物損の交通事故で裁判に。流れや費用について解説!
交通事故で壊れたモノは、加害者が、損害賠償を支払う責任があります。物損事故の損害賠償の問題は、事故の当事者同士でもめることもあり、裁判に発展するかもしれません。
「裁判?どうすればいいのか全くわからない…。」と不安になりますよね。そこで今回は、物損事故の裁判について解説していきます。
物損事故の裁判は民事裁判
交通事故の裁判は、以下の2種類があります。
- 民事裁判:損害賠償に関する問題を取り扱う裁判で、誰でも起訴することができます。
- 刑事裁判:加害者にどんな刑事罰を与えるべきかという問題を取り扱う裁判で、検察官しか起訴できません。
上記のことから物損事故の裁判は、壊れたモノの損害賠償を決める裁判になるので、「民事裁判」になることがわかります。では、民事裁判を行った場合、メリットやデメリットはあるのでしょうか。
民事裁判を行うメリット
民事裁判を行うメリットは、以下の3つです。
- 物損事故の損害賠償に関する問題を解決することができる
- 調停や示談のように相手が同意しなくても解決できる
- 損害賠償の支払いが受けられなくても、判決書の効力で強制執行が可能
民事裁判を行った場合のデメリット
民事裁判を行った場合のデメリットは、以下の4つです。
- 民事裁判の手続きが難しく、手間がかかる
- 民事裁判にかかる費用が高い
- 民事裁判が長期化する可能性もある
- 民事裁判で敗訴するリスクがある
物損事故の裁判の流れ
物損事故の裁判の流れは、以下の通り。
- ①裁判所に訴状を提出する
- ②口頭弁論を行う
- ③争点整理や証拠の提出をする
- ④判決を言い渡す
①裁判所に訴状を提出する
まずは、裁判所に訴状を提出します。民事裁判の場合、訴状を提出しなければ、裁判が開かれることはありません。訴状の提出先は、損害賠償で請求する金額によって異なります。以下の表にまとめました。
請求する損害賠償の金額 | 提出先 |
---|---|
140万円以下 | 簡易裁判所 |
140万円以上 | 地方裁判所 |
簡易裁判所と地方裁判所は、どちらも全国各地にあり、提出先を迷うかもしれません。以下のいずれかを管轄している裁判所に、訴状を提出するとよいでしょう。
- 訴える人の住所
- 訴えられた人の住所
- 交通事故の発生場所
訴状は裁判所の書記官によって審査され、不備があれば訴状を修正することになります。
物損事故の裁判の訴状の書き方【物損編】
物損事故の裁判で提出する訴状の書式と記載例は、裁判所のホームページで閲覧することができます。
訴状に書く内容は、以下の通り。
- 訴状の作成日
- 裁判を起こした人の名前と住所、電話番号
- 裁判で訴える人の名前と住所、電話番号
- 損害賠償の請求内容
- 事故の状況と損害内容 など
②口頭弁論を行う
訴状を提出して1~2ヶ月が経過すると、「第1回口頭弁論期日」の日程を決め、口頭弁論を行います。訴えた人は、指定された日に裁判所へ出向くことになります。
一方、訴えられた人は「答弁書」を裁判所に提出していれば、第1回口頭弁論期日に出席する必要はありません。答弁書とは、訴状に書かれた請求に対する回答や訴状に書かれた事実に対する認否を書いた書面のことです。
また、訴えられた人が第1回口頭弁論期日までに争う意思を示さなかった場合、裁判は終了となります。訴えられた人が争いを拒否した場合は、訴えた人が訴状で請求した通りの判決が言い渡されます。
③争点整理や証拠の提出をする
訴えられた人が民事裁判に応じた場合は、月1回の頻度で裁判所で話し合いが行われます。
裁判所では、訴えた人と訴えられた人がお互いの主張を述べ、何が問題で争っているのかを整理していきます。また、お互いの主張を裏付ける証拠の提出も行います。
証拠となるものには、以下のようなものがあります。
- 実況見分調書
- 事故現場や事故車両の写真
- ドライブレコーダー
- 事故状況報告書 など
口頭弁論を進めていく中で、ある程度争点が整理されて証拠が出揃うと、裁判官から和解を提案されることがあります。当事者双方が和解に納得した場合、和解成立となるため、その時点で裁判は終了となります。
▶︎参考:交通事故の裁判の途中で提案される和解についてはこちら
④判決を言い渡す
判決が決まると、裁判官から判決の言い渡しが行われます。判決が言い渡されると、裁判が終了になります。しかし、裁判の判決内容に不服がある場合は、控訴や上告を行って再審を求めることも可能です。
物損事故の裁判にかかる費用はどのくらい?
物損事故の裁判を起こすと訴訟費用や弁護士費用がかかります。しかし、訴訟費用は、裁判で敗訴した人が支払うことになっています。
訴訟費用
訴訟費用には、訴状や申し立て書に使う収入印紙の手数料や各種書類を送付するための郵便料金などがあります。
手数料
手数料は、請求する損害賠償の金額によって異なります。
請求する損害賠償の金額 | 手数料 |
---|---|
①100万円までの場合 | 請求する金額の10万円ごとに1000円 |
②100万円以上500万円以下の場合 | 請求する金額の20万円ごとに1000円 |
③500万円以上1000万円以下の場合 | 請求する金額の50万円ごとに2000円 |
④1000万円以上10億円以下の場合 | 請求する金額の100万円ごとに3000円 |
⑤10億円以上50億円以下の場合 | 請求する金額の500万円ごとに1万円 |
⑥50億円以上の場合 | 請求する金額の1000万円ごとに1万円 |
郵便料金
裁判所が訴状や各種書類を送付するための郵便料金を、あらかじめ切手で納めなければなりません。郵便料金は、各裁判所によって納める金額が異なるので、裁判所に問い合せて確認するのがよいでしょう。
弁護士費用
裁判のために弁護士を雇う場合、弁護士費用が必要になります。弁護士費用には、着手金と報酬金という2つの費用があります。
- 着手金:弁護士に相談した案件に、着手してもらうための費用のこと
- 報酬金:弁護士に相談した案件が終了したときに、成功の程度に応じて支払う費用のこと
弁護士費用は、自分の加入している保険に弁護士特約がついていれば、保険会社が負担してくれます。ただし、弁護士特約で負担できる弁護士費用の金額は、保険会社や保険の内容で決められています。一度、自分が加入している保険会社に確認してみることをおすすめします。
物損事故の裁判についてのまとめ
いかがでしたか。物損事故の裁判は、民事裁判の流れで進めていきます。また、民事裁判の途中で和解となり、その時点で裁判が終了することもあります。
民事裁判では訴訟費用や弁護士費用が必要になりますが、訴訟費用については、裁判で敗訴した人が支払うことになっています。