仕事が終わって、繁華街を歩いていたときのこと。飲酒運転をした車とぶつかり、交通事故の被害にあった。加害者は反省していたが、検察官が起訴と判断し、裁判が開かれることになった。裁判を何回かおこなうと、裁判官が「和解」を提案してきた。
「交通事故の裁判で和解ってどういうこと?」
こんな疑問ありませんか。今回の記事では、
- 交通事故の裁判について
- 交通事故の和解とは
- 交通事故で和解する場合の進め方
- 交通事故の裁判で和解するメリット
について説明していきます。
もくじ
交通事故の裁判とは
交通事故で裁判になることもあり、以下のような2つの種類に分類することができます。それぞれの特徴を説明していきます。
民事裁判
- 争われる問題:損害賠償に関して
- 起訴する人:誰でも起訴できる
- 費用:必要
刑事裁判
- 争われる問題:加害者の刑罰や過失に関して
- 起訴する人:検察官しか起訴できない
- 費用:必要ない(被害者が直接裁判を起こすわけではないから)
交通事故の和解と示談に違いはある?
そもそも和解とは、被害者と加害者の両方が譲り合い、意見を一致させて問題を解決することをいいます。そう考えると、示談も和解と同じだと思いますよね。和解と示談に違いはあるのでしょうか。
示談は和解の一種です。示談というのは損害賠償について話し合い、損害賠償金の支払いに関して、被害者と加害者の両者が納得して和解をすることをいいます。したがって、和解と示談に明確な違いがあるというわけではありません。強いて言えば、損害賠償に関する和解を示談といっているのです。
交通事故の裁判で和解をするときの進め方
交通事故で裁判になったとき、裁判の期間中にに和解する場合もあります。裁判の期間中に裁判所が関与した形で、被害者と加害者の話し合いを進めていきます。
交通事故の裁判で和解するときの流れは、以下の通りです。
- ①裁判官から和解の提案がある。
- ②被害者と加害者の両者が和解に賛成する。
- ③和解をするための話し合いを何度か行う。
(※このとき、裁判官が間に入ってくれます。) - ④話し合いの結果、被害者と加害者が納得すれば和解が成立。
- ⑤後日、和解の内容を記した「和解調書」が送付される。
和解の話し合いで和解が成立しなければ、加害者に判決を言い渡す裁判の流れに戻ることになります。
交通事故の裁判で和解するメリットとは?
交通事故の裁判期間中に和解をした場合、
「判決を待つより早く問題が解決できる」
「和解案により裁判所の考えが把握できる」
「本人尋問の負担がなくなる」
という3つのメリットがあります。
和解の方が裁判よりも早く解決できる
裁判の和解を行わない場合、本人尋問(※1)や証人尋問(※2)など多くの手順を踏んで、裁判所が判決を言い渡すのです。また、弁論が終わってからも、判決が出るまでに1~2ヶ月必要になります。さらに、相手が裁判制度にある控訴をすると、解決までに時間を要してしまうのです。
一方、和解には控訴の制度がないので、判決を待つよりも早く問題を解決することができます。
※1 本人尋問とは、交通事故にあった当事者が、その状況や損害についてを法廷で説明することです。
※2 証人尋問とは、交通事故時の証人を法廷に呼び、質問されたことに対して答えることです。
和解案により裁判所の考えが把握できる
交通事故の裁判を進めて行く中で、争点が整理され、証拠も出揃います。この段階で、裁判所は和解案を提示し、和解勧告をします。
裁判所が提示する和解案は、裁判所の考えを反映させており、損害項目ごとに金額と根拠を明確に記載します。このような形の和解案が出せるのは、交通事故における損害賠償の算定基準が決められているからです。
和解案から裁判所の考えを把握できるので、判決で言い渡される内容も見通しをつけることが可能です。
本人尋問の負担がなくなる
交通事故の裁判手続きを弁護士に依頼すると、当事者は裁判所に出向く必要がありません。しかし、判決を言い渡す場合に行われる本人尋問は、必ず当事者が裁判所へ出向かなくてはなりません。
また、本人尋問は準備することも多いため、相手の代理人から精神的につらいことを言われるかもしれません。本人尋問が上手くいかなければ、自分にとって不利益な判決になってしまうというリスがあります。
したがって、負担やリスクがある本人尋問を省けることは、メリットの一つといえるでしょう。
交通事故の裁判で和解するときの注意点
交通事故の裁判で和解するときに注意して欲しいことがあります。以下にまとめました。
遅延損害金が受け取れない
交通事故で裁判になってしまうと、損害賠償を受け取るまでに時間がかかってしまいます。そもそもお金は、手元になければ利益を得ることができません。遅延損害金は、損害賠償を早く受け取ることで、得られたはずの利益をされに上乗せすることができます。
弁護士費用が受け取れない
交通事故の裁判では、基本的に判決で認められた損害賠償額の1割を被害者の弁護士費用として、被告である加害者に負担してもらえます。
しかし、和解になると、基本的に弁護士費用を受け取ることができません。このことを覚えておいてください。
交通事故の和解まとめ
いかがでしたか。今回の記事をまとめると
- 交通事故の裁判には、民事裁判と刑事裁判がある。
- 交通事故の裁判で和解するとき、被害者と加害者の間に裁判官が入って進めてくれる。
- 交通事故の裁判で和解すると、「早く問題が解決できる・和解案で裁判所の考えが把握できる・本人尋問の負担がなくなる」というメリットがある。
- 交通事故の裁判で和解するときの注意点は、遅延損害金や弁護士費用が受け取れないこと。
交通事故の和解することについて疑問があったら、この記事を参考にしてくださいね。