交通事故発生から示談金を受け取るまで!被害者がすべき事7つ

2019年02月04日

交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。
損害賠償とは、交通事故によって様々な損害を受けた被害者に対して、その損害の埋め合わせを加害者が行うことです。

被害者が損害賠償を受け取れるタイミングは、加害者側の保険会社との示談が成立した後です。それでは、被害者と加害者側の保険会社が示談を行うタイミングは、いつなのでしょうか。

今回は、

  • 交通事故から示談までの流れ
  • 痛みがあらわれた場合の通院先
  • 示談がスムーズに進まない場合の対策

などについて、詳しく解説していきます!

交通事故が起きたらまずすべき事

交通事故が起きたら、まず自動車やバイクなどの運転を停止し、「負傷者の救護」を行います。交通事故による負傷者を確認したら、救急車を呼び、可能な範囲で応急処置を取りましょう。

交通事故による「負傷者」は、被害者だけとは限りません。交通事故では、被害者よりも加害者の方が、重い怪我を負う場合もあります。被害者よりも加害者の方が重傷な場合は、被害者が、加害者や巻き込まれてしまった人の救護を行う必要があります。

交通事故から示談までの流れ

冒頭でも述べましたが、交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。
損害賠償が被害者に支払われるのは、加害者との示談が成立した後です。

それでは、交通事故が起きてから、示談が成立するまでには、何をすればよいのでしょうか。
「負傷者の救護」を行った後にすべき事の流れは、以下の通りです。

  • 警察へ連絡
  • 保険会社へ連絡
  • 病院で診断を受ける
  • 完治または症状固定
  • 後遺障害等級認定を受ける
  • 示談交渉
  • 示談成立

それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。

警察へ連絡


交通事故が起き、負傷者の救護を行ったら、警察へ連絡しましょう。「交通事故が起きたら警察へ連絡する」という事は、道路交通法第七十二条によって定められています。

第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

道路交通法 – e-Gov法令検索

たとえどんなに軽い交通事故だとしても、警察への連絡は必ず行ってください。警察への連絡を怠ることは、法律違反である事とともに、被害者に対して不利益しか生じないことになってしまいます。

警察が到着するまでにすべき事

警察が到着するまでにすべき事は、2つ。

  • ①事故現場の状況を記録する。
  • ②加害者の情報を確認する。

①事故現場の状況を記録する

警察が到着すると、実況見分として現場検証や事情聴取を行いますが、自分でも事故現場の状況を記録しておきましょう。事情聴取の際に、加害者が嘘の証言をした場合、嘘を証明するための証拠として、使用することができます。

事故現場の状況として記録すべき事は、以下の通りです。

  • 事故車両の損害箇所
  • 事故現場や当日の状況(交差点、信号との位置関係、交通量、路面状況など)
  • 交通事故が発生するまでの経緯(信号無視なのか、一時停止したか、走っていた速度)
  • 目撃者の証言や連絡先

目撃者の証言は、被害者や加害者の証言よりも、有力となる場合があります。交通事故を目撃している第三者がいる場合は、証言をしっかりと残しておきましょう。また、損害賠償請求の際に、証言をしてもらうこともあるため、住所や電話番号などの連絡先も聞いておきましょう。

②加害者の情報を確認する

余裕がある場合は、加害者の情報も聞き出しておきましょう。しかし、最終的には警察を通して確認することができるため、無理をする必要はありません。

加害者の情報として確認すべき事は、以下の3つ。

  • ①加害者の氏名・住所・連絡先
  • (氏名と住所は、免許証を見せてもらうと良いでしょう。連絡先は、電話番号を聞くと良いです。)

  • ②加害車両の登録番号・所有者
  • (登録番号は、ナンバーに記載されています。)

  • ③加害者が加入している保険会社
  • (加害者が加入している自賠責保険と任意保険の保険会社名を確認しましょう。)

保険会社へ連絡

今後の様々な手続きは、基本的に被害者と加害者側の保険会社とで行われます。
また、被害者に損害賠償の支払いを行うのも、加害者側の保険会社です。そのため、「交通事故が起きた」という事実を、保険会社に伝える必要があります。

被害者の保険会社への連絡も忘れずに

損害賠償の支払いは、最初に加害者側の自賠責保険から支払われ、限度額である120万円を超えた場合は、任意保険によって補われます。

しかし、加害者が任意保険に加入していなく、加害者本人にも資力がない場合、被害者の保険を使わなければいけないこともあります。
そのため、保険会社への連絡は加害者側だけではなく、被害者の保険会社にも連絡が必要です。

病院で診断を受ける

交通事故にあったら、体に痛みがないとしても、病院で診断を受ける必要があります。
交通事故による怪我は、交通事故直後に症状があらわれるとは限りません。交通事故から時間が経過してから症状があらわれ、病院へ行ったとしても、交通事故と怪我との因果関係を認めてもらえない場合があります。

交通事故と怪我との因果関係が認められないと、損害賠償を請求することができなくなってしまう可能性があります。被害者が不利な立場になることを避けるためにも、交通事故にあったら病院へ行き、医師の診断を受けましょう。

病院での治療内容

病院では、医師が治療を行います。
治療内容としては、レントゲンやMRIなどの検査機器で、骨に異常があるかの検査を行います。場合によっては手術を行い、治療を受けても痛みが引かない場合は痛み止めの薬や湿布の処方もしてくれます。また病院では、切り傷やすり傷などの外傷に対する治療を得意としています。

レントゲンやMRIでの「画像診断」や「手術」、痛み止めの薬や湿布などの「投薬」は、すべて治療行為にあたります。治療行為を行うことができるのは、病院や整形外科にいる医師のみです。

病院を受診したら、診断書の取得を忘れないようにしましょう。
診断書は、交通事故と怪我との因果関係を明確にするための書面です。損害賠償を請求する際や、物損事故から人身事故へ切り替える際にも必要となるため、納得のいく診断書を作成してもらうようにしましょう。

▶︎参考:人身事故から物損事故へ切り替える方法について、詳しく知りたい方はこちら!

病院以外の通院先は?

交通事故による怪我は、病院へ通院を続けていても症状が緩和されない場合があります。特にむちうちの場合は、レントゲンやMRIに症状が写りにくいため、病院では「異常なし」と診断されてしまうことがあります。

「病院では異常なしと言われたけれど、体の痛みが消えない…」「病院へ通院を続けているけれど、症状が一向によくならない」などの場合は、整骨院鍼灸院に転院することも可能です。
転院をする際は、加害者側の保険会社に連絡をし、転院の許可を得てからにしましょう。

整骨院と鍼灸院で受けられる施術内容について、詳しく知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。

▶︎参考:整骨院での施術内容について、詳しく知りたい方はこちら!
▶︎参考:鍼灸院での施術内容について、詳しく知りたい方はこちら!

完治または症状固定

怪我の治療を受け、完治した場合は、加害者側の保険会社との示談交渉が始まります。
しかし、交通事故による怪我は、必ずしも完治するとは限らず、症状固定となってしまう場合もあります。

症状固定とは、交通事故による怪我の治療をこれ以上続けても、症状が緩和する見込みがない状態のことをいいます。症状固定の判断ができるのは、医師のみです。

症状固定後の治療費は被害者負担

症状固定と判断された時点で、その怪我は後遺症となります。後遺症は、今後生きていく上で一生付き合っていかなければいけないものです。
後遺症になってしまったら、リハビリを受けるため、定期的に病院または整骨院に通院する必要があります。しかし、後遺症になってしまうと、これまで支払われてきた治療費や慰謝料は打ち切られてしまいます。

リハビリのために通院を続けることは可能ですが、治療費や通院交通費などは、被害者の自己負担になってしまうのです。

後遺障害等級認定を受ける

後遺症になった後も慰謝料の支払いを受けるには、まず後遺症が後遺障害と認められる必要があります。

後遺症が後遺障害と認められるためには、5つの条件を満たす必要があります。

  • 交通事故と怪我との因果関係があること
  • 交通事故の怪我により、労働力が低下してしまうこと
  • 交通事故による怪我が、今後生きていく上で完治する見込みがないこと
  • 後遺症が医学的に証明または、説明されていること
  • 怪我の症状が自賠責保険の等級認定に値すること

以上の条件を満たし、後遺障害と認められると、後遺障害等級認定を受けることができます。

後遺障害等級とは、後遺障害に1級から14級までの等級がついたものです。1級が最も重い症状となり、14級が最も軽い症状となります。後遺障害等級が認定されると、加害者側の保険会社から、後遺障害慰謝料の支払いを受けることができます。等級によって金額が異なり、症状が重くなるにつれて金額も上がっていきます。

後遺障害等級認定の申請準備

後遺障害等級認定を受けるには、後遺障害診断書が必要不可欠となります。後遺障害診断書には、治療開始日や症状固定日、自覚症状、他覚的所見など、後遺障害等級認定に必要な情報が記載されています。

医師に症状固定と判断されたタイミングで、後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
後遺障害診断書の内容によって、後遺障害等級が認定されるかどうかが決定する、といっても過言ではありません。医師に作成を依頼する際は、自覚症状を的確に伝え、記載された内容を自分でもしっかりと確認しましょう。

後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級認定の申請方法は、2つ。

  • ①加害者請求
  • ②被害者請求

それぞれの請求方法を、詳しく解説していきます。

加害者請求

加害者請求とは、後遺障害等級認定の申請手続きを、すべて加害者側の保険会社に任せる方法です。
被害者がすべき事は、加害者側の保険会社に、後遺障害診断書を提出する事のみです。被害者は、複雑な手続きの手間を省くことができるため、精神的ストレスを軽減できるでしょう。

しかし、どのような内容で手続きが行われているのか、被害者は知ることができません。すべての手続きを行っているのは、あくまでも加害者側の保険会社です。そのため、必ずしも被害者が有利になるように、手続きを進めてくれるとは限らないのです。

被害者請求

被害者請求とは、被害者自身が加害者側の保険会社に直接、後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。
被害者は、後遺障害等級認定の申請に必要な書類をすべて自分で集め、加害者側の保険会社に提出します。被害者請求は、加害者請求と比べて、時間と手間がかかってしまうでしょう。

▶︎参考:被害者請求の必要書類について、詳しく知りたい方はこちら!

しかし、すべての手続きを被害者自身で行うため、必要書類の他に、自身にとって有利になるような書類を付け足すことができます。たとえば、外見にはあらわれない高次脳機能障害の場合、脳検査の画像だけではなく、事故前と事故後の変化が分かる日常生活の記録を提出することで、後遺障害等級が認定されやすくなる可能性があります。

示談交渉は誰と行う?


そもそも「示談」とは、どのような意味を持っているのでしょうか。

示談とは、和解の一種であり、双方間で事件が解決したことを確認する。

示談金 – Wikipedia

交通事故における示談とは、被害者に支払われる損害賠償の金額について、被害者と加害者側の保険会社が話し合い、お互いが納得し和解することを意味しています。

示談交渉が始まるのは、交通事故による怪我が完治、または後遺障害等級が認定された後です。

示談成立

示談交渉が順調に進み、被害者と加害者側の保険会社がお互い納得・和解すると、示談成立となります。

示談が成立すると、加害者側の保険会社から被害者に、示談書の案が送られてきます。
示談書の案には、交通事故の事実や示談内容、示談金の支払い方法などが記載されています。被害者は示談書の案をよく読み、納得した上で署名・押印し、加害者側の保険会社へ送り返します。

加害者側の保険会社は、示談書の最終的な事務処理を行い、被害者の指定口座へ示談金の振り込みを行います。被害者に示談書の案が届いてから、示談金が振り込まれるまで、約2~3週間かかるといわれています。

示談がスムーズに進まない場合は?

すべての示談交渉がスムーズに進み、示談成立できるとは限りません。
もしも示談がまとまらなかった場合は、裁判所に「調停」を申し込むこととなります。

調停では、調停委員という仲裁人が入り、裁判所で話し合いを行います。調停で決まった内容は、裁判所が書面として残すため、本来守られなければいけないことです。

調停によって決められた内容が守られない場合は、「裁判」へ進むことになります。
裁判は、交通事故における損害賠償の問題を解決するための、最終手段といえます。裁判の手続きは、交通事故に強い弁護士に依頼するとよいでしょう。ただし、弁護士に手続きを依頼すると弁護士費用が発生するため、弁護士特約への加入を確認してからにしましょう。

交通事故の示談は慎重に!

交通事故の被害者が損害賠償を受け取ることができるのは、加害者側の保険会社との示談が成立した後です。原則として、示談のやり直しを行うことはできません。示談は、被害者に支払われる損害賠償の金額を決める、大切な話し合いです。納得がいかない場合は無理に示談成立とせず、弁護士に相談するとよいでしょう。