交通事故に遭ったが軽症。手続きは必要?

2019年07月01日

交通事故にあってしまったとき、被害者の場合であっても、怪我がない・軽症だとの場合、病院へ行かない方や、物損事故の処理のままといった方がいます。そのまま病院へ行かずに、しばらく経ってから、事故の怪我の痛みが出てくるといった場合もあります。慰謝料についても人身事故の場合は慰謝料を受け取る権利が被害者にはありますが、不当に低い金額を提示されるなど、損害保険会社の払い渋りが近年問題視されています。

このように、病院へ行くことを面倒だと放っておくと、保険会社が人身事故として処理してくれません。結局、自己負担で治療費を支払い通院しなければならないなど、被害者自身が損するパターンが非常に多くみられます。

本来は軽症・重症は関係なく、「被害者は自己負担ゼロで治療を受けることが出来る」もので、しっかりと治療や施術を受ける義務があります。また被害者には、損害の賠償を加害者に請求することもできます。今回は、交通事故にあった後に正当な補償を受けるためにも、不利な状況にならないように、病院へ行くべき理由、交通事故対応の流れや手続き、交通事故の怪我が軽傷だった場合の慰謝料の相場についてお話します。

交通事故後の流れ

軽い追突事故や接触事故に遭った場合、事故の直後に痛みはなくても翌日や3日後、ときには1週間以上経ってから痛みが出始めることがよくあります。また、目に見える症状がなくても脳出血など重症な病気を引き起こしていることもあるので、軽症と自分で判断せずに医療機関へかかりましょう。

まずは、交通事故後の流れについて把握しておきましょう。

  • ①交通事故発生
  • ②警察へ連絡
  • ③加害者と連絡先を交換
  • ④病院で診断書を取得
  • ⑤治療を開始(病院・整形外科、整骨院、鍼灸院から選ぶ)
  • ⑥完治または症状固定(※症状固定の場合は、⑥の前に後遺障害等級認定の申請)
  • ⑦示談交渉開始
  • ⑧示談成立・示談金受取

交通事故に遭った後の対応ポイント1

事故に遭った日からなるべく早く医療機関を受診しましょう。期間が空いてしまうと保険会社から治療費の支払いを拒否されることがあります。

交通事故に遭った後の対応ポイント2

明らかな症状がなくても、少しでも違和感を感じる場合は救急車で病院へ行きましょう。
重症な病気の早期発見に繋がるほか、救急車に乗ることにより後から症状が出た場合に人身事故の認定を受けやすくなります。

軽症の場合は物損事故として処理されることが多いのはなぜ?

軽症で病院に行くまでもない場合、加害者・被害者共に「物損事故」の処理のままに済ませることがあります。これはなぜかというと、そのほうが双方の書類の手続きがラクだからです。

物損事故で処理した場合に一番困るのは「被害者」

軽症の場合に物損事故として処理されるデメリットとして、もし後遺症が残ってしまった場合に逸失利益や慰謝料、休業損害などが支払われません。また、治療が長期化した際に損害賠償を請求出来ないだけでなく、治癒していないにもかかわらず治療が打ち切られることがあります。

加害者がどんなに誠意に対応したとしても、自身の体に何か起こってしまっては今後の生活に影響していきます。物損事故として処理されることにより損をするのは、誰でもなく被害者自身です。自賠責保険が適応されるため、自己負担なく通院することが可能です。

人身事故として処理することで加害者を罰することになってしまいます。それによって、「加害者が誠意ある対応をしてくれているのに申し訳ない…」と考える方もいますよね。
しかし、被害者には事故によって通院しなければならない、痛みが辛いなどの精神的苦痛があります。この精神的苦痛を現金に換算したものが慰謝料で、自賠責保険の場合は1日最大4200円が保障されます。
慰謝料は“精神的苦痛を癒すため”のお金ですので、被害者が受け取るべき当然の権利と言えます。

物損事故から人身事故への切り替え方

物損事故と人身事故のどちらで処理されるかによって、受け取れる損害賠償が異なります。たとえ軽症であっても、痛みがある場合は人身事故として切り替えましょう。

それぞれの定義については以下の通り。
人身事故:交通事故で怪我人が出た場合
物損事故:交通事故で怪我人がおらず、モノのみが壊れた場合

事故から1週間以内に警察へ届けましょう

軽症の場合、交通事故にあってから数日後にむちうちなどの症状が出始めることが多々あります。できる限り早く病院へ行って診断書を取得し、どんなに遅くても10日前後までには警察に提出しましょう。

警察が診断書を受理しない場合

事故日から診断書の提出までに期間が空いてしまうと、事故と症状の因果関係が疑われたり、人身事故は実況見分など警察側の労力も掛かるため受理されないケースがあります。その場合は「人身事故証明書入手不能理由書」を加害者が加入している保険会社から取得し、必要事項を記入し保険会社へ返送します。

人身事故に切り替える際のポイント

人身事故として処理されると保険会社はこちらはあくまでも理由書であるため、保険会社によっては何かと理由をつけて受理しないことがあります。その場合は自分でどうにか処理しようとせず、交通事故対応に特化している治療院や弁護士などの第三者に任せることが重要です。

K.Kさんの体験談

物損事故として処理した結果痛みが残ってしまった…
追突事故にあい、事故当時は異常がなかったので病院へ行かなかった。
事故を起こした加害者も大変反省しており、菓子折りをもらってしまった。2〜3日経っても何もなかったので、「罪にするのは申し訳ない」と思い物損事故として処理することにした。
しかし事故から4日経ったころ、首〜腰にかけて痛みがあらわれ始めた。その日は仕事を休み、様子を見ることに。翌日も痛みは相変わらずだったので、整形外科へ行きレントゲンを撮ってもらったが骨には異常がなく、痛み止めと湿布を処方された。
しかし、それでも痛みが消えないので、交通事故後の治療をやっている整骨院へ行くと、治療にはだいたい3ヶ月はかかると言われた。

加害者が加入している保険会社に報告すると「軽症だから3ヶ月も治療費は出せない」と言われてしまった。わけがわからず整骨院の先生に相談すると「物損事故として処理されている以上、1ヶ月程度で治療が打ち切られることはよくある。しっかり治したいなら人身に切り替えるべき。」「そもそも物損事故は保険診療、人身事故になれば自賠責保険で自由診療と同じ治療が自己負担なしで受けられる。被害者にとって物損事故として処理するのはデメリットしかなく、メリットがあるのは加害者とその保険会社だけ」という説明を受け、いつのまにか被害者であるはずの自分が不利な状況になっていることがわかった。安易に物損事故として処理したことを後悔した。

軽症だった場合の慰謝料とは

事故に遭い軽症であった場合も被害者には慰謝料が支給されます。人身事故として正当に処理されるている場合に限り、自賠責保険が適応され「1日につき4,200円」の慰謝料が発生します。しかし、昨今では保険会社は不当に低い慰謝料を提示するなど、悪質な払い渋りが問題となっており、金融庁から営業停止命令・改善命令が出されている損害保険会社もあります。

自賠責基準

自賠責保険とは国から加入義務が定められている強制保険であり、四輪自動車・原動機付自転車・オートバイなどが対象となっています。自賠責保険の支払い限度額は120万円であり、この限度額を超過した場合は任意保険基準で慰謝料を算出することになります。

自賠責基準での慰謝料計算方法

①治療期間の全日数(事故から完治日もしくは症状固定日まで)
②実通院日数(入院日数+実際に通院した日数)の二倍
上記の日数が少ない方に「4,200円」を掛ける計算となります。

慰謝料の交渉ポイント

弁護士基準と呼ばれ、弁護士を通して保険会社と交渉することにより、、賠償額が数百万単位でアップする事例も多くみられます。

慰謝料を含めた損害賠償の内訳

交通事故の被害者は、慰謝料以外にも損害賠償を受け取ることができます。

傷害部分

たとえ軽症であっても、交通事故で怪我をした場合に受け取る損害賠償は、以下の通りです。

  • 治療費
  • 診察費
  • 手術費
  • 通院交通費
  • 付添看護費
  • 装具・器具などの購入費
  • 入通院慰謝料
  • 休業損害         など

後遺障害部分

交通事故が原因で後遺症が残り、後遺障害等級認定で等級が認められた場合に受け取ることができる損害賠償は、以下の通りです。

  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益

事故の怪我が軽症でも人身事故に切り替えましょう

交通事故に遭い軽症であっても、まずは医療機関を受診しておくことにより、目には見えない部分で起きている深刻な病気の早期発見に繋がるほか、一度物損事故として処理されているケースでは人身事故に切り替えることが可能です。
また、加害者側に誠意があるという理由で、安易に物損事故として処理するのはとても危険です。被害者自身が不利になる状況に陥らないためにも、体に症状が出ている場合は人身事故として処理しましょう。示談交渉を正当に行うためにも、交渉は無理に自分で行おうとせず、交通事故対応に特化している接骨院・整骨院や弁護士に任せましょう。