3ヶ月前に車を運転中に後ろから車に追突され、交通事故の被害にあった。
数日後に病院でむちうちと診断をされ、今まで治療を続けてきたが、症状の緩和が見られず、後遺症となってしまった。
医師に相談すると、「この後遺症は、後遺障害の12級に該当するかもしれないよ。」といわれた。その後、後遺障害についての説明をされたものの、あまり理解できなかった。
このように、後遺障害についてよくわからないとお困りの方。今回の記事では、後遺障害の12級についてだけでなく、後遺障害等級認定についても紹介していきます。
後遺障害とは?
後遺障害という言葉を聞いたとき、「後遺症と似ているな。」と思うかもれません。しかし、後遺障害と後遺症は異なるものです。どのように異なるのでしょう。
後遺症と後遺障害の違い
怪我の治療をしていて、これ以上の回復が見られない症状のことを後遺症といいます。
交通事故による怪我で後遺症となったもので、後遺障害の等級に該当するものを後遺障害といいます。
このことから、
- 交通事故による怪我である
- 後遺障害の等級に該当する
この2点を満たす場合は「後遺障害」、満たさない場合は「後遺症」となることがわかります。
後遺障害の12級について
後遺障害の12級には、様々な後遺症が該当します。それがこちら。
12級 | 内容 |
---|---|
1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3号 | 7歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ※1)を加えたもの |
4号 | 1耳の耳殻(じかく)の大部分を欠損したもの |
5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8号 | 長管骨(ちょうかんこつ※2)に変形を残すもの |
9号 | 1手の小指を失ったもの |
10号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの |
11号 | 1足の第2の足指を失ったもの 第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの |
12号 | 1足の第1の足指又は他の1の足指の用を廃したもの |
13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14号 | 外貌に醜状を残すもの |
12級の後遺障害の中でも、12級5号の骨盤骨等の変形障害、12級6号・7号の関節機能障害、12級8号の長管骨(ちょうかんこつ)の変形障害、12級13号の神経障害は、認定される件数が多いです。
※1 歯科補綴(しかほてつ)とは、見た目やかみ合わせをインプラントや入れ歯などの人工の歯で補う治療法のこと。
※2 長管骨(ちょうかんこつ)とは、手足を構成する細長い形状の比較的大きな骨全般のこと。
併合認定されることもある
後遺障害が複数あると、後遺障害等級認定で併合認定されることもあります。その場合、併合認定のルールに従い、より高い等級の認定が受けられるのです。
併合認定のルールとは…
- 5級以上の後遺障害が2つ以上あるとき、重い症状の等級を3級繰り上げる
- 8級以上の後遺障害が2つ以上あるとき、重い症状の等級を2級繰り上げる
- 13級以上の後遺障害が2つ以上あるとき、重い症状の等級を1級繰り上げる
- 14級の後遺障害が2つ以上あったとしても、等級は変わらず14級のまま
例:後遺障害の12級と5級に該当する症状が存在するとき
この場合、重い症状である5級の等級が1級繰り上がるため、後遺障害等級認定で4級が認定されます。
後遺障害等級認定を申請する理由
後遺障害等級認定を申請すると「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」というものを受け取ることができます。これらは、入通院慰謝料と別に支払われるものです。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺症が残ったことに対する精神的苦痛の対価として支払われるものです。
後遺障害慰謝料として支払われる金額は、該当する後遺障害の等級によって異なります。また、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準のうち、どの基準を使うかによっても異なります。
後遺障害等級認定で12級に該当した場合、後遺障害慰謝料の相場は…
自賠責保険基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
12級 | 93万円 | 100万円 | 290万円 |
逸失利益
逸失利益とは、交通事故で後遺症が残ってしまい、本来得られるはずのだった収入に対して支払われるものです。働いている方や働く予定の方、主婦の方しか受け取ることができません。
逸失利益の計算式は…
-
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
労働能力喪失率
労働能力喪失率は、等級によって決められています。後遺障害の等級が12級の場合は、14%です。
ライプニッツ係数
交通事故被害におけるライプニッツ係数とは、交通事故の損害賠償のうち、就労機会喪失や減少による逸失利益の時間と関係する賠償金を一時金に換算する方法です。
ライプニッツ係数は、能力喪失期間によって異なります。
- 例えば…
能力喪失期間が1年の場合、ライプニッツ係数は0.9524
能力喪失期間が10年の場合、ライプニッツ係数は7.7217
能力喪失期間が20年の場合、ライプニッツ係数は12.4622
これらの情報をもとに逸失利益が算定されます。
このことから、交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害等級認定を申請した方がよいのです。
後遺障害等級認定を申請しよう
後遺障害等級認定はどのように申請できるのでしょうか。以下で、詳しく説明していきます。
申請する前に確認すべき5つの条件
- 医療機関へ定期的に通院していること
- 交通事故の状況と被害者が申告する症状の程度が一致していること
- 交通事故当初から、被害者の訴える症状が続いており、一貫性があること
- 後遺症が医学的に(画像診断や検査結果など)証明できること
- 症状が重く、日常的に症状が続いていること
上記のような、5つの条件を満たしていることが大前提です。もし5つの条件を満たしていない場合は、後遺障害の等級を認定することができません。
2つの申請方法
後遺障害等級認定を申請する方法は「被害者請求」と「事前認定」の2つがあります。
被害者請求
被害者自身が後遺障害等級認定に必要な書類の収集・作成を行い、自賠責保険会社に請求するという方法です。
被害者請求のメリット
被害者自身が必要な書類の収集・作成をするので、納得のいく後遺障害等級認定ができます。
加害者側の任意保険会社を通さずに、自賠責保険会社に直接請求するので、示談成立前でも賠償金を受けることができます。
事前認定
被害者が加害者が加入している任意保険会社に、後遺障害等級認定の申請を任せる方法です。加害者側の保険会社に提出するのは、後遺障害診断書のみです。
事前認定のメリット
加害者側の保険会社が、後遺障害等級認定に必要な書類を収集・作成してくれるので、手間を省くことができます。
後遺症が残ったら、後遺障害等級認定を申請しましょう
いかがでしたか?後遺症が残ったら、後遺障害等級認定を申請するようにしましょう。後遺障害の等級に該当すると、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」を受け取ることができます。