に向かう途中、交差点で信号無視した車と衝突したとのこと。急いで病院へ向かうと、夫は手術を受けており、手術室前の椅子に座って待つことにした。

夫の手術が終わり、担当医から説明を受けた。「あなたの旦那さんは、交通事故の衝撃により髄液が漏れ出す、脳髄液減少症です。手術により髄液の漏れを食い止めましたが、もしかしたら後遺症が残るかもしれません。」

担当医から夫の症状を聞き、「髄液が漏れ出す?後遺症?」と頭の中がパニックになっていた。

このような不安や心配事ありませんか。今回の記事では、

  • 交通事故で発症する脳髄液減少症とは
  • 脳髄液減少症の診断は難しいのか
  • 脳髄液減少症はどんな治療を行うのか
  • 脳髄液減少症は後遺症が残るのか

について説明していきます。

交通事故で発症する脳髄液減少症とは?

交通事故の衝撃によって硬膜が損傷し、髄液が漏れ出すことで「脳髄液減少症」になります。

脳髄液減少症でみられる症状

脳髄液減少症になると、硬膜が損傷して髄液が漏れ出し、脳が動きやすい状態になるため様々な症状があらわれるのです。

脳髄液減少症であらわれる症状は、以下の通り。

  • 起立性頭痛(※1)
  • 疲れやすい
  • 吐き気
  • 頭痛
  • めまい
  • 耳鳴り       など

※1 起立性頭痛とは、座ったり、立ったりすると症状が悪化する頭痛のことです。

脳髄液減少症の診断は難しい?

脳髄液減少症は、明確な診断基準が存在していません。しかし、現段階では以下の2つの診断基準が診断の際に用いられているようです。

    厚生労働省の研究班が平成23年10月に中間報告として発表した「厚労省中間報告基準」
    国際頭痛委員会が平成25年に発表した「新国際頭痛分類基準」

内容については、以下で詳しく説明していきます。

脳髄液減少症の診断基準とは

  • 髄液が漏れ出す原因となる手技が行われている、または外傷が発生している
  • 低髄液圧(60mmH2O未満)またはMRIの画像による低髄液圧や髄液が漏れ出している証拠がある
  • 手技または外傷の時期と同じくして頭痛が発症した
  • 他に最適な診断内容がないこと

脳髄液減少症はどんな治療を行う?

脳髄液減少症で行われる治療は、以下の2通り。

  • 事故直後であれば「保存療法」
  • 事故直後からある程度経過したのであれば「ブラッドパッチ」

保存療法

保存療法の治療とは、安静にして水分を十分に摂取することです。点滴や経口の2通りの方法で水分の補給が行われます。

ブラッドパッチ

ブラッドパッチとは、髄液が漏れ出している箇所に患者自身の血液を注入し、血液の凝固作用で損傷した部分を塞ぐというものです。
ブラッドパッチは、2012年4月から保険の適用が認められるようになりました。しかし、保険が適用されるのは、「脳髄液減少症」と「低髄液圧症候群」と診断された場合に限られています。

脳髄液減少症は後遺症が残ることも…

脳髄液減少症は、後遺症が残ることもあります。交通事故が原因で、脳髄液減少症の後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を申請します。後遺障害等級認定を申請し、後遺障害の等級が認められると、被害者は後遺障害慰謝料(※2)や逸失利益(※3)を加害者に請求することができます。

脳髄液減少症で認められる可能性がある後遺障害の等級は、以下の通り。

後遺障害の等級 内容
9級10号 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

▶︎参考:等級別の後遺障害慰謝料についてはこちら

※2 後遺障害慰謝料とは、交通事故が原因で後遺症が残ったことに対する精神的苦痛を金銭で補填することです。

※3 逸失利益とは、交通事故が原因で後遺症が残ってしまい、労働能力が減少したことで、将来得られるはずだった利益が減少してしまう損害のことです。

脳髄液減少症で後遺障害等級認定を申請する場合

先程、脳髄液減少症で後遺症が残った場合、後遺障害等級認定を申請するといいました。ここでは、後遺障害等級認定の申請について説明していきます。

後遺障害等級認定を申請する前に

後遺障害等級認定を申請する前に、以下の5つの条件を満たしているかを確認してください。

  • 医療機関へ定期的に通院していること
  • 交通事故の状況と被害者が申告する症状の程度が一致していること
  • 交通事故当初から、被害者の訴える症状が続いており、一貫性があること
  • 後遺症が医学的に(画像診断や検査結果など)証明できること
  • 症状が重く、日常的に症状が続いていること

上記の5つの条件を満たしていなければ、後遺障害等級認定で後遺障害の等級が認められない可能性があります。

後遺障害等級認定の申請方法は2通り

後遺障害等級認定の申請は、以下のように2通りの方法があります。

  • 事前認定
  • 被害者請求

事前認定

後遺障害等級認定の申請手続きを加害者側の保険会社に任せる方法です。そのため、被害者が後遺障害等級認定の申請で行うことは、後遺障害診断書を加害者の保険会社に提出することです。その後の後遺障害等級認定の申請手続きは、加害者側の保険会社が行ってくれます。

被害者請求

後遺障害等級認定の申請手続きを被害者自身で行う方法です。被害者請求の場合、被害者は後遺障害等級認定に必要な書類を集めなければなりません。事前認定とは違い、手間はかかりますが、被害者自身で提出書類の検討を行うので、後遺障害等級認定の申請内容を把握することができます。そのため、後遺障害認定の結果にも納得がいくでしょう。

▶︎参考:後遺障害等級認定の被害者請求で必要な書類7つについてはこちら

交通事故で発症する脳髄液減少症のまとめ

いかがでしたか。今回の記事をまとめると

  • 脳髄液減少症になると、起立性頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状があらわれる。
  • 脳髄液減少症の場合、保存療法やブラッドパッチといった治療が行われる。
  • 脳髄液減少症は後遺症が残ることもあり、その場合は後遺障害等級認定を申請する。
  • 脳髄液減少症の場合、9級10号・12級13号・14級9号の後遺障害の等級が認められる可能性がある。

もしも交通事故で脳髄液減少症になってしまったら、この記事を参考にしてくださいね。