交通事故の被害にあい、示談交渉がうまくいかず、裁判に発展する可能性もあります。しかし、交通事故の裁判について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、交通事故の裁判の流れや費用、不服申し立ての方法について解説していきます。
交通事故で裁判に発展する理由
交通事故で裁判に発展する理由としては、示談交渉で被害者と加害者側の保険会社がもめてしまうためです。
そもそも示談交渉とは、加害者が被害者に支払う損害賠償の金額を決めるための話し合いのことです。示談交渉は、当事者双方が納得しなければ、示談成立となりません。示談が成立しなければ、被害者は損害賠償を受け取ることができません。
また、損害賠償の請求権は3年で時効を迎えてしまうため、早期のうちに示談を成立させる必要があります。このようなことから、交通事故で裁判に発展してしまうこともあるのです。
交通事故で裁判を開くことになったら
交通事故で裁判を開く場合、まずは訴状を裁判所に提出しなければなりません。訴状の提出先は、被害者が請求する損害賠償金額によって、以下のように異なります。
請求する損害賠償金額が 140万円以下の場合 |
簡易裁判所 |
---|---|
請求する損害賠償金額が 140万円以上の場合 |
地方裁判所 |
また、交通事故の裁判には、以下のような費用が必要になります。
- 弁護士費用
- 訴訟費用
弁護士費用
弁護士費用は、着手金と報酬金の2つに分けることができます。
着手金とは、問題の解決を弁護士に依頼する際にかかる依頼料のようなものです。着手金として支払う金額は、解決する問題の内容や請求する金額などで異なります。着手金は、最低でも10万円となることが多いようです。
一方、報酬金とは、問題を解決したときに支払うお金のことです。報酬金の金額も着手金同様、解決した問題の内容によって異なります。ただし、基本的には、相手方から請求できた金額の○%、請求された金額と実際に支払う金額の差額の○%という割合で決まります。
訴訟費用
訴訟費用とは、訴えの提起手数料や旅費・日当、書類の作成及び提出費用などのことです。ただし、訴訟費用は、民事訴訟法において敗訴した人が負担するものと定められています。
訴えの提起手数料
裁判所に訴えを提起する際には、手数料を納めなければなりません。訴えを提起する際に支払う手数料は、訴訟で相手方に請求する金額によって、以下のように定められています。
相手方に請求する金額 | 訴えの提起手数料 |
---|---|
100万円円 | 1万円 |
1000万円 | 5万円 |
5000万円 | 32万円 |
1億円 | 152万円 |
50億円 | 302万円 |
100億円 | 1402万円 |
旅費・日当
裁判を行った際に支払う日当は、1日あたり3950円となっています。また、旅費は、「裁判を行う当事者の住所を管轄する簡易裁判所」と「出頭した裁判所の所在地を管轄する簡易裁判所」の直線距離に応じて定められています。さらに、裁判で証人を呼ぶ場合、証人の日当として1日8000円程支払うことになります。
書類の作成及び提出費用
書類の作成及び提出費用とは、裁判で必要な書類や資料を作成、提出する際にかかる費用のことです。書類の作成及び提出費用は、基本的に1500円と定められています。ただし、書類の通数によっては、追加で費用が加算されることもあります。
交通事故の裁判の流れ
交通事故で裁判を行う場合、訴状提出してから1~2ヶ月後に、以下のような流れで進められます。
- 第1回口頭弁論期日
- 争点の整理や証拠を提出
- 本人・証人尋問
- 判決の言い渡し
第1回口頭弁論期日
第1回口頭弁論期日の呼び出しを受けた場合、原告となる被害者は指定された期日に裁判所へ出廷しなければなりません。一方、被告となる加害者は、訴状に関する事実の認否を記載した答弁書を裁判所に提出している場合、出廷しなくてもよいとされています。
そして、被告となる加害者が第1回口頭弁論期日までに争う意思がなければ、請求した通りの判決になり、裁判は終了となります。
争点の整理や証拠を提出
第1回口頭弁論期日で被告となる加害者が争う意思を示した場合、月に1回のペースで裁判が開かれることになります。裁判で行われることは、以下の2つです。
- 当事者双方が互いに主張し、争っている問題の整理
- 自分の主張を裏付ける証拠の提出
本人・証人尋問
当事者双方の主張と証拠が出揃うと、当事者や証人予定者の言い分や見解を記載した「陳述書」を提出し、本人・証人尋問が行われます。
本人尋問とは、法廷で裁判官からの質問に回答すること指します。一方、証人尋問とは、必要に応じて行われるもので、目撃者や医師などが発言を行います。
ただし、本人尋問の前に裁判所から和解案を提示されることもあり、和解が成立した場合は裁判は終了となります。
判決の言い渡し
当事者双方が和解に応じなかった場合、複数回行われる弁論が終結した1~2ヶ月後に判決が言い渡されます。判決の言い渡しを行う際、当事者は必ずしも出廷しなければならないという決まりはありません。
裁判で解決した場合は遅延損害金が発生する!
裁判で解決した場合、請求した損害賠償とは別に、遅延損害金が発生します。遅延損害金の計算は、事故発生日が起算日となり、損害賠償額の年5%の金利が加算されます。
例えば、裁判で損害賠償を300万円請求し、2年後にその損害賠償を支払うことになったとします。このような場合、遅延損害金として1年で15万円分支払わなければなりません。したがって、最終的な損害賠償額は、2年分の遅延損害金を含めて330万円が支払われることになります。
裁判の判決に納得がいかない場合は?
裁判の判決に納得がいかない場合は、不服の申し立てをすることが可能です。ただし、判決の言い渡しから2週間以内に行わなければなりません。控訴を行うことで、再度裁判で審議を行うことになるため、場合によっては判決が変わることもあります。
また、控訴を行う場合、上級裁判所に申し出ることになります。例えば、簡易裁判所の判決に対する控訴は地方裁判所、地方裁判所の判決に対する控訴は高等裁判所というように行います。
日本は三審制をとっているため、控訴をしても納得のいく判決が得られなかった場合は、上告を行うことで再審も可能です。
交通事故に関する裁判についてのまとめ
いかがでしたか。交通事故の場合、損害賠償に関しての裁判が多く行われます。裁判を行う場合、弁護士費用や訴訟費用が必要ですが、訴訟費用は敗訴した方が負担するものです。
また、交通事故の裁判は、以下のような流れで進みます。
- 第1回口頭弁論期日
- 争点の整理や証拠を提出
- 本人・証人尋問
- 判決の言い渡し
もしも裁判の判決に納得がいかなかった場合は、上級裁判所に控訴を申し出て、審議のやり直すことをおすすめします。