もくじ
いつ巻き込まれるかわからない交通事故
交通事故の怪我には、軽い擦り傷から命に関わるような大きな怪我まで、様々な種類があります。軽い事故でも、胸部や腹部、腕、足などの打撲も考えられますし、事故の規模によっては、骨折や内臓損傷、頭部外傷など命に関わる怪我になることもあります。
交通事故による怪我は、そのときだけでなく後遺症として残ることもあります。「今日、事故にあうかも……」と心配しながら生活している人はあまりいないかもしれませんが、もし事故にあってしまったときのために、想定できる怪我の種類について知識を深めておきましょう。
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交通事故にあったときに考えられる怪我とは?
交通事故にあい、特に大きな怪我もしていなければ、物損事故の処理になります。そして物損事故のまま、病院にも行かないというケースが多く見られます。しかし、交通事故による怪我は、事故当日に現れるとは限りません。
頚椎捻挫(むちうち症)
交通事故による怪我でもっとも多いのが「むちうち」です。むちうちは正式名称を頚椎捻挫(けいついねんざ)、頚部挫傷(けいぶざしょう)といいます。交通事故などで首に強い衝撃が加わり発症する怪我のことで、衝撃を受けた際に首がしなるようになるため「むちうち」と呼ばれています。
症状は、首自体だけでなく手足の痛みや痺れ、吐き気や倦怠感など、様々な症状が出ます。レントゲンでは異常がないのに、症状が出る人も多くいます。証明しにくく、周りの人になかなか分かってもらえないむちうちの種類と症状は、以下のようになっています。
頚椎捻挫型
むちうちの人の8割程度は、頚椎捻挫型と診断されます。首周りの筋肉や靭帯などを損傷し、首の動かせる範囲が狭くなり、動かすと痛みを伴います。首周りや肩、腕までコリやだるさ、しびれが出ることもあります。
この頚椎捻挫が軽度の場合は、頚椎捻転と診断されることもあります。この場合は、後遺症は残りづらいと言われています。
根症状型
「根症状型」は、首の骨がわずかにずれることで、神経を圧迫してしまうものです。手足や首の痺れや筋力低下が出現します。また、首を動かすことで後頭部や顔面に痛みが出ることもあります。
バレー・ルー症状型
「バレー・ルー症状型」は、根症状型と似ていて神経の損傷を受けますが、交感神経の損傷を受けた場合はこの型になります。交感神経は自律神経であり、障害を受けるとめまいや耳鳴り、不眠や倦怠感などの不定愁訴を訴えることが多くなります。動悸や発汗などが症状として出現する人も多くいます。
脊髄症型と脳脊髄液減少症
むちうちの中でも、重症と言われるのが「脊髄症型」と「脳脊髄液減少症」です。「脊髄症型」は、脳から背中を通る中枢神経が損傷されるものです。手足の麻痺や歩行障害が出ることがあります。損傷部位によっては、排泄機能に異常が出ることもあります。
「脳脊髄液減少症」は、今までの障害とは異なります。脳を包んでいる脳脊髄液が、衝撃などにより漏れ出すことで、めまいや頭痛などを引き起こすものです。むちうちと一言で表しても、障害を受ける部位によって症状も様々なのです。
骨折
交通事故による怪我で、むちうちの次に多いのが「骨折」です。骨折は、ご存じの通り骨にヒビが入ったり、ずれてしまうことを言います。骨折と言っても、骨折の仕方や部位によって完治までの期間には差があります。
足の骨折の場合
交通事故での骨折は、追突や接触による足や腕の骨折が多くなっています。足の骨折では、太ももの上の方にある大腿骨頚部骨折は完治まで60週かかると言われています。
大腿骨頚部骨折は手術を行ってから、骨がくっつきリハビリが終わるまでは6ヶ月程度ですが、そこから後遺症などが出ることもあり、機能が回復するには1年以上かかる場合もあります。それ以外の大腿、膝、下腿、足部の骨折は1ヶ月半〜4ヶ月程度で機能回復が可能と言われています。
腕の骨折の場合
また、足の次に多いのが腕の骨折です。腕は、手指から肘まではだいたい1ヶ月、肘から上は2ヶ月ほどで完治します。肘に関しては程度にもよりますが、長くて3ヶ月ほどかかります。
肋骨や鎖骨の場合
肋骨や鎖骨も骨折しやすい場所です。肋骨は、軽度であれば手術をしなくても3週間程度、鎖骨も4週間程度で完治する場合があります。骨折は、手術の有無や部位によっても回復までの期間がかなり変わってきます。特に、太もも部分の骨折は時間もかかりますし、骨のくっつきが悪いなどの症状にも悩まされることがあります。
打撲やヘルニア
交通事故の怪我には、むちうちや骨折以外にも打撲や挫傷などがあります。打撲で多いのは胸部打撲、腰部打撲です。打撲は強い力が加わったことにより起こる損傷のことです。痛みがあるのはもちろんですが、広範囲に内出血することもあります。ひどくなると、患部が腫れてきて熱を持ちます。
胸部打撲について
胸部打撲の場合は、息苦しさを感じることもありますが、肋骨が折れて肺に刺さったりしていなければ手術などは行いません。そのため、治癒期間は2週間程度となっています。
腰部打撲について
腰部打撲の場合も治癒期間は2週間程度となっています。しかし、この場合は圧迫骨折により背中の骨が潰れていることもありますので、注意が必要です。
頭の打撲について
頭の打撲の場合は、出血がなくとも脳内出血をしている場合もあります。吐き気や手足の麻痺などが出たときはすぐに医療機関へ連絡しましょう。
脱臼について
ほかには、脱臼なども交通事故で起こる怪我の一つです。追突時に肩や鎖骨を脱臼することがあります。脱臼は、強い外力が関節にかかることで、骨がずれてしまうことを言います。それ自体は、整骨院や整形外科での治療で対処できます。
しかし、骨がずれるときに周辺の筋肉や関節包、靭帯を引き伸ばしたり傷つけていることがあります。そうなると、筋挫傷によりしばらく痛みが続くこともあります。
▶︎参考:交通事故で椎間板ヘルニアになったら?腰痛でお悩みの方はこちら
交通事故の怪我の通院先は?
交通事故による怪我の治療は、以下の通院先で受けられます。
被害者自身で通院先を選ぶことができるため、自分にあった通院先を選ぶようにしましょう。通院先の違いを以下の表にまとめました。
通院先 | 治療・施術を行う人 | 治療・施術の内容 |
---|---|---|
整形外科 | 医師 | MRIやレントゲンなどの検査、湿布や痛み止めの処方 |
整骨院 | 柔道整復師 | 手技や電気療法、牽引による施術 |
鍼灸院 | はり師・灸師 | 鍼や灸による施術 |
▶ 整形外科を探したい方はこちら
▶︎ 整骨院を探したい方はこちら
▶︎参考:怪我なしでも病院に行くべき本当の理由とは?
▶︎参考:2つの通院先を併用する方法!
交通事故で怪我をしたらどうすればいい?
交通事故にあい怪我をしてしまった、あるいは車が壊れてしまったなど、何かしらの損害が出ます。
損害を与えた加害者は、被害者にその損害を賠償しなければなりません。
被害者で怪我をしている場合の治療費や通院の交通費は、もちろん加害者側の保険会社が負担することになります。
被害者が請求できる損害賠償の種類
被害者が請求できる損害賠償は、以下の3つの種類に分けることができます。
- ①積極損害
- ②消極損害
- ③慰謝料
①積極損害
交通事故にあった被害者が、治療費や通院費などのお金を支払わなければならなくなった損害のことです。
- 診察費
- 治療費
- リハビリ費用
- 手術費用
- 入通院費用
- 付添看護費
- 通院交通費
- 義足や車椅子購入費 など
②消極損害
交通事故にあわなければ、被害者が将来得るはずだった利益の損害のことです。消極損害には、休業損害と逸失利益の2種類があります。
休業損害:交通事故の治療のために仕事を休業し、本来得られたはずの利益を得られなくなった利益を補償するものです。
逸失利益:後遺症が残ったために、本来得られるはずだった所得の減少分を補償するものです。
③慰謝料
交通事故によって被害者が負った、精神的苦痛の対価として支払われるお金です。慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類があります。
入通院慰謝料:入通院したことで負った、精神的苦痛に対して支払われるものです。
後遺障害慰謝料:交通事故が原因で後遺症が残り、精神的苦痛を負ったことに対して支払われるものです。
物損事故は損害賠償が少ない
上記のように怪我をした被害者は、交通事故によってかかってしまった出費を加害者に請求することができます。しかし、精神的苦痛を現金で換算した「慰謝料」は物損事故には適用されません。
よって、物損事故のままではなく、人身事故への切り替えが必要になります。
本当に怪我がないのであれば何も問題はありませんが、少しでも肩や首に違和感を感じているようであれば、必ず病院の診断書を取得し、人身事故へ切り替えることをおすすめします。
▶︎参考:物損事故から人身事故に切り替える方法についてはこちら!
損害賠償金が支払われるまでの流れ
交通事故にあって、出費がかさんでしまうと、お金が心配ですよね。ここでは、損害賠償金がいつ支払われるのかについて説明していきます。
- ①交通事故発生
- ②保険金の請求
- ③損害・事故の調査
- ④示談交渉
- ⑤保険金の支払い
上記のような流れで、損害賠償金が支払われます。示談交渉は、治療が終了してから行うため、すぐに損害賠償金を受け取れるというわけではありません。
すぐにお金が必要な場合はどうするの?
損害賠償金を受け取るまでに、治療費や交通費などの支払いをまかなうための制度があります。
仮渡金制度を利用する
仮渡金制度を利用することにより、加害者側の保険会社に対して、傷害の程度を加味し、5万円、20万円、40万円を請求することができます。
後遺症と慰謝料の関係とは?
前述のとおり、交通事故による怪我は、レントゲンにも映りにくく自分でも気づきにくいものです。少しの違和感を放っておき物損事故のままで処理をしていると、のちに痛みが酷くなってしまったときに人身事故の切り替えができなくなってしまいます。また、後遺症が残ったときにも、「後遺障害慰謝料」が請求できず、被害者は大変な痛手を追うこととなります。
そもそも後遺症とは?
後遺症とは、交通事故による怪我の症状が残ってしまう状態をいいます。
また、被害者が症状を完治させようと懸命に治療や施術を続けているにも関わらず、医師から「どれだけ治療を続けても症状が治らない」と言われることを症状固定といいます。
症状固定となると、加害者側の保険会社からの治療費は打ち切りとなります。
▶︎参考:保険会社から治療費の打ち切りがあったらどうすればいい?
▶︎参考:後遺症と後遺障害?慰謝料について詳しく知りたい方はこちら!
備えあれば憂いなし
このように、交通事故の怪我と言っても、部位によっても色々な種類があります。そして、その部位によって完治する期間も異なってきます。怪我の治療は、長いものですと1年以上かかってしまうわけですから、その間の生活のことやお金のことなど考えなければならないことが山積みになります。
交通事故は突然襲ってきます。起こりうる怪我の種類を知っておくことで、事故にあったときに臨機応変な対応が可能となります。もちろん、交通事故にあわないことが一番ですが、「備えあれば憂いなし」と、あらかじめ頭に入れておくことも大切です。