交通事故の治療で健康保険は使える?メリットや手続き方法もご紹介!

2019年03月06日

交通事故で負った怪我の治療費は、被害者が立て替えなければならないこともあります。このような場合、「普段治療費を支払うときと同じく、健康保険を使って3割負担に抑えることは可能なのかな。」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、交通事故で健康保険を使えるのかについて解説していきます。

交通事故でも健康保険は使える?

交通事故にあったときは、自賠責保険任意保険を使うのが一般的です。しかし、健康保険を使うこともできます。

そもそも健康保険とは、保険加入者の病気や負傷、死亡について必要な保険給付を目的としています。したがって、交通事故で治療を受けた場合も、健康保険を使うことが可能です。

健康保険が使えない場合もある

交通事故にあったら、必ず健康保険を使えるというわけではありません。以下に当てはまる場合は、健康保険を使うことができないため注意しましょう。

  • 労災が使える場合
  • 道路交通法違反を犯してしまった場合
  • 病院と整骨院を併用する場合

労災が使える場合

通勤中や業務中に発生した労災が使える交通事故の場合は、健康保険と併用することができません。このような場合は、労災を使うか、健康保険を使うか選択することになります。

道路交通法違反を犯してしまった場合

交通事故にあったときに、以下のような道路交通法違反を犯していた場合は、健康保険を使うことができません。

  • 無免許運転
  • 飲酒運転     など

病院と整骨院を併用する場合

また、整骨院で施術を受けた場合も健康保険を使うことができ、医療費の負担額を3割に抑えられます。

ただし、病院と整骨院を併用しており、同じ怪我に対する治療を受けている場合、健康保険が適用されるのは片方の通院先のみです。病院で健康保険を使った場合、整骨院では健康保険を使うことはできないということになります。

したがって、どちらの通院先で健康保険を使うかという選択をする必要があります。

交通事故にあったら健康保険を使うべき理由

交通事故の被害者は、加害者に治療費や慰謝料などの損害賠償を請求することができます。しかし、損害賠償が支払われるのは、治療が終了して示談が成立した後です。そのため、被害者は治療費を一時的に負担しなければなりません。

また、交通事故の治療は、3~6ヶ月と長期化することもあり、治療費は高額になる恐れがあります。被害者が治療費を一時的に負担するとなった場合、金銭的負担がかかってしまいます。しかし、健康保険を使うことにより、治療費に対する自己負担額を3割に抑えることができるのです。

さらに、治療費を3割負担に抑えると、以下のような点でメリットが得られます。

  • 受け取る損害賠償が増える
  • 過失相殺されても手元に残るお金が増える

受け取る損害賠償が増える

例えば、今回の交通事故の損害賠償が治療費100万円・入通院慰謝料30万円・休業損害20万円だったとします。

健康保険を使わない場合、治療費を全額負担しなければなりません。そのため、損害賠償は全部で150万円となります。

一方、健康保険を使った場合、治療費は3割負担となるため、支払う金額は70万円です。このことから、被害者が受け取れる損害賠償は120万円となります。

ただし、自賠責保険から被害者に対して支払われる損害賠償は、120万円までと支払上限額が決まっています。したがって、健康保険を使った場合、支払上限額を超えているため、30万円分を損害賠償として受け取ることができません。

一方、健康保険を使った場合は、支払上限額に収まっているため、損害賠償を損することなく受け取ることができます。

過失相殺されても手元に残るお金が増える

交通事故の被害者にも過失があった場合、過失に応じて損害賠償が減額されるという過失相殺が起こります。ここでは、先程と同じく治療費100万円・入通院慰謝料30万円・休業損害20万円とし、さらに被害者の過失を30%と設定して話を進めていきます。

健康保険を使わない場合、損害賠償の合計は150万円となります。過失相殺をすると、損害賠償から被害者の過失である30%を引くことになり、最終的な損害賠償は105万円となります。

一方、健康保険を使った場合、損害賠償の合計は120万円となります。過失相殺をすると、先程と同じく損害賠償から被害者の過失である30%を引き、最終的な損害賠償は84万円となります。

ただし、損害賠償は治療費から優先して支払われることになるため、手元に残る金額は以下のようになります。

  • 健康保険を使わない場合:105 – 100=5万円
  • 健康保険を使った場合:84 – 70=14万円

したがって、過失がある場合は、健康保険を使った方が、手元に残るお金が増えることになります。

健康保険を使うには手続きが必要

交通事故の治療で健康保険を使うには、まずは通院先に健康保険を使いたい旨を伝えなければいけません。そして、自身が加入している健康保険組合に、以下の書類を提出する必要があります。

  • 第三者行為による傷病届
  • 負傷原因報告書
  • 事故発生状況報告書
  • 同意書
  • 損害賠償金納付確約書・念書
  • 交通事故証明書

上記にある書類の中で、特に「第三者行為による傷病届」が重要な書類となっています。

第三者行為による傷病届

交通事故の被害者が健康保険を使って、一時的に治療費の3割分を負担したことになります。また、残りの治療費の7割分は、健康保険組合が一時的に負担している状態です。しかし、本来なら交通事故にあった被害者の治療費は、加害者が負担しなければならないものです。

被害者の場合は、示談の際に自己負担分を後で加害者に請求することができます。一方、健康保険組合は、一時的に負担した加害者が支払うべき治療費を「第三者行為による傷病届出」がなければ請求することができないのです。

このことから、第三者行為による傷病届が重要になります。

交通事故で健康保険を使う場合の注意点

交通事故で健康保険を使った場合、医療控除が受けられないことに、注意しなければなりません。

医療控除が受けられない

そもそも医療控除とは、治療費を多く支払っている人に対して、確定申告時に所得税や住民税を減額するという制度です。

医療控除額は、以下の計算式によって算出されます。

    (実際に支払った治療費の合計額 – 保険金や損害賠償で補填される金額)- 10万円(※1)

※1 ただし、総所得額が200万円未満の人は、総所得額の5%分

健康保険を使って治療費を支払ったとしても、結局は加害者が支払う損害賠償で補填されるため、医療控除が受けられないのです。

交通事故で使える健康保険についてのまとめ

いかがでしたか。交通事故にあった場合、健康保険を使うことも可能です。健康保険を使うと、一時的に立て替える治療費の負担を3割に抑えられます。その他にも、以下2つのメリットがあります。

  • 受け取る損害賠償が増える
  • 過失相殺されても手元に残るお金が増える

ただし、健康保険を使う際には、手続きが必要です。通院先で健康保険を使う旨を申し出ること、必要書類を提出することを忘れずに行ってくださいね。