車の運転中の前方不注意で、事故の加害者になることは無きにしも非ず。
そこで今回は、前方不注意による交通事故について、加害者がすべきことや違反点数、処罰なとについて解説していきます。
交通事故後に加害者がすべきこと6つ
交通事故後に加害者がすべきことは、以下の6つです。
- ①怪我人を救護する
- ②警察への届出をする
- ③事故現場の状況を確認する
- ④被害者の連絡先を確認する
- ⑤保険会社に事故の報告をする
- ⑥被害者にお見舞いとお詫びをする
①怪我人を救護する
交通事故後に怪我人がいる場合は、救護を行う必要があります。怪我人が重症である場合は、119番へ連絡して救急車を呼びましょう。
怪我人の救護は、道路交通法によって定められています。これを怠ってしまうと、処罰を受けることになるので注意しましょう。
②警察を呼ぶ
交通事故後は人身事故・物損事故問わず、警察を呼ばなければなりません。警察を呼び、事故処理を行って、届出を出すという流れになります。もし警察を呼ばず、届出を出さなかった場合は、交通事故証明書を発行することができません。交通事故証明書は、損害賠償の請求に必要な書類の一つです。必ず警察を呼んで事故の処理を行いましょう。
③事故現場の状況を記録する
交通事故の状況を確認し、写真やメモで記録しておくことが大切です。事故現場を記録する場合は、写真やメモで行いましょう。写真やメモで記録した場合、時間が経っても形として残るので、被害者との示談交渉で役に立ちます。現場の写真や信号の状況、道路幅、道路標識の位置などを記録しておくとよいでしょう。
④被害者の連絡先を確認する
交通事故の示談交渉は、被害者と行うことになります。そのため、被害者と連絡先を交換しておくことが大事です。
被害者の連絡先で確認すべきことは、名前・住所・電話番号です。忘れずに確認しましょう。
⑤保険会社に事故の報告をする
交通事故の加害者は、被害者に損害賠償を支払うことになります。交通事故の加害者が、保険会社に事故の報告すると、支払った損害賠償額分の保険金を受け取ることができます。被害者のためにも、自分のためにも、保険会社に事故の報告をしましょう。
▶︎参考:交通事故の損害賠償について詳しく知りたい方はこちら
⑥被害者にお見舞いとお詫びをする
交通事故の示談交渉は、当事者同士の合意によって示談成立となるものです。交通事故の加害者はお見舞いとお詫びをして、自分なりの誠意を見せるようにしましょう。
示談交渉の際に、加害者に反省の色が見えなければ、被害者は寛大な処置を行ってくれないでしょう。したがって、交通事故の加害者になった場合は、お見舞いに菓子折りを持っていったり、お詫びの謝罪を忘れずに行うことが大切です。
そもそも前方不注意とは?
交通事故の原因で挙げられる前方不注意。これは、安全運転義務違反の一つにあたります。
安全運転義務違反の一つ
そもそも安全運転義務違反とは、他人に危害を加えるような方法で運転することです。
安全運転義務違反は、前方不注意を含め、以下の7つに分類されます。
- ①前方不注意:(例)脇見運転をしてしまい、ぶつかってしまった
- ②操作不適:(例)アクセルとブレーキを踏み間違えたため、ぶつかってしまった
- ③動静不注視:(例)相手の動きに対する注意が足りず、ぶつかった
- ④安全不確認:(例)一時停止はしたものの、安全確認が不十分でぶつかった
- ⑤安全速度違反:(例)状況に合った速度で走行していなかったためぶつかった
- ⑥予測不適:(例)自分の運転速度や車幅などを正しく把握できていなかったため、ぶつかった
- ⑦その他:上記に当てはまらないもの
前方不注意の交通事故の加害者が受ける処分
交通事故の加害者は、以下の3つの処分を受けることになります。
- 民事処分
- 行政処分
- 刑事処分
前方不注意の交通事故で考えられる3つの処分について、詳しく説明していきます。
前方不注意による民事処分
民事処分とは、交通事故の被害者が負った損害をお金で償う処分です。被害者に支払うお金を損害賠償といいますが、支払う金額は被害者の損害の程度によって異なります。
前方不注意による行政処分
行政処分とは、交通違反による反則金の徴収や免停・免許取り消しのような処分のことです。
前方不注意の場合、安全運転義務違反の違反点数が加算され、行政処分を受けることになります。安全運転違反によって加算される違反点数は2点です。しかし、人身事故の場合は、その他に「被害者の怪我の程度によって加算される点数」「措置義務違反(※1)によって加算される点数」が加算されます。
また、前方不注意で支払う反則金は、以下の通り。
車種 | 反則金の金額 |
---|---|
大型車 | 1万2000円 |
普通車 | 9000円 |
二輪車 | 7000円 |
小型特殊及び原付 | 6000円 |
※1 措置義務違反は、ひき逃げや負傷者の救護などを怠った場合に加算されるものです。
前方不注意による刑事処分
刑事処分とは、裁判を開いて決まる刑罰のことで、懲役刑や禁固刑、罰金刑の3つがあります。
- 懲役刑:刑事施設に一定期間入って、刑務作業を行う刑罰のことです。
- 禁固刑:刑事施設に一定期間入る刑罰で、刑務作業を行うかを自分で選択することができます。
- 罰金刑(※2):金銭を納める刑罰のことです。
※2 罰金と反則金の違い
反則金は、交通違反を犯したときに支払うお金で、行政処分です。軽い交通違反の場合はこれにあたります。一方、交通違反が重い場合は、刑事処分である罰金刑を受けることになります。また、反則金の場合は行政処分なので前科はつきませんが、罰金の場合は刑事処分なので前科がつきます。
【事例】前方不注意の過失割合
そもそも過失割合とは、交通事故が発生したとき、誰の不注意・過失で起こったものなのかを数字で示したものです。過去の裁判例を基準に、保険会社の担当者が過失割合を決めていきます。
例で説明すると、10:0の場合は10にあたる人の不注意でおこったものなので、その人が事故の責任を負うことになるのです。
前方不注意で起こった事故の事例をいくつか挙げて、過失割合がどの程度になるのかという参考にしてください。
- ①信号のない広い道路と狭い道路で、広い道路にいた車が狭い道路に入って来たときの事故
広い道路にいた車をA、狭い道路にいた車をBとします。
交通ルールでは、信号のない交差点の場合は広い道路が優先です。そのため、Aの車が先に交差点に進入していた場合、Bの車の不注意によって起こった事故とされます。また、Aの車はBの車が確認できる場合、前方不注意による過失割合が発生することになります。
よって、過失割合は「A:B=3:7」となります。
- ②右折する側の道路に停止線がある、信号のない交差点で直進車とぶつかった事故
直進車をA、右折した車をBとします。
交差点に停止線がある場合、車は一時停止をするのが交通ルールです。その後、左右の安全確認をして徐行しながら、交差点へ進入します。このとき、左右から直進してきた車を視認したときは、その進行を妨げてはならないと道路交通法を定められています。このことから、Bの車が過失割合が高くなり、Aの車には前方不注意による過失があるとみなされます。
よって、過失割合は「A:B=15:85」となります。
- ③Uターンを終えた車と対向車が追突した事故
対向車をA、Uターンを終えた車をBとします。
Uターンを終えた車に直進していた車が追突した場合は、突然Uターンをしてきた車に事故原因があるとされます。しかし、Aの車はBの車がUターンすることを確認できる状況だったので、Aの車に前方不注意の過失があるとされます。
よって、過失割合は「A:B=3:7」です。
前方不注意による交通事故のまとめ
いかがでしたか。交通事故の前方不注意は安全運転義務違反の一つで、行政処分に当たります。その他にも、交通事故の加害者は「民事処分・刑事処分」を受けることになる。
このように、前方不注意による交通事故を起こした加害者は、様々な処分を受けることになります。みなさんも運転するときは、前方の確認を忘れずに行いましょう。