信号のある交差点を右折しようと、タイミングを計っていた。少し待つと、車の流れが途切れ、チャンスだと思い、右折を開始した。しかし、横断歩道を走行していた自転車に気づかず、衝突した。事故の衝突によって自転車が倒れ、被害者は地面にたたきつけられたため、全治6ヶ月の骨折を負った。
交通事故の加害者になり、被害者も骨折してしまった。
そのとき、「加害者は罰金を支払うことになるのか?」
このような疑問ありませんか。今回の記事では
- 交通事故の加害者がすべき対応
- 交通事故の加害者が受ける3つの処分
- 交通事故の被害者が骨折したとき、加害者が支払う罰金
などについてを説明していきます。
交通事故の加害者がすべき対応
交通事故の加害者がすべきことは、以下の通りです。
- ①怪我人の救護
- ②道路の安全を保つ
- ③警察へ連絡
- ④事故現場を記録
- ⑤当事者同士で連絡先を交換
- ⑥保険会社に連絡
①怪我人の救護
交通事故後、まずは怪我人がいないかを確認してください。怪我人がいる場合、できる範囲で応急処置を行い、必要に応じて救急車を呼びましょう。
怪我人の救護は、道路交通法の第72条に定められているもので、加害者が行うべき義務です。もし加害者が怪我人の救護を怠ってしまうと、救護措置義務違反となり、5年以下の懲役または50万円以下の罰金の処分を受けなくてはなりません。
②道路の安全を保つ
事故後に起こる二次災害を防ぐためにも、加害者は道路の安全を保つ必要があります。
そもそも二次災害とは、最初に起こった事故が原因で引き起こる事故のことをいいます。
例:目の前で事故が起こったため、避けることができず、衝突した。
二次災害を防ぐには
- 車の後方にあるハザードランプをつける
車に備えつけてある発煙筒を使用する
などの対策を行い、後続車に注意を促すようにしましょう。
③警察へ連絡
人身事故・物損事故に関わらず、交通事故を起こした加害者は、必ず警察へ連絡しなければなりません。警察に連絡することは、加害者がすべき義務として、道路交通法の第72条で定められています。もしも加害者が警察へ連絡をしなかった場合、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金の処分を受けることになります。
また、警察に連絡しなかった場合、交通事故証明書を発行することができません。交通事故証明書がなければ、加害者側の保険を使って治療を受けることができなくなってしまいます。したがって、警察に連絡することを忘れないようにしましょう。
④事故現場を記録
事故現場を記録しておけば、過失割合で自分が不利にならないよう、主張するための証拠とすることができます。
事故現場を記録する場合は自分の記憶ではなく、写真で残しておき、目に見える確実な証拠になるよう残しておきましょう。
⑤当事者同士で連絡先を交換
交通事故の示談交渉は、被害者と行うものです。お互いの連絡先を知らなければ、示談交渉を進めることができません。被害者と連絡先を交換する場合、「氏名・住所・電話番号 など」を聞くとよいです。
▶︎参考:交通事故の示談交渉でどのような話し合いを行うか知りたい方はこちら
また、事故の目撃者がいる場合は、目撃者と連絡先を交換しておくことをおすすめします。
事故の当事者ではない目撃者の証言は、事故の当事者と直接関係ないため、警察や保険会社などに信用されやすいです。後日、証人として、目撃者に証言することを頼む可能性もあります。しかし、目撃者と連絡が取れなければ、呼ぶこともできません。目撃者がいる場合は、忘れずに連絡先の交換をしておいてくださいね。
⑥保険会社に連絡
交通事故の加害者になった場合、自身が加入している保険会社へ連絡します。保険会社に連絡することで、事故の対応や示談交渉などの手続きを進めてくれます。
交通事故の被害者が骨折したら…
交通事故の被害者が骨折をした場合、交通事故の加害者は、以下の3つの処分を受ける可能性があります。
- 刑事処分
- 行政処分
- 民事処分
刑事処分
刑事処分とは、懲役刑や禁固刑、罰金刑といった刑罰を受ける処分です。刑事処分は、怪我人がいる事故、いわゆる人身事故のみが処分の対象です。また、人身事故を起こした加害者が、必ず懲役刑や禁固刑、罰金刑を受けるわけではありません。検察官によって起訴された加害者が、裁判官によって刑事処分の刑罰を受けるべきだと判断された場合に限られます。
それぞれの刑罰の内容は、以下の通り。
- 懲役刑:刑務所に拘置される刑罰。その期間中、必ず刑務作業を行うことになる。
- 禁固刑:刑務所に拘置される刑罰。その期間中、刑務作業を行うかは、自由に選択できる。
- 罰金刑:裁判所の判決によって決められた金額(1万円以上)を納める刑罰。
▶︎参考:交通事故の加害者が不起訴になる基準についてはこちら
行政処分
行政処分とは、免許の点数が加算され、一定数を超えたとき、免許の取り消しや免許停止といった処分のことです。しかし、交通事故ではなく、交通違反の場合は先程の行政処分に加えて、反則金を支払うことになります。
- 免許の取り消し:免許が取り上げられ、一定期間免許を取得することもできなくなる処分。
- 免許停止:一時的に免許の効力を停止させられるが、免許停止の期間が過ぎると、再び免許の効力が取り戻される処分。
民事処分
民事処分とは、交通事故の被害者が負った損害を金銭で補填するといった処分です。
民事処分において、加害者が支払うお金をまとめて損害賠償といいます。損害賠償は、「積極損害・消極損害・慰謝料」の3つのものがあります。また、損害賠償は示談交渉で決めるものですが、被害者の損害に応じて金額が異なります。
▶︎参考:交通事故の損害賠償について詳しく知りたい方はこちら
被害者が骨折し、加害者が受ける刑事処分の罰金
上記のことから、罰金は刑事処分にあたります。しかし、刑事処分は検察官に起訴され、加害者が裁判官から罰金刑を言い渡されたときに支払うことになるものです。したがって、交通事故の被害者が骨折したとき、加害者は必ず罰金を支払うことになるとは限りません。
もし交通事故の加害者が検察官に起訴され、裁判官から罰金刑を言い渡された場合、どの程度の金額を支払うことになるのでしょうか。今回は、罰金額のみご紹介します。
①加害者が罪に問われた場合に支払う金額
罪名 | 罰金額 |
---|---|
自動車運転過失致死傷罪 | 100万円以下 |
緊急措置義務違反(人身事故) | 50万円以上 |
※上記の場合は、罰金刑または懲役刑・禁固刑が科せられます。
▶︎あわせて読みたい:交通事故の加害者が問われる罪について詳しく知りたい方はこちら
②被害者の負傷程度において支払う罰金額
被害者の負傷程度 | 加害者の責任の程度 | 罰金額 |
---|---|---|
重症事故 3ヶ月以上 後遺障害あり |
重い | 30万円~50万円の罰金※ |
軽い | ||
重症事故 30日以上3ヶ月未満 |
重い | 30万~50万円 |
軽い | 20万~50万円 | |
軽傷事故 15日以上30日未満 |
重い | 15~30万円 |
軽い | ||
軽傷事故 15日未満 | 重い | 12~20万円 |
軽い |
※上記の場合は、罰金刑または懲役刑・禁固刑が科せられます。
交通事故の被害者が骨折した場合の対応まとめ
いかがでしたか。被害者が骨折した場合、交通事故の加害者は、必ず罰金を支払うとは限りません。刑事処分の一つである罰金刑は、検察官に起訴され、裁判官から罰金刑と言い渡された加害者にのみ科せられるものだからです。
もし交通事故の加害者になり、検察官に起訴され、裁判官から罰金刑と言い渡された場合、被害者の負傷程度によって罰金額が異なります。また、自動車運転過失致死傷罪・緊急措置義務違反(人身事故)の罪に問われた場合も、罰金刑を科せられます。