同僚と営業先に向かうために高速道路を走行していた。後ろの車がハンドル操作を誤り、自分達の車に追突した。自分は骨折する怪我を負い、交通事故の衝撃で頭をぶつけた同僚は、気を失ったため、すぐに救急車で運ばれた。
同僚は病院で手術を受け、2日経って目を覚ました。しかし、思うように体が動かせない状態だった。担当医からは「交通事故の衝撃で、脳に障害が出ているようです。」という診断結果を言い渡された。
「同僚が交通事故の脳障害になるなんて…。後遺症は残るのかな。」
脳障害と聞くと、とても心配になりますよね。今回の記事では
- 交通事故の脳障害について
- 交通事故の脳障害は後遺症が残る場合
交通事故の脳障害で受け取れる損害賠償
を説明していきます。
もくじ
交通事故の脳障害について
交通事故にあって怪我をした場合、脳障害があらわれることもあります。考えられる脳障害は、以下の2つです。
①高次脳機能障害
高次脳機能障害は、交通事故の強い衝撃で脳に損傷を受けたとき、「言語・思考・記憶・行為・学習・注意」など、脳の持つ知的機能に障害があらわれます。
高次機能障害であらわれる症状を、以下にまとめました。
- 記憶障害:覚えることや思い出すことが難しくなる障害
- 注意障害:注意力や集中力が低下する障害
- 社会的障害:感情のコントロールができなくなる障害
- 遂行機能障害:物事の計画が立てることが難しくなる障害
- 失語症・失行症:言葉や日常の動作に支障があらわれる障害
- 病識欠如:自分の身体に対する変化に気づくことができなくなる障害
- 失認症:1つの感覚を通じて対象物を認識できなくなる障害
②遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)
遷延性意識障害は、交通事故の衝撃で頭をぶつけ、脳細胞が破壊されることが原因で起こります。
遷延性意識障害であらわれる症状を、以下にまとめました。
- 自力で移動すること、食事をとることができない
- 言葉をうまく発することができない
- 簡単な指示に従うことができても、自分の意志で行動をすることができない
- 眼球で動くものを追うことはできても、認識することはできない など
上記の症状が3ヶ月以上続いた場合に遷延性意識障害と認定されるようです。
交通事故の脳障害は後遺症が残る場合がある
交通事故の脳障害である「高次脳機能障害」や「遷延性意識障害」は後遺症が残る場合もあります。その場合、後遺障害等級認定を申請し、後遺障害の等級が認められると後遺障害慰謝料というものを受け取ることができます。また、後遺症がどの等級に当てはまるのかによって、受け取ることができる後遺障害慰謝料の金額も異なります。
後遺障害の等級は?
後遺障害の等級は、症状の程度によって決められます。
高次脳機能障害で当てはまる等級
後遺障害の等級 | 症状の程度 |
---|---|
1級 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を必要とする場合 |
2級 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、随時介護を必要とする場合 |
3級 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、仕事ができない場合 |
5級 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、特に簡単な仕事しかできない場合 |
7級 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、簡単な仕事しかできない場合 |
9級 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、できる仕事がかなり制限される場合 |
遷延性意識障害で当てはまる等級
後遺障害の等級 | 症状の程度 |
---|---|
1級 | 神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を必要とする場合 |
交通事故で後遺障害等級認定を申請する
後遺障害の等級を認めてもらうには、後遺障害等級認定という手続きを行う必要があります。
まず、後遺障害等級認定を行う前に、以下の5つの条件を満たしていなければなりません。
- ①交通事故と怪我に因果関係があること
- ②交通事故による怪我が、今後生きていく上で完治する見込みがないこと
- ③交通事故の怪我によって、労働能力が低下してしまうこと
- ④後遺症が医学的に証明できること
- ⑤怪我の症状が自賠責保険の等級認定に値すること
5つの条件を満たしている場合は、後遺障害等級認定の申請手続きを行いましょう。
申請方法は「事前認定」または「被害者請求」の2つがあります。
事前認定
事前認定は、加害者側の任意保険会社に、後遺障害等級認定の申請手続きをすべて任せる方法です。
事前認定で被害者が行うことは、後遺障害診断書を加害者側の保険会社に提出することです。事前認定の場合、被害者は煩雑な手続きの手間を省くことができます。しかし、どのような内容で手続きが行われるのか、被害者は知ることができません。
被害者請求
被害者請求とは、被害者が直接加害者側の保険会社に、後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。被害者自身で必要な書類をすべて集め、加害者側の保険会社に提出しなければなりません。
被害者請求に必要な書類は、以下の7つです。
- ①保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払い請求書
- ②交通事故証明書
- ③事故発生状況報告書
- ④医師の診断書
- ⑤診断報酬明細書
- ⑥通院交通費明細書
- ⑦印鑑証明書
被害者請求は事前認定よりも、手続きに手間や時間がかかってしまいます。しかし、内容を理解・納得した上で手続きを進めていくことができます。また、必要書類のほかに、後遺障害等級の認定に有利になるような書類を付け足すことも可能です。
交通事故の脳障害になったとき受け取れる損害賠償3つ
交通事故の脳障害になったとき、受け取ることができるのは、後遺障害慰謝料だけではありません。そのほかにも、受け取れる損害賠償があります。
損害賠償とは、交通事故のような違法行為で損害を受けた被害者に、加害者が損害の埋め合わせを行うことをいいます。損害賠償は以下の3つに分けることができます。
- ①積極損害
- ②消極損害
- ③慰謝料
①積極損害
積極損害とは、交通事故が原因で必要になった費用に対する損害のことです。
積極損害で請求できるのは…
- 診察費
- 治療費
- リハビリ費用
- 手術費用
- 入院費
- 通院交通費
- 装具・器具の購入費
- 付添看護費
- 鍼灸・マッサージ費用 など
②消極損害
消極損害とは、交通事故にあわなければ、得ることができた利益のことです。
消極損害で請求できるのは…
- 休業損害:交通事故が原因で仕事を休んだとき、その減収分を請求できます。
- 逸失利益:後遺障害になったことで、将来得られなくなってしまったの利益を請求できます。
③慰謝料
慰謝料とは、交通事故が原因で負った精神的苦痛の対価のことです。
慰謝料で請求できるのは…
- 入通院慰謝料:入通院をしたことによって負った精神的苦痛の対価として支払われます。
- 後遺障害慰謝料:後遺障害になったことで負った精神的苦痛の対価として支払われます。
交通事故で脳障害になったときの対応まとめ
いかがでしたか。今回の記事をまとめると
- 交通事故の脳障害は、「高次脳機能障害」や「遷延性意識障害」がある。
- 交通事故の脳障害は、後遺症が残ることがある。
- 交通事故の脳障害が後遺症になったら後遺障害等級認定を行うことで、後遺障害慰謝料を受け取れることがある。
交通事故で脳障害になったとき、わからないことがあれば、この記事を参考にしてくださいね。