病院に通院した場合、自賠責保険の慰謝料はいくらもらえるの?

2019年02月04日

交通事故にあってしまうと、怪我や修理代といった、多くの損害が出てしまいます。そんな時、「怪我や修理代といった損害は、どの程度保険で補償されるのか。」「病院に通院することになった場合、どの程度の慰謝料を受け取ることができるのか。」と気になる方も多いのではないでしょうか。

自動車の保険には、自賠責保険と任意保険(※)の2種類あります。
また、自賠責保険の慰謝料の中にも、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類があります。自賠責保険で入通院慰謝料を請求した場合、どのくらいの金額を受け取ることができるのでしょうか。

(※)運転者の任意で加入を決めることができる保険。

自賠責保険とは


自賠責保険とは、国土交通省が定める自動車損害賠償保障法という法律によって、車を所有する全ての運転者に加入が義務付けられている保険制度で、強制保険と呼ばれることもあります。自賠責保険に未加入の場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金、免許停止処分の罰則が設けられています。
自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限の補償を目的としている保険です。そのため、補償範囲は限定的であり、補償金額の限度額は120万円となっています。

自賠責保険の補償範囲

自賠責保険は、車を運転中に他人に怪我を負わせる・死亡させてしまった場合の「人身事故」のみ補償します。

そのため、車の修理代や自身の怪我に対する補償がない点に注意しなければなりません。
また、自賠責保険の補償内容は、以下の3つが挙げられます。これは、国土交通省によって支払い基準が定められています。

傷害による損害

傷害による損害の補償範囲は、3つ。

  • 積極損害
  • 休業損害
  • 慰謝料

積極損害とは、交通事故による怪我の治療のために、出費を余儀なくされた場合に発生する損害です。診察料や入院料、手術料などの費用があります。
休業損害とは、交通事故の怪我によって休業したために、本来得られるはずだった収入が減少した場合に発生する損害です。休業した期間の減収分を補ってもらうことができます。

慰謝料とは、交通事故によって被害者が負った精神的苦痛を金銭で補ったものです。入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類があります。入通院慰謝料の支払い限度額は120万円と定められており、病院に入通院した場合、1日あたりの慰謝料は4200円と決められています。

▶︎参考:入通院慰謝料と後遺障害慰謝料について、詳しく知りたい方はこちら!

後遺障害による損害

怪我の治療を続けていても、「これ以上症状が良くなる見込みはない」と医師に判断されることがあります。これを症状固定といい、症状固定と判断された時点でその怪我は後遺症となります。
後遺症は、いくつかの条件を満たすことで、後遺障害に変わります。

▶︎参考:後遺症が後遺障害と認められるための条件

後遺障害による損害の補償範囲は、2つ。

  • 逸失利益
  • 後遺障害慰謝料

逸失利益とは、後遺障害になったことで労働能力が低下し、収入が減少した場合の減収分のことをいいます。

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことで被害者受けた精神的苦痛を金銭で補ったものです。支払い限度額は、認定された後遺障害の等級によって異なります。また、常時介護が必要な場合と随時介護が必要な場合でも異なります。

死亡による損害

死亡による損害の補償範囲は、葬儀費、逸失利益、慰謝料で、支払い限度額は最高3000万円です。

入通院慰謝料の支払い期間と受け取りについて

入通院慰謝料は、交通事故で治療を開始してから、完治または症状固定と診断されるまでの分が支払われます。

基本的に入通院慰謝料を含めた損害賠償は、示談成立後に受け取ることができます。すぐに手に入るわけではないため、治療費や診察費などは、建て替えて通院しなければならないこともあります。
もし建て替えることが困難な場合は、仮渡金制度を使うとよいでしょう。

仮渡金制度

治療費や診察費などのお金が必要になります。それらの費用をまかなうお金を先に受け取ることができる仮渡金制度というものがあります。

加害者が加入している保険会社に対して、傷害の場合は怪我の程度によって5万円、20万円、40万円が請求できます。

入通院慰謝料の計算方法

病院に入通院した場合の慰謝料はどのように決定されているのでしょうか。

入通院慰謝料を計算するときの3つの基準とは?

入通院慰謝料を計算する場合は、3つの基準というものがあります。また、どの基準を使って計算するかによっても受け取れる慰謝料の金額が異なってくるのです。

3つの基準は、以下の通り。

  • 自賠責保険基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

自賠責保険基準を使うと、3つの基準の中でもっとも低い金額になり、弁護士基準を使うと、3つの基準でもっとも高い金額になります。

また、自賠責保険基準の入通院慰謝料の計算方法が明確に決められています。したがって、今回は、自賠責保険基準で入通院慰謝料を計算する方法を紹介していきたいと思います。

入通院慰謝料は、実治療日数と治療期間を基準に決定されます。
実治療日数とは、実際に治療のため病院に行った日数です。治療期間とは、治療開始日から治療終了日(症状固定)までの日数です。

また、自賠責保険が適用されると、通院1日につき4,200円の慰謝料が発生します。
入通院慰謝料の計算方法は、まず「実治療日数×2」と「治療期間」を計算し、少ない方を通院期間とします。そして、決定された通院期間に4,200円をかけた金額が、入通院慰謝料となるのです。

慰謝料の具体的な計算

では、実際に入通院した場合の例を見てみましょう。

例:10月1日に交通事故にあってしまい、10月30日まで通院。そのうち、実際に病院へ通った日数は、12日とする。

この場合の計算は、
実治療日数:12日×2=24日
治療期間:30日
となります。

上記を比較すると、治療期間の方が少ないので、24日が適用されます。
受け取ることができる入通院慰謝料の金額は、24日×4,200円=100,800円となります。

まとめ

交通事故で怪我を負うと、治療費や通院交通費、慰謝料などを加害者に請求することができます。前述したように、入通院した場合に自賠責保険から支払われる慰謝料は、通院期間×4,200円によって求めることができます。自賠責保険の限度額は120万円となっており、限度額を超えた分の不足分は任意保険によって補われます。