交通事故にあい、怪我を負ったとき「治療をしているのに、症状が緩和されない…。」と感じている方。交通事故の怪我は、後遺症が残ることがあります。もしも後遺症が残ったとき、どうすればよいのでしょうか。
そこで今回は、「交通事故で残る後遺症」や「後遺症が残った場合の対応」などについて解説してきます。
交通事故の怪我は後遺症が残る?
交通事故の怪我は、そのまま放置してしまったり、治療を継続しなければ、後遺症が残ってしまうことがあります。では、交通事故の怪我は、どのような後遺症が残るのでしょうか。
交通事故が原因で残る後遺症には、以下のようなものがあります。
- 神経に関する障害
- 精神に関する障害
- 関節の機能障害
- 外貌醜状
神経に関する障害
交通事故でよくみられる「むちうち」の怪我を負った場合、神経に関する障害が残ってしまうことがあります。例としては、手足のしびれや麻痺、感覚障害といった症状が、後遺症として残ります。
精神に関する障害
精神に関する障害は、高次脳機能障害と診断された人にみられることが多いです。
高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、交通事故や脳卒中などで脳が損傷し、神経回路が傷ついた場合に起こる障害のことをいいます。
高次脳機能障害は、後遺障害として認定されることがあります。しかし、高次脳機能障害の症状は、骨折や切り傷などのように、目に見えるものではありません。また、MRIで検査を行っても、症状を確認することができない場合があります。
高次脳機能障害で残る、精神に関する障害の例としては、怒りっぽくなったり、幼稚な行動や態度をとる、注意力が低下するなどの症状です。
関節の機能障害
関節に関する機能障害は、交通事故が原因で、上肢・下肢に関する関節の可動域が制限されるといった後遺症になります。
上肢と下肢の関節は、以下の通り。
- 上肢:肩の関節、肘の関節、手の関節
- 下肢:股の関節、膝の関節、足の関節
関節に関する機能障害の例としては、全く関節が動かない、関節の動かせる角度が狭くなった(以前は160°まで動かせたのに、後遺症が残り60°までしか動かない)などの症状です。
外貌醜状
外貌醜状とは、自分の容貌が交通事故の怪我によって醜い状態になってしまうことを指します。外貌醜状の後遺症の例としては、顔に残った傷痕や頭蓋骨の陥没といった後遺症です。
交通事故が原因で後遺症が残ったらどうする?
交通事故にあい、先程述べたような後遺症が残ってしまったら、後遺障害等級認定を申請しましょう。後遺障害等級認定において、後遺障害の等級が認定された場合にのみ、被害者は後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
- 後遺障害慰謝料:交通事故で後遺症が残ってしまい、被害者が負った精神的苦痛の対価として支払われるもの
- 逸失利益:怪我の後遺症が残り、労働能力が低下したことで減少した将来の利益を補填するためのもの
▶︎参考:交通事故で怪我を負った被害者が受け取れる損害賠償は他にもある?
後遺障害の等級について
後遺障害慰謝料や逸失利益は、後遺障害等級認定で認定された等級によって金額が異なります。先程挙げた後遺症別では、どのような後遺障害の等級が認定されるのでしょうか。それぞれ表にまとめました。
神経に関する障害
後遺障害の等級 | 認定基準 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
3級3号 | 神経系統の機能に明確な障害を残し、全く就業できない状態 | 2,219万円 |
5級2号 | 神経系統の機能に明確な障害を残し、特に簡単な作業の仕事にしか就業できない状態 | 1,574万円 |
7級4号 | 神経系統の機能に障害を残し、簡単な作業の仕事にしか就業できない状態 | 1,051万円 |
9級10号 | 神経系統の機能に障害を残し、通常の労務は可能だが、就業可能な職種が限定的である状態 | 616万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状がある状態 | 224万円 |
14級9号 | 局部に神経症状がある状態 | 75万円 |
精神に関する障害
後遺障害の等級 | 認定基準 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
3級3号 | 精神に明確な障害を残し、全く就業できない状態 | 2,219万円 |
5級2号 | に明確な障害を残し、特に簡単な作業の仕事にしか就業できない状態 | 1,574万円 |
7級4号 | 精神に障害を残し、簡単な作業の仕事にしか就業できない状態 | 1,051万円 |
9級10号 | 精神に障害を残し、通常の労務は可能だが、就業可能な職種が限定的である状態 | 616万円 |
関節の機能障害
後遺障害の等級 | 認定基準 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
1級4号 | 両上肢が機能しておらず、動かない状態 | 3,000万円 |
1級6号 | 両下肢が機能しておらず、動かない状態 | |
5級6号 | 1上肢が機能しておらず、動かない状態 | 1,574万円 |
5級7号 | 1下肢が機能しておらず、動かない状態 | |
6級6号 | 1上肢の3大関節中の2関節が機能しておらず、動かない状態 | 1,296万円 |
6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節が機能しておらず、動かない状態 | |
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節が機能しておらず、動かない状態 | 819万円 |
8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節が機能しておらず、動かない状態 | |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に、明確な障害がある状態 | 461万円 |
10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に、明確な障害がある状態 | |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害がある状態 | 224万円 |
12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害がある状態 |
外貌醜状
後遺障害の等級 | 認定基準 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|---|
7級12号 | 外貌に明確な醜状がある状態 | 1,051万円 |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状がある状態 | 616万円 |
12級14号 | 外貌に醜状がある状態 | 224万円 |
交通事故後に後遺障害等級認定を受けるには?
後遺障害等級認定で等級を認定してもらうには、申請手続きを行う必要があります。しかし、後遺障害の等級によっては、他覚症状でないものもあるため、正しい等級が認定されるのは難しいです。
また、後遺障害等級認定は書類での審査になるため、書類の記載内容が十分でなければなりません。ここでは、後遺障害等級認定の申請手続きについて解説していきます。
後遺障害等級認定を受ける前に確認すること
後遺障害等級認定を受ける前に確認すべき条件が5つあります。この5つの条件を満たしていなければ、後遺障害の等級が認定されるのは難しいです。
5つの条件については、以下の通り。
①通院を継続的に行っている
②後遺症が残るような事故であったか
③同じ症状が現在まで続いている
④自覚症状が証明できること
⑤症状が後遺障害の等級に該当している
上記の5つの条件を満たしているようであれば、申請手続きを始めましょう。
後遺障害等級認定の申請手続き
後遺障害等級認定の申請手続きは、以下2つの方法から選択できます。
- 事前認定
- 被害者請求
それぞれの申請手続きについて、詳しくみていきましょう。
事前認定
事前認定とは、加害者の保険会社に申請の手続きを任せる方法です。そのため、被害者が後遺障害診断書を加害者側の保険会社に提出すれば、残りの手続きは加害者側の保険会社が行ってくれます。
被害者請求
被害者請求は、被害者自身が直接、加害者の自賠責保険会社に申請を行う方法です。そのため、被害者自身が必要な書類を揃えたり、作成しなければなりません。
しかし、被害者自身が書類を揃え、作成することで、一つひとつ確認しながら後遺障害等級認定を進めることができます。したがって、被害者は納得のいく後遺障害等級認定を得ることができます。
被害者請求で必要な書類一覧
書類名 | 取得先 |
---|---|
保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払い請求書 | 保険会社から取り寄せ |
人身事故の交通事故証明書 | 自動車安全運転センター |
事故発生状況報告書 | 被害者が作成 |
医師の診断書 | 治療を受けた病院 |
診断報酬証明書 | 治療を受けた病院 |
通院交通費明細書 | 取っておいた領収証 |
印鑑証明書 | 住民登録をしている市区町村の区役所や市役所 |
レントゲンやMRIなどの医学的検査の書類 | 治療を受けた病院 |
上記の表を参考に、必要な書類を集めてください。
交通事故の後遺症についてのまとめ
いかがでしたか。交通事故の怪我は後遺症になることもあり、以下のような障害が残ってしまうかもしれません。
- 神経に関する障害
- 精神に関する障害
- 関節の機能障害
- 外貌醜状
もしも上記のような障害が残ってしまったら、後遺障害等級認定を申請し、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取るようにしましょう。