交通事故の裁判手続きである「略式起訴」とは?該当する事故について

2019年02月01日

交通事故の裁判手続きには、略式起訴というものもあります。しかし、「略式起訴なんて聞いたことがない。」という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「略式起訴とは何か」「どんな流れで行われるのか」などについて解説していきます。

交通事故を起こして略式起訴されることに…

交通事故を起こし、怪我人がいる場合、加害者は刑事処分を受けることになります。刑事処分とは、懲役や禁固、罰金といった刑罰を受ける処分のことです。刑事処分の場合は、検察官に起訴され、裁判手続きで加害者の刑罰が決まります。

その裁判手続きには、一般的な裁判の他に、略式起訴というものがあります。略式起訴で行われる裁判手続きは、手続きが簡略化されています。そのため、一般的な裁判とは異なり、法廷で審理を行いません。略式起訴の場合は、書類だけで加害者の処分を決めることができるのです。したがって、一般的な裁判よりも、短い期間で裁判手続きを終わらせることができます。

▶︎参考:刑事処分の他に加害者が受ける処分についてはこちら

略式起訴される可能性のある事故とは?

略式起訴の裁判手続きで行われるのは、「軽微な事故」かつ「加害者が略式起訴で行うことに同意している」場合に限られます。

このように、略式起訴の場合、加害者の同意が必要になります。一方、一般的な裁判では、加害者の同意する必要がありません。

また、略式起訴の場合、簡易裁判所で管轄されている事故でなければなりません。

略式起訴された場合に受ける刑罰とは?

略式起訴された場合、加害者が受ける刑罰に制限があり、100万円の罰金または科料(※1)の刑罰が科せられます。加害者は、罰金や科料の刑罰を受けることになるため、略式起訴の場合でも前科がつくことになります。

ちなみに、加害者が罰金や科料を支払えない場合は、労役場留置となります。労役場留置になってしまうと、労役場で強制労働を行うことになります。労役場で働くと、1日あたり5000円の罰金を支払ったことになります。

※1 科料とは、1000円以上1万円未満を納めさせる財産刑のこと。

略式起訴の流れ


略式起訴で行われる裁判手続きは、加害者の身柄が拘束されている場合と、拘束されていない場合で異なります。

加害者の身柄が拘束されている場合

  • ①逮捕された後、刑事施設で身柄を拘束される
  • ②身柄を拘束されている期間が終わるときに、検察庁で略式起訴の説明を受ける
  • ③加害者が略式起訴に同意すると、検察が簡易裁判所へ略式命令(※2)の請求を行う
  • ④裁判官から略式命令が下され、身柄が解放された後、検察庁の窓口で罰金を納める

※2 略式命令とは、略式起訴の裁判手続きで、加害者に刑罰を言い渡すこと。

加害者の身柄が拘束されていない場合

  • ①書類送検(※3)
  • ②検察庁が事件の処理を終えた後、略式起訴の説明を受ける
  • ③加害者が略式起訴に同意すると、検察が簡易裁判所へ略式命令の請求を行う
  • ④裁判官から略式命令が下されると、裁判所から自宅へ刑罰の内容を記した通知書が届く
  • ⑤検察庁から罰金の納付書が届き、金融機関で納める

※3 書類送検とは、司法警察官が被疑者である加害者を逮捕しないこと。または、逮捕したが後に釈放され、被疑者である加害者の身柄を拘束することなく、事件を検察官に送ること。

略式起訴に不服がある場合はどうする?

略式起訴に不服がある場合、加害者は正式裁判(=一般的な裁判)を申し立てることも可能です。検察官によって起訴された加害者は、刑事訴訟法の第465条によって、正式裁判を請求する権利が認められています。

略式起訴に不服がある場合、略式命令を下された日から、14日以内に手続きを行わなければなりません。正式裁判へ切り替える手続きは、簡易裁判所に書面でその旨を伝えるだけです。

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交通事故の略式起訴についてのまとめ

いかがでしたか。交通事故の略式起訴とは、裁判手続きが簡略化されたもので、書面で判決を言い渡されます。そのため、正式裁判とは異なり、短い期間で問題を解決することができます。

略式起訴は「軽微な事故」かつ「加害者が略式起訴で行うことに同意している」場合に行われ、加害者は罰金や科料の刑罰を受けます。

また、略式起訴に不服の場合は、略式命令を下された日から14日以内に手続きを行うことで、正式裁判に切り替えることも可能です。