交通事故で捻挫したら?通院の治療費・慰謝料について詳しく解説

2019年02月01日

一口に捻挫といっても、その症状は実にさまざま。交通事故においては、全身が捻挫の対象になることがあります。また、一般的に捻挫というと、足をくじくといった軽症を連想しますが、捻挫が起こる部位によっては後遺症を起こすこともあります。

今回は、交通事故による捻挫の通院先や損害賠償の請求方法、慰謝料の計算方法について簡潔にまとめました。

そもそも、捻挫とは

捻挫とはその名の通り、関節を「捻り(ひねり)挫く(くじく)」こと。
関節の許容範囲を超えて動かした時に起こる損傷を指します。この場合、損傷した箇所は痛みと腫れ、熱感を持ちます。

足や手に限らず、腰や首、胸部が捻挫になることも。
つまり、骨同士をつないでいる稼働関節の周辺がなんらかの理由で損傷したり、関節を包んでいる関節包や骨同士をつないでいる靭帯や軟部組織が損傷した状態を指します。

交通事故で考えられる捻挫は?

それぞれの部位によっても捻挫の治療期間が異なります。損害賠償の治療費の支払いが打ち切られるのも、このような期間によるものが大きい場合があります。

以下はあくまで一般的な治療期間ですが、もし治療を行う必要があるなら参考にしてみてください。

むちうち(頚椎捻挫)

むちうちは、交通事故による衝撃で首に不自然な力が加わり、筋肉や靭帯が損傷されることが原因で症状があらわれます。首に力が加わる際、むちのようにS字にしなることから「むちうち」と呼ばれています。むちうちの症状は、事故の当日は何も感じなくても、翌日や数日後に出ることがあります。
治療期間は一般的に3ヶ月程度といわれていますが、症状の程度や年齢を含めた個人差があるので、すべての人がこの期間に治るとは限りません。

胸椎捻挫

胸椎は首の外傷と同様に医師が外側から観察して首や胸の異常がないかをチェックします。胸郭(きょうかく)や脊柱に変形がないこと、筋力チェックや反射速度などを確認します。この部位は交通事故だけでなくスポーツでも起こりやすい部位です。

治療期間も3ヶ月が目安でその後は6ヶ月、最長9ヶ月が目安になります。

ぎっくり腰(腰椎捻挫)

腰椎捻挫は胸などと比べると比較的治療期間が長くなる傾向があるようです。保険適応されるのが3ヶ月、6ヶ月という部分は一緒ですが、度合いによっては半年程度を要することが多い症状です。

これも個人差がありますが、数週間でよくなったという場合や数年かかったというケースがあります。

症状は筋力や脊柱性疾患の有無、治療内容、仕事、生活習慣によっても治癒期間が大きく変わります。

足や腕の捻挫

足の捻挫もその障害の程度によって変わります。足首の靭帯の組織が修復されなければ痛みが引いても治癒完了とは言いません。軽度なら2週間、中程度なら1ヶ月、重度なら3ヶ月というのが治療の目安です。

※あくまで目安なので、何度も捻挫をしている方や過去の既往歴などでも個人差があります。6ヶ月以上の方もいますが、1~3ヶ月程度が一般的なようです。

交通事故による捻挫、通院先はどこ?

交通事故により捻挫した場合は、どこに通院すればいいのでしょうか?事故にあった当事者でないと意外とわからないものです。また、どのような治療・施術を受ければよいのか、それぞれの特徴について述べていきます。

整形外科

整形外科は事故に遭った場合、最初に診察してもらい診断を受けるところになります。整形外科は医師が施術を行い、レントゲンやMRIなどの検査、手術、投薬を行います。もちろん保険適応が可能です。

また、整形外科では診断書を作成することができます。診断書がなければ、損害賠償(慰謝料)の請求ができません。

整形外科は骨・関節・靭帯・腱・神経・筋肉の専門家です。捻挫の状況を詳しく知るためにも、必ず初動の診察は整形外科に行きましょう。

整骨院

整骨院は、柔道整復師という国家資格を持つ方が治療を行います。医師ではないので、レントゲン検査や手術、投薬は行うことはできません。

捻挫の施術やリハビリを行う場合、整骨院を利用するのが良いでしょう。何故ならば、テーピングや温熱療法、電気療法、マッサージ、運動療法、リハビリトレーニングなどの各種施術を行ってくれるからです。

鍼灸院

鍼灸院では、はりと灸による施術を行います。はりと灸の刺激によって、痛みを抑える効果が得られます。また、自然治癒力の働きを促進させる効果も期待できます。

上記3つの通院先であれば、保険を使うことが可能です。自分の症状にあった通院先を選ぶようにしましょう。

交通事故で捻挫、治療費はどうする?

交通事故で捻挫(いわゆるむちうち症や腰椎捻挫)になり、必要になった治療費は、あなたが被害者であるなら、加害者側の保険会社に請求することができます。

被害者は損害賠償を請求できる

交通事故にあい怪我をしてしまった、車が壊れてしまったといった損害を金銭で補填することを、損害賠償の請求といいます。

被害者が加害者に請求できる損害賠償は、以下の3つです。

積極損害 治療費・通院交通費など、治療費・通院交通費など、交通事故が原因で必要になったお金
消極損害 会社を休んでしまった場合の休業損害や後遺症になった時の逸失利益など
慰謝料 交通事故が原因で被害者が負った精神的苦痛の対価

慰謝料は、上記の通り『交通事故が原因で被害者が負った精神的苦痛の対価』として支払われるものです。

これは【人身事故】で処理された事故でなければ、請求することができません。したがって、怪我をしたにも関わらず、物損事故で処理したままの場合は、人身事故への切り替えが必要です。

▶︎参考:物損事故から人身事故へ切り替える手続きはこちら
▶︎参考:小さな事故でも病院へ行くべき理由とは?

加害者に損害賠償を請求する方法

加害者に損害賠償を請求する方法は、以下の2つ。

  • 加害者請求
  • 被害者請求

加害者請求

加害者請求では、先に加害者が被害者に対して損害賠償を支払います。その後、自分が加入している保険会社に保険金を請求するという流れで行われます。

被害者請求

被害者請求は、加害者が加入している保険会社に損害賠償を直接請求するというものです。基本的に加害者側から賠償を受けられない場合に行います。

交通事故の慰謝料の相場は?

もちろん、事故の状況や怪我の具合にもよりますが、慰謝料には算定基準があります。その算定基準は以下の3つ。

  • ①自賠責基準
  • ②任意保険基準
  • ③弁護士基準

今回は、慰謝料を計算するときの算定基準が明確に決められている「①自賠責基準」を使った慰謝料の計算方法をご紹介します。

慰謝料の計算する方法

入通院した日数は、入通院慰謝料と関係があり、期間が長いと高額になります。なぜなら自賠責基準で慰謝料を計算する場合、1日4,200円の慰謝料×(治療期間または実通院日数)で計算するからです。

実通院日数とは、通院期間中、実際に医療機関へ通った日数×2で計算できます。治療期間か実通院日数を割り出し、日数が少ない方を計算する際に使うことになります。

では、これらのことを踏まえて、実際に入通院慰謝料を計算してみましょう。

    例)治療期間は90日、通院した日数が36日の場合

    治療期間:90日
    実通院日数:36×2=72日

    90>72なので、ここでは実通院日数を使うことになります。

    よって、4,200×72=302,400円となり、この場合の入通院慰謝料は30万2,400円です。

▶︎参考:納得できる慰謝料をもらうには?

捻挫を放っておくと後遺症になる恐れも…

「確かに痛いけれど、放っておけば治るよ」と思ってしまいがちな捻挫。むちうちも腰椎捻挫(ぎっくり腰)も、安静にしていれば良くなると思っていませんか。
煩雑な書類の手続きや、定期的に通院することが面倒なのは良くわかりますが、その症状が後遺症となることも考えられます。まずは自分の怪我をしっかりと治すことに専念するようにしましょう。

▶︎参考:後遺症と慰謝料の関係とは?

▶︎参考:慰謝料の増額方法ってあるの?

後遺症が残った場合に請求できる損害賠償

交通事故の後遺症のうち、後遺障害の等級に該当する症状を後遺障害といいます。
後遺障害が残った場合に請求できる損害賠償は、以下の2つです。

後遺障害慰謝料 後遺障害が残ったことで負った精神的苦痛の対価として支払われるもの
逸失利益 後遺障害にならなければ、得られたはずの利益に対して支払われるもの

これらの損害賠償は、後遺障害等級認定を申請し、後遺障害の等級が認められなければ受け取ることができません。

後遺障害等級認定を申請する流れ

それでは、後遺障害等級認定を申請する流れを見ていきましょう。

後遺障害診断書を取得する

まずは、医師に症状固定と判断されたタイミングで、後遺障害診断書を作成してもらいましょう。後遺障害等級認定は書面の内容が最重視されるため、後遺障害診断書はしっかりと納得のいくものを取得する必要があります。

事前認定と被害者請求

後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」があります。

  • 事前認定
  • 後遺障害等級認定の申請を、加害者側の保険会社に任せる方法です。被害者が、加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出すると、後の手続きは保険会社が行なってくれます。
    被害者は煩雑な手続きの手間を省くことができますが、どのような内容で手続きが行われているかを把握することはできません。

  • 被害者請求
  • 後遺障害等級認定の申請を、被害者自身で行う方法です。後遺障害診断書の他に必要書類を集め、加害者側の自賠責保険会社に送ります。事前認定と比べて時間と手間がかかってしまいますが、内容をしっかりと把握しながら手続きを進められ、また自分にとって有利な書類を付け足すこともできます。

捻挫といって放って置かないで!

捻挫という言葉の響きで軽度だと判断する方がいますが、捻挫で何年も悩む方がいらっしゃいます。実際、むちうちから肩こりや頭痛が習慣になってしまったという方もいます。捻挫だからと言って放置せず、必ず整形外科や整骨院で治療・施術しましょう。