交通事故によって、「脳挫傷」の怪我を負う可能性がないとは言い切れません。もしも交通事故で脳挫傷になってしまったら「脳挫傷は回復するのかな?」「後遺症が残る可能性はあるの?」など不安になりますよね。
そこで今回のは、脳挫傷の症状や治療法、脳挫傷で後遺症が残ったときどうすべきなのかなどについて説明していきます。
もくじ
交通事故であらわれる脳挫傷とは?
交通事故で頭部に強い衝撃を受けて、脳が損傷した状態のことです。脳挫傷になったとき、具体的にどんな症状があらわれるのでしょうか。
脳挫傷の症状について
脳挫傷であらわれる症状は、以下の通りです。
- 激しいめまいや頭痛
- 吐き気や嘔吐
- 半身麻痺
- 感覚障害
- 眠気や錯乱
- 言語障害
- けいれん発作
- 意識障害
- 視覚障害
交通事故であらわれた脳挫傷は回復する?
交通事故による脳挫傷は、重い症状であるため、回復するまでに時間がかかることが多いようです。また、同じ脳挫傷でも症状や怪我の程度が異なるため、どの程度回復できるのかという疑問は、担当医に詳しく説明してもらうのがよいでしょう。
脳挫傷の治療方法は?
脳挫傷は、受傷後にあたる「急性期」と症状が安定してきてから1~2か月後の「回復期」で治療方法が異なります。
急性期の治療
急性期は、頭蓋骨の骨折を治療したり、脳内の出血を取り除くための手術を行います。この手術を穿頭・開頭血腫除去術(せんとう・かいとうけっしゅじょきょじゅつ)といいます。
穿頭・開頭血腫除去術では、頭蓋骨に穴をあけたり、頭蓋骨の一部を切り外して進めていきます。そして、脳内に溜まった血液や骨折した骨の破片などを取り除くという手術です。
回復期の治療
回復期は、感覚障害や麻痺、言語障害などの生活を送る上で支障をきたす症状の回復を目指すための治療を行います。脳挫傷の症状は異なるので、個々の症状に合わせた治療を行うことになります。
行う治療は、作業療法や理学療法、言語聴覚療法です。どんな治療なのか、以下で詳しく説明していきます。
- 作業療法:例)洗濯物を干したり、ご飯を食べたりなど、日常生活における動作をスムーズにできるような練習
- 理学療法:例)運動や温熱、電気などの物理的手段を駆使し、筋力の増強や関節の可動域を広げるような練習
- 言語聴覚療法:例)注意力を強化する練習、記憶力を強化する練習、任務を遂行する能力を強化する練習
脳挫傷は後遺症が残る可能性もある
脳挫傷の場合、以下に挙げる3つの後遺症が残る可能性があります。
- ①遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)
- ②高次脳機能障害
- ③外傷性てんかん
①遷延性意識障害
交通事故の衝撃で脳の大脳部分が損傷したり、壊死(えし)してしまい、意識不明の状態が続きます。また、植物状態とも呼ばれることがあります。
②高次脳機能障害
高次脳機能障害は、脳挫傷の後遺症で最も多くみられる後遺症です。脳が損傷したことにより、言語や記憶に関する知的障害があらわれます。
感情をコントロールする、計画を立てる、集中する、作業の反復と継続など、生きる上で必要になってくる高度な脳の機能が障害された状態です。そのため、社会に復帰することが難しいとされています。
③外傷性てんかん
交通事故で頭部に衝撃を受けたとき、数ヶ月後に渡って痙攣が連続して起こったり、突然意識を失ったり、記憶が飛ぶなどの症状があらわれます。これらの障害を外傷性てんかんといいます。
外傷性てんかんは、発生時期によって3つに分類されます。
- ①超早期てんかん:24時間以内に発生した場合
- ②早期てんかん:1週間以内に発生した場合
- ③晩発てんかん:1週間以降に発生した場合
脳挫傷で後遺症が残ったらどうすればいい?
脳挫傷は、交通事故の中でも重傷の部類に入るため、後遺症が残ってしまう可能性が高いです。
もしも脳挫傷で後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を申請するのがよいでしょう。後遺障害等級認定を申請し、後遺障害の等級が認められれば、後遺障害慰謝料を受け取れることができます。
後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことで負った精神的苦痛の対価として支払われるものです。また、後遺障害慰謝料は、後遺障害等級認定で認められた等級によって、受け取れる金額が異なります。
先程紹介した後遺障害を例に、後遺障害慰謝料の金額を表にまとめました。
後遺症 | 後遺障害の等級 | 後遺障害慰謝料の相場(自賠責基準※) |
---|---|---|
遷延性意識障害 | 1級 | 1100万円 |
高次脳機能障害 | 1級 | 1100万円 |
2級 | 958万円 | |
3級 | 829万円 | |
5級 | 599万円 | |
7級 | 409万円 | |
9級 | 245万円 | |
外傷性てんかん | 5級 | 599万円 |
7級 | 409万円 | |
9級 | 245万円 | |
12級 | 93万円 |
※自賠責基準とは、交通事故の慰謝料を計算するときに使う基準です。この他にも任意保険基準や弁護士基準があります。この3つの算定基準の中で、自賠責基準を使って計算した場合、最も低い金額になります。
▶︎参考:自賠責基準だけじゃない!交通事故の算定基準についてはこちら
後遺障害等級認定を申請する
後遺障害等級認定の申請方法は、以下の2つ
- ①事前認定
- ②被害者請求
①事前認定
事前認定は、加害者側の任意保険会社にすべての手続きを任せる方法です。被害者が行うのは、加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出することだけです。その後の手続きは、すべて加害者側の保険会社が行ってくれます。そのため、申請に手間がかかることはありません。
②被害者請求
被害者請求は、後遺障害等級認定に必要な書類を自分で集めて、自賠責保険会社に提出をするという方法です。自分自身で必要な書類を集めるため、手間がかかってしまいます。しかし、手続きの内容を知ることができるため、納得のいく後遺障害等級認定を受けることができます。
交通事故の脳挫傷についてのまとめ
いかがでしたか。今回の記事をまとめると
- 脳挫傷は、交通事故の怪我で重い症状の一つで、頭痛やめまい、感覚障害など様々な症状があらわれる。
- 急性期は穿頭・開頭血腫除去術、回復期は作業療法・理学療法・言語聴覚療法といった治療を行う。
- 脳挫傷は「遷延性意識障害・高次脳機能障害・外傷性てんかん」のような後遺症が残る可能性もある。
- 脳挫傷で後遺症が残った場合、後遺障害等級認定を申請して等級が認められると、後遺障害慰謝料を受け取れる。
交通事故の脳挫傷でお悩みの際は、この記事を参考にしてくださいね。