交通事故が原因で後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を申請し、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることも可能です。しかし、後遺障害等級認定で非該当になった場合は、それらの損害賠償を受け取ることができません。
そこで今回は、「後遺障害等級認定で非該当になる理由」や「その後の対応について」解説していきます。
後遺障害等級認定とは?
後遺障害等級認定とは、交通事故が原因で残った後遺症を、後遺障害の等級として認めるかを判断する制度です。後遺障害等級認定は、損害保険料率算出機構の一つである「自賠責損害調査事務所」という機関が行っています。また、後遺障害等級認定は、書面に書かれている内容で判断をする「書面主義」で行われます。
後遺障害等級認定で後遺障害の等級が認められた場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
▶︎参考:後遺障害慰謝料や逸失利益について詳しく知りたい方はこちら
等級別の後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級によって金額が異なります。後遺障害慰謝料を計算する場合、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準が使われます。
しかし、任意保険基準は、各任意保険会社で計算方法が異なり公表されていません。そのため、今回は自賠責基準と弁護士基準における後遺障害慰謝料を以下の表にまとめました。
後遺障害の等級 | 後遺障害慰謝料の金額 | |
---|---|---|
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
1級 | 1100万円 | 2800万円 |
2級 | 958万円 | 2370万円 |
3級 | 829万円 | 1990万円 |
4級 | 712万円 | 1670万円 |
5級 | 599万円 | 1400万円 |
6級 | 498万円 | 1180万円 |
7級 | 409万円 | 1000万円 |
8級 | 324万円 | 830万円 |
9級 | 245万円 | 690万円 |
10級 | 187万円 | 550万円 |
11級 | 135万円 | 420万円 |
12級 | 93万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
後遺障害等級認定で非該当になる理由
交通事故が原因で後遺症が残れば、誰もが後遺障害の等級を認められるわけではありません。後遺障害等級認定で後遺障害の等級が認められず、非該当という結果になる場合があるのです。その理由としては、以下2つのことが考えられます。
- ①5つの条件を満たしていなかった
- ②怒る
①5つの条件を満たしていなかった
後遺障害等級認定で後遺障害の等級が認められるには、以下の5つの条件を満たしていなければなりません。
- 医療機関へ定期的に通院していること
- 交通事故の状況と被害者が申告する症状の程度が一致していること
- 交通事故当初から、被害者の訴える症状が続いており、一貫性があること
- 後遺症が医学的に(画像診断や検査結果など)証明できること
- 症状が重く、日常的に症状が続いていること
「治療を月に1回しか受けていない」、「レントゲンや神経学的検査で他覚的所見がない」、「診察を受ける度に痛みの場所が変化している」などの場合は、上記の5つの条件を満たしていないことになります。そのため、後遺障害等級認定で非該当になる可能性があるのです。
②申請手続き
後遺障害等級認定は、申請手続きを2種類から選ぶことができます。「事前認定」と「被害者請求」というものです。
事前認定は、後遺障害等級認定の手続きを加害者側の保険会社に任せる方法です。そのため、被害者は手続きの手間を省くことができますが、どのような書類が作成されているかを把握することができません。
一方、被害者請求は、被害者自身で後遺障害等級認定の手続きを行い、加害者の保険会社に直接請求をする方法です。そのため、被害者請求の場合は、後遺障害等級認定に必要な書類を作成・収集することになります。したがって、どのような内容を記載した書類なのかを把握することが可能です。
このことから、被害者請求で後遺障害等級認定を進めていく方が、被害者自身にとって納得のいく後遺障害等級認定になるでしょう。
非該当の場合は異議申し立てを!
一度、後遺障害等級認定で非該当になったからといって、諦めてはいけません。後遺障害等級認定で非該当となった場合は、異議申し立てを行うことができます。
異議申し立てを行うべきケースは、以下の通り。
- 後遺障害等級認定で非該当になった場合
- 認定された等級が、低かった場合
異議申し立てを行う場合、「症状固定と診断された翌日から3年以内」までに後遺障害に関する損害賠償を請求しなければ、請求権を失ってしまいます。したがって、早めに異議申し立てを行う必要があります。
後遺障害等級認定の異議申し立ての方法
異議申し立てをする場合、先程紹介したの非該当になる理由を参考に、認定されなかった理由を分析してから行うようにしましょう。
非該当になってしまった理由を分析した上で、後遺障害診断書を取り直すべきか、検査を受け直すべきか、医師に意見書を書いてもらうべきかなどの方法を選択しましょう。
異議申し立てを行う場合、以下の3つから選択します。
- ①自賠責保険会社に異議申し立て
- ②自賠責紛争処理機構に異議申し立て
- ③裁判を行う
①自賠責保険会社に異議申し立て
異議申し立ての方法として、最も多いのが自賠責保険会社に異議申し立てを行うものです。異議申し立てを行ってから、約2~6ヶ月の審査期間が必要になります。また、自賠責保険会社に行う場合、被害者請求で行うことをおすすめします。
先程述べたように被害者請求だと、書類の記載内容を把握することができるので、納得のいく異議申し立てを行うことができるでしょう。
②自賠責紛争処理機構に異議申し立て
自賠責紛争処理機構という機関に、後遺障害等級認定に対する不服を申し立てることもできます。自賠責紛争処理機構に異議申し立てを行うと、書面をみて異議の内容を審査し、判断します。審査には、3ヶ月以上かかります。
自賠責紛争処理機構への異議申し立ては、一度しかできないので、注意してください。
③裁判を行う
最終的な手段として、裁判を行うことも可能です。裁判の場合、裁判を行う当事者双方の主張を立証して、最終的な判決を言い渡します。
裁判の場合でも書類を提出し、その書類を参考に決定していくことになります。しかし、裁判を行うと、1~2年以上かかることもあり、時効までに終わらせることができない可能性があります。
後遺障害等級認定についてのまとめ
いかがでしたか。後遺障害等級認定で非該当になるには、いくつかの理由があります。しかし、非該当になったからといって諦めてはいけません。
異議申し立てを行い、再度、後遺障害等級認定の結果を待つようにしましょう。場合によっては、以前の後遺障害等級認定の結果を覆すことができるかもしれません。