交通事故の通院費は加害者に請求できる?手続き方法も解説!

2019年02月28日

交通事故の被害にあうと、怪我を負う可能性もあります。怪我を負ったことで、被害者は治療費や交通費などの通院費が必要になります。このとき、「被害者が必要になる交通事故の通院費は、誰が負担すべきなの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、交通事故の被害者が支払う通院費を誰が負担すべきなのか解説していきます。

交通事故の怪我で発生する通院費とは

交通事故によって怪我を負った場合、治療のために通院することになります。したがって、以下のような費用を支払うことになります。

  • 診察費
  • 投薬・注射の費用
  • 検査費
  • 通院でかかった交通費
  • 付添看護費
  • 器具や装具などの購入費     など

交通事故で怪我を負った場合、通院費として上記の費用を支払うことになりますが、実際にかかる通院費の相場はいくらなのでしょうか。今回は、交通事故で最も多いとされる「むちうち」の通院費を例に挙げて説明していきます。

むちうちの通院費の総額

そもそも「むちうち」とは、交通事故で首が鞭のようにしなり、首周辺の筋肉や軟部組織が損傷した状態です。

むちうちになると、首の痛みだけではなく、頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り、麻痺、しびれなどの症状があらわれます。そのため、湿布や痛み止めといった投薬治療、電気療法、マッサージなど、症状に合わせて様々な治療を行うことになります。

また、むちうちを治すには3ヶ月程の治療が必要になるため、通院費で約30~40万円かかるといわれています。このように、むちうちで通院した場合、高額な通院費が必要になるのです。

通院費以外にも請求できるお金がある

ただし、交通事故の被害者が加害者に請求できるお金は、通院費だけではありません。通院費以外に、以下のようなお金を請求することができます。

  • 休業損害:交通事故が原因で、被害者が仕事を休んだときの減収分を補填するもの。
  • 入通院慰謝料:入通院したことで被害者が負った精神的苦痛の対価として支払われるもの。
  • 逸失利益:交通事故の後遺障害が原因で被害者の労働能力が低下し、得られなくなってしまった利益を補填するもの。
  • 後遺障害慰謝料:交通事故が原因で後遺障害(※1)が残ったために負った精神的苦痛の対価として支払われるもの。

ただし、逸失利益や後遺障害慰謝料は、交通事故が原因で残った後遺症に対して支払われるお金です。そのため、後遺障害等級認定を申請し、等級が認定されなければ受け取ることができません。

※1 後遺障害とは、交通事故が原因で残った後遺症のうち、後遺障害の等級に該当する症状のこと。

交通事故の被害者の通院費は誰が負担する?

交通事故の被害者の通院費は、被害者自身が負担するものではありません。民事責任(※2)を負う義務がある加害者が負担すべきものです。

※2 民事責任とは、交通事故の被害者が負った損害を金銭で埋め合わせることをいいます。

交通事故の被害者に通院費や慰謝料などを支払う場合、加害者自身が加入している保険(自賠責保険または任意保険)を使うことになります。ただし、加害者側の自賠責保険から保障を受ける場合、被害者は以下の支払上限額に注意しなければなりません。

傷害による損害 120万円まで
後遺障害による損害 75~3000万円まで
死亡による損害 3000万円まで

上記のことから、加害者の自賠責保険に通院費を請求する場合、120万円までの支払いとなります。また、傷害による損害として請求できるお金は、通院費だけではなく慰謝料や休業損害も含まれます。したがって、自賠責保険の支払い上限金額の120万円を超えてしまう可能性があるのです。

このように、自賠責保険の支払い上限金額120万円を超えてしまった場合は、任意保険でカバーしなければなりません。しかし、任意保険に入っていない加害者もいるため、その場合は被害者が自費で支払うことになります。

通院費を加害者に請求する方法

通院費を加害者に請求する場合、手続きを行わなければなりません。通院費や慰謝料の請求は、以下2つの方法で行うことができます。

  • 加害者請求
  • 被害者請求

加害者請求

加害者請求の場合、加害者が先に被害者へ通院費や慰謝料などを支払います。その後、加害者が加入している保険会社に保険金を請求する方法です。

被害者請求

被害者請求は、加害者から通院費や慰謝料などの支払いが行われない際に行う手続きです。この場合、被害者自身で害者が加入している保険会社に、損害賠償を直接請求することになります。ただし、被害者請求を行う場合、以下の書類が必要になります。

  • 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書
  • 人身事故の交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 医師の診断書
  • 診療報酬明細書
  • 通院交通費明細書
  • 印鑑証明書              など

保険会社の通院費打ち切りに注意!

加害者側の保険会社は、怪我の治療が終わっていない状態でも、通院費の打ち切りを打診してくることがあります。しかし、加害者は被害者の怪我が完治・後遺症と診断されるまで通院費を支払う責任があるため、被害者は打ち切りに応じないように気をつけなければいけません。

加害者側の保険会社に通院費の打ち切りを打診されやすい方には、以下の特徴があります。

  • 通院頻度が少ない場合
  • 事故の程度と怪我の症状が一致しない場合
  • 怪我を治す意識を感じられない治療を行っている場合
    (例:湿布やビタミン剤のみの治療)

では、もしも加害者側の保険会社に通院費の打ち切りを打診された場合、どのような対処を行えばよいのでしょうか。

通院費の打ち切りに対する対処法

加害者側の保険会社に通院費の打ち切りを打診された場合、以下3つの対処法を実践することをおすすめします。

  • ①通院の必要性を主張する
  • ②弁護士に相談する
  • ③一旦自費で立て替え、示談の際に請求する

①通院の必要性を主張する

通院費の打ち切りを打診された場合、担当医に相談し、通院の必要性があるか確認しましょう。その後、通院を継続すべき旨を保険会社に伝えます。そうすることで、通院費の支払いを継続してもらえる可能性が高くなります。

②弁護士に相談する

加害者側の保険会社に通院費の打ち切りを打診された場合、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。なぜなら弁護士は、交通事故や法律などの知識が豊富であるためです。

また、弁護士に通院費の打ち切り問題の解決を依頼すると、被害者の代わりに加害者側の保険会社と交渉してくれます。そのため、被害者は加害者側の保険会社と交渉する手間を省くことができます。

③一旦自費で立て替え、示談の際に請求する

通院費の打ち切りを打診された場合、一旦自費で立て替えて通院するという方法があります。被害者が立て替えた費用でも、事故との因果関係・通院の必要性が認められれば、<示談の際に立て替えた費用を加害者側の保険会社に請求することが可能です。

ただし、自費で通院する場合は、被害者が立て替えた通院費の証拠となる領収書を保管しておく必要があります。

交通事故による怪我の通院費についてのまとめ

いかがでしたか。交通事故で怪我を負った被害者は、通院費として診察費、投薬・注射の費用、検査費、通院でかかった交通費などを加害者に請求することができます。この通院費を加害者に請求する場合は、加害者請求または被害者請求といった手続きが必要です。

また、加害者側の保険会社は、被害者に支払うべき通院費の打ち切りを打診してくることもあります。その場合は、この記事を参考に何らかの対処を行うようにしてくださいね。