交通事故後に加害者はどんな対応をすべき?注意すべき点も解説!
車を運転していれば誰にだって、交通事故を起こしてしまう危険性はあるもの。交通事故が起きてしまった場合、被害者と加害者では事故後にするべき対応が異なります。ここでは、加害者になってしまった場合の交通事故後の対応について解説します。
交通事故後に加害者がすべき対応
交通事故を起こした加害者は、事故の大小にかかわらず、必ずすべきことがあります。
交通事故後にすべき加害者がすべき対応の大まかな流れは、以下の通り。
- ①怪我人の保護
- ②警察へ連絡
- ③目撃者の確認
- ④保険会社へ連絡
- ⑤病院へ行き、医師の診断を受ける
一つひとつ詳しく見ていきましょう。
①怪我人の保護
交通事故の後の対応で最もしてはならないのが、負傷者を救護(保護)せずにその場を離れる行為です。もしそのようなことをすると加害者は、「ひき逃げ」をしたことになってしまいます。これは道路交通法72条にも規定されている救護義務違反になります。
もし救護義務違反になった場合、違反点数23点、免許取消などの罰則を科されます。まだ免許取消なら軽いかもしれません。場合によっては5年以下の懲役か50万円以下の罰金、過去に違反記録があれば数年間免許の所持ができなくなることもあります。
また、一見軽症と思われる怪我でも必ず救急車を要請しましょう。重症の場合、救急救命や心肺蘇生ができる人ばかりではありません。そのような行為ができない場合でも、ここでの負傷者救護の意味は、負傷の有無の確認と救急車要請、安全な場所に負傷者を移動させるといった行為を指します。
②警察へ連絡
交通事故を起こした場合は必ず警察に連絡します。人身事故・物損事故のどちらでも、また加害者・被害者どちらも届け出をしなければなりません。特に加害者は義務とされており、これに違反すると罰則が科されることがあります。
道路交通法72条によると罰則は3ヶ月以下の懲役か、5万円以下の罰金となっています。そして届けた後に双方で話し合い、示談交渉を行いますが、その際にも交通事故証明書が必要になります。交通事故証明書は警察に届けていないと発行できないので、やはり義務という側面だけでなく、交通事故の後の速やかな対応を図りたいなら必ず警察に届けましょう。
実況見分を行う
警察へ連絡すると、実況見分が行われます。
実況見分とは
警察が、交通事故が起きた場所における加害者、被害者、目撃者、交通事故後の現場状況を明確にすることです。
実況見分が行われると、実況見分調書が作成されます。実況見分調書の作成には、交通事故当事者や目撃者の証言、交通事故後の現場状況が重要となります。実況見分調書の内容(または供述調書)は、後で証拠として過失割合を決定する重要なものになります。
実況見分を行うことで、加害者は「民事責任・行政責任・刑事責任」という3つの法的責任を負うことになります。しかし、被害者が被害状況を拡大させたり、虚偽の示談をしようとした場合、実況見分を行っていると、加害者は無用な支払いをする必要がなくなります。実況見分は、加害者に対して損ばかりではないのです。
被害者が重傷を負い、救急車で緊急搬送をされた場合は、交通事故後の現場状況の説明などをすることはできません。そのような場合、後日改めて交通事故現場に呼ばれ、実況見分が行われることもあります。
③目撃者の確認
交通事故を起こした場合は大抵の方がパニックになっているはずです。もし近くにその事故を見ていた方がいたら、氏名や連絡先を聞いておきましょう。例えば、交通事故の近所にいる方や通行人などです。
目的者の確認をしておくと、交通事故の起きた状況が複雑な場合、後日証人として確認することが可能になります。目撃者の情報があると安心できるでしょう。また、加害者になった場合は、先方に住所・氏名・連絡先・加入の自賠責保険と任意保険・車両ナンバー・勤務先などを伝えるようにしましょう。
④保険会社へ連絡
警察へ連絡をしたら、次に保険会社へ連絡しましょう。保険会社への連絡は、加害者側の保険会社だけではなく、被害者側の保険会社へも連絡する必要があります。
加害者の保険会社へ連絡
車を所有していれば、任意保険に加入している人が多いはずです。加入者であれば交通事故の後に、必ず保険会社へ連絡します。実はこの連絡を怠ってしまうと、交通事故の治療で保険が使えなくなります。
交通事故の保険に自賠責保険がありますが、実は任意保険に加入していないと面倒なことが多くなります。任意保険に加入していない人は、ほとんどいないかもしれませんが、自賠責保険の保障内容だけでは足りないこともあります。自賠責保険の場合、運転者すべてに加入義務がありますが、被害者に対して最低限の保障しか行ってくれません。
自賠責保険は、相手の怪我・死亡時の保障に他ならないのです。もちろん加害者側も困る場合があります。また、自賠責保険には、被害者の保障として治療費や慰謝料、逸失利益 (怪我で仕事ができないときの損害)などが含まれています。しかし、自賠責保険で保障される金額が決まっており、それを超えた金額は出ません。
自賠責保険でカバーできない部分をフォローするのが、任意保険です。このようなことがあるということを知っておいて損はないでしょう。
被害者の保険会社へ連絡
加害者は、被害者に対して賠償金を支払うため、保険会社への連絡は必須です。しかし、被害者であっても、自身の保険会社へ連絡する必要があります。
なぜなら、後から被害者側にも過失があると判明した際に、自身の保険を使わなければいけない場合があるためです。また、加害者が任意保険会社へ加入していない場合も、自身の保険を使わなければいけない場合があります。
⑤病院へ行き、医師の診断を受ける
警察や保険会社への連絡が済んだら、まずは病院へ行き、診断書の取得をしましょう。
診断書は、医師のいる医療機関でのみ取得することができます。内容としては、病名や怪我の症状、治療期間の見通し、医師名や病院名などが記載されています。
診断書を取得する理由は、怪我の原因が交通事故によるものだと証明するためです。
また、物損事故から人身事故への切り替えを行う際に、警察へ提出する必要があります。
診断書は、交通事故の手続きにおいて重要な書面です。交通事故にあったら、痛みや違和感がなくとも、病院へ行くようにしましょう。
通院先に困ったら
病院へ通院を続けても痛みが引かない場合は、保険会社へ許可を取り、整骨院へ転院することができます。整骨院には、柔道整復師が在籍しています。病院では見つけられなかった症状に対して、手技を用いて施術を行います。
交通事故の怪我が後遺症になってしまったら
怪我の治療を続けても、これ以上怪我の状態が良くならないと医師が判断した場合、症状固定となります。また、症状固定になった症状のうち、後遺障害の等級に該当する場合は後遺障害と呼ばれます。後遺障害の等級に該当する症状がある場合は、後遺障害等級認定を申請します。
後遺障害と認められるには、以下の条件を満たしていなければいけません。
- 交通事故と怪我との因果関係があること
- 交通事故による怪我が、今後生きていく上で完治する見込みがないこと
- 交通事故の怪我により、労働力が低下してしまうこと
- 後遺症が医学的に証明または、説明されていること
- 怪我の症状が自賠責保険の等級認定に値すること
後遺障害には、1級から14級まで等級があり、等級に応じた慰謝料を請求することができます。
保険会社との示談交渉
後遺障害等級の認定または、怪我の治療が終了した段階で、加害者側の保険会社との示談が始まります。
示談は、被害者に支払われる最終的な賠償金額を、被害者と加害者で話し合い、お互い納得し和解するために行われます。
示談が終了すると、加害者側の保険会社から被害者宛てに、示談書の案が送られてきます。被害者は示談書の案をよく読み、納得した上で署名・押印をし、加害者側の保険会社へ返送します。加害者側の保険会社は、返送された示談書の最終的な処理を行い、被害者の指定口座へ賠償金の振り込みを行います。
示談不成立になったら、民事裁判が行われる
交通事故の示談が不成立になった場合は、民事裁判が行われます。民事裁判の流れは、以下の通り。
- ①裁判所に訴状を提出
- ②口頭弁論
- ③争点整理・証拠の提出
- ④和解協議
- ⑤当事者・証人尋問
- ⑥判決の言い渡し
(※和解が成立した場合、裁判手続きは終了となります。)
▶︎参考:交通事故の民事裁判の流れについて詳しく知りたい方はこちら
▶︎参考:交通事故の裁判で和解する場合の流れについて詳しく知りたい方はこちら
▶︎参考:交通事故の民事裁判で言い渡された判決がに納得がいかない場合はどうする?
交通事故後の対応で注意すべき点
交通事故後の対応で注意すべき点は、以下の2つです。
- 治療を中断
- 交通事故直後の示談
治療を中断
被害者は、医療機関への通院を、「もう治ったかも?」と自身で判断し、中断することは避けましょう。なぜなら、通院を止めた後に痛みが発症したり、体調不良になったとしても、交通事故との因果関係が認められない場合があるためです。
通院が必要かどうかは自分で判断せず、医師の指示に従うようにしましょう。
加害者でも、車同士がぶつかったような事故なら、自分も必ず医師の診察を受けるようにしましょう。安易に自己判断せずに、必ず診断書を作成してもらいます。これは事故直後には体の異常を感じなくても、後で色々な症状が出てきたときに有効になるからです。
交通事故直後の示談
交通事故直後に、示談することは避けましょう。交通事故直後は、加害者、被害者共に気が動転していて、的確な判断ができない場合があります。また、交通事故から時間が経過してから、怪我の症状があらわれる場合もあります。
交通事故直後に示談をしてしまうと、被害者は、正しい賠償金を受け取ることができなくなってしまいます。それによって、加害者と被害者の間でトラブルが起こってしまう場合があります。
交通事故後の対応についてのまとめ
運転経験が長く、運転に自信があっても、交通事故を起こしてしまう可能性はあり得るものです。体調が悪いときは運転しない、自信がない道は減速するなど、自分で気をつけて運転をするように心がけましょう。
万が一、交通事故を起こしてしまった場合は、この記事を参考に落ち着いて交通事故の対応を進めていきましょう。