交通事故後、自覚症状や違和感がある場合、むちうちの怪我を負っている可能性があります。むちうちは、首の痛みや肩こりだけでなく、しびれやめまいといった多種多様な症状があらわれます。
そこで今回は、むちうちのしびれについて解説していきます。
むちうちの症状について
むちうちとは、事故の衝撃で首が鞭のようにしなり、首周辺の筋肉や靭帯などの軟部組織が損傷した状態です。むちうちは、以下4つの症状型に分類され、様々な症状があらわれます。
- 頚椎捻挫型
- バレー・ルー症状型
- 神経根症状型
- 脊髄症状型
頚椎捻挫型
頚椎捻挫型とは、頚椎を構成する関節包や筋肉、靭帯などが過度に伸びたり、断裂した状態です。むちうちと診断された70~80%の方が、この症状型に該当するといわれています。頚椎捻挫型の主な症状は、首周辺や後頭部、肩の痛み、首の運動制限などです。
バレー・ルー症状型
バレー・ルー症状型とは、首にある交感神経の過度な緊張、椎骨動脈の循環障害などの自律神経系に異常が生じている状態です。バレー・ルー症状型の主な症状は、めまいや耳鳴り、頭痛、倦怠感、吐き気などです。
神経根症状型
神経根症状型とは、事故の衝撃で椎間孔の神経根が圧迫されている状態です。神経根症状型の場合、首や腕などの圧迫されている神経が支配する部位に、痛みやしびれなどの症状が発生します。
脊髄症状型
脊髄症状型とは、事故の衝撃で脊髄本体が損傷を負っている状態です。脊髄症状型の主な症状は、手足の知覚障害や運動障害などです。
むちうちの症状は事故直後にあらわれないことも…
事故によるむちうちの症状は、事故直後にあらわれないこともあります。突然の事故で体が興奮状態になり、アドレナリンやβエンドルフィンが分泌され、痛みを感じにくくなります。そのため、体の興奮状態が落ち着いた数日後に、症状があらわれることもあります。したがって、事故後に自覚症状がなくても、一度病院で検査を受けることが大切です。
むちうちの治療方法
むちうちになると、様々な症状があらわれるため、以下のように多くの治療方法があります。
- 痛み止めや湿布の処方
- 固定具の使用
- 手技療法
- 電気療法
- ブロック注射
痛み止めや湿布の処方
痛み止めは、むちうちの痛みを緩和させることができます。湿布は、冷たいものと温かいもので異なり、冷湿布の場合はむちうちの炎症を抑え、温湿布の場合は血行を促して痛みを緩和させるといった効果が得られます。したがって、湿布は以下のように使い分けるようにしましょう。
- 冷湿布:むちうち受傷直後の痛みを強く感じる時期に使用する
- 温湿布:むちうちによる痛みが落ち着いてきた時期に使用する
ただし、痛み止めや湿布の効果は一時的であるため、その他の治療も並行して行うことをおすすめします。
固定具の使用
固定具とは、コルセットやネックカラーのことで、むちうちの受傷直後に使用することが多いです。むちうちの痛みが強い時期は、安静にすることが大事であるため、固定具を使用して動きを制限し、首にかかる負担を軽減させます。
ただし、むちうちの痛みが落ち着いてきたら、固定具を外すようにしましょう。固定具を使用したままでは、筋力が低下してしまう可能性があります。
手技療法
手技療法とは、手を使って揉む、押す、擦るなどの刺激を体に与え、むちうちの痛みを緩和させる施術です。手技療法を行う場合は、体全体を把握し、症状の原因を調べた上で施術を進めていきます。
電気療法
電気療法とは、電気の刺激を体に与える施術のことで、低周波治療器が使用されることが多いです。電気療法を行うことで、痛みの緩和や血行促進、自然治癒力の向上などの効果が得られます。
ブロック注射
ブロック注射とは、痛みのある部位の近くに麻酔薬を注射する治療です。麻酔の効果により、痛みを緩和させることができます。
また、一時的に痛みを和らげることだけでなく、興奮して過敏になった神経を落ち着かせる効果も期待できます。そのため、麻酔の効果が切れた後でも、以前より症状が緩和されたと実感できるはずです。
むちうちのしびれは後遺症に注意
交通事故によるむちうちが原因で、しびれの症状があらわれた場合、後遺症が残る可能性もあります。むちうちによるしびれが緩和されない場合は、後遺障害等級認定を申請するようにしましょう。
後遺障害等級認定とは
後遺障害等級認定とは、交通事故が原因で残った後遺症が後遺障害に該当するか、どの等級に値するかを認定するためのものです。後遺症と後遺障害は異なるものであり、後遺障害として認定されるには、以下の条件を満たしていなければなりません。
- 交通事故が原因であることが医学的に証明されること。(※1)
- 労働能力の低下・喪失が認められること。
- 症状の程度が自賠責保険の等級に該当するもの。
※1 画像検査や神経学的検査などを受け、目に見える形(書面)で証明しなければなりません。
後遺障害等級認定を申請し、等級が認められれば、交通事故の被害者は後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。ただし、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額は、1~14級の等級で異なり、1級が最も高額で14級が最も低い金額になっています。
むちうちのしびれはどの等級に値するのか
むちうちのしびれの場合、神経の異常によって生じる症状であるため、以下のような等級に該当します。
- 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号:局部に神経症状を残すもの
12級13号と14級9号の違いは、他覚所見にあります。12級は、症状が画像検査や神経学的検査などの他覚的所見と一致していると、医学的に証明できる場合に認定されます。一方14級は、症状が画像検査や神経学的検査で医学的に証明できる程度ではないが、受傷時から現在まで症状が続いており、医学的に推定される場合に認定されます。
また、12級13号の場合の後遺障害慰謝料は32~110万円で、14級9号の場合は93万円~290万円になります。このように慰謝料額に幅がある理由は、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準のうち、どの基準を使うかによって異なるためです。自賠責基準を使った場合は最も低い金額になり、弁護士基準を使うと最も高い金額になります。
むちうちの後遺障害等級認定の申請方法
むちうちの後遺障害認定を行う場合、申請手続きを行わなくてはなりません。申請手続きは、以下2つから選択することができます。
- 事前認定
- 被害者請求
事前認定
事前認定の場合、後遺障害等級認定の申請手続きを加害者側の保険会社が行います。そのため、被害者が行うのは、加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出するのみです。
ただし、加害者側の保険会社が後遺障害等級認定の申請手続きを進めていくため、どのような書類の内容なのかといった過程を把握することができません。
被害者請求
被害者請求の場合、被害者自身が申請手続きを行わなければなりません。そのため、後遺障害等級認定で必要な書類を作成・取得する手間がかかってしまいます。
しかし、被害者自身で申請を行うことにより、手続きの過程を把握できるため、納得のいく後遺障害等級の認定につながります。
むちうちのしびれについてのまとめ
いかがでしたか。交通事故でむちうちを負ってしまうと、しびれの症状があられることがあります。しびれの症状があらわれた場合は、手技療法や電気療法、ブロック注射などの治療を受けることが大切です。
しかし、むちうちのしびれの症状は、後遺症になることもあります。その場合は、この記事を参考に、後遺障害等級認定を申請するようにしましょう。