交通事故で頭部に衝撃を受けた場合、脳挫傷による頭蓋骨骨折や脳内出血などが起こる場合があります。また、交通事故が原因で脳梗塞になってしまうことも。
しかし、交通事故と脳梗塞の因果関係は認められにくいのが現実です。それはなぜなのでしょうか。
今回は、
- 脳梗塞の症状
- 交通事故と脳梗塞の因果関係が認められにくい理由は?
- 脳梗塞の治療方法
- 脳梗塞が後遺症になってしまったら
などについて詳しくご紹介いたします。
もくじ
交通事故後の脳梗塞…どんな症状がある?
交通事故で頭部に衝撃を受けると、脳梗塞になる場合があります。脳梗塞が発症する大きな原因は、高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などの生活習慣病や、心臓病などによる「動脈効果(※1)」であるといわれています。
それでは、脳梗塞になってしまったらどのような症状があらわれるのでしょうか。
(※1)血管の内側にある壁にコレステロールの塊や血栓などがたまったことによって血管が厚く硬くなり、血液の流れが悪くなった状態。
脳梗塞の主な症状
脳梗塞による主な症状は、以下の通りです。
- 片方の手足がしびれる
- 手足に力が入らない
- 足がもつれ、ふらつく
- とっさに言葉が出てこない
- ろれつが回らない
- 他人の言っていることが分からない
- ものが見えにくい
- 自分の体が認識できない
また、まれではありますが、ダメージを受けた範囲が大きい場合、意識障害として失神を起こす場合もあります。
脳梗塞には「前触れ発作」がある
脳梗塞には「TIA(一過性脳虚血発作)」という前触れ発作があり、約3割の人が経験しているようです。
TIAは脳梗塞と同じ症状があらわれますが、数分〜30分程度で治ります。したがって「少し調子が悪いな?」とだけ思い、放っておく人が多いようです。しかし、TIAが起きた後は、脳梗塞が発症する可能性が高くなってしまいます。
脳梗塞の発症を防ぐためには、TIAの段階で早めに検査を受け、治療をすることが大切です。
交通事故による脳梗塞の治療費は全額請求できない?
先ほども述べたように、脳梗塞になる原因のほとんどは生活習慣病や心臓病などによる「動脈硬化」だといわれています。したがって、交通事故後に脳梗塞が発症したとしても、事故と脳梗塞との因果関係を疑われてしまう場合があります。
交通事故と脳梗塞の因果関係を明確に証明できない場合、被害者は加害者に対して、治療費を請求することができなくなってしまいます。
交通事故との因果関係が不明な場合の治療費
脳梗塞に限らず、交通事故と怪我との因果関係が不明確な場合、被害者は加害者側の保険会社に対して治療費を請求することができません。
ただし自賠責保険では、事故と怪我との因果関係が明確でなくとも、交通事故による怪我という可能性がある場合は、5割減額された治療費の支払いを受けることができます。
2 受傷と死亡又は後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合の減額
被害者が既往症等を有していたため、死因又は後遺障害発生原因が明らかでない場
合等受傷と死亡との間及び受傷と後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場
合は、死亡による損害及び後遺障害による損害について、積算した損害額が保険金額
に満たない場合には積算した損害額から、保険金額以上となる場合には保険金額から
5割の減額を行う。
しかし一般的に、脳梗塞は生活習慣病によるものだといわれています。したがって、「交通事故による脳梗塞」という可能性も認められにくいのが現状のようです。
交通事故と脳梗塞の因果関係を明らかにするには
交通事故と脳梗塞の因果関係が全く認められない場合、被害者に対して大きな不利益が生じてしまいます。
被害者の損を防ぐには裁判を起こし、裁判所の判断に任せましょう。因果関係が完全に認められなくとも、「可能性がある」と判断された場合は、治療費の一部を請求することができます。
交通事故の治療費は、損害賠償の一部に含まれています。損害賠償問題は、民事裁判によって解決されます。民事裁判を起こす方法や費用などについて、詳しくは以下のリンクをご覧ください。
▶︎参考:交通事故の損害賠償問題は民事裁判で解決!流れや費用について詳しく知りたい方はコチラ
交通事故と怪我の因果関係が明確な場合の治療費
交通事故で脳に衝撃を受けた場合、脳梗塞のほかに骨折や捻挫などの怪我を負っている可能性も高いといえます。交通事故と怪我との因果関係が明確な場合は、基本的に治療費の全額を請求することができます。被害者が加害者に対して請求できる損害賠償は、以下の3つ。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
交通事故によって被害者の出費を余儀なくされた場合に発生した損害を補償。
交通事故の怪我が原因で、被害者の収入や利益が減少してしまった場合に発生する損害を補償。
交通事故にあったことによって被害者が負った精神的苦痛を、加害者が金銭で補ったもの。
損害賠償の内訳について詳しくは、以下のリンクをご覧ください。
▶︎参考:交通事故の被害者に支払われる損害賠償について、詳しくはコチラ
脳梗塞の治療方法
脳梗塞の急性期による治療方法には、以下の薬物療法が用いられます。
- 血栓溶解療法
- 抗血小板療法
- 抗凝固療法
それぞれの治療法を紹介していきます。
血栓溶解療法
血栓溶解療法には血栓溶解薬(t-PA)という薬が用いられます。血管に詰まっている血栓を溶かし、血液の流れを元に戻す薬です。脳梗塞発症後、4.5時間以内に使用することで大きな効果が期待できます。
抗血小板療法
血液を固まらせる血小板の働きを抑え、動脈内で血栓ができないようにします。アスピリンという薬が広く用いられ、急性期の悪化と再発を防ぐことができます。
抗凝固療法
抗凝固薬は、血液を固まりにくくし、心臓や静脈内で血栓ができないようにします。また、脳梗塞急性期の悪化と再発を防ぎます。
交通事故の脳梗塞が後遺症になってしまったら…
脳梗塞によって一度死んでしまった脳細胞は復活しないため、後遺症が残ってしまうこともあります。
交通事故と脳梗塞の因果関係が認められている場合、後遺障害等級が認定されることによって、後遺障害慰謝料の支払いを受けることができます。
後遺障害等級認定を申請しましょう
後遺障害等級認定の申請方法は、以下の2つ。
- 加害者請求
- 被害者請求
後遺障害等級認定の申請手続きを、加害者側の任意保険会社に全て任せる方法。
被害者本人が、加害者側の自賠責保険会社に対して、後遺障害等級認定の申請手続きを直接行う方法。
加害者請求と被害者請求の詳しい方法については、以下のリンクをご覧ください。
▶︎参考:後遺障害等級認定の申請方法について詳しく知りたい方はコチラ
交通事故による脳梗塞の後遺障害等級認定は何級?
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級によって変わってきます。
脳梗塞の後遺症として残る可能性がある症状と、それぞれの後遺障害等級は以下の通りです。
- 高次脳機能障害
- 麻痺
- めまい
症状の程度によって「1級〜14級」
麻痺の範囲と程度によって「1級〜12級」
他覚的所見の有無や労務への支障の程度などにより「9級~14級」
また、後遺障害等級別の後遺障害慰謝料は、以下の通りです。
交通事故で脳梗塞になる可能性もある
交通事故で頭部に衝撃を負うと、脳梗塞が発症することがあります。脳梗塞は生活習慣病による動脈硬化が主であるといわれているため、交通事故との因果関係が認められにくいのが現状です。事故と怪我との因果関係が明確でない場合、被害者は治療費の支払いを受けることができません。しかし、「交通事故が原因の脳梗塞である」という可能性が認められた場合は、治療費の一部を請求することができます。