交通事故によるむちうちの症状や通院先。症状が軽くても病院へ行くべき?

2019年01月18日

交通事故でむちうちを負ってしまったら、どこへ通院すればよいか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。また、軽微な事故で体に痛みや違和感がない場合、「病院に行かなくてもいいのでは?」と迷ってしまいますよね。

そこで今回は、交通事故によるむちうちの通院先や治療方法、事故後に病院へ行くことの必要性などについて解説していきます。

交通事故でむちうちを負う原因

むちうちは、交通事故やスポーツなどの衝撃で首に不自然な力がかかり、筋肉や靭帯などの軟部組織が損傷されることで引き起こります。交通事故で後ろから追突されると、シートベルトで押さえられていない頭部が前後に大きく振られます。その際に頭部を支えている首に大きな負荷がかかり、むちうちを負ってしまうのです。

むちうちの症状

むちうちの症状は、大きく4つの症状型に分類されます。

  • 頚椎捻挫型
  • 神経根症状型
  • バレー・ルー症候群
  • 脊髄症状型

それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。

頚椎捻挫型

頚椎捻挫型とは、いわゆる首の捻挫を指します。むちうちの症状型の中で最も一般的で、交通事故でむちうちを負う7~8割の人が、この頚椎捻挫型になるといわれています。
主な症状としては、首の痛みや運動制限、背中の痛みや肩のコリ、頭痛などがあります。

神経根症状型

神経根症状型は、交通事故で衝撃を受けたことにより、脊髄から伸びている神経の根本部分が損傷されることで引き起こります。首の痛みのほかに、手足や腕にしびれの症状があらわれます。

バレー・ルー症候群

バレー・ルー症候群は、むちうちによって頚椎が歪んだことで交感神経が刺激され、自律神経のバランスが崩れてしまうことで引き起こります。
耳鳴りや倦怠感、吐き気やめまいなどの不定愁訴が主な症状です。事故直後に症状はあらわれず、時間が経過してから発症するという特徴があります。

脊髄症状型

脊髄症状型は、交通事故の衝撃が脊髄を直接傷つけてしまった場合に発症します。むちうちの症状の中では最も重篤で、後遺症が残ってしまう可能性もあります。
症状としては知覚異常や歩行障害などがあり、膀胱や直腸に障害が及んだ場合、排せつが困難になることもあります。

むちうちの症状はすぐあらわれないこともある

交通事故によるむちうちの症状は、事故直後にあらわれるとは限りません。
交通事故にあうと突然のことに身体が興奮状態になり、アドレナリンやβエンドルフィンといった物質が分泌されます。これらの物質には鎮痛効果があるため、身体が痛みを感じにくい状態になります。
したがって、交通事故でむちうちを負っていたとしても痛みに気付かず、事故から時間が経過して興奮が冷めた頃に、痛みを感じ始めるのです。

事故後すぐに病院へ行かないことのデメリット

事故直後に痛みや違和感がない場合、「怪我を負っていないから病院に行かなくてもいいのでは?」と思う方もいるでしょう。しかし上記で述べたように、事故直後は痛みを感じにくくなっているだけで、決して怪我を負っていないというわけではありません。

交通事故直後に痛みがないからと病院へ行かず、後から痛みがあらわれ病院へ行ったとしても、交通事故と怪我との因果関係を疑われてしまう可能性があります。「この怪我は交通事故が原因の怪我である」ということを証明できないと、被害者は加害者に対して、治療費や慰謝料を請求することができなくなってしまいます。
交通事故と怪我との因果関係を明確にするには、交通事故にあったらたとえ痛みや違和感がなくとも、病院を受診することが重要です。

もしも物損事故で処理してしまっていたら

交通事故後、体に痛みや違和感がないと、物損事故で処理してしまう方も多いかと思います。物損事故扱いのままでは、もしも痛みがあらわれた時に通院したとしても、治療に関する費用を加害者に請求することができません。交通事故直後に痛みがなく物損事故で処理してしまった場合は、人身事故への切り替え手続きを行いましょう。

人身事故への切り替え手続きを行うには、病院で医師の診断書を取得し、事故現場を管轄している警察署に届け出る必要があります。その際、いきなり警察へ行っても手続きができない場合もあるため、アポイントを取ってから行くようにしましょう。

人身事故の切り替えに法的な期限はありません。しかし、交通事故から時間が経ちすぎていると、事故と怪我との因果関係が疑われ、人身事故切り替えに応じてもらえない可能性があります。そのようなことにならないためにも、交通事故から10日以内を目安に手続きを行うようにしましょう。

交通事故後、病院の何科に行くべき?

交通事故後に病院へ行くことは大切ですが、「病院の何科に行けばいいの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

交通事故後は救急車で運ばれるほどの大怪我を除き、整形外科へ行くとよいでしょう。また、総合病院を受診してもよいです。総合病院には様々な診療科があり、受付でそれぞれの症状に適した科へ案内してもらえます。

整形外科で受けられる治療内容

交通事故によるむちうちを治療する際、整形外科では以下のような検査や治療が受けられます。

  • レントゲンやMRIでの画像検査
  • 薬の処方
  • ブロック注射

レントゲンやMRIでの画像検査

レントゲンを撮影することで、骨折や脱臼などの骨の異常を検査することができます。
しかし、むちうちは骨の異常ではなく、筋肉や神経など軟部組織の損傷です。したがって、レントゲンではむちうちを見つけられない可能性があります。
軟部組織の損傷を確認するためには、レントゲンのほかにMRIでの検査も受けるようにしましょう。

薬の処方

整形外科では、痛み止めや湿布などの投薬治療も行われています。湿布には温湿布と冷湿布がありますが、痛みが強くあらわれる急性期には冷湿布、症状が落ち着いてくる慢性期には温湿布を使用するとよいでしょう。

ブロック注射

ブロック注射とは、痛みがある部位の神経付近に、薬を注射する治療方法です。ブロック注射で興奮した神経を落ち着かせることによって、痛みや筋肉の緊張が緩和されていきます。

整骨院へ通う際の注意点

交通事故によるむちうちは、整骨院で施術を受けることもできます。しかし整骨院は病院ではないため、医師の診断や治療、検査を受けることができません。したがって、交通事故で整骨院へ通う際は、病院と併行して通院することが大切です。

また、医師の許可を得てから整骨院への通院を開始するようにしましょう。何もいわずに整骨院へ通院した場合、その後の治療費を支払ってもらえなくなる可能性があります。

交通事故によるむちうちの治療で支払われるお金

交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。交通事故における損害賠償とは、交通事故によって様々な損害を負った被害者に対して、加害者がその損害の埋め合わせを行うことです。

それでは、交通事故でむちうちを負ってしまった場合に、被害者が請求できる損害賠償の内訳を見ていきましょう。

積極損害

積極損害とは、交通事故で怪我を負ってしまったことによって、被害者が出費を余儀なくされた場合に発生する損害です。

積極損害として請求できる費用には、以下のようなものがあります。

  • 治療関係費
  • 付添看護費
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 器具・装具等の購入費 など

消極損害

消極損害とは、交通事故にあわなければ被害者が将来得られていたはずの収入や利益が、交通事故によって減少または喪失されてしまったことによる損害です。

消極損害は、休業損害逸失利益の2つに分かれています。

休業損害

交通事故の怪我を治療するために仕事を休んだことで、被害者の収入が減少してしまった場合の減収分が補われます。

逸失利益

交通事故の怪我が後遺障害になり被害者の労働能力が低下したことで、減少または喪失してしまった利益のことをいいます。

慰謝料

慰謝料は、交通事故によって被害者が負った精神的苦痛に対して支払われる金銭です。
むちうちの場合、被害者は入通院慰謝料後遺障害慰謝料を請求することができます。

慰謝料を計算する際の3つの基準

交通事故の慰謝料は、以下3つの基準を用いて計算されます。

  • 自賠責基準
    自動車を所有しているすべての人に加入が義務付けられている、自賠責保険を基準とした計算方法。交通事故の被害者が受けた損害を最低限補償することが目的であるため、3つの基準の中で最も低い金額となります。
  • 任意保険基準
    運転者の任意で加入を決めることができる任意保険を基準とした計算方法。各任意保険会社で基準が異なるため、計算方法は非公開となっています。しかし、自賠責基準より高額または同等で、弁護士基準よりは低い金額になるといわれています。
  • 弁護士基準
    交通事故における過去の判例を参考に、東京三弁護士会の交通事故処理委員会が公表しています。3つの基準の中で最も高額となります。

自賠責基準を使った入通院慰謝料の計算方法

今回は、自賠責基準を使った入通院慰謝料の計算方法をご紹介します。慰謝料の相場を把握したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

自賠責基準の入通院慰謝料は、まず以下2つの計算を行います。

①治療期間=入院期間+通院期間
②実通院日数=(入院期間+実通院日数)×2

そして、計算結果が少ない方に4,200円を掛けます。そうして出た金額が、入通院慰謝料の相場となります。

自賠責基準での後遺障害慰謝料相場

後遺障害慰謝料は、1~14級まである後遺障害等級によって金額が異なります。
自賠責基準での後遺障害慰謝料の金額を、以下にまとめました。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料
1級 1100万円
2級 958万円
3級 829万円
4級 712万円
5級 599万円
6級 498万円
7級 409万円
8級 324万円
9級 245万円
10級 187万円
11級 135万円
12級 93万円
13級 57万円
14級 32万円

治療費が打ち切られてしまったら

交通事故の被害者は、加害者側の保険会社に対して損害賠償を請求することができますが、治療期間が長引いてしまうと、治療を打ち切られてしまう可能性があります。

しかし、治療打ち切りを打診された時点で、まだ体に痛みが残っているのであれば、医師に相談して治療を継続するようにしましょう。治療打ち切りに応じてしまうと、その後の費用は被害者自身の負担になるため、大きな不利益となってしまいます。

治療打ち切りの対処法

治療が打ち切られてしまうケースに、以下のようなものがあります。

  • 通院頻度が少ない
  • 物損の程度が軽微

それぞれの対処法を見ていきましょう。

通院頻度が少ない

通院頻度が少なかったり、通院の間隔が空きすぎてしまうと、加害者側の保険会社から「そんなに痛くないんじゃないか」と捉えられてしまう可能性があります。そうならないためにも、1週間に2~3回ほどの通院頻度を保ちながら、通院を続けることが大切です。

物損の程度が軽微

物損の程度が著しく軽微な場合、「そんなに重い怪我ではない」と早期に治療を打ち切られてしまう可能性があります。このようなことを防ぐためには、定期的な通院を続けるほか、医師に自覚症状をしっかりと伝えることが大切です。

交通事故のむちうちが後遺障害になってしまったら

交通事故によるむちうちが後遺障害になってしまったら、後遺障害等級認定の手続きを行いましょう。後遺障害等級が認定されると、等級に応じた後遺障害慰謝料を受け取ることができます。

むちうちの後遺障害等級は12級または14級

むちうちの場合、後遺障害等級は14級と認定されることが多いでしょう。症状の程度によっては、12級に認定されることもあります。
それでは、どのような基準で後遺障害12級または14級と認定されるのでしょうか。

後遺障害12級が認められるには

後遺障害12級が認定されるには、レントゲンやMRIで異常を明確に確認できることが重要です。MRI検査を受けるときは、できるだけ精密度の高い機器で検査を受けるようにしましょう。また、運動能力や知覚などを測定する神経学的検査を受けることも有効です。

後遺障害14級が認められるには

後遺障害12級認定のためには、レントゲンやMRI画像で他覚的所見が証明できることが大切です。しかし後遺障害14級は、他覚的所見で明確に症状が証明できなくても、認定される可能性があります。

具体的には、以下4つの条件いずれかに当てはまる場合に、後遺障害14級として認定されます。

  • 交通事故の状況と、被害者が医師に申告する自覚症状の程度が一致していること
  • 交通事故当初から、定期的に医療機関へ通院していること
  • 交通事故当初から、被害者の自覚症状に連続性かつ一貫性があること
  • 後遺障害となった症状が日常生活の中で継続していること

以上の条件に当てはまることに加え、神経学的検査を受けてもよいでしょう。後遺障害となった症状を医学的な資料で証明できればできるほど、後遺障害等級が認定される可能性は高くなります。

交通事故のむちうちについてまとめ

いかがでしたか。交通事故にあってしまったら、たとえ痛みや違和感がないとしても、必ず病院に行きましょう。むちうちの場合はレントゲンだけではなくMRI検査も受け、他覚的所見が証明できる資料を残しておくことも大切です。