交通事故の後遺症には何がある?慰謝料についての疑問も解決!

2019年02月04日

交通事故で怪我を負い、ある程度の期間治療しても症状が良くならない場合、その怪我は後遺症になってしまう場合があります。後遺症は、今後生きていく中で、一生つきあっていかなければいけないものです。

「交通事故にあわなければ、こんな事にはならなかったのに…」「これからどうしていけばいいんだろう…」
後遺症と診断されると、様々な不安が生まれると思いますが、しっかりと向き合っていかなければなりません。

この記事では、

  • 後遺症とは何か
  • 後遺症の治療はどこへ行けばよい?
  • 後遺症になったら慰謝料はどうなるの?

などについて書かれています。

交通事故による後遺症についての様々な不安が、少しでも軽減されれば幸いです。

後遺症とは

交通事故による怪我は、「これ以上治療をしても、症状が良くなる見込みがない」と医師に判断されてしまう場合があります。これを、症状固定といいます。

後遺症は、症状固定と判断された段階で残っている、怪我の状態のことを指します。

後遺症と後遺障害の違い

「後遺症」と「後遺障害」、一見同じようなものに思えますよね。しかし、この2つにはかすかに違いがあるのです。

後遺症とは、上記で述べた通り、「治療を続けても症状が良くならない」と医師が判断し、その段階で残っている怪我の状態のことを指します。

後遺障害と認められるには、後遺症になり、また以下の条件を満たす必要があります。

  • 交通事故と怪我の症状に因果関係があること
  • 交通事故で怪我を負ったことにより、労働力が低下してしまうこと
  • 交通事故による怪我が、自賠責保険の等級認定に該当すること
  • 後遺症が医学的に証明あるいは説明できること
  • 交通事故による怪我が、今後生きていく上で完治する見込みがないこと

後遺障害には、1級から14級までの等級があります。1級が最も重い症状となり、14級が最も軽い症状となります。

後遺症にはどのようなものがある?


後遺症には、いくつかの種類があります。ここでは、代表的な後遺症の種類と症状をご紹介します。

むちうち

交通事故によって負う怪我として、最も多いとされているむちうち。このむちうちは、後遺症になってしまうことも、多いといわれています。
▶︎参考:むちうちの症状について詳しく知りたい方はこちら!
▶︎あわせて読みたい:むちうちの症状のチェックリスト

むちうちが後遺障害になった場合、後遺障害等級は12級13号または、14級9号と認定される場合がほとんどです。症状としては、12級13号で「局部に頑固な神経症状を残すもの」14級9号で「局部に神経症状を残すもの」となっています。

▶︎参考:むちうちの通院期間や通院頻度はどれくらい?

▶︎参考:むちうち症がレントゲンに映らないのはどうして?症状にあった通院先を探す方法

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、交通事故で脳が損傷されたことにより引きおこる症状です。

主な症状は、以下の通りです。

  • 今日の日付を忘れる、新しい出来事が覚えられないなどの記憶障害
  • 気が散りやすくなる、片側にあるものだけを見落とすなどの注意障害
  • 感情のコントロールができない、じっとしていられないなどの社会的行動障害
  • 効率よく仕事ができない、自分で計画を立てることができないなどの遂行機能障害

他にも、日常の動作がぎこちなくなる失行症や、身体の障害として運動失調などが挙げられます。

脊髄損傷

脊髄とは、脊柱管内にある中枢神経のことをいいます。
交通事故の怪我により脊髄が損傷されると、損傷した部分より下へ脳からの指令が伝わらなくなったり、下からの信号が脳へ伝わらなくなります。

これにより、自律神経障害や感覚障害、運動麻痺などの様々な障害が生じます。

後遺症の治療先

後遺症の治療先としては、整形外科や整骨院があります。

整形外科では、漢方薬や鎮痛剤などの投薬や、運動器を使ってのリハビリが行われます。
整骨院では、マッサージなどの手技療法や、電気療法を用いて施術が行われます。

後遺症になったら慰謝料の支払いは打ち切られる

後遺症になってしまったら、これまで支払われていた治療費や慰謝料は打ち切られてしまいます。
リハビリを受けるために通院する必要がありますが、被害者は自費で通院を続けなければいけなくなります。
しかし、後遺症になった後も慰謝料を受け取りたいというのが、被害者の本音ではないでしょうか。

ここでは、後遺症になった後も慰謝料を受け取る方法について、解説していきます。

▶︎参考:後遺障害慰謝料を計算するときの3つの基準とは?
▶︎あわせて読みたい:加害者の怪我に対する慰謝料は支払われるの?

後遺症になった後も慰謝料を受け取るには?

後遺症になった後も慰謝料の支払いを受けるには、後遺症が後遺障害と認定され、さらに後遺障害等級が認定される必要があります。

後遺症が後遺障害と認定されると、後遺障害等級認定の申請ができるようになります。
後遺障害等級は1級から14級まであり、1級が最も重く、14級が最も軽い症状となります。後遺障害等級が認定されると、等級に応じて後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
後遺障害慰謝料とは、後遺障害になってしまったことで被害者が受けた精神的損害を、お金で補ったものです。

後遺障害等級が認定されるための条件


後遺障害等級が認定される条件は、6つ。

  • 後遺症が後遺障害となる条件を満たしていること
  • 定期的に通院を続けていること
  • 症状固定まで通院を続けていること
  • 後遺症となった症状が画像で判断できること
  • 自覚症状が医学的に証明できること
  • 後遺障害診断書を医師に作成してもらう

これらの条件を満たしていない場合、後遺障害等級が認定されることはないに等しいといえるでしょう。

後遺症が後遺障害となる条件を満たしていること

前述しましたが、後遺症が後遺障害と認定されないと、後遺障害等級認定の申請をすることができません。

以下5つの条件を満たすことで、後遺症が後遺障害と認定されます。

  • 交通事故と怪我との間に因果関係があること
  • 交通事故による怪我が、今後治る見込みがないこと
  • 交通事故の怪我により、労働能力が低下してしまうこと
  • 後遺症が医学的に説明または、証明できること
  • 怪我の症状が自賠責保険の等級認定に値すること

定期的に通院を続けていること

医療機関への通院頻度が多ければ多いほど、後遺障害等級の認定を受けられる可能性は上がるといわれています。
定期的に通院を続けることは、面倒に感じてしまうかもしれませんが、1週間に2回程度の頻度で通院を続けるようにしましょう。

症状固定まで通院を続けていること

症状固定とは、怪我の治療をこれ以上続けても、症状が緩和する見込みがない状態のことをいいます。

症状固定まで通院を続けなかった場合、その時点で「怪我が治った」と加害者側の保険会社に判断されてしまう場合があります。そうなると、後遺障害等級が認定されることはなくなってしまいます。

また、通院期間が半年以上続くと、加害者側の保険会社から「そろそろ治療を打ち切って、示談交渉をしたい」と言われる場合があります。しかし、症状固定と判断するのは医師であり、保険会社ではありません。保険会社に「示談交渉を始めてくれ」と言われても、怪我の症状がまだあるうちは、通院をやめてはいけません。主治医と相談して、通院を続けることが大切です。

後遺症となった症状が画像で判断できること

レントゲンやMRIなどの検査機器で撮影したときに、後遺症である症状が画像で判断できなければいけません。
後遺障害の1つである高次脳機能障害は、検査機器に症状があらわれないため、後遺障害等級の認定が難しいようです。

▶︎参考:高次脳機能障害を後遺障害として認めてもらいやすくするには?

自覚症状が医学的に証明できること

医師の判断や画像診断の結果など、自覚症状を医学的に証明することができれば、後遺障害等級は認定されやすくなります。

後遺症は、自覚症状があることも大切です。しかし自覚症状だけでは、はっきりとした証拠を確認することができないため、後遺障害等級が認定されることは難しくなってしまいます。

後遺障害診断書を医師に作成してもらう

医師に症状固定と判断されたタイミングで、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。
後遺障害診断書は、医師のみが作成でき、交通事故直後に取得する診断書とは異なるので注意しましょう。

後遺障害診断書は、後遺障害の等級が決定される大切な書面といえます。作成してもらう際は、自覚症状を適確に書いてもらうことや、被害者自身も記載内容を確認するなど、慎重に作成し、納得のいく後遺障害診断書を取得するようにしましょう。

後遺障害等級認定の申請方法


症状固定まで通院を続け、後遺障害診断書を取得したら、後遺障害等級認定を申請しましょう。

後遺障害等級認定の申請方法は、2つ。

  • 加害者請求
  • 被害者請求

それぞれの請求方法を、詳しく見ていきましょう。

加害者請求

加害者請求とは、加害者側の任意保険会社にすべての手続きを任せる方法です。
被害者がするべきことは、加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出することのみです。

加害者請求を使うと、被害者は手続きをする手間を省くことができます。しかし、加害者側の保険会社にすべての手続きを任せることとなるので、どのような手続きが行われているのか、被害者はを知ることはできません。

被害者請求

被害者請求は、被害者自身が加害者側の自賠責保険会社に直接、後遺障害等級認定を申請する方法です。被害者は、必要な書類を自身で取り寄せ、加害者側の自賠責保険会社に送らなければいけません。

被害者請求を行う際に、被害者が取り寄せるべき書類は以下の通りです。

  • 印鑑登録証明書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 後遺障害診断書
  • 診療報酬明細書

被害者請求では、すべての手続きを被害者自身で行わなければいけない手間はありますが、内容を理解しながら手続きを進めることができるので、手続きの透明性が保たれます。
被害者自身が納得しながら手続きを進めたいのであれば、被害者請求をおすすめします。

▶︎参考:被害者請求のメリットについて詳しく知りたい方はこちら!

▶︎参考:被害者請求には少なからずデメリットもある

▶︎参考:後遺障害等級が認定されない場合

▶︎参考:異議申し立てを成功させるコツ!

後遺障害等級の認定を行うのは保険会社ではない

後遺障害等級認定に必要な書類を加害者側の保険会社へ送るというのは、加害者請求と被害者請求に共通していることです。
しかし、加害者側の保険会社は、後遺障害等級認定の申請窓口のようなもので、後遺障害等級の認定を行っているわけではありません。

後遺障害等級の認定は、第三者機関である自賠責調査事務所が行っています。

自賠責調査事務所とは?

自賠責調査事務所では、交通事故で発生した損害の調査を行っています。

人身事故で処理をした場合、被害者は加害者の自賠責保険から保険金を受け取ることができます。
自賠責調査事務所では、交通事故で発生した損害の調査を行い、被害者に支払われる保険金の算定を行っています。

また、後遺障害等級の認定も、自賠責調査事務所が行っています。
後遺障害慰謝料の支払いを行うのは、加害者側の保険会社です。そのため、加害者側の保険会社が後遺障害等級認定を行うと、被害者にとって有利な結果になるようにしてくれない場合があります。
しかし、自賠責調査事務所は第三者機関のため、公正中立な立場で後遺障害等級の認定を決定することができます。

後遺障害等級が認定されるまでの流れ

加害者請求、被害者請求どちらかを行うと、加害者側の保険会社が自賠責調査事務所へ必要書類を提出します。

後遺障害等級の認定は、原則として提出された書類のみで審査されます。
自賠責調査事務所は、後遺障害等級の認定基準に従って、後遺障害等級認定の審査を行います。

認定結果は、加害者側の保険会社を経由し、被害者に通達されます。
後遺障害等級が不該当になってしまったり、思っていたよりも等級が低かった場合は、異議申し立てをすることができます。
異議申し立てについては、以下のリンクをご覧ください。

▶︎参考:後遺障害等級に納得がいかない!異議申し立ての方法とは?

まとめ


交通事故による後遺症は、後遺障害と認められることで、後遺障害慰謝料の支払いを受けることができます。後遺症になってしまったら、精神的苦痛は大きいものと思います。しかし、そこで治療を諦めることなく、後遺障害等級認定を受け、定期的に通院を続けることが大切です。