交通事故のむちうち。請求できる慰謝料の相場や後遺障害認定のポイント

2019年04月03日

交通事故によるむちうちが発生した場合に請求できる慰謝料について説明していきます。ここでは慰謝料の相場や算定基準のご紹介、後遺障害認定の対処方法についてお伝えしておりますので、参考の一つとしてご覧ください。

交通事故でむちうちになった場合は慰謝料を請求することができます。算定基準は?相場は?
後遺症と認めてもらうには?など気になるポイントは色々とあるかと思います。
様々な種類のある賠償金の内、今回は「慰謝料」に注目し詳しくご説明していきます。

そもそもむちうちとは

交通事故によるむちうちは、衝撃の強さや損傷部位によって、あらわれる症状が異なります。そもそも、どのような原因でむちうちを負ってしまうのでしょうか。

ここではまず、むちうちの原因や症状について解説していきます。

むちうちを発症するきっかけ

むちうちは、特に後方車からの追突事故や急停車の際に、よくみられる怪我です。原因としては、交通事故で衝撃を受けた際に頚椎がむちのようにしなり、筋肉や靭帯などがダメージを受けてしまうためです。
むちうちを負うと、様々な症状が引き起こされます。

むちうちの自覚症状

むちうちの代表的な自覚症状は、首や肩、背中などの痛みです。他にも、
頭痛や吐き気、めまい、耳鳴り、手のしびれ、腰痛、倦怠感などの不調が現れることも。
むちうちは、人それぞれに感じる症状や発症するタイミングが異なります。目立った外傷がなくても、このような症状が現れた場合はむちうちである
可能性があります。

▶︎参考:むちうちの症状や通院先についての詳細はこちら

むちうちになった場合に貰える慰謝料について

慰謝料とは、精神的損害に対する損害賠償のことをいいます。
重傷を負っていない場合でも、人身事故で処理がされ通院が必要とされたなら、慰謝料を貰うことができるのです。
むちうちになった場合に関わる慰謝料の種類は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2つが挙げられます。

①入通院慰謝料

交通事故による怪我の治療のため、入院や通院をしなければならなくなった被害者に対する慰謝料です。
入院の有無や通院期間によって、支払われる金額が異なります。

②後遺障害慰謝料

通院を続けていても後遺症が残ってしまった際に、被害者が被る精神的苦痛に対する慰謝料です。
後遺障害等級が認定されると、等級に応じた後遺障害慰謝料の請求が可能となります。

入通院慰謝料を算定する3つの基準

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交通事故の慰謝料は、自賠責基準任意保険基準弁護士基準と呼ばれる
3つの内、どの基準を適用するかにより金額が変わってきます。

①自賠責基準

自動車の所有者は加入を義務付けられている、自賠責保険を基準に計算されます。自賠責保険は交通事故の被害者に対して、最低限の保障を行うことが目的であるため、3つの計算基準の中で最も低い金額となります。

自賠責基準で計算するには、
①治療期間+入院期間
②実通院日数(実際に通院した日数)×2
以上2つの計算を行い、少ない方に4,200円を掛けた金額が入通院慰謝料となります。

②任意保険基準

任意保険基準は、各任意保険会社の基準に基づいて金額が算定されています。そのため、加害者が加入している保険会社によって金額が変わってきます。一般的に、自賠責基準より少し高めか、同等であるといわれています。

③弁護士基準

弁護士基準は、裁判所による過去の判例などを参考にした、弁護士のみが
使用できる計算基準です。保険会社とのやり取りや示談交渉などを弁護士に
依頼することで、弁護士基準での慰謝料が適用されます。自賠責基準や任意保険基準と比べて高額な慰謝料を貰える場合が多いですが、弁護士に依頼する際は弁護士費用が発生するため、注意が必要です。

適切な金額を受け取るために大切な事は、完治か症状固定をするまでしっかりと通院することです。
余りに通院回数が少ないと、本来受け取れる金額よりも低くなってしまう
恐れがあります。
慰謝料だけでなく、今後健康的な生活を送るためにも、無理のない範囲で
通院を継続していきましょう。

後遺障害慰謝料を得るには

交通事故によるむちうちは、完治せずに症状が残ってしまうこともあります。そんな時は、後遺障害等級認定を目指すという選択肢についても考えてみましょう。

むちうちの後遺障害等級

むちうちになってから後遺障害が残った場合、後遺障害等級認定を申請をして認定されれば、後遺障害慰謝料を請求することができます。
むちうちで認定される後遺障害の等級は、14級か12級である場合がほとんどです。

後遺障害慰謝料の基準も3つ

入通院慰謝料のように、後遺障害慰謝料の算定基準についても自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあります。自賠責基準、弁護士基準から算定した金額の目安は、以下の通りです。

①14級…自賠責基準で32万円、弁護士基準で110万円
②12級…自賠責基準で93万円、弁護士基準で290万円

このように、等級や基準により金額は大きく変わってくることが分かります。
では、後遺障害等級14級と12級の認定基準には、どのようなものがあるのでしょうか?

12級の場合

後遺障害12級は、後遺症として残っている症状の原因となるような、筋肉や神経などの損傷がレントゲンやMRIなどからハッキリと認められ、客観的に証明できる症状であるかが重要となります。

14級の場合

レントゲンやMRIなどの画像検査では原因が特定できていない状態でも、痛みやしびれなどが緩和される可能性もなく残り続けている場合は、後遺障害14級と認定される可能性があります。

後遺障害を認めてもらうためには

後遺症として自覚症状があっても、画像検査など客観的に症状を証明できる資料がない場合は、本当に症状が残っているのか疑われてしまう恐れも。
損をしないためには、後遺障害を認めてもらうための大切なポイントを押さえておきましょう。

交通事故当初から通院を始めること

軽い交通事故であった場合、むちうちが発生していてもすぐに自覚症状が
あらわれないことがあります。ですが、自覚症状の有無にかかわらず、すぐに病院へ行くことが大切です。その後の通院も定期的に続けていきましょう。

交通事故当初から症状の訴えが一貫していること

交通事故当初に訴えた痛みの主張が途中から変わってしまうことにより、
後遺障害等級認定が非該当になってしまう可能性があります。
事故当初、自分はどのように症状を訴えたのか、メモなどを残して表現にブレがないようにしてもいいかもしれません。

適切な検査を行う

画像検査のみでは症状が証明できない場合、医師と相談しながら神経学的検査を受けてみてもよいでしょう。神経学的検査とは、筋力や反射などについて調べる検査方法で、いくつかの種類があります。むちうちの場合は頭を後ろに傾けて左右に動かし、痛みが出るかを調べるテストや握力テスト、筋電図テスト、腱反射テスト、異常反射テストなどを行うことがあります。
神経学的検査を受けることにより、症状の存在を証明できる可能性があります。

後遺障害等級認定の申請方法

まずは症状固定となるまで通院を続けた上で、医師から後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
後遺障害診断書の内容は、後遺障害等級認定を受けるにあたり大きな影響を及ぼします。診断書の書き方次第では、審査が通らなくなってしまうこともあります。症状を正確に書いてもらうためにも、自覚症状については明確に医師へ伝えましょう。また、治療に対する前向きな姿勢や充分なコミュニケーションで、担当医師との信頼関係を築くことも大切です。

後遺障害診断書を作成してもらったら、相手の保険会社へ申請手続きを行います。後遺障害等級認定の申請方法は、事前認定と被害者請求の2種類あります。

①事実認定

事実認定とは、相手側の任意保険会社を通して、後遺障害等級認定を行う
機関に請求する方法です。

メリット
被害者がすべきことは、相手側の任意保険会社に後遺障害診断書を送ることのみです。後の手続きは保険会社が行ってくれるため、手続きの手間が省けるというメリットがあります。
デメリット
重要な後遺障害認定申請そのものを、相手側の保険会社に任せることになってしまうため、本当にしっかりと手続きをしてくれているのかは分かりません。相手側の保険会社視点では、被害者の後遺障害が認められない方が有利であるといえます。そのため不安であると同時に、後遺障害認定が受けにくくなってしまう恐れがあるというデメリットもあります。

②被害者請求

被害者請求は、被害者が相手方の自賠責保険会社に対して直接、後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。
被害者は交通事故証明書や事故状況証明書、診断書、診療報酬明細書、印鑑登録証明書などの必要書類を自分ですべて揃えて提出します。

メリット
被害者請求は、被害者自身がで手続きを行うため、どのように申請が行われるのか把握でき、安心感があります。
また、医師に依頼して有利になる内容の意見書を書いてもらい、追加提出
することも可能です。したがって、結果的に事実認定よりも認定を受けやすい可能性があるメリットがあります。

デメリット
事前認定とは違い、多くの必要書類を自ら取得し送付しなければいけない
ため、面倒であるというデメリットもあります。また、病院からレントゲン画像などの検査資料や、診療報酬明細書を取り寄せるための費用もかかります。
必要書類の中には個人情報の関係上、被害者本人でないと病院から資料の取り付けが出来ない場合もあります。したがってお仕事など忙しく、資料の取り付けが難しい方には厳しい方法かもしれません。

まとめ

むちうちの慰謝料は3つの算定基準から決定され、通院期間が長いほどしっかりとした
金額で受け取ることが期待できますが、請求方法により大きく変わってくることもあります。
後遺症が残ってしまった場合は後遺障害等級認定を目指し、損をしないための取り組みに努めましょう。