交通事故は、いつどのような状況で起こるか、誰も想定することはできません。もしも自分の家族が交通事故の被害にあい、頭蓋骨骨折となってしまったら…。被害者本人だけではなく、被害者の家族も精神的な苦痛を受けることになるでしょう。
交通事故で頭蓋骨骨折となってしまったら、どのような症状があらわれ、どういう治療を受けることができるのでしょうか。
今回は、
- 交通事故による頭蓋骨骨折の症状
- 頭蓋骨骨折の治療方法
- 交通事故の加害者に請求できる損害賠償
- 頭蓋骨骨折が後遺症になった場合の手続きやリハビリ方法
などについてご紹介していきます。
もくじ
交通事故による頭蓋骨骨折の症状とは?
頭蓋骨骨折とはその名の通り、脳を保護している頭蓋骨が骨折してしまうことです。交通事故や転落事故、スポーツで受けた衝撃などで頭部を激しくぶつけ、脳が損傷することによって症状が引き起こります。
頭蓋骨骨折による症状は、大きく2つに分けることができます。
- 頭蓋底骨折
- 頭蓋円蓋部骨折
それぞれの症状について、詳しく見ていきましょう。
頭蓋底骨折
頭蓋底骨折とは、交通事故やスポーツの衝撃で頭部に強い力が加わり、頭蓋骨の奥にある底の骨が骨折してしまうことです。主な症状は頭痛ですが、頭の中にある脳脊髄液が漏れた場合、無色または黄色の液体が鼻から流れ出てくることもあります。
頭蓋骨底骨折は骨折の部位が3つに分類されていて、それぞれで症状も異なります。
- 前頭蓋底骨折
- 中頭蓋底骨折
- 後頭蓋底骨折
主な症状:視力低下、視野がかすむ など
主な症状:目線を合わせられず物が二重に見える、聴力低下、耳鳴り、顔面神経麻痺 など
主な症状:動機、めまい など
3つの部位の中で前頭蓋底骨折は、交通事故による頭蓋骨底骨折で最も多いといわれています。
頭蓋円蓋部骨折
頭蓋円蓋部骨折は、さらに「線状骨折」と「陥没骨折」の2つに分けることができます。
それぞれの症状について見ていきましょう。
線状骨折
線状骨折は、交通事故で頭部を打撲したことによって、頭蓋骨に線状のひびが入った状態です。線状骨折の症状は、打撲による疼痛や炎症によって組織の一部が腫れあがり、腫瘍ができる可能性もあります。
陥没骨折
陥没骨折は、交通事故の衝撃によって頭蓋骨が陥没した状態のことをいいます。疼痛や腫瘍ができる他、体の半身が麻痺したり、感覚障害や言語障害、意識障害を引き起こす場合もあります。また、激しい頭痛や嘔吐があらわれることもあるようです。
頭蓋骨骨折の治療方法
頭蓋骨骨折の症状についてお分かりいただけたでしょうか。ここでは、「頭蓋底骨折」と「頭蓋円部骨折」、それぞれの治療方法についてご紹介していきます。
頭蓋底骨折の治療方法
頭蓋底骨折は、脳神経麻痺に対する治療と髄液漏に対する治療が行われます。
脳神経麻痺の治療では、損傷した脳神経の障害をおさえるために、ステロイド薬を使った薬物療法が行われます。髄液漏に対する治療は、まず1週間程度の絶対安静を保ち髄液の流出を抑え、自然治癒を行います。絶対安静を行っても症状が治まらない場合は、断裂した硬膜を縫合する「開頭硬膜形成術」が行われます。
頭蓋円蓋部骨折の治療方法
前述したように、頭蓋円蓋部骨折は「線状骨折」と「陥没骨折」に分類されます。それぞれの治療方法を見ていきましょう。
線状骨折
頭蓋内損傷が見られない場合は、骨折に対して特に治療を行うことはなく、自然に治ることがほとんどのようです。ただし、数ヶ月間は安静を保ち、頭部に衝撃を与えてはいけません。
陥没骨折
陥没した頭蓋骨が脳を圧迫していたり損傷が起きている場合は、陥没骨折整復述という手術が行われます。
交通事故で発生する治療費は加害者に請求
交通事故で頭蓋骨骨折となった場合、被害者は加害者に対して損害賠償を請求することができます。損害賠償とは、交通事故によって被害者が受けた様々な損害の埋め合わせを、加害者が行うことです。
被害者に支払われる損害賠償は、以下の3つ。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
積極損害
積極損害とは、交通事故によって被害者が出費を余儀なくされた場合に発生する損害です。
積極損害として請求できる代表的なものは、以下の通りです。
- 治療費
- 手術費
- 入院雑費
- 通院交通費
- 付添看護費
消極損害
消極損害とは、交通事故にあったことによって、被害者が本来得られるはずであった収入や利益が減少した場合に発生する損害です。
消極損害は、「休業損害」と「逸失利益」に分けることができます。
- 休業損害
- 逸失利益
交通事故で被害者が仕事を休んだことにより、減少してしまった収入を補償。
交通事故の怪我が後遺障害になり、以前より労働能力が低下した場合の損失。
慰謝料
慰謝料は、交通事故によって被害者が負った精神的苦痛を、加害者が金銭で補ったものです。
慰謝料は、「入通院慰謝料」、「後遺障害慰謝料」、「死亡慰謝料」の3つに分けることができます。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
- 死亡慰謝料
交通事故の怪我で入通院をする際に被害者が感じた精神的苦痛を、加害者が金銭で補ったもの。
交通事故の怪我が後遺障害になってしまったことで被害者が受けた精神的苦痛を、加害者が金銭で補ったもの。
交通事故によって被害者が死亡してしまった場合、被害者本人と遺族に対して支払われる慰謝料。
交通事故による頭蓋骨骨折が後遺症になったら?
交通事故で頭蓋骨骨折となってしまい、脳に損傷を負った場合、後遺症が残ってしまう可能性があります。
頭蓋骨骨折による主な後遺症は、以下の2つ。
- 高次脳機能障害
- 体の麻痺
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、交通事故や脳卒中などによって脳が損傷し、神経回路が傷ついた場合に起こる障害のことをいいます。
症状としては、記憶障害や注意障害、社会的行動障害などがあります。高次脳機能障害のリハビリ方法には、記憶能力を取り戻すための反復訓練や内的記憶戦略方などがあります。
高次脳機能障害について詳しくは、以下のリンクをご覧ください。
▶︎参考:高次脳機能障害の症状や治療方法などについて、詳しく知りたい方はコチラ!
体の麻痺
頭蓋骨骨折の後遺症として「体の麻痺」が残ってしまった場合、長時間寝たきり状態になり、血圧が低下してしまいます。
急に体を起こすと脳貧血を起こしてしまう危険性があるため、まずはベッドのリクライニング角度を上げていくことからリハビリが始まるようです。
後遺障害等級認定の申請方法
頭蓋骨骨折によって後遺症が残ってしまったら、後遺障害等級認定を受け後遺障害慰謝料を請求しましょう。後遺障害等級は1級から14級まであり、1級が最も重く、14級が最も軽い症状となっています。
- 高次脳機能障害の後遺障害等級
- 体が麻痺した場合の後遺障害等級
1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級
1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級
▶︎参考:後遺障害等級認定の申請準備について、詳しく知りたい方はコチラ!
ここでは、後遺障害等級認定の申請方法について、詳しく解説していきます。
加害者請求
加害者請求は、後遺障害等級認定の申請手続きを、すべて加害者側の任意保険に任せる方法です。被害者がすべき事は、加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出することのみです。
被害者は手続きの手間を省くことができますが、どのような内容で手続きを行われているのか知ることができません。
被害者請求
被害者請求は、加害者側の保険会社に対して被害者が直接、後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。被害者は、手続きに必要な書類をすべて自分で集め、加害者側の自賠責保険会社へ送る必要があります。
▶︎参考:被害者請求に必要な書類について、詳しく知りたい方はコチラ!
被害者請求は被害者本人が手続きを行うため、加害者請求に比べて時間がかかってしまうでしょう。しかし、被害者が手続きの内容を理解しながら進めていくことができるため、納得のいく後遺障害等級認定を受けられる可能性が高まります。
交通事故で頭蓋骨骨折になってしまったら…
交通事故で頭蓋骨骨折となってしまい、後遺症が残ってしまったら、後遺障害等級認定の手続きを行いましょう。後遺障害等級が認定されると、等級に応じた後遺障害慰謝料を受け取ることができます。